「つまりボスの知り合いだったってこと?」
「意外ですね、ホロウレイダーの知り合いがいたなんて…。」
「ホロウレイダーになっていたのを知ったのは今しがたですよ。」
走行する貨物列車の屋根の上で、計7人も集まっている光景は傍から見ると異様だよなぁ。
「ノワールの知り合いだったんだ?」
「まぁな、昔の協力者ってところか。こんな所でかち合うと思わなかった。」
「貴方も存外顔が広いのね?」
「だからマスクで顔を隠していたんだけどな、シリオン相手だと匂いとかでやっぱバレちゃうよな。」
「…そうよね、何か対策が必要よねぇ…。」
何やら思案顔のエデを尻目にライカンと向き合う。
「こっちはヴィジョン・コーポレーションからの依頼でな。デットエンドホロウ内の路線を通行する貨物列車の護衛を依頼されていた。」
「成程…。此方の依頼主は明かせませんが、デットエンドホロウ内の貨物列車を襲撃者から守って欲しい、その様な内容の依頼を受けています。そして、く…ノワール様の戦法の詳細な情報も一緒に提供されていました。しかしお連れ様がいらっしゃると思いませんでした。」
「それであの布陣か。メヌとエデが居なければ袋叩きになっていた訳だ。」
「ご謙遜を。ノワール様単独でも切り抜けられたでしょう?」
ライカンと差し障りの無い程度で情報を交換していると、サメのシリオンの女の子がジロジロと見てきたが、その服装はだいぶパンクなアレンジが入っているメイド服だった。
ライカンの服装も執事服だし、他の女性陣も皆メイド服だし、ヴィクトリア家政ってそういうコンセプトなのか。
良いよね、メイド服。ヴィクトリア家政を設立した人とは美味い酒が飲めそうだ。俺下戸だけど。
「ふーん。この人そんなに強いの?」
「エ、エレンちゃん…!?」
「こらエレン、不躾な視線を向けるのはメイドとしてはしたないですわよ。」
「はーい。何か隠してる感じ?がするけど、ボスが良いなら良いじゃない?」
中々鋭いなサメっ子め。
欲しい情報は提供して貰ったし、これ以上探られても面倒なのでここまでにしておこう。
「さて、旧交を温めたことだし、この場は解散とするか。」
「仰る通りですね。此方の依頼主には襲撃者を撃退した旨を報告しておきます。」
「助かるよ。」
「では、これにて失礼致します。」
深々とお辞儀をしたライカン達は貨物列車の屋根から次々と飛び降りていく。
さてさて、ライカンから目配せがあったからな、どっちのポケットに入ってるかなー?
「どしたの?急にズボンのポケットに手を入れて。」
「まぁ見てなって…お、あったあった。」
右ポケットに入っていたメモ用紙を確認すると……ふむふむ。
「何が書かれていたのかしら?」
「色々と。要約すると俺達はやっぱりヴィジョン・コーポレーションに嵌められたってこと。」
逃げ足の早かったライカンとヒューゴを捕まえられるのは当時の治安局に俺くらいしか居なかったので、二人にわっぱを掛けた後、不正の証拠を俺のポケットに仕込んでもらい、その場で釈放するというかなりグレーな方法で情報をやり取りしていた。
これらについて二人に軽く説明すると
「犯人隠避?不良治安官だったんだぁ。」
「被疑者の逃走幇助かしら?治安官の風上にも置けないわねぇ。」
「何言ってんだ。逮捕して、証拠不十分で即釈放していただけだ。」
「「うわぁ…何ていう屁理屈……。」」
2人からの視線が痛い…。
「上司からはちゃんと許可を貰ってたぞ!…脅したけど」ボソッ
上司から特例でモッキンバードに限り逮捕権及び略式判決権までもぎ取っていた。
つまり、モッキンバードに対しては逮捕も釈放も俺の匙加減でどうとでもできるようにしていた、ということだ。
いやぁ、あの時の上司の何とも言えない表情は今でも覚えている。
あの宇宙猫の様な表情は傑作だったけど、今思えば悪い事をしたと思っている。
でも、ことあるごとにホロウへの単独強襲(アローンアサルト)させられたことは絶(対に)許(さん)。
当時人手不足だったのは分かるけど、なんだよ連続72回の単独強襲って頭ハッピーハッピーか?
特殊な訓練(監修:MIYABI)を受けた俺じゃ無かったら途中でリタイアしてたね。
…やっぱケツドライヤーくらいしてやるべきだったか。
「ヴィジョン・コーポレーションはTOPS入りを目指している企業。そして企業には得てして後援者がいるもんだ。さらに言えば、企業の後援者をやる位には富を蓄えてるんだ、富裕層がメインの客層になるヴィクトリア家政に依頼をすることもあるだろう。」
「……こうえんしゃ?…つまり?」
メヌはイマイチ分かっていないようだな。
首を傾げて思案しているところにエデが補足してくれた。
「つまり、ヴィジョン・コーポレーションから後援者、後援者からヴィクトリア家政に私達を潰す依頼が遠回しに出されていた、という事ね?」
「そういうこと。恐らくだが、この依頼を出したヴィジョン・コーポレーションの中でも一部の奴らしか知られていない事だろう。秘密を知る者は少なければ少ない程いい。」
「へぇ〜なるほど。企業って随分と回りくどいことするんだねぇ。」
三人で話しているうちに貨物列車が無事にホロウを抜けたようだ。
ハイペリオンを通じて依頼主に依頼完了の報告を入れ、貨物列車の屋根から三人で飛び降りる。
「さて、無事依頼も完了したし、ルミナスクエアで飯でも食って帰るか。ヴィジョン・コーポレーションへの報復は……後で考えよう。」
「あ、なら行きたいお店があるんだ。寄っても良い?」
メヌがそう言って手を挙げている。
ふむ、リチャード・ティーミルクかな?最近また新作が出たみたいだし。
「新作か、心が踊るな。」
「そう新作!楽しみだね!」
「エデはどうする?」
「勿論私も行くわ。新作、楽しみね。」
エデも楽しみにしているのか、新作。
でもタピオカ嫌いじゃなかったっけ……?
件の上司は身長196cm、髪は白色長髪、筋肉モリモリマッチョマンのオオヤマネコシリオンです。