『貴方は……。』
「ハイペリオン?知っているのか?」
『……………。』
「ハイペリオン?」
ハイペリオンが沈黙するとは珍しい。基本的に問い掛けには律儀に答えていたのに。
『おいおい、感動の再会なんだ、盛大に喜んでくれよ。なぁ、兄弟?』
『本機の擬似人格モデルは女性です。』
『アハハッ!そうだっけ?まぁ、妹ちゃんよ。元気にやってる見たいだねぇ!』
ハイペリオンの兄妹機……同スペックのAIか。…思えばハイペリオンについてよく知らないよな、俺。父親から贈られた武器が、ハイペリオンを起動させる鍵だったてことくらいだ。
『そうだな…。俺の事は「ハングドマン」とでも呼んでくれ。それで、見てたよホロウレイダー。中々やるじゃない、ちょっと時間掛かったけどさ。…周りへの被害を気にしなければもっと早かったんじゃない?』
「周りの事を考えずに暴れるのはそこの鉄屑と同じになっちまうだろ?それは勘弁願いたいね。」
『それがお前の矜持ってやつか。…良いねぇ、その矜持をどこまで貫けるのか、見物だな。』
「何をするつもりだ?」
嫌な予感がする…。
『いやいや!ちょっとお手伝いをね!』
『北方約200メートル付近に高エネルギー反応確認。威力はこの商業ビルを消し飛ばす試算です。』
「なっ!?」
まだ避難誘導も終わってないはずだ!
メヌやエデ、柚葉達が巻き込まれる前に防がないと!
『さぁさぁ!急げよ、ホロウレイダー!』
「クソッタレめ!」
ハイペリオンにマーカーで示して貰った地点に急いで移動する。階段をワイヤーを使用して一足飛びに駆け上がり、建物北側のでかい窓ガラスをぶち破って空中に身を投げ出す。
『着弾予測地点に到達。』
「防御陣、展開!!」
前面に最大出力の防御陣を展開した瞬間、眼前を青白い閃光が埋め尽くした。続いて来た衝撃は正に対艦砲を受けた様な威力だ。防御陣に突き刺さり、異音と火花を激しく散らしている弾頭は…見覚えがあるぞ…!反乱軍の一斉摘発の際に押収された兵器群の中でも一際異彩を放っていたのを覚えてる。確か超高熱とエーテル汚染で周囲の生命体を殺傷するっ兵器だったはず…!
『弾頭から高濃度のエーテル結晶を検知。このまま弾頭が炸裂した場合、半径50メートル圏内の生命体に重篤な被害が発生します。』
「だよなぁ!!ハイペリオン!弾頭を上空へ受け流せ!」
『了解。防御陣の固定座標を修正……完了。上空へ射出します。』
弾頭を真正面から受けていた防御陣を湾曲させ、弾頭を上空を逃がすと、ビルからおよそ1キロメートル離れた地点で弾頭が炸裂した。初弾は何とか防げたが、大元を叩かないとジリ貧になるなよな!
発射地点を見るとルミナスクエアの大通りを挟んで反対側のビルの屋上に人影が見えた。随分ごっついパワードスーツを着込んでいるか、或いは知能構造体か。恐らく後者だな。右手に接続された超大型のキャノンは既に第2射の発射体制を整えようとしている。
「これ以上やらせない!!」
空中から地面に落下して着地した際の衝撃を殺さず、足にかかるベクトルを体内で操作して前方への推進力へ変換する。
地面に蜘蛛巣状の罅が入り、砕け散る破片よりも早く発射地点へ肉薄する。防御陣展開のせいで武器の構築が間に合わない。ここは、蹴りだ!!
『アハハッ!いいじゃん!盛り上がってきたねぇ!』
キャノンを構えていた機体をビルの屋上から蹴り落とし、追撃を仕掛けようとすると、相手から炎と黒煙が上がっている。さっきのキャノンは結構負荷がでかいみたいだな!
そのまま地面に落ちた相手の顔面パーツに拳を叩き込む。
その下の道路が大きく陥没し、アスファルトが捲れ上がり、さらにもう一発叩き込もうとしたところで違和感を覚えた。
相手の身体が粒子となって消えていってる…?なんだこれ…ハイペリオンの構築した武装が霧散する時と同じ光景だ。
『まさか一撃でここまで殺られるとは想定外だ…。ジジッこれだから面白いんだ…人間ってやつは…!』
「お前の目的はなんだ。ブルートゥの味方じゃ無かったのか?」
あの砲撃は完全にブルートゥを巻き込むつもりでぶっぱなしていた訳だが、マジで何が目的だ?
『残念だけど、俺に味方なんていないんだ。そう、いないんだよ、味方も、敵もね。』
何なんだこいつ……。論理回路がぶっ飛んでいるのか?
『愛してるんだ、君たちを!!ハハハッ!!!』
そのセリフを最期に奴の、ハングドマンの身体は霧散していき、小さなデータチップだけが残っていた。左手で掴むとハイペリオンが解析を開始した。
「なんだこれ?」
『解析中…完了。先程ハングドマンが使用していたキャノン、「ヒュージーキャノン」の設計図データ及び運用データです。潜在的なウイルス及びハッキングツールは仕込まれていませんでした。オーバードウェポンと称される兵器群のひとつのようです。』
「ふむ…このデータを渡す為だけにこれだけの事をした…?いや、あいつの殺気は本物だった。間違いなく、あのビルに残っていた一般人を消し炭にするつもりだった…。…何が目的だ……ハングドマン……。」
『………………。』
遠くからサイレンが聞こえてくる。今治安局に絡まれるのはまずい。メヌとエデに連絡して、この場を離れよう。