偽・虚狩り〜ホロウレイダー堕ちした元治安官〜   作:初楼

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sideイグアイン

「………刀…か…。」

 

あの作戦以来、あの光景が目に焼き付いて消えねぇ。

俺とヴォルテックスの二人がかりでも歯が立たなかった侵食体を一撃で両断した斬撃。

あのノワールっていうホロウレイダーの実力がどれ程の高みにあるのか理解されられた。

そして自分がどれだけ相手の実力を見誤っていたことも。

ガキの頃からストリートチルドレンとして生きてきた俺には、威勢を張ることが何よりも重要だった。

虚勢でも何でも良い、威勢を張って大きく見せる事で生き延びてきた。

今更変えられることでもねぇが、あいつ相手に虚勢を張る俺は周りから見れば、さぞ滑稽だったことだろうよ。

今思えばヴォルテックスも妙に緊張していた気がするが、相手の実力を多少は見抜いていたんだろうか?

 

部隊の装備の中にも刀や剣の様な近接武器もあるが、うちの部隊であれ程武器を達者に扱える奴はいねぇ。

武器庫に置いてある刀を手に取ってみるが、銃器とはまた違った重さがある。

 

「どうしたイグアイン!近接武器を手に取るとはどういう風の吹き回しだ?」

「あぁ?なんでもねぇよ。」

 

ちっ、ジークの野郎に嫌なところ見られちまった。

ストリートで喧嘩ふっかけて以来、未だに勝てた試しがねぇ。

……ジークとあいつならどっちが強いんだろうな…?

 

「…あの作戦のとき、お前が近接武器を扱えたらもう少し勝機はあっただろうな。」

「…ちっ、てめぇに言われなくても分かってらぁ。何時までも今のナンバーをしゃぶっているつもりはねぇからな。」

 

あの後ヴォルテックスと反省会をやったんだが、俺が近接武器で仕掛けて侵食体の体勢を崩す事ができれば勝機があった可能性があるって内容だった。

あいつは敢えてその指摘をしなかったのは、恐らく俺自身の近接戦闘の練度が圧倒的に足りないことが分かってたからだな。

…くそっ、下に見られてんのはムカつくが、あいつにはそれだけの力があるから何も言えねぇ…。

 

「…ほう。良くぞ言ったな、イグアイン!なら特別研修を組んでやろう!」

「はぁ?特別研修ぅ?」

 

んだよ、特別研修って。

 

「あそこなら近接戦闘のスペシャリストが何人もいる。そこへ研修に行ってこい。」

 

近接戦闘のスペシャリストか…。

ジークの掌の上ってのもいけすかねえが、背に腹はかえられねぇ。

 

「おう、てめぇの顔面に一発入れる為だ。行ってきてやんよ。…で何処に行きゃいいんだ?」

「H.A.N.Dの対ホロウ6課だ!」

「…………はぁ!?」

 

あ、あの対ホロウ6課…だと…!?

 

──────────────────────

 

「…と言う訳だ、うちの若造を頼むぞ!」

 

数日後、俺はジークに連れられて対ホロウ6課に来ていた。

……あの虚狩りがトップを務める対ホロウ6課にツテがあるのかよ…。

 

「了解であります。大佐殿。」

「よせ柳、俺もお前ももう退役した身だ。」

「すみません。昔の癖でつい…。」

「へぇー、珍しいですね。柳さんが直立不動だなんて。」

「ねぇねぇ柳姉、お菓子まだぁ?」

 

対ホロウ6課……噂には聞いていたが、どいつもこいつもうちの部隊の誰よりも強い…。

何より一番やべぇのが……

 

「…それで、預かりの期限は?」

 

奥の机に座っている虚狩り……星見雅だ。

他のメンツよりもひとつふたつ実力が抜き出ているのが分かる。

皮肉な事だが、あいつの戦いぶりを見てから相手の実力がぼんやりとだが理解できるようになった。

 

「大体1ヶ月と言ったところだ。この間の作戦で自らの力量不足を嘆いていてな、遠慮なく鍛えて欲しい。」

「嘆いてねぇよ…。」

「ふむ、詳細については柳に頼むとしよう。ところで、私に伝えておきたい情報があると聞いているが?」

「それについては、今回の依頼の報酬の様なものだ。星見家のお嬢ちゃんが知りたそうな情報だ、前払いとして何の情報についてなのか先に伝えておこう。」

 

「アルゴスホロウ内発生初期に何があったかについてだ。」

 

ガタッ

 

…?急に雰囲気が変わったな…?

 

「…委細承知。研修については私が受け持とう。」

「え?星見課長?研修については私が担当すると…。」

「柳、今回の研修については私が担当する。」

「では頼んだ。こいつを鍛えてやってくれ。」

「了解した。ではイグアイン、だったか。行くぞ、修行の時間だ。」

 

はぁ?今から?

 

「あのチンピラみたいな奴、課長の修行についていけますかね?」ヒソヒソ

「そうね、何時に無くやる気みたいですし、ちょっと心配です。」ヒソヒソ

「柳姉〜、お菓子ちょう〜だ〜い。」

 

──────────────────────

 

side星見雅(2)

 

1ヶ月後。

 

「……情報については以上だ。」

「…情報提供に感謝する。」

 

あの時のアルゴスホロウ内では直近にいた治安官数名が初期対応に当たったと聞く。

その中の1人がホロウ内で違法な人体実験の被験者を保護したという噂が立っている。

TOPS傘下の企業による実験で、企業の人間と治安官がホロウ内で揉め、治安官は被験者を連れて行方をくらませたらしい。

そして、先の研修に来た者が見たホロウレイダー…話によると刀を使用していたとか。

その者曰く、実力が私に近く、太刀筋も類似していたそうだ。

これは…つまりそういう事なのだろうか?

まだ断定はできないが……調べてみる価値はある。

 

 

 

 




黒鐡(ノワール)「………なんか寒気が……。」ブルッ
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