パエトーンと出会って以降、色々な依頼を受けた。
依頼主はホワイトスター学会、H.A.N.D、新エリー都市政、TOPS財政ユニオン、ホロウ調査協会などなど多岐に渡った。
意外だったのがTOPSからの依頼で、内容があまりにも真っ当な内容だったので、騙して悪いが消えてもらうってされるかと思ったが、とてもまともな依頼主だった。
どうやらTOPSも一枚岩では無いらしい。
外道の極みみたいな輩も居れば、新エリー都の為に尽力する人も居る。
特にエーテル研究を生業にしてる…タイムフィールド家だったか、あそこのご当主はTOPSに繋がりのある人間とは思えないほどの善人だった。
TOPSは良くも悪くも功績至上主義って感じであって、決して悪だけではないと知れたのはホロウレイダーになったお陰だな。
治安局にいるだけじゃ見えてこないことも多かったってことか。
『マスター、依頼が届いています。確認しますか?』
「ん?おお、家に帰ったら確認するよ。後はエンゾウさんのところに届け物をするだけだ。」
夕暮れの六分街。今日もホロウ内での依頼を終え、帰宅の路につく。
俺もだいぶ六分街に馴染んできたんじゃなかろうか。
そう言えば、メリュジーヌがチョップ大将の所の錦鯉で新作ラーメンを食いたいって言ってたな。
毎日ラーメンじゃ困るが、偶には良いか。
丁度錦鯉の目の前を通るし、チョップ大将に声を掛けておこう。
「大将ー!この後メリュジーヌと来るからー!新作ラーメンと醤油ラーメン頼むわー!」
「おーう!ノワールか!お嬢ちゃんも来るなら大歓迎だ!」
メリュジーヌも最初は部屋から出たがらなかったが、今では六分街に繰り出して色々な人と交流しているらしい。
六分街の人達は皆優しいからな、メリュジーヌにとっても住みやすい環境なのは良いことだ。
「ただいま。メリュジーヌ、大将の所でラーメン食いに行くぞー。」
「おかえりー。すぐに準備するねー。」
玄関入ってから声を掛けると奥からメリュジーヌの声が聞こえてきた。
何やらゴソゴソしているようだが、何してるんだ?
「じゃじゃーん!見て見て!この服新しく買ったんだ!」
そう言って玄関に小走りで来たメリュジーヌは純白のサマーワンピースを着ていた。
手触りの良さそうな上質な生地のスカートには花の刺繍が施され、肩と背中を大胆に露出した良いデザインだ。
思わず見惚れてしまった。
「似合ってるな。超似合ってるんだが……。」
「ん〜?なになに?見惚れちゃった?」
見惚れたのは事実だが、素直に認めるのも癪なので苦言を呈するとしよう。
「ラーメン食べに行くのにその服で大丈夫か?」
「あっ…。だ、大丈夫!零さなきゃいいだけだから大丈夫!」
「その服良い生地だろ?クリーニング代は高くつくぞ〜?」
メリュジーヌは最近六分街の店舗でアルバイトを幾つか掛け持ちしているみたいだ。
ランダムプレイとかゲームセンターとか。
基本的に生活費は俺の収入から出しているが、流石にお小遣いは自分で稼ぐことにしたようだ。
「う〜!いいじゃん!折角のデートなんだから可愛いって思って貰えるような服で行きたいじゃん!」
ラーメン食いに行くのがデートに該当するのかは分からないが、まぁ、
「分かったよ。俺も可愛いメリュジーヌを連れて歩けるのは嬉しい。その服で行こう。」
「えへへ…。じゃあ行こう!」
結局、新作ラーメンは豚骨マシマシ背脂カレーラーメンと言う、服に汚れを飛び散らせる為に生まれたようなラーメンで、見事メリュジーヌは啜った麺からスープを飛び散らせ、家で服を手揉み洗いする羽目になった。
ちなみに服を手揉み洗いしたのは俺である。
手揉み洗いする様子を後ろからじっと見ていたメリュジーヌは、やたらとお湯だけで洗うよう指示してきた。
1時間掛けてやっと汚れが落ちたサマーワンピースを手に取ったメリュジーヌはやたらと服の匂いを嗅いでいた。
「カレーの匂いが残っているのか?だから洗剤を使うかって聞いたのに…。」
「大丈夫。スゥー、カレーの匂いは、落ちてるよ、ハァ〜。」
「?そうか、なら良いんだが。」
メリュジーヌは何だか嬉しそうにサマーワンピースを寝室に干しに行った。
洗濯機には入れないのか?まぁいいか。
結構汗かいたな。冷やした炭酸ジュースでも飲むか。
冷蔵庫から炭酸ジュースを飲みながらリビングに設置したPCを開き、インターノットで依頼を確認するとハイペリオンが言っていた通り、幾つか依頼が来ていた。
その中で目を引いたのが、タイムフィールド家当主ライオネル・タイムフィールドからの極秘依頼だった。
極秘依頼…?至急連絡求む…?
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『ありがとう、ノワールくん。連絡をくれて助かったよ。』
「貴方が至急連絡求むだなんて何事かと思いましてね。」
内容は電話で直接伝えたいとの事だったので、ハイペリオンに通信の秘匿暗号化をお願いし、すぐに電話した。
『今回の依頼は極秘の物だ。報酬についてはタイムフィールド家からではなく、私のポケットマネーから出すことになるが、構わないかね?』
「勿論です。お金の出処なんかは特に気にしませんよ。」
ライオネル氏の声色はいつになく強ばっている。
『ありがとう。実は衛非地区にあるポーセルメックスの研究所へ視察に行くんだが、どうにもきな臭い噂が絶えなくてね。万が一の為に護衛として着いてきて欲しいんだ。』
「護衛ですか。タイムフィールド家はあくまで視察と言う名目で研究所に行くので、手勢を多くすると警戒されかねないって所ですね。」
『察しが良くて助かるよ。私が知る中で最も優秀なホロウレイダーである君にしか頼めない。』
「それは買い被り過ぎですよ。数回依頼をこなしただけじゃないですか。」
『普通は同じホロウレイダーに何度も依頼は頼まないものだよ。こちらの情報が他所にリークされる可能性もあるからね。その点君は実力、人柄共に信頼できる。うちの爺やも君と手合わせしたいと言っていたよ。』
…タイムフィールド家の執事か。それなりに高齢だったが、その身に秘めた剣気…とでも言えばいいか、名剣が鞘に収まっている感じがした。
鞘に収められてなお、その鋭さが知覚できた。
…良い修行になりそうだ。
「そうですね、機会があれば是非にとお伝えください。そして今回の依頼、謹んでお受けします。」
『ありがとう。そんなに畏まらなくてもいいのだがね。』
「敬意を向けるべき相手であると思っているからですよ。」
『ちなみに視察には私の愛娘も来るので、宜しく頼むよ。』
「えぇ....(困惑)」
危険な視察に愛娘を連れて行くんかい。
まぁ、その方が疑っていない証左にもなるから合理的ではあるのかも……?
『なんとアリスは既にエーテル研究の論文を幾つも読み込んでいてね!最近になってからは自分で論文を作るだと張り切っているものだから是非研究所の見学をさせてあげたいというかアリスから研究所の見学をさせて欲しいと言われたものだからついつい張り切って視察の日程を纏めて…(以下略』
単に親バカなだけかもしれない……。