ずっと探していた
希望をずっと、探し求めていた
なくしてしまったら、失ったものがもう二度とてにはいらないような、そんな思いだけが残っていた
あのとき、一緒に走っていたら、あの時、俺がかわりにいたら
俺が、あいつといなかったら
目の前で失った光を目指して、二度と戻らないと分りながら歩き続けた
ただそれは、希望があるかぎり絶望しない、諦めることができない
それが本当の苦痛だったとしても、俺はただ、歩き続けた
最初に会ったのは、雨の日だった
濡れた髪に、傘すら持たない奴だった
そいつがとてつもなく心配になって、傘を貸して一緒に帰った
親がいないんだ、あいつはそう言ってた
だから、俺はあいつを支えてやりたかった
あいつは俺を信じてくれてた、捨て子だった彼を見下してたのは、俺自身が知っていた
その思いが募るにつれて、罪悪感ばかりが増えていった
許して欲しかった、あの時見捨ててしまった自分を
父の思惑に、利用してしまった自分を
今でもフェストゥムを見ると思いだしてしまう、あの時、黒いフェストゥムが飛んできた日、俺はどうして、あいつを見捨ててしまったんだろう
答えはどれだけたっても、見つからなかった
知っていた、彼が自分を嘲笑っていたことを、それでも彼は僕といてくれた、それだけで十分だった
彼は僕の親友だった
裏切られるわけなんてなかった
しかたがないことだった
だから、僕は絶望しなかった
希望があるかぎり、人は永遠に絶望できないのだから
暑い、夏の日だった
あの時、彼の父の言葉に、首を横に振れば良い話だった
だけど、人類のために、と言われてつい縦に振ってしまった
ファフナーとの戦闘により、なぜかワームスフィアを発生させず、コアのみが残ったフェストゥム、愚かな人類は、それによりプロトザルヴァトールモデルを完成させた
パイロットは、僕だった
高いシナジェティック・コード形成率、それにより、パイロットとして僕が選抜された
怖かった
接続すれば襲い掛かってくる同化現象が
誰も知らなかった
データにすら現れない、体の一部が結晶化していることが
もう消えてしまうんじゃないか
同化されてしまうんじゃないか
そう考えれば考えるほど、怖くなった
そのときにあの黒いフェストゥムが襲来した
「カズト!」
あのとき、彼が伸ばした手は、僕に届くことなく、宙を切った
『カズト、この前になにがある』
言うなれば、黒いスフィンクス型
そんなスレイブE型である僕は相棒もとい家主であるフェスとともに太平洋の空を駆けていた
『わからん、だがミールらしき反応を微弱ながら検出した』
なんなんだ…一体
『検知されているはずだ、ここで解除する、あとは泳いでいってくれ』
「むちゃくちゃだろ、ってうおっ!?」
本当に人間状態に戻るなんて、誰も思っても見ないだろうし
流れ着いたあとには砂だらけだった
「全く…」
しかしあの時は何もなかったが…今は島を確認できる
まだバレていないのか、あるいは…
『私は眠る、検知されてはまずい』
フェスが眠ることで、開放されていたフェストゥムとしての力が抑えられる
「キツイな…」
砂だらけだ、これではどうしようもないな
とりあえず近くの山へ入り、寝ることにした
木の上で目を覚ますと、明るく太陽が光っていた
静かだ
あまりにも、静かすぎる
痛い
頭がいたい
「なんだ、この感覚は…!」
警報が鳴り響く中、脳を直接弄られるような感覚が、僕を包んでいた
「クソ…こっちか…?」
「も…お……さ…!!」
バリン、と割れた音がしたあとに、風が吹き荒れる
飛んでくる木が、目の前の女の子たちを襲う
「起きろ、フェス!シールドを出せ!」
『シールド展開!』
右手を強くだし、黒いエネルギーが現れる
『展開終了』
何なんだよ一体…
「あなた何者!?」
彼女が僕の腕を引っ張り地面に組み伏せる
「待て待て待て待て待て!」
『はぁ…どうする?』
なにもしなくていい!面倒になるって!
『分かった』
「全くなんでこんなことに…」
「なんか言った!?」
「なんにも言ってないから離せって!」
おとなしそうな女の子が活気そうな女の子の腕を握る
「大丈夫、彼は私と同じ」
「ど、どういうこと?」
「どうしよう…島が占領されちゃった…」
違和感の原因が小さい方だと知り、気がついたら違和感は消えていた
突然拘束してきた彼女の名前は芹というらしく、乱暴なことをしてすまない、と謝罪してくれた
人類軍、ファフナー
知らないわけではない
ファフナーはフェストゥムに対抗するための兵器
人類軍…何度か会話を試みたが、どいつもこいつも攻撃してくるし…
『一刀、彼女が私達に干渉していたようだ』
だろうね、多分僕たちを呼んでた、でもなんでだ
何が目的なんだ
暗くなった道を、三人で歩く
「もーなんでこんなときにみんなとはぐれちゃうのー?」
「知らないよ…」
「…」
先頭を歩くのは芹、次に僕、そしてチビ
突然後ろから殴られた、不服だ
「…なにか変なこと考えてた」
「分りもしないくせに叩くなよ…」
「ウソツキ」
全部読まれてる気がする、なんでだ
突如、地面からでかい筒のようなものが出てくる
「二人はシェルターに向かって」
「君はどうするんだ」
「早く、芹ちゃん、一刀」
なんで俺の名前を
「なんで私の名前を?」
「私の名前は乙姫、皆城乙姫 お願いしたいことがあるの、わたしと、友達になってほしいの」
「なにそれ?友達ならもういるでしょ、ここに二人!」
「ちょっとまって、僕は」
突如、頭部に被弾
「友達でしょ?」
「はい…」
不服だ
突然扉が閉まり始める
「また会おうね、絶対だよ」
エレベーターが下に降りる音だけが、ただ続いていた