「………………。」
投げ捨てられた義手を抱き締めて涙ぐむエデ。
「………………。」
そっとエデの肩に手を置いて慰める照ちゃん。
「………あれ?」
事の深刻さに遅れて気付くフィオニー。
「…もう少し詳しく説明してくれる?」
眉間を抑えながら溜息を着くボス。
「……対象者は、左腕を切り落とされて、虚狩りに回収された、よ。気絶したみたい。」
ガバッ
「……とりあえず、その言葉足らずなところはどうかと思いますわ…。」
「そっちの方が、面白いかな、って。」
ブチッ
「まずは調教からかしら。」( #`꒳´ )
「今回は照ちゃんもエデちゃんに賛成かな~?」
「あ…♡やば…♡エデちゃんに本気で殴れる…♡」
「いいえ、貴女に必要なのは鉄拳制裁ではなくってよ。」
どこからか取り出した赤いロープを手に持つエデ。
フィオニーを後ろから押さえ付ける照ちゃん。
天井から亀甲縛りで吊るされたフィオニー。
「これ…!やば…!色んなところに…!ロープが…!食い込んでるぅ…♡」
「流石にこれで興奮するのはやべぇですよ、フィオニー先輩?」
「……………。」
我関せずのプロメイア。
「邪兎屋のニコか…。パエトーンと縁があるとは思わなかったな。」
「…知り合い?」
メヌがジト目で見てくるが、そういった関係じゃないんだよなぁ。
「あの守銭奴とは知り合いと言うか、犬猿の仲って感じだな。治安官時代に追っかけ回したこともあるし。」
初めて出会った時はやつが雅から骸討ち・無尾を言いくるめてちょろまかし、雅から神妙な顔で相談された時だった。鬼の形相で新エリー都内や各ホロウ内を駆けずり回り、ホロウ内のポンプ相手に高値で売り付けようとしている所で待ったをかける事ができた。正当に譲って貰ったと主張するニコに対して堪忍袋の緒がブチ切れ、このままホロウの藻屑にしてやろうかと息巻いていたところ、大量のエーテリアスの襲撃を受けた。
手持ちの武装は殆ど使い潰し、体力の限界も見えてきたが、一向にエーテリアスの波が途絶えなかった。そこでニコから無尾を奪い取り抜刀。無尾からの精神汚染に耐えながら無我夢中でエーテリアスを殲滅、無尾を納刀したところでぶっ倒れた。後から聞くとニコが救助してくれたらしい。
星見家に帰ってからは宗一郎さんに、
「無尾を回収してくれたことは大いに助かったが、無尾を雅以外が抜いてはいけない。星見家においても、初代虚狩りである三代目と雅にしか扱えない妖刀なんだ。」
と少し怒られた。
あれ以降もパトロールしている時に見かけては嫌がらせも兼ねて職質し、徹底して所持品検査をしてやった。
「まぁ、金にがめつくて汚いやり方が目立つが、義理人情を解しない奴じゃない。…が、少し心配だな。ランダムプレイに行ってくるよ。」
ベットから立ち上がったところで、ふと思い出した。
「…なぁエデ。…ハイペリオンってどうなってる…?」
「あら、やっと思い出したのね。ちゃんと私が回収してあるから安心なさいな。ちょっと待ってなさい。」
そう言って部屋を出て、数分で義手を持って戻って来た。
「ハイペリオンさ、何回呼び掛けても返事してくれないんだ。」
「そうね、うんともすんとも言わないのよ。壊れちゃったかしら?」
「え…まじ?ハイペリオンがいないとクレジットカード決済できないし、通話も出来ないんだけど?」
やば…日常生活でどれだけハイペリオンに依存していたか思い知らされたわ…。
とりあえず壊れが無いか手に取って確認していると、
『マスター認証、確認。ご無事で何よりです、マスター。』
「お、起動した。」
「ねぇねぇ。なんで返事してくれなかったの?」
『マスターとの接続が強制的に切断されたため、緊急ロックを実行しました。マスターの個人情報を保有していますので、マスター認証以外ではアンロック出来ない仕組みです。』
落としたスマホを遠隔ロックするようなものか。
『ところでマスター。その左腕はどうされたのですか?』
「アルゴスホロウ内から回収されていてな。繋げて貰った。」
『……そうですか。了解いたしました。』
何故か心無しか寂しそうな声色である。
「なので、今後ハイペリオンには篭手の形状になって貰おうかと思う。神経接続とか動きの演算とかに使っていたリソースを武装構築の方に回して欲しい。」
『了解しました。リソース演算中……。演算終了。今後は銃火器等の遠距離武装の構築が可能です。』
「お、それはありがたい。弾数は?」
『ホロウ内であれば大気中のエーテルを取り込んで生成するので、無制限です。ホロウ外であれば通常の実弾を使用してください。』
ホロウ内なら弾数無限だが、ホロウ外だと有限か。弾の購入を検討しないとな。
「弾薬に関しては、お父様に掛け合ってみるわ。うちの部隊御用達の所を紹介してもらいましょう。」
「助かるよエデ。」
「でも遠距離武器って何使うの?」
「ふっふっふ、それは見てのお楽しみだ。」
──────────────────────
『対エーテリアス戦闘用拳銃。
「レーヴァテイン」及び「ミストルテイン」。
現行の.44マグナム弾使用ではなく、専用の.50AE弾使用拳銃です。
全長27cm、重量2kg、基本装填数は7発。常人には扱えない代物です。』
「弾頭は?」
『対エーテリアス用JHPとなります。』
「パーフェクトだ。ハイペリオン。」
『感謝の極み、です。』
早速ハイペリオンに二丁拳銃を構築して貰った。二丁拳銃は男の浪漫、テンション上がるぜぇ…。
「はぁ〜、要はDE(デザートイーグル)よね?それ。しかも一番口径の大きいホローポイント弾って………うちの部隊でもそんなゲテモノ使う人は居なくってよ?……まぁ、弾薬については問い合せて発注しておくわ。」
「はぇ〜、大っきい拳銃だね。使えるの?」
「勿論。使える武器が近接武器だけじゃ武芸百般とは言われないぞ。」
「武芸百般…?」
「あ…今のは忘れてくれ。」
危ない…。テンションが上がってるせいか自ら黒歴史をぶち撒けるところだったわ。
「なんだかテンション高いね?」ヒソヒソ
「己自身を偽る必要が無くなったからかしら。」ヒソヒソ
『マスター。追加装備として袖口から直接給弾できるコートを構築、先程の拳銃二丁と現状一番使用率の高いワイヤーフック、刀とともに基本武装として永続登録しました。』
「永続登録?」
『武装が破損若しくはマスターによる構築解除のコマンドが無い限り、永続的に手元に残り続けます。』
「なるほど。これらは使用後に霧散しないって訳か。」
『その通りです。ただし玄冬や桜華、オーバード・ウェポンのような演算リソースを大量に使用する兵装を運用する場合は、自動的に構築が解除されます。』
「ふむふむ。……え?オーバード・ウェポン…?」
使えるようになったんだ…あれ…。使い所に困るなぁ。
「さて、準備も整ったところだし行ってくる。」
「行ってらっしゃい。先に寝てるね。」(・ω・)ノシ
「行ってらっしゃい。ちゃんと帰ってくるのよ?」
「帰ってくるさ。」
──────────────────────
「おーい、18番ちゃん。アキラかリンはいるか?」
「ンナ!ンナンナ、ンナナ?(今奥の工房で仕事をしているよ。呼んでこようか?)」
「そうだな、呼んできてくれ。」
深夜にも関わらずランダムプレイの出入口が開いていたので中に入ると、18番ちゃんが店番をしていた。ってことは今プロキシとして仕事してるってことか。
「どうしたんだいノワールさん、こんな深夜に。」
「メヌから少し聞いてな。人手、いるんじゃないか?」
奥から出てきたのはアキラだった。リンが今イアスと接続中か。
「それは助かるよ。今十四分街で、共生ホロウが突如発生したみたいでね、ヤヌス区でも管制レベル3を突破だそうだ。」
「え?そっちの方がヤバそうだな。」
「治安局も今日そこで捜索をしていたみたいでね。近隣住民の避難は難航しそうだ。」
「マジかぁ。そっちを優先した方が良さそうだな。」
「メリュジーヌはなんて言っていたんだい?」
「ん?邪兎屋のニコがパエトーンを訪ねてきたってな。」
「おや、ニコを知っているのかい?まぁ、この業界は広いようで狭いからね。ホロウレイダーなら知っていてもおかしくないか。」
「まぁ、そんなところだ。ニコからの無茶振りなら後で言っておこうか?」
「大丈夫だよ、ノワールさん。これでも伝説のプロキシと言われるくらいにはなったからね。もうお守りは大丈夫さ。」
「そっか。なんだか泣けてくるなぁ、あのパエトーンがここまで大きくなるなんて…。」シミジミ
「初期の頃はだいぶお世話になったからね。」
もう少し二人で世間話を興じていたいところだが、管制レベル3を突破は穏やかじゃない。救援に行こう。
「ちなみにニコから何を依頼されたんだ?」
「トラブルでホロウに落ちた従業員の救助だよ。今リンがイアスに接続して向かってる。」
「了解。見かけたら声かけるよ。」
アルゴスホロウの二の舞はごめんだ。
十四分街の共生ホロウは発生してまだ間も無い。なら、
内部のエーテリアスを殲滅して共生ホロウを消滅させる。
ニコ
「ハックションッ!…なんだか寒気がしたわ…。」
リン(イアス)
『風邪でも引いた?』