隣に越してきた心の声ダダ洩れ系美少女が、毎日毒入りの手料理を振舞ってくる件   作:なっくる@2作品書籍化

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第2話 襲い来る命の危機を耐えよう

「じゃ~ん、どうぞっ!」

 

 リゾットを温め終え、エプロンを外した望月さんと同じテーブルに着く。

 

「彩りを工夫してみたんですけど、どうですか?」

 

 目の前のお皿には、たっぷりのリゾットが盛りつけられている。

 ハーブの緑と、とろりとしたホワイトチーズが目にも鮮やかだ。

(※シュウ酸カルシウムの顆粒入り)

 

「絶対美味しいと思うんです♪」

 

 キラキラとした赤い瞳(多分カラコン)が、蛍光灯の光を受けて輝く。

 

「確かに、()()()凄くいい匂いだね」

 

「やった♪」

 

 無邪気に喜ぶ望月さんはとても可愛い。

 ……先ほどは彼女を毒盛り料理研究系女子高生と紹介したけど、彼女は本気で僕を毒殺しようとしている訳じゃない(多分)。

 

「へへ、涼くんの鼻をごまかせたという事は、『本番』でも上手くいきそうですね!」

 

(望月さん! また心の声が漏れてるよ!!)

 

 彼女の目的は、とある敵《かたき》に毒入り料理を食べさせ復讐を遂げる事……らしい。

 

「いろんな復讐料理を試せて、本当に涼くんがいて助かっちゃうな♪」

 

 心の声が駄々洩れな、復讐系女子高生望月さん。

 

(だから漏れてるってえええええっ)

 

 こんな心の声が駄々洩れな彼女が、無事復讐を遂げられるとはとても思えなく……。

 

 彼女が思いとどまってくれるまで毎夜の毒入り激マズ料理を耐えるのが、僕の最優先クエスト。

 ちなみに、彼女はこの事に全く気付いていない。

 

「ふふふ」

 

 テーブルに肘をつき、こちらを見ては楽しそうに笑う望月さん。可愛い。

 ふわり、とシャンプーのいい香りが僕の鼻をくすぐった。

 多少(?)胃腸にダメージを食らおうが、この笑顔を見ているとすべてを許したくなる。

 

「……ところで望月さん、このめったやたらに主張してくるコレは?」

 

 ……とはいえ、今から自分が食べる食材の確認は大事である。

 リゾットの上にででんと乗っている大きなきのこを指さす。

 マ○オのパワーアップきのこみたいな色をしている、と言えば伝わるだろうか。

 

「もうっ、ひよりって呼んでくださいね」

 

 少しだけ頬を膨らませたもち……ひよりさんはスマホを手に解説を始める。

 

「えっと。ネットで見つけた親切な方から分けてもらいまして」

「少々()()が強いのですが、とってもうま味が強くて滋養強壮に効くきのこだそうです!」

 

 彼女が手にしたスマホには、『親切なひと』とやらが運営するサイトの画面が映っている。

 サイケデリックな色遣いで「マジッ○マッ○ュルーム」と書かれているのは見なかったことにしよう。

 

(どう見てもベニテンだし……)

 

 キングオブ毒きのこの呼び名もあるベニテン○タケ。

 どう考えてもきのこのリゾットに入れちゃダメな食材だ。

 

「……念のため聞くけど、ちゃんと下処理した?」

 

「はいっ! 涼くんが言っていた通り、ちゃんと3回茹でこぼしをしましたし、ひと晩流水に晒しています」

 

(よしっ!)

 

 心の中で、ぐっとガッツポーズ。

 調理は決して下手ではないが、料理や食材に関する知識が壊滅気味のひよりさん。

『アドバイス』の体でさりげなく毒抜きをさせ、味を整えてもらう。僕がこの二週間で編み出した生存戦略だ。

 

「こうするときのこが綺麗になるだけじゃなく、うま味が凝縮されるんだよ」

 

「確かに、せっかくのきのこ料理に砂が混じっていたらダメですもんね。さすが涼くん…………まず相手を信頼させる。そうしないと本命の必殺料理を食べてくれませんし」

 

「ははは(必殺料理って何かな!?)」

 

 乾いた笑しか出ない……が、この素直さが彼女の魅力でもある。

 

()()()、復讐者になんかさせない)

 

 ひよりさんの笑顔にもう一度誓い、スプーンを手に取る。

 このスプーンは銀製。ヒ素などのマジで激ヤバ物質が料理に含まれていた場合、変色して知らせてくれる。

 さすがに一介の女子高生(多分)であるひよりさんが、マジの毒物を手に入れることはないと思っているけど念のためだ。

 

「やっぱり、ひよりさんは食べないんだね?」

 

「はいっ! 美味しそうに食べる涼くんを見てるだけで、お腹いっぱいになっちゃいますから」

 

 俺の正面に座るひよりさんの前には、バゲットとバターしかない。

 

「わたしはお茶を飲んでいますね」

 

 バゲットの隣に置いた水筒を撫でるひよりさん。

 だが僕は知っている。水筒に入っているのは気付けの強心剤と解毒薬。

 いざというときに備えてくれているのだ。

 

「どきどき。じっくりたっぷり味わってくださいね。おかわりもありますよ?」

 

 それは勘弁してください。

 ガチで昇天してしまいます。

 

「では、いただきます」

 

 僕は震える手でスプーンを取り、きのこリゾットを掬う。

 

「じ~っ」

 

 ひよりさんの視線が痛いので、ベニテンもたっぷりのせる。

 

(ままよ!)

 

 意を決し、ベニテンエキスたっぷりのリゾットを口に運ぶ。

 

 ぱくり

 

(うおおおおおおおおっ!?)

 

 毒由来の強烈なうまみが脳天を衝いた後、ボディブローのような刺激が内臓をぶん殴ってくる。

 何を隠そう僕は昔から特異体質で、毒の分解が異様に速い(反動も凄いが)。

 

 バチバチバチバチ

 

 油断したとたん、シュウ酸カルシウムの刺激が口内を襲う。

 

「お、美味しいよ?」

 

 大丈夫。

 胃腸の強さには自信があるし、常人の数倍の麻酔を打っても効かない男だ。

 この程度、平気だよ!

(※絶対真似しないでください。涼太郎からのお願いです)

 

「いや~、ひよりさんの言う通り、この刺激がクセになるなぁ(滝汗)!」

 

 ぱくぱくぱくぱく

 

 心を無にして、きのこリゾットを口に運び続ける。

 毒があるとはいえ、味は悪くない……むしろ美味い。昨日のガチマズ料理に比べれば全然食べられる。

 

「……ふむふむ。うま味を増せば、量を食べさせられると。一つ発見です」

 

(だから内心出てるってぇ!)

 

 何で僕とひよりさんがこんな歪んだ(?)関係になったのか。

 話は二週間前にさかのぼる。

 

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