二人は一度リバーウッドに戻った。
金の爪をルーカンに返さないといけないので返した後、リバーウッドで一泊しホワイトランに向かった。
「これがドラゴンズリーチ……」
そして二人はドラゴンズリーチの前に居た。
朝の十時頃だ。
「ここがかのヌーミネックスを捕らえたという宮殿だ」
「ヌーミネックス?」
「知らないのか? 集眼のオラフ王がドラゴンを捕らえたというんだ。今もその設備はあるという」
「ドラゴンを捕らえた……凄いところでありんすねぇ」
「あぁ。中に入ろう」
二人は大きな門を開け中に入る。
ドラゴンズリーチ内は衛兵が多くいるが、一階と二階の一部は一般開放されている。そのため誰でも入れる。
階段を上っていき、右手の部屋に入る。
そこにはアルケイン付呪器と錬金器具がある。
アルケイン付呪器は武具に特殊な効果をエンチャントする道具だ。机に魔法陣が書かれている。薄く青く発光している。
錬金器具は薬や毒を作り出す道具である。
そして机に向かって立っている一人の男とフードを被っている女が居た。
男の方──ファレンガーは二人に気づくと顔を明るくした。
「おお、戻ったか。どうだ? ドラゴンストーンはあったか?」
「あぁ。あった。これが現物だ」
そう言いイナルは懐からドラゴンストーンを取り出した。
「おお! これぞまさしくドラゴンストーン! 感謝しよう」
「報酬はどうなる?」
「それは首長と相談してくれ。私は今からこれの解析に──」
「ファレンガー!」
そこで大声と共に一人の女が部屋に来た。
赤に近い髪を持つダークエルフの女にして首長の私兵であるイリレスだ。
「近くでドラゴンが発見されたわ。すぐに来て頂戴」
「ドラゴン! それは素晴らしい。どこで、何をしていたんだ?」
「もっと真剣に考えた方が良いと思うけど……イナル、貴方も来て頂戴」
「わかった」
「わたしはどうするでありんす?」
「……相手がドラゴンなら戦力は少しでも多い方がいいだろう。来てくれ」
「わかったでありんす」
イナルの言葉に従い四人は階段を上がって二階に上がる。
そこにはこのホワイトランの首長、偉大なるバルグルーフが居た。金髪碧眼の男で歳はそこそこいってそうだ。
頭には金の冠を付けている。
バルグルーフ以外には疲れ切った衛兵が一人居た。
「それで、何があったんだ?」
「はい、陛下。西の監視塔で監視任務をしていたら、山向こうに大きな影が見えました。最初は鳥かと思いましたが……違った! 奴はドラゴンだ! 私はこのことを報告するために走ってきましたが……監視塔がどうなったかは……」
「よくわかった。休むといい」
「ありがとうございます、閣下」
そういうと衛兵は下に降りていった。
「聞いた通りだ。ドラゴンが西の監視塔に来ているらしい。襲いに来たのかどうかはまだわからないが……それでも緊急事態だ。そこで、イナル。君の力を借りたい」
「ドラゴン相手に俺がどうにか出来るとは思わないが……」
「いや。君はあのヘルゲンを生き延びた。他の者よりは可能性があるだろう。どうかこの依頼を受けてくれないか? 報酬として……従士の地位とホワイトランで土地を買う権利を与えよう」
「……なるほど。納得がいく報酬だ」
従士とは一代限りの騎士爵のようなもので、結構な地位を持つ。
軽犯罪なら犯しても衛兵に自分が従士だと言えば見逃してくれる程だ。
「わかった。その依頼を受けよう。ただしシャルティア──彼女も同行させて欲しい」
「……まぁ、ここまで来たなら受けるでありんすが」
「……そちらの彼女は?」
「ブリーク・フォール墓地に行く際に雇った傭兵だ。魔術師でもある」
「なるほど。空を飛ぶドラゴンに対し遠距離攻撃手段である魔法は有効だろう。わかった。彼女にはそこまでの報酬は出せないが、出来る限りの物は出そう」
「感謝しんす」
「それじゃあ、イリレス。二人を連れて西の監視塔まで行ってくれ。勿論衛兵も連れてな」
そこでファレンガーが手を挙げた。
「首長。私も行きたいのですが」
「お前は駄目だ。お前は一応はドラゴン研究の第一人者なのだから危険にさらす事は出来ない。手に入れたというドラゴンストーンの解析を進めてくれ」
「畏まりました」
「では行くわよ」
イリレスのその言葉によって一行はドラゴンズリーチを出た。
三人はホワイトランの街中を走る。
イナルとイリレスは鎧を着ているがそれを感じさせない走りだ。
すぐに門の前の衛兵の兵舎に着く。
その前には既に衛兵六人が待機していた。
三人は止まるとイリレスが話し出した。
「状況を説明するわ。ドラゴンが西の監視塔を襲っているわ」
その言葉に衛兵たちがざわめいた。
「ドラゴン?」
「本当なのか?」
「事実よ。今から私たちはドラゴンを倒しに行くのよ」
「ドラゴンなんて……神話の存在だろう。倒せるのか?」
「倒すのよ。名誉にかけてね。このドラゴンがホワイトランを襲おうという時に、貴方達は何もしないつもり?」
「……そんなわけにはいかない! ノルドの誇りにかけて! 倒して見せる!」
「その意気よ。行きましょう」
そうして小隊となった彼らは門を抜け、西の監視塔に向かって走って行った。
■
昼頃。西の監視塔に着いた。
西の監視塔はホワイトランから西に向かって街道を進むと着くところだ。
その監視塔は今、燃えていた。
塔の壁の一部が崩れ、何かわからない物が燃えている。
「ここにドラゴンは居ないようね……散開して周囲を探索して。何があったか調べるわ」
「了解」
シャルティアは外の方を調べに行く。
外にあった木材が恐らくはドラゴンブレスで燃やされているのだろう。
イナルが塔の中に入った。
「駄目だ! 戻れ! ホロキとトーが逃げようとした時に捕まった!」
そう衛兵は叫んだ。
途端、竜の雄たけびが聞こえた。
「ああ、キナレス、助けてくれ。また彼がやって来た……!」
そして──大空を羽ばたきながらドラゴンがやって来た。
形としてはワイバーンに近いだろう。薄い緑の鱗に包まれた体に皮膜のついた翼である前腕。一対の角。
まごう事無きこの世界の神話に登場する怪物──ドラゴンだ。
「出たわ! すべての矢を当てるのよ!」
イリレスがそう叫び魔法を放つ。
雷系の魔法ライトニングボルトだ。
それはドラゴン──ミルムルニルに当たる。
だが、大したダメージにはならない。
シャルティアは一人冷静に考えていた。
(あれがドラゴン? ワイバーンの間違いでは? ……いや。この世界のドラゴンはこうなのか。ユグドラシルとはだいぶ違うな……さて、どうするか──
シャルティアはこっそり無詠唱化して相手のHPを見破る魔法を使う。
それによって判明したミルムルニルのHPは左程多くない。エンシェントドラゴンほどではない。
シャルティアはどうするか考える。
正直本気になって倒すのは簡単だ。だがそれをすると情報を与えすぎてしまう。
しかしなんにせよ英雄となり上の立場になるならば力を発揮することになるので遅いか早いかの違いでは──とも考える。
そうこう考えている間にミルムルニルはドラゴンブレスで衛兵二人を焼き殺していた。
ホバリングも可能という空の王者だからこその芸当だ。ゲームならば頻繁に降りてくれるだろうがここは現実。空から一方的にぶちのめす方が効率がいいのである。
「しょうがないでありんすねぇ」
シャルティアはこれ以上あれこれ考えてるとその間に全滅しそう打と思ったので
そのことに魔法を扱うイリレスが信じられない者を見る目をする。
飛行の魔法自体は約二百二十年前にはあった。だがシロディールの魔術師ギルドの解体や時の流れにより失われた。
と言っても一部のリッチやドラゴンプリースト、サイジック会の者などは空を飛んだり転移できるが。
しかし一般常識としては人は空を飛ばない。
シャルティアは空を飛びながらミルムルニルに接近する。
ミルムルニルは炎のシャウトによるドラゴンブレスでシャルティアを迎撃しようとする。
だがシャルティアは
そのまま右の翼の方まで移動し魔法を解除。
その鋭い爪で翼を斬り裂いた。
「何っ?!」
空を飛ぶのに翼を使っているドラゴンは翼を破損したら飛行に問題が生じる。
これが上位の竜などならば問題なく飛行できたかもしれないが、ミルムルニルはそこまで高位のドラゴンではない。
故に地面に墜落した。
「矢が無理なら剣だ!」
イナルがそう叫びながらミルムルニルの左翼側に回り剣で攻撃する。
他の衛兵たちも攻撃するが、一番ダメージを与えているのはイナルだ。
これはドラゴンが特定の条件を満たす存在以外からのダメージを軽減する能力を持っているのが原因だ。イナルはその特定の条件に当てはまっているのである。
「
シャルティアは空を飛びながら第一位階の攻撃魔法を放つ。
三十の光弾がミルムルニルの背中を襲う。
そのまま全身に着弾し無事だった左側の翼もぐちゃぐちゃになり、足も挫かれた。
圧倒的な大ダメージ。まともな生命なら放置するだけで死に至るだろう。
だがこの世界のドラゴンは龍神アカトシュが最初に創りだした原初の生命にして世界の支配者たる種族。この程度では死にはしない。
「バー、ジョール! ──お前たちの強さを忘れていた!」
ドラゴンが喋った事にシャルティア以外驚きつつ攻撃をする。
シャルティアは飛んでいる必要もなくなったので少し距離を取りながら地上に降りる。
イナルがミルムルニルの口内に剣をぶっさした。
そのまま舌を斬り裂き、剣を抜く。
更に首に剣をぶっ刺して、斬り裂いた。
「ドヴァーキン! 辞めろ!」
舌を裂かれたというのにミルムルニルは叫ぶも、それが最期の台詞となった。
ミルムルニルの体が力なく倒れた。
「死んだのか……?」
「やった、のか?」
シャルティアの
「……強敵だった」
イナルがそう言いながら剣を収納した瞬間、ミルムルニルの死体が発光し始めた。
その光はイナルに向かう。
イナルは驚愕しつつ逃げようとするが光の方が速い。
光がイナルの体に吸収されていく。
十秒と経たずミルムルニルの体は少しの皮や鱗を残し、巨大な標本のような骨だけを残した死体となった。
「信じられない……お前はドラゴンボーンだ!」
そこで衛兵の一人が叫んだ。
「ドラゴンボーン?」
シャルティアが疑問を口にした。
「知らないのか? かのタイパー・セプティムや聖アレッシアのようにアカトシュから祝福を受けた人間の事だ。そして……伝説のドラゴンスレイヤーでもある。ドラゴンボーンはドラゴンを殺し、その力を吸収したという。お前もそうなんだろう?」
衛兵がイナルにそう尋ねるとイナルは「確かに」と返した。
「己の内に今までにない何かを感じる……」
「やはり! 叫んでみるといい。ドラゴンボーンはシャウトを行使できるはずだ!」
「そうか……」
イナルは人気のない方を向く。
そして心の赴くままに叫んだ。
「ファス!」
不可視の衝撃波が飛び、地面の草を揺らした。
間違いなくブリーク・フォール墓地のボスが使っていたシャウトと同じ力だ。と言ってもこちらは規模は小さいが。
「やはり間違いない! お前はドラゴンボーンだ! 伝説の再来だ!」
衛兵たちが勝鬨を上げた。
こうして最初の苦難は対処された。