「それでは作戦内容を説明する!一字一句聞き漏らすな。
TOPSは指定有害思想宗教組織ホロウ・サンクチュアリのインフラ拠点を襲撃することを決定した。連中が泣いて詫びる程の損害を与えてやることが目的だ。我がロートヴァッフェ部隊からはW4(ヴァッフェフィア)ヴォルテックスとW5(ヴァッフェフェンフ)イグアイン、2名の役立たずが出撃する。お前はこの2名のお世話係だ。コールサインについては先日貸与したラッキーナンバーW13(ヴァッフェドライツェン)だ。説明については以上だ。では準備を始めろ!愉快な遠足の始まりだ!」
指定有害思想宗教組織ホロウ・サンクチュアリとは、「人はホロウで生まれ、ホロウで死ぬべきである。ホロウとは人類に残された最後の聖域である。」というイカれた思想を基盤に持つ宗教組織だ。
その歴史を紐解けば100年位まで遡ることができるらしい。
奴らは未成年やお年寄り、挙句の果てには妊婦をホロウへと拉致監禁し、ホロウ内での生活を強いた事件は治安局内でも記録が残されている。
旧都陥落直後の混乱に乗じて計100名の一般人を零号ホロウ内へ拉致、3日後に治安局と防衛軍、H.A.N.Dの合同救出作戦が決行されたが作戦は1週間にも及び、救出されたのは子供と新生児の2名のみだった。
残りの98名はエーテリアス化もしくは儀式の生贄にされたとされている。
儀式の内容は常人が正気を失うほどの残虐非道、凄惨極まるものだったらしい。
当時の指導者とその側近は全て逮捕され、既に極刑が判決で言い渡されているが、生き残った派閥が後継者を擁立し、現在も宗教団体として活動している。
表向きはホロウについての知見を深めようっていうサークル活動じみたことをしているみたいだが……どうやらTOPSの逆鱗に触れたらしいな。
治安局を介さず直接ジーク総長(そう呼べと言われた)の部隊を動かすあたり、内々で処理したがってるのが丸分かりで実にきな臭い。
さて、本来であればロートヴァッフェ部隊の訓練に参加する予定だったのだが、急遽出撃要請が掛かり部隊訓練は中止となり、代わりに当襲撃作戦に後詰めとして参加しろ、とのことだった。
襲撃拠点はラマニアンホロウ内にあるので当然プロキシが必要になり、こちらから優秀なプロキシを紹介した。
そう、我らがパエトーンである。
現在カールミンロート家の本邸にあるロートヴァッフェ部隊の指揮所において、アキラが接続?しているボンプのイアスと共にブリーフィングに参加している。
『これが…噂に聞くTOPSのロートヴァッフェ部隊…。それを率いるジークバルト・カールミンロートか…。』
「威圧感は凄いが、良い人だぞ?」
『そうなのかい?…しかし唯の宗教組織にここまでするものなのか…?』
「それが唯の宗教組織じゃなくてだな。ホロウ内だとエーテリアスの襲撃があるだろ?なもんであいつらはガチガチに武装してるし、こっちに銃口を向けることを厭わない連中だ。」
『宗教とは度が過ぎれば精神的な麻薬になるってことか。』
「そういうことだ。」
アキラと話していると、男2人が近づいてきた。
迷彩服のジャケットを着た2人がどうやら今作戦に参加するみたいだな。
片方は細身でもう片方は体格がでかいな。
「っけ、最優だがなんだが知らねぇが、所詮はホロウレイダー、野良犬だろ?」
「ジークも過保護なもんだ。」
第一声がそれとは……チンピラみたいな見た目に違わずとんがってるねぇ。
「ノワールだ。こっちはプロキシのパエトーン。しかしあれだな、自己紹介もできないとはジーク総長の顔に泥を塗るつもりか?彼の鉄拳制裁を受けてくるといいんじゃないか?」
「アァ!?」
細身の方が威圧しながら胸ぐらを掴もうとしてくるが…動きが素人過ぎる。
伸ばしてきた右手の小指側を上から掴み、そのまま180度時計回りに回してやると面白いように腕の関節が極まった。
そのまま姿勢を崩して床に倒れ込んで貰おう。
「ぐっ!て、てめえ何しやがる!!」
「なんだ、この程度は挨拶替わりだろ?それともチンピラ風情には挨拶も難しいか?」
「イグアイン、そこまでにしとけって。そっちのあんちゃんよぉ。こっちが悪かった、だからその手を離してやってくれないか?」
細身の方がイグアインってことは、でけえ方がヴォルテックスか。
こっちの方がまだ話が通じそうだ。
「あんたの方が話が通じそうだ、宜しく頼む。」
「あぁ、宜しく頼む。俺はヴォルテックスだ…手を離してもらっても?」
「クソッ…!立てねぇ……!」
「うん?こっちには雇ったプロキシが居てな、そっちに危害が及ぶと困るんでね。この狂犬のリードをしっかり握ってくれるんなら手を離すよ。」
「分かった分かった。イグアイン、いいな!?手ぇ出すなよ!?」
「クソが…野良犬の分際でぇ……あがががが!分かった!手は出さねぇっ!!」
分かってくれたようで何よりだ。
やっぱ獣には鞭での調教が一番効果ある、はっきり分かんだね。
騒ぎを聞きつけたのか、ジーク総長がズカズカと歩いてきた。
「どうした!ほう、早速親交を温めていたようだな!」
「勿論です、総長殿。貴殿の部隊の若者は活きがいいですね。」
「なに、活きがいいだけの役立たずだ。現場で存分にしごいてやってくれ。」
「歩く地獄と謳われた総長にそう頼まれては、此方も全力でしごかねば無作法というもの。お任せください。」
「頼んだぞ。…此方がお前の雇ったプロキシか?」
ジーク総長がイアスに気付いたようだ。
しゃがんでイアスに目線を合わせている。
『パエトーンです。宜しくお願いします。』
「ロートヴァッフェ部隊総長、ジークバルト・カールミンロートだ。うちの部隊の奴らを頼むぞ、パエトーン。」
『りょ、了解であります!』
ビビりながらも敬礼するイアスに微笑ましいものを感じるね。
「じゃあ、案内を頼むよ。パエトーン。」
『勿論さ、ノワールさん。任せてくれ。』
作戦行動、開始だ。