偽・虚狩り〜ホロウレイダー堕ちした元治安官〜   作:初楼

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騙して悪いが(2)

ちっ、見事に分断されたな。

でもメヌとエデはこれくらいでやられるような軟な鍛え方はしていない。

向こうは任せて大丈夫だろう。

まずは目の前の敵からだな!

 

「ふんっ!」

 

列車の屋根上に流れる気流に乗りながらジャンプして繰り出してきた膝蹴りを構築した槍で受ける。

肉体の重心を低く、両足を踏み締める事で受けた力のベクトルを体内を通して相手にそのまま返す。

相手の力をそのまま槍の勢いに加算して横薙ぎをするも、軽くジャンプして躱された。

 

「ふむ?刀を扱うとお聞きしていたのですが、中々の槍捌きですね。」

「そっちこそ戦闘用とはいえ、義足の蹴り主体とは恐れ入った。」

「お褒めに預かり光栄です。…はぁっ!」

 

一瞬のステップで此方に肉薄し、多彩な連続蹴りを繰り出してきた。

どれ程の修練を積んだのやら…。

体の一部を喪うとまずバランスが崩れる。

バランスが崩れれば、必然的に身体の動かし方にも影響が出てくるのだが、そのブレを感じさせないキレッキレの体術。

蹴りひとつひとつが重く、正確無比だ。

そして所々にフェイントも織り交ぜてきてる。

膝蹴りと見せかけての踏みつけ、廻し蹴りからの逆回転のハイキック、サマーソルトからのスライディング。

その全てをバトンの様に回転させた槍で防いでいく。

その間両足は一切動かさない。

列車の屋根に踏み込み、足の裏を縫い付けるように固定する事で、一時的に列車の重さを借りているのだ。

つまり相手は今、重さ数十トンの鉄塊を蹴っている事になる。

 

「なんという硬さ…!防御面でもここまでとは、最優の名は伊達では無い、と言うことですね…!」

「それ恥ずかしくなるから辞めてくんない?」

 

どれだけ最優の名が一人歩きしてるんだよ…?

ライオネル氏が喧伝し過ぎたんだ、今度苦情入れても良い気がする…。

 

「今度は、こっちの番だ!」

 

此方の防御を抜けないと判断したのは良いが、そこで後ろに下がるのは関心しないな。

大方、防御の硬さからすぐには攻撃に移れないと踏んだか?残念だったな!

身体の体重を今度は下の貨物列車に逃がして、擬似的に体重を限りなくゼロに近づける。

肉体の出力はそのまま重さが殆ど無くなるので、爆発的な加速を得ることができる。

右手で槍の柄尻を握り繰り出した長射程の突きは向かい風を切り裂きながら相手に肉薄するが、紙一重で躱されたな。

白い毛と微量の血が相手の冷や汗と風に流される。

 

「っ!まだまだ!」

 

槍の引き戻しに乗じて再度踏み込んでくるが、甘い!

此方も槍を消して踏み込み、相手との距離を潰すと同時に、鉄山靠を食らわせる。

勿論貨物列車の重量を載せてな!

 

「ぐっ!?」

「ほぅ?上手く衝撃を逃がしたな?」

 

インパクトの寸前に後方へ飛び退くことで、多少ダメージを軽減したか。

…しかし今見えた金色の懐中時計になんか見覚えがあるような…無いような……?

こっちの思考の隙を突いて突貫し、連続蹴りを放ってきたのでそれらを捌き、義足の膝と槍の柄で鍔迫り合いに持ち込む。

…白い毛、狼のシリオン、金色の懐中時計……あっ

 

「お前…まさかモッキンバードのライカンか?」

「っ!?…何故その名を知っている!?…この匂いは…」

 

鍔迫り合いの状態で鼻をスンスンさせるこいつは、知ってるぞ。

新エリー都を騒がせた義賊、モッキンバードの片割れであるフォン・ライカンだ。

 

「…貴方は…ホロウ内でMIAと聞き及んでいましたが、まさか生きていたとは…!」

 

お互い微妙な空気になったので、一旦距離を取って対峙する。

 

「なんだよ、その格好と口調は?昔の見る影もねぇ。全然分からなかったぞ。」

「その節は…その、ご迷惑をお掛けして…」

「良いって気にするな。私腹を肥やして権力を振りかざす奴らに対して、お前達は良い薬になったろう。」

 

実は治安局時代に何度も現場でかち合っては、最終的にそれとなく見逃していた。

見返りに普通に捜査していたらまず見つからないであろう不正の証拠をいくつも譲り受けていたのだ。

治安局内でも意見は別れたが、最終的にはモッキンバードを擁護する声もあり、治安局に勧誘する話もあったくらいだ。

俺がホロウレイダー堕ちする前には、その活動は殆どしていなかったから、何処かの現場でしくじったのかと思っていたが……

 

「生きていたようで何よりだ、ライカン。」

「…黒鐡様もご無事なようで何よりです。」

「…お前が敬語使ってるってだけで、すげぇ違和感…。」

「…何卒、ご容赦ください…。リナ、エレン、カリン。戦闘を直ちに終了してください。…えぇ、どうやら依頼に行き違いがあったようです。」

 

ライカンが仲間に連絡したみたいだな。

こっちも連絡しておくか。

 

「メヌ、エデ。聞こえるか?戦闘中止だ。」

『そうなの?了解。』

『あら残念。少しは骨のある魚だったのに。』

 

魚ってことはサメのシリオンの相手はエデがしていたのか。

ツーマンセルを崩さないよう言い含めていたからか、メヌと上手く連携して二対三で戦ってくれたようで良かったよ。

 

「しかし結構な怪我を負ったんだな、ライカン。右眼と両足、酷くやられたもんだ。ヒューゴは元気か?お前は今どこで何してるんだ?」

「その様に矢継ぎ早に質問されても困ります。怪我については不幸な事故の様なものです。…ヒューゴとは袂を別っており、あいつが今どこで何をしているのか知る由も有りません。現在はビクトリア家政と言うところで富裕層向けのサービス業をしています。」

 

困ると言いながらも質問全部にちゃんと答えてるじゃん…。

 

 

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