六分街での挨拶回りも無事に済んだ。
意外とエデはみんなから好印象だった。
まぁ、いいとこのお嬢様だし相手に好印象を持たせる所作を身に付けていてもおかしくない。
「ところであのアパートの大家とか他の住民はどうしたんだ?」
「勿論合意の上で退去して貰ったわ。次の住居もきっちり紹介済みよ。大家からは建物と土地の両方買わせて貰ったけど、私のポケットマネーで十分買えたわ。」
「成程、札束でビンタって訳か。」
「失礼ね、私が札束でビンタしたら札束がちぎれるわ。」
さて、ふざけ合ってはいるが挨拶回りは終わった。
そう終わってしまったのだ。
この後捕食されるであろう運命を回避すべく、話し合いで模索してみよう。
「しかしあれだな、六分街にラブホとかあったか?ルミナススクエアならいざ知らず、こんなにところにあるとは思えないんだが?」
ルミナススクエアまでは車じゃないと移動がきつい距離だ。
距離を理由にどうにか回避できないか…!
「あら、私が調べたところ、駅地下のスペースに新しくオープンしたらしいわ。」
oh......。
「メ、メヌを一人で残していくのは流石に可哀想だろ?声掛けないと……。」
「………えぇっと……。貴方は…そういうのがお好み…?1人ずつよりも2人まとめて…?確かに…あの子も私もベットの上では散々泣かさ「だぁ!ちっがーう!そういうことをこんな街中で言うんじゃありません!!」
なんて事を街中で発言するのこのお嬢様は!?
いかん…顔を真っ赤にしてるエデと腕を組んで歩いている俺に周囲からの目線が突き刺さるぅ…。
「てか、ラブホは辞めよう。主に外聞的な意味で。」
「??ラブホと言うのは男女のまぐわいの為の場所と聞いたのだけど…。」
「間違っては居ないけど……あーラブホってのはな、主に有名人とかがお忍びで愛人や不倫相手とそういうことをする為に使用することがある。」
「なるほど。」
なんで世間知らずのご令嬢にラブホの解説しなきゃいけないんですかねぇ…?
娘のことを頼むってそういう事ですかジークバルトさん?
世間一般常識を教えろと?
「そしてエデは名高きカールミンロート家の次期当主だ。次期当主が男にうつつを抜かしている、なんてスキャンダルをラブホに張り付いている記者にすっぱ抜かれる可能性がある。」
「ふむふむ。」
「そんなことになったらジークバルトさんに顔向けできない。なのでラブホはなしだ。」
「そういう事ね。確かにお父様に迷惑をかけるのは本望ではないわ。」
良かった…運命を変えることができた…。
エデが何やらキョロキョロと周りを見渡し、何か見つけたようだ。
視線の先には六分街屈指の高級料理店。
エデが歩いて行き、そこの店員に声を掛けるとその店員はあわくったように店内に戻って行った。
数秒後に店のオーナーと思しき中年男性がやたら低姿勢で出てきた。
そのまま中年男性はエデと話し、いそいそと店に戻って行く。
何この既視感。
「何かあったのか?」
「えぇ、ここはカールミンロート家が出資している宿泊可能な料理店なの。本来なら数ヶ月単前から予約が必要なのだけれど、お父様の名前を出したらすぐに入れてくれるそうだわ。」
「へぇー凄いな、どんな料理か楽しみだ。」
高級料理店なんて今まで縁が無かったからな。
再び腕を組んできたエデと共に店に入ると、先程のオーナーと思しき男性が深々とお辞儀をしていた。
エデは軽く会釈すると、1階の食事スペースに行かずそのまま2階へ上がろうとした。
「あれ?料理は?」
「今回利用するのは宿泊施設だけよ?」
「?宿…泊…?」
「そうよ。何かあればこの店で名前を出すようにと、お父様から言われていたのよ。」
……ご飯を食べる為に入った訳ではない?
「料理は後でメヌも呼んで一緒に食べましょう。今はこっちよ。」
連れらてきた2階はちょっとしたリゾートホテル並みのスウィートルームだった。
シャワー室完備でベットはキングサイズだ。
「ここならご休憩?しても問題ないでしょ?」
そう言ってエデがベットに押し倒してきた。
頬が紅潮した彼女は艶やかな笑みを浮かべている。
あ、これ詰みだわ。
「リベンジマッチよ。あの日は完全に油断していたけど、今日はそんな慢心しないわ。最後まで搾り取ってあげる…!」
「……そこまで言うなら受けて立とう…!」
こっちの獣性(意味深)も我慢の限界だ…!
腕を組んで歩いている時にやたらと胸を押し付けやがって……そっちがその気なら手加減は不要だな…?
馬乗りになっていたエデの体勢を崩し、上下を入れ替える。
上から覆いかぶされたエデは挑発的な笑みを浮かべながら、ワンピースのボタンを外し、黒い下着に包まれた豊かな胸をさらけ出すとともに、スカートの裾を持ち上げ、程良く引き締まった太ももを見せつけてくる。
「言っておくけど、貴方がチャレンジャーよ。慢心無しの私に勝てるかしら?」
「ふっ、お前なんかまな板の上の魚だろうに。後はどう調理かだけだ。」
この愛らしく生意気なお嬢様を分からせるとしよう。
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ふぅー、運動後のシャワーは気持ちが良いなぁ。
「エデー、お前もシャワー浴びとけよー。」
「…ちょっと待ってくれるかしら…。足腰に力が入らないのだけど……。」
ベットの上でシーツに包まってるエデから普段とは違う弱々しい声が聞こえてきた。
まぁ、万全の状態なら基本負けないよな。
負けると分かっててエデから煽ってきたし、実はMなのだろうか?
バスタオルで粗方身体を拭き終わったのでベットの方に行くと、エデは悔しさを滲ませつつも満足そうな顔をしていた。
「手伝おうか?」
「…少しだけ…。」
ふむ、ならお姫様抱っこだな!
包まってるシーツごとエデを抱き上げた。
その豊満な肢体はあの馬鹿力を発揮するとは思えないほどに柔らかい。
「きゃっ!なっなんのつもり!?」
「足腰に力が入らないんだろ?ならこうやって運んだ方が早い。」
「くっ、屈辱ですわ…!シャワーくらい自分で浴びれます!」
「それ以上暴れるなら浴室で第二回戦始めるぞ?」
「上等ですわ!」
お?言ったなぁ…。
エデからシーツを剥ぎ取り、浴室に運び込む。
「……………。」
顔を真っ赤にして睨み付けてくるが、どこか期待するような眼差しをしている。
「冗談だ。そろそろ時間が押してきてるからな、シャワーかけるぞー。シャンプーとコンディショナーは据え置きのやつで良いのか?」
「………それでいいですわ……ついでに尻尾のトリートメントもお願いしても?」
「良いぞ。」
エデの頭と尻尾を洗い終わり、ベットに腰掛けたエデの髪の毛をドライヤーで乾かしていた時だった。
『着信。メヌからです。』
ハイペリオンから通知を受け、電話に出ると
『いまゲーセンのアルバイト終わったんだけど、どこにいるの〜?』
『六分街で一番高い高級料理店。エデが一緒に飯でもどうかって言ってる。』
『分かった、そっちに行くね。てかさっきからなんの音してるの?』
「ドライヤーですわ。今髪の毛を乾かして貰っているところ。次は尻尾も乾かして貰いますわ。」
『え?ちょ』
エデが強引に通話を終了させてしまった。
「今貴方の隣にいるのは私よ?私に全神経を注ぐのが礼儀ではなくって?」
「分かったよ。しっかし、2人とも存外似た者同士なんだな。」
「……そういう評価をされるのは些か心外だわ。」
尻尾は櫛で梳きながら、ドライヤーで乾かしていく。
この櫛にトリートメントを染み込ませておくと、尻尾全体にムラなく広げることができて、毛並みがより艶やかになる。
「こんな風に世話を焼いてもらうのも、悪くないわね……。」
「そうか?そりゃ良かった。」
シリオンは信頼した人にしか尻尾の手入れを任せないと言うし、それだけ信頼されている証…なんだろうか。
エデは常識知らずなところもあるから、なんとも言えないな。
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「現在当店は貸切でして、他のお客様の立ち入りはご遠慮頂いております。」
「そんなぁぁ!?」
店の前で崩れ落ちるメリュジーヌであった。