相棒(バディ)が死ぬ、というのは今尚慣れないものよな。
実際にその死に様を見届けた訳ではない故、生きている可能性はないことも無い。
が、かの暴走ホロウ内には異常共生体エーテリアス「レルナ」と命名された巨大なエーテリアスが猛威を振るったと言う。
片腕を失った状態で、災害とも言えるレベルのエーテリアスから逃げ切れるとも思えん。
彼奴……黒鐵は星見家において相当な修行を積んだと朱鳶も言っていた。
あらゆる武具に精通し、治安局でも1位2位を争うほどの実力者であった。
……流石に三節棍の扱いでは負けんがな。
彼奴は斜に構えているようで、存外お人好しと言うか、義理人情を重んじるというか…。
きっと彼奴の事だ、救助活動の最中に襲撃を食らったのかもしれんな。
己よりも他人を優先するのは美徳だが、それで死んでしまっては元も子もないではないか……。
彼奴とはもう…共に白湯を飲むこともできない……。
あの時我が残っていたら?或いは他にもっと戦える治安官が近くに居れば?
たらればの想定ばかりが思考回路を蝕み、彼奴の死という現実を上手く処理できない……。
「青衣先輩!黒鐵が、MIAって本当なんですか!?」
我が机に黒鐵の同期である朱鳶が駆け寄ってきた。
あぁ、朱鳶よ…。お前さんに何と説明したものか……。
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「済まない朱鳶よ…。我が付いていながら、彼奴を守れなんだ…。」
「それは違います先輩!黒鐵は…そんな弱くは……。」
あの時私は非番だったこともあって、非常参集に遅れてしまった。
現場に到着した時は既に防衛軍の攻撃が開始され、民間人が何名もホロウから逃れてきて、今まで経験したことの無い荒れた現場だった。
後に聞いた話によると、アルゴスホロウ直近の7号式與の塔が取り込まれたことから、それを爆破してホロウの沈静化を測ろうとする作戦が立案されていたらしい。
勿論救助されていない民間人や救助活動に従事する治安官、エーテリアスを抑えていた防衛軍などは一切考慮していない、TOPSの意向のみが優先された悪辣な作戦だったみたい。
雅が珍しく怒っていたのは、その作戦が実行される寸前だったから。
…結局雅がレルナを切り捨ててホロウは沈静化した。
私が黒鐵のMIAを聞いたのは、全てが終わってからだった。
アルゴスホロウの暴走時、一番近くにいた治安官が彼で良かったと思う。
治安局育成校で、実技を1位で卒業した彼の武力は並外れたもので、彼が居なければ、被害者はもっと多かったはず。
捻くれた性格をしていたけど、ホロウ対策局のスカウトを蹴って治安局に就職したのは、人を助ける為だったんだと今なら思う。
「朱鳶よ…。黒鐵は、ホロウ内に取り残された民間人の救助活動のためホロウの中心部に向かい、あのレルナと一戦交えたそうだ。」
青衣先輩は顔を顰めていた。
「現場検証班が回収出来たのは、彼奴の左腕のみ。近くに出血痕もあり、生存は絶望的だと言っていた…。」
「そんな…!」
「故に捜索活動は打ち切られ、MIA(作戦行動中行方不明)と認定された。」
治安局で働く以上、いつか命を落とすような現場に臨場する覚悟はできてる。
それでも、育成校での苦楽を共にした同期をこんな形で失うなんて…。