パエトーンの案内によって辿り着いたのは、大型商業施設の廃墟だった。
情報によると、ここには通信設備と小型の発電施設、更には武器庫まであるらしい。
なんでホロウ内に身を潜めている奴らの拠点について詳細な情報を入手できているのか…謎だな。
「ここが拠点か…。敵勢力の配置は見えるか?」
「今確認中だ……外周にSMG(サブマシンガン)5、AR(アサルトライフル)10、…おいおい、ランチャーとグレネードも居るぞ…数は合わせて6。まるで軍事施設じゃねえか…。」
望遠装備で覗いているヴォルテックスとイグアインはホロウ内活動用強化装甲…パワードスーツを装着している。
イグアインはマシンガンとリニアライフル、携行用のミサイルポッドとシールドという意外にも堅実な装備だった。
ヴォルテックスはグレネードランチャー、ショットガン、ミサイルポッド、二連装グレネードキャノンとかなりの重兵装型だ。
しかも脚部にキャタピラを展開できるようで、自走砲としても活躍できそうだ。
どちらの装甲も生半可な銃弾では掠り傷しか与えられないだろうし、余程のことが無ければ問題なく制圧できるだろう。
「さて、どう制圧する?俺はお前達が制圧できなかった時の尻拭い要員だ、自由にやっていいぞ。」
「はっ、てめえは来ねえのかよ、ビビってんのか?」
「煽るなイグアイン。また立てなくされるぞ。」
「まったく、遠足の引率は楽じゃないな。それじゃあ制限時間を設定しよう。30分で制圧してこい、よーいスタート。」
「「はぁっ!?」」
開始の合図として両手でパンッと叩くと2人は慌ててブースターを吹かして向かっていった。
『30分過ぎたら俺も出るからな〜。それまでに制圧できなかったら、ジーク総長に地獄の特訓メニューを追加して貰おう。』
『てめぇこの野良犬ぅ!覚えてやがれ!』
『地獄の特訓メニューなんてもうごめんだぜ…!』
耳に着けた通信機ではっぱをかけてやると、ますますやる気を出してくれたな、これで良し!
『良いのかい?あの二人だけで向かわせて。』
「あいつらも紛いなりにもジーク総長のしごきを受けてなお部隊に居る。そう心配する必要はないさ。」
アキラは心配しているが、まぁ大丈夫だろう。
「ハイペリオン、兵装の準備を。刀とワイヤーロープ、それと櫻華(おうか)も。」
『了解ですマスター。…各種兵装のローディング完了。何時でも行けます。』
ハイペさんからの要望によりパイルバンカーに付けた名前は櫻華。
文字通り相手を散りゆく桜の花のように爆散させるので、こう命名した。
武器の名前から性能や特徴を知られないように結構捻って考えたんだが、メヌとエデからはネーミングセンスが14歳位と言われてしまった、解せぬ。
『センサーに感あり。どうやら敵勢力に反乱軍の自立戦術ユニットがいるようです。W5及びW4が交戦を開始。』
「反乱軍の自立戦術ユニット……?」
なんだってそんな物騒なものがこんな所に?
……雲行きが怪しくなってきたな。
「ハイペリオン。センサーの感知範囲を拡大。他の高エネルギー反応を探ってくれ。」
『了解。……発見。W5及びW4の交戦位置に高速で接近する高エネルギー反応が接近中。他の自立戦術ユニットのおよそ3倍のエネルギー反応です。』
「了解。予定変更だ、俺も出る。パエトーンはここで待機だ。」
『そんなに強い相手なのかい?』
「あの二人が相手するにはちょっと厳しいかもな。」
ワイヤーロープを射出し、廃墟の中をスイングして移動していく。
交戦エリアに近くと銃撃音や爆発音が聞こえてきたな。
良し、まだ生きてる。
交戦エリア付近に自立戦術ユニットの残骸が転がっているから、こいつを片付けた後に件の機体に襲撃された感じか。
通信機の方からもイグアインとヴォルテックスの声が聞こえてくる。
『クソッ!なんだこいつの装甲は!?まるで効いてねぇぞ!?』
『イグアイン下がれ!もうシールドが限界だろ!?』
満身創痍だが、思ったより元気そうだな。
相手の機体は……何だこれ?自立戦術ユニットが三体無理やり融合させられた様な歪な見た目だ。
四脚の上に上半身だけ載ってるような…アラクネ?のような見た目だ。
両腕のガトリング、両肩のミサイルポッドがメイン武装か。
所々に侵食の痕跡が見受けられるし、侵食によって半ばエーテリアス化してるなこれ。
これなら玄冬を解禁しても良さそうだ。
「ハイペリオン、玄冬抜刀。」
『了解です、マスター。存分に振るってください。』
右腰に構築された刀を抜刀し、ワイヤーロープで機体の真上に飛ぶ。
そのまま落下する速度を刀に乗せて機体を真っ二つに両断した。
『おーい、2人とも無事か?』
『『………………。』』
2人とも絶句しているな。
…ふむ?
『高エネルギー反応検知。対象、再生します。』
切り捨てた機体が泥々になり、元の形に戻ろうとしている。
納刀していた刀を居合に構え、神速の抜刀を大量に浴びせた。
形を成そうとしていた泥が細かく切り刻まれて飛散したが、しつこく形を形成しようとアメーバ状になっている。
切ってもキリが無いなら消し飛ばすか。
『櫻華装填完了。』
左腕の義手が変形し、生成された杭を泥々になった機体に突き刺した瞬間、轟音と共に弾け飛んだ。
塵になれば流石に再生はできなかったみたいだな。
『………てめぇ!余計なお世話だ!俺達だけで…!』
「やれたと思うか?ヴォルテックスはどうだ?」
相変わらずイグアインは突っかかってくるな。
自分の実力をちゃんと理解してるのかこいつ?
『……無理…だな。俺達だけじゃ火力が足りなかったし、あんな再生能力があっちゃ倒せない。』
『おいヴォルテックス!弱気になってんじゃねぇ!』
「どうやら冷静に戦力分析ができていないようだな?それができないと仲間を危険に晒す事になるぞ。今回のようにな。」
『うるせぇ!ホロウレイダーの分際で俺に指図すんな!ぐっ!?』
余りにもうるさいので、つい首を絞めて持ち上げてしまった。
強化装甲とは言っても首周りは薄いからな、素手で十分な圧迫感を与えられる。
「よく聞けよ狂犬。お前が誰に逆らおうと勝手だが、お前のその実力を弁えない行動が味方の命を危機に晒すことになると認識しろ。」
『俺の…実力が…足りてないだと…!?』
「そうだ、お前は弱い。あの程度に苦戦するようじゃ駄目だ。」
『あれは装備の…火力が無いだけだ!』
中々強情だなこいつ。
頑なに自分の実力を認めようとしない。
「装備を言い訳にするのは三流以下だぞ、イグアイン。あの機体は侵食によって無理やり融合した機体だ。つまり外表は硬くても、内側のバランスは非常に不安定だ。必要なのは火力じゃなくて相手の体勢を崩す質量だ。」
『…何?質量?』
「そうだ。あいつの脚に体当たりでもかませば、一気に体勢を崩せただろうよ。そうすればヴォルテックスの火力でそれなりに削れただろう。体勢を崩せば装甲の合間にあった侵食痕に気付けたはずだ。そこを狙えばお前の武装でも勝てる。」
『………………。』
「ぶっちゃけ言えばお前達二人でも勝てた可能性はある。だがそれはイグアイン、お前が自分の実力を100%出し切って初めて見えてくる勝利だ。」
『…勝てたのか、俺達は…?』
「あぁそうだ。ジーク総長のしごきに耐えてるんだろ?なら十分素質はある。」
横からヴォルテックスが近づいてきてイグアインの肩を優しくだ叩いている。
ヴォルテックスは良い兄貴分なんだな。
『イグアインばっかり評価しやがって…俺には何か無いのかよ?』
「お前は割と堅実に戦ってたからなぁ。特にこれといって指導するところもないんだが…強いていえば型にハマり過ぎてるところか。重武装による高火力の基本的な運用を押さえた動きをしているが、それだけだと相手に動きを読まれ易くなる。自立戦術ユニットみたいな木偶の坊なら良いが、対人戦だと動きが読まれて詰むぞ。」
『お、おう…。』
「火力支援に特化するのも良いが、近接戦での立ち回りをもう少し深めた方が良い。折角でけぇショットガンも有るんだ。今回は殆ど使って無かっただろ?」
『そうだな…アドバイス感謝するぜ。』
さて、反省点を踏まえた指導も終わったことだし、アキラと合流するか。