「ふぅ〜。二対一は大変だったなぁ…。」
時刻は早朝5時頃。部屋のベランダに出てみると、丁度夜明けのようだ。火照った身体に当たる風が実に涼しい。いやー、良い運動になったわ。久々に戦闘以外で汗をかいた気がする。
「旦那様。」
「ん?どうした?」
下にある庭を見るとカールミンロート家からエデが連れてきたメイドの一人がこちらを見上げていた。白髪ロングに琥珀色の瞳をした少女だ。
「皆様が起きたらお部屋の掃除をしようと思うんですけど、消臭もした方が良いですか?」
「あーそうだな、頼むわ。」
「承りました。それでは失礼します。」
お辞儀をして玄関に戻っていくメイド。その歩き方は重心が非常に良く安定しており、身のこなしから戦闘訓練…恐らく軍隊式のもの…を積んでいることが分かる。まぁ、ジーク総長の元で扱かれたんだな。
「…メイドのお尻を眺めてどうしたんですか?お嬢様だけでは飽き足らず、私達メイドも手篭めにするおつもりですか?」
「しねぇよ?人の事なんだと思ってんの?」
「超絶倫色欲大魔神…でしょうか?あれだけお嬢様達と致して今なおお元気そうなので。」
「…え?俺ってそんな風に見られてるの……?」
「ふふっ、冗談です。では、失礼致しますね。」
冗談キツイっすよ……。しかしあの子、結構あけすけに言うなぁ。エデが連れてきたメイドは9人。全員ほぼ同じ顔、似たような体型をしているから姉妹か………あるいはクローンか、まぁ気にすることでもないか。
メヌとエデが起きた気配を感じたので部屋に戻ると、ベットの上でシーツと布団に包まった二人は呆然としていた。
「………あれ?ノワール先に起きてる……?もしかして…2人がかりでも……負けた…?」
「……そのようですわね…。最後の方は記憶が曖昧なのだけれど……二人まとめてされるがままだった気がするわ…。」
「おはよう二人とも。昨晩は良い運動になったよ。」
「うわぁ、あれだけやってまだ元気なんだ?これだから超絶倫色欲大魔神は…。」
「言い出したのはお前かメヌっ!メイドにも言われたぞ、その不名誉なあだ名!」
名誉毀損の罪を償わせるべく、逃げようとしたメヌを捕まえて両手の拳で頭を挟んでグリグリと捩じり上げる。
「痛い痛いやめてっ!朝弱いんだから優しくしてってば!?」
「自業自得だボケ!鉄拳制裁!」
「はぁ〜、朝からお盛んなことね…。ふぁ〜あふ…一段落したら起こして頂戴な…。」
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「それで?お嬢様は2度寝して?メヌ様にお仕置してたらお互いに盛り上がって乳繰り合い延長戦に突入ですか?ノワール様はやっぱり超絶倫色欲大魔神ですね。」
現在時刻午前9時。あまりに起きてこない俺達に業を煮やしたメイド達が部屋に突入作戦を実施。ベットに寝ていた俺達3人を鮮やかに包囲したのだった。
既に部屋の掃除は開始されており、メイド達が忙しなく動いている。
「姉妹達を視姦しないでください。手を出すなら私だけに……。」
そう言って顔を赤らめながら、メイド服のスカートをたくし上げていく。白いハイソックスとガーターベルトが見えてきた辺りでハッと我に返った。
「してねえし、手出さねぇよ!?」
「勿論、冗談です。」
メイド達が身を寄せ合ってプルプル震えている…が、顔が笑ってやがる…。みんな意外とノリが良いのね。
「あ、臭うんでファブリますね?」
メイドが手に持っていた消臭スプレーでしこたまプッシュされ、3人とも部屋から締め出されてしまった。
「なぁエデ?あのメイド達は何時もあぁなのか?」
「うーん、そうねぇ。教育係のメイド長が居ないし、この屋敷に来てからだいぶ羽目を外している感じね。」
「教育係?」
「メイド長?」
「あの子達はまだメイドとしては一人前ではないから、本邸ではメイド長が教育していたのよ。こっちの屋敷で経験を積ませようって話らしいわ。」
「そういう事ね…。とりあえずシャワー浴びに行くか。」
俺達ほぼ全裸で廊下に締め出されたし。
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「ここが白祇重工か…。」
皆でシャワーを浴びて朝食を取った後、俺達は白祇重工に来ていた。ブルートゥの件で話を聞く必要があったからだ。アポはエデが取ってくれているので、顔パスで中に入ることができた。
事務所の前で待っていたのは、赤髪の少女と黒髪の女性だった。
「お久しぶりね、クレタ、グレース。」
「お、お久しぶりです。エーデルフラウさん。」
「久しぶりだね、エデちゃん。」
エデが二人とそれぞれ握手をしている。クレタと呼ばれた少女はかなり緊張しているな。まぁ、会社のパトロンの娘が来たのだから無理もない。逆に変態技術者であろうグレースと呼ばれた女性はかなり自然体だ。前に話を聞いたとおり、機械オタクでそれ以外には然程興味が無いって感じか。それでもエデとは仲良くやれているみたいだ。
「紹介するわ。彼がノワールよ。」
「ホロウレイダーのノワールだ。宜しく頼む。」
「ああ、私が社長のクレタ・ベロボーグだ。宜しくな。」
「その歳で社長か。才媛、と言ったところかな?」
「別にそういう訳じゃないさ、親父の後を継いで会社を再興させただけだ。」
クレタと握手をしていると、不意に左手の義手が持ち上げられていた。
「なにこれっ!?凄い義手だね!?最初は知能構造体のパーツを使用した戦闘用の義手かと思ったけど、君個人の為だけに作られたオーダーメイドだね!?全く無駄が無い上に何か特殊な合金を使用してるね!?しかもこれAI内蔵型だね!?それもかなりの高性能なやつ!?私とお喋りさせてくれないかな!?!?」
「そこまでだ、姉貴。ノワールさんも困っているだろ?」
機械オタクと聞いていたが、まさか義手にまで反応するとは…。ハイペリオンの存在まで見抜くとなるとかなりの変態技術者(褒め言葉)だな。
「それで?何の話が聞きたいんだ?」
「ブルートゥと言う知能構造体についてだ。」
ブルートゥの名前を聞いた途端、クレタは顔を顰め、グレースの楽しそうだった表情が一転、無表情となった。
「…あいつまた何かやらかしたの?」
先程とは打って変わって低い声で聞いてくるあたり、余程嫌悪感を抱いているなこれ。
「襲撃されてな。やつの背景を洗いたいもんでとりあえずなんでも良いから情報が欲しい。やつについては両腕を引きちぎって無力化、治安局に引き渡したから暫くは大人しい筈だ。」
「それは良いことを聞いたね。そのまま溶鉱炉にでも突き落としてくれれば一番だね。資料を持ってくるから中で待ってて。」
そう言ってグレースは事務所に入っていった。
「後は姉貴…グレースに任せるよ。私は現場の方を見てくる。事務所の中でゆっくりしていてくれ。」
クレタは別の現場に用事があるようで、この場から立ち去って行った。言われた通りに事務所の待合室で待機していると、グレースがファイルを持ってきた。
「あれ?おチビちゃんは?」
「クレタなら別の現場に行ったわ。」
「まぁ、そうだよね。あいつの話なんか聞きたく無いだろうし。」
うーん、この嫌われよう。流石ブルートゥと言わざるを得ないな。
「あいつはオーネスト=ブルートゥと名乗って居たけど、後々調べたらそんな名前の知能構造体は新エリー都で住民登録されて無かった。巧みな話術と人当たりの良い態度で当時会社の人事担当に取り入って入社したみたい。入社目的は不明。前社長のホルスが行方不明になった時にその混乱に乗じてうちの機材と技術を盗んで行方をくらませた。」
「その盗まれた機材と技術って言うのは?」
「ホロウ用知能重工業機械って言う、うちの主力重機の予備パーツとその製造技術なんだ。」
「それらの機材と技術か狙われる心当たりは?」
グレースは顔を顰めて唸っているが、これと言って心当たりは無いようだ。
「うちの子供達は私達でしか扱えないから、機材と技術を盗んだとしても大したアドバンテージにはならない。正直、うちへの嫌がらせって言われた方が納得だね。」
子供達って言うのは件のホロウ用知能重工業機械のことか。
「それに近々その子達の論理コアの更新をする予定だしね。当時と比べてパーツもソフトウェアも新しくしているから、何かされるような事は無いんじゃないかな?」
確かに、そもそもブルートゥが行方をくらませたのが、旧都陥落前日。なんであいつは長年ホロウ内に機材を溜め込んでいたんだ?俺が強襲逮捕した後に押収された証拠品は白祇重工から盗んだものだけではなかった。つまり、他の企業に対しても白祇重工にやったように取り入って機材と技術を掠め取っていた?何のために?
「とこでさぁ!その義手、分解させて貰って良いかな?絶対私の知らない未知の技術が使われてると思うの!」
「さすがにそれは勘弁してくれないか……?」