二人はブリーク・フォール墓地に着いた。
入口周辺には山賊がたむろしていたが、二人の手にかかれば雑魚同然。容易く殲滅出来た。
巨大な石の扉を押し開けて二人は中に入る。
天井から光が漏れている為明るかった。
外の冷気が多少は防げるので少しは暖かい。
と言っても二人とも冷気に対し耐性を持っている為あまり関係ないが。
少し奥に進むと山賊とスキーヴァーの死体があった。
更に奥には焚火があり、そこには二人の男女が腰かけて何か話していた。
「このまま奴を行かせてどうする?」
「好きにさせたら? アーヴェルは奥に行くのにこだわってた。ドラウグルにやられても自業自得よ」
「だが奴が持ってた金の爪はどうする? 高く売れそうだが」
「それは必要経費って奴じゃない」
「わたしが魔法で攻撃しんす」
「わかった」
シャルティアが姿を現す。
隠密系の魔法を使ってないし技能も持ってないので足音ですぐバレた。
二人は一瞬こんなところの少女が、と混乱しかけるが武器に手をかける。
「
唱えたのは第一位階の初歩的な攻撃魔法だ。
十の光の弾が出現し男の方に全て命中し体をぐちゃぐちゃにして殺した。
その間にイナルが盾を構えたまま突撃する。シールドチャージだ。
女の方は訳も分からず武器を抜くことも出来ず盾に潰され、倒れた。
そしてイナルが剣で心臓を貫き殺した。
「今日はここで休もう。休息が必要だ」
「わかったでありんす……死体は向こうに置いて奥でありんすね」
「頼んだ。俺は晩飯の準備をしておこう」
「あぁ、わたしの分は不要でありんす。飲食が不要になるマジックアイテムを持っているでありんすから」
「何? すごい物を持っているな……わかった」
そしてシャルティアは二つの死体の手を持って運搬し、適当に壁側に置いておいた。
そして一晩眠った。シャルティアは眠れないので
「よし。それじゃあ行くぞ」
「わかったでありんす」
前衛をイナル。後衛をシャルティアにし二人は進む。
イナルはノルドで暗視能力を持たないため灯りが居る。そのためシャルティアが左手に松明を持っていた。
奥へと進んでいく。道中問題視していたドラウグルやフロストバイト・スパイダーなどは出てこない。
更に奥へ進んでいくと広間に出た。
中央にレバーがあり、その傍にはノルドの死体がある。
左手に回転する絵があり、奥の上の壁には絵がある。
「これは……ノルドの仕掛け罠だな。間違った状態でレバーを引くと罠が発動する」
「……これ、あの通りに絵を揃えるだけでいいんでありんすか?」
「確かそのはずだ」
「それ、トラップとして欠陥品ではありんせん?」
ゲームならわかるが、ここは現実だ。正解がすぐそこにある罠などトラップとして機能していないだろう。
「諸説あるが、一番有力視されているのは外からの侵入者を防ぐためでなく、内に居るドラウグルが外に出ないようにするための物……と言うのが強いな。ドラウグルはアンデッド化の影響で知能も下がっているから、それらが出ないための仕掛けだという」
「あぁ、そう言う事なら納得できんす」
そう話しながら二人は左の絵を揃える。
そして中央のレバーを倒すと奥にある鉄格子が上に収納された。
シャルティアの腕力なら鉄の柵程度力技で破れるがしなかった。
進んで左手側に行くと螺旋階段があり、そこを下っていく。
更に進むと声が聞こえて来た。
「誰か、こっちに来るのか? ハークニール、お前なのか? それともビョルン? 誰でもいいから助けてくれ!」
声はまだ若い男の物に聞こえた。
進と蜘蛛の巣で防がれていた。イナルが剣で蜘蛛の巣を斬り裂き進むと其処は長方形の部屋だ。
奥の道らしき場所には蜘蛛の巣があり、そこにはダークエルフが囚われていた。
そして──上から蜘蛛が降りて来た。
二メートルほどの巨体。八つの目に巨大な前足。多足の姿。
蜘蛛をそのまま巨大化させ恐怖を与えるような姿にしたモンスター、フロストバイト・スパイダーだ。
「気持ち悪い……
シャルティアが魔法を唱えると十の光弾がフロストバイト・スパイダーに飛んで行き、命中する。
肉が抉れダメージが入るが、死亡には至らなかった。
痛みを感じるのか知らないが、怯んでいる間にイナルが突撃し、頭に剣をぶっ刺した。
それによりフロストバイト・スパイダーは死亡した。
「よし……それで、お前はなんだ?」
イナルはそう捕らえられているダークエルフ──韋駄天のアーヴェルに近づきつつ問いかけた。
勿論剣は抜いたままだ。
ダークエルフは黒い肌に尖った耳を持つエルフ種だ。種族的に炎に対し耐性を持っている。
「あ、あんたリバーウッド・トレーダーに雇われた冒険者か?」
「……そうだ」
「あの爪を盗んだことは謝罪するし、持ち主に返す! だからここから出してくれ!」
「ならまず金の爪を渡せ」
「この状態じゃ懐をまさぐることも出来ない! まずは蜘蛛の巣を取ってくれ!」
「……仕方ないな」
そう言うとイナルは剣で蜘蛛の巣を切り払い、アーヴェルを助け出した。
その瞬間アーヴェルは通路の奥に向かって走り出した。
「馬鹿な連中め! なんで宝を明け渡さなきゃならない!」
そう叫びつつアーヴェルは奥へ奥へと走って行った。
「あの野郎……」
「ちょっと殴ってくるでありんす」
シャルティアはそういうと高速で走り出した。
シャルティアの速度はマッハを出せるぐらいには速い。だがこの世界でそんな速度を出したらソニックブームで大変なことになるのでそこまでの速度は出さない。
すぐにアーヴェルに追いつき背中から心臓に向かって手とうをぶち込み、殺した。
「それじゃあ……」
シャルティアは死体を漁る。
腰につけていたバックから金の爪を取り出した。
そこに丁度イナルもやってくる。
「金の爪、見つけたでありんす」
「そうか……それじゃあ、このまま奥へ進もうか。ここで戻ると二度手間になるからな」
「わかったでありんす」
シャルティアはアイテムボックスに金の爪をしまった。
更に奥へ少し進むと、異様な通路に出た。
壁には隙間があり、そこには棺が眠っていた。
そして通路の奥から足音がする。
奥から白い包帯に包まれたミイラに似たアンデッド、ドラウグルが現れた。
「では──」
シャルティアは手をパン、と叩いた。
この
この
「凄いな……」
イナルはそれを見て驚愕した。
アンデッドに対する魔法と言うのは存在する。だが、ここまでの規模の者はイナルの知識には無い。
更にアンデッドに対する魔法の殆どは逃走させるものが多く、直接ダメージを与える魔法は少ないのだ。
それを考えればここまでアンデッドに対する能力を持つシャルティアは貴重な存在なのでは、とイナルは考えたが──深く考える事はやめた。
二人は奥へと進んでいった。
■
道中、特には問題なかった。
シャルティアの魔法とイナルの剣術があればただの低位ドラウグルなど敵ではない。
一応途中にギロチンがぶんぶん動いてる物があったが素早いシャルティアが先に進み鎖を引いて罠を止めたので問題なかった。
そして二人は最奥へと続く扉の前に居た。
「これは……なんだ?」
二人の目の前にあるのは球体上の扉だ。
三つの絵が上から並んでおり、動かすことが出来る。
その下、全体から見て中央あたりには三つの穴がある。ここに金の爪をハメる事が出来そうだ。
「なにか絵を合わせると思いんすが……合わせる絵が無いでありんすね」
「一応ここら辺を探してみよう」
そうして二人はあたりを見渡す。
しかし壁に謎の絵が彫られているぐらいで何も無い。
「なにかヒントはないでありんすかえ」
「何もないな……ふむ。この穴は間違いなく金の爪をハメる物だと思うが……もしかしたら金の爪に何かあるかもしれないな」
「なるほど。ちょっと見てみるでありんす」
シャルティアはアイテムボックスから金の爪を取り出した。
そしてくるくる回しながら見る。
そして裏側に絵が三つ彫られているのが分かった。それはこの扉の絵と同じ物だ。
「あったでありんす。恐らくこれを合わせれば開くと思いんす」
「なるほど……こんな簡単な仕掛けなのか」
二人は絵を合わせる。
そして爪を穴に嵌めると扉が下に収納されていった。
少し進むと蝙蝠が飛んできたが害はなかった。
そこは広間になっていた。天井に穴が空いており、空から光が入っている。
奥には壁があり、そこには見たことない言語──竜の言語で書かれた言葉の壁があった。
その手前には棺がある。
シャルティアはアンデッドなので種族
この
それにより棺の中にアンデッドが居ることを感知しているが、気には止めなかった。
「……呼んでいる?」
イナルがそういうと壁に近づく。
「……どうかしたでありんすか?」
少し雰囲気の変わったイナルを見てシャルティアが心配そうな声を出した。
「……ファス。この言葉だけ何故か読めるな」
「? 言語学者と言う訳ではないでありんす?」
「あぁ。見たことも無い文字だ……なのに──」
そこでガタッと音がした。
音の方を二人は向く。
そこには棺からドラウグルが出てきていた。片手剣を持ったドラウグルだ。
「ファスローダー!」
ドラウグルは棺から立ち上がって叫ぶ。
シャウトと呼ばれる古代の力。竜の言語で構成された魔法の力だ。
放たれるのは揺ぎ無き力。不可視の衝撃波を飛ばすシャウトだ。
それを二人は喰らい、イナルは吹き飛ばされる。だがシャルティアには多少のダメージはあっても吹き飛ばしには至らない。
吹き飛ばしも当然行動阻害に分類されるため装備で対策を得ているシャルティアには通じない。
「
念のためアンデッド退散は温存しておくために攻撃魔法を放った。
火球が飛んで行き、ドラウグルに命中し爆発する。
「ディノク!」
だが死ななかった。
シャルティアの魔法を耐えたのだ。
(この程度は耐えるか)
シャルティアは神官だ。そのために神聖属性の魔法なら兎も角その他の攻撃魔法の威力は通常より低い。だから耐えれたのだ。
イナルが立ち上がり突撃する。
イナルの剣とドラウグルの剣が交差する。
優勢なのはイナルだ。耐えたといってもノーダメージと言う訳ではない。体が焼かれているのだ。更にこの世界のアンデッドも炎に対し脆弱性を持つことが多い。
当然ドラウグルも炎に対し脆弱性を持つ。
ダメージレースで有利なのはイナルだ。
数度体を斬り裂き、喉を裂いた事でドラウグルは偽りの生命力を失い、停止した。
「こいつがここの守護者だったっぽいな」
「で、ありんすね……他よりは強かったでありんすし」
「しかしドラゴンストーンらしき物はなかったな……」
「その棺の中にあったりしないでありんすかね」
「む、見てみよう」
イナルが棺を覗くと「あったぞ」と石板を取り出した。
表にはスカイリムの地図が。裏にはドラゴン語が刻まれた石板だ。
「恐らくこれがドラゴンストーンだろう。任務達成だな」
「えぇ。それじゃあ、帰るでありんすか」
「あぁ。あそこから行けそうだ」
そうして二人はブリーク・フォール墓地から出た。