さよなら天さん ~今度こそナッパを倒す~ 作:鈴木デストロイヤー
第一話 感謝の正拳突き
十歳の時。
少年は、前世で見たある場面について考えていた。
餃子がナッパの背中へ抱きつく。
天津飯へ別れを告げる。
そして、自爆する。
あの場面が好きだった。
今でも、はっきり覚えている。
ただ。
一つだけ。
どうしても惜しいと思うことがあった。
「……ナッパが死んでない」
餃子は死んだ。
覚悟もあった。
やるべきこともやった。
ならば。
足りなかったものは何か。
少年はしばらく考え。
答えを出した。
「威力だな」
単純な話だった。
もっと強い自爆なら。
ナッパを倒せた。
そして幸い。
今、自分が生きている世界には。
念がある。
人間の生命エネルギーを操り、常識では考えられない現象すら引き起こす力。
それを知った時から。
少年の中には、一つの考えがあった。
念なら。
できるのではないか。
餃子が果たせなかった。
ナッパを倒せる《さよなら天さん》を。
問題があるとすれば。
この世界には。
ナッパはいない。
だが。
少年にとって、それは大した問題ではなかった。
今ここにナッパがいなくても。
ナッパを倒せる威力であることに意味がある。
少年は立ち上がった。
両足を開く。
静かに息を吐く。
そして。
両手を合わせた。
感謝。
自分がこの世界へ転生したことに。
この世界に念があったことに。
もう一度。
あの自爆へ挑戦する機会を得られたことに。
少年は祈った。
それから。
構えた。
拳を引く。
一歩も動かず。
真っ直ぐ。
正拳を突いた。
一回。
拳を戻す。
再び両手を合わせる。
祈る。
構える。
突く。
二回。
また。
祈る。
構える。
突く。
三回。
一日に。
最低一万回。
一万回を早く終えられるようになれば。
その日の限界まで。
これを。
百歳になるまで続ける。
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【念能力設定】
《さよなら天さん》
系統:放出系。 操作系寄り。
能力者が生涯をかけて完成させる、一度限りの死後念。
生前には発動できない。
■威力の強化
《さよなら天さん》の爆発威力は、
「感謝の正拳突き」を行った累計回数
に応じて上昇する。
通常の念修行では、《さよなら天さん》そのものの威力は上昇しない。
十歳から百歳まで。
一日最低一万回。
一万回を短時間で終えられるようになった後は、睡眠、食事など生存に必要な時間を除き、その日の限界まで続ける。
百歳時点での想定威力は、
TNT換算約十二キロトン。
放射線や毒などは存在せず、純粋な熱、爆風、衝撃による爆発。
■生前の制約
《さよなら天さん》以外の発を、生涯一切使用できない。
さらに、生前に使用できる念は本来の出力の十%まで。
纏、絶、練、凝、堅、硬、流、周などにも制限がかかる。
■発動条件
能力者が、
他者によって殺害されること。
自殺では発動しない。
老衰、病死など、他者による殺害ではない死亡でも発動しない。
他人の攻撃へ巻き込まれた結果死亡した場合など、死亡原因が他者にあるなら条件を満たす。
■発動後
能力者の死亡後。
死後の念が自動的に発動する。
遺体は近くに存在する対象へ向かい、
抱きつく。
対象は殺害者である必要はない。
生きた人間でも、死体でも構わない。
抱きつく理由は、
餃子がナッパへ抱きついたから。
それ以上の意味はない。
■遺体を破壊した場合
死体を切断、粉砕しても能力は停止しない。
肉片や骨片などがそれぞれ動き、対象へ集まり、まとわりつく。
全体として「抱きついた状態」が成立すればよい。
■最後の台詞
抱擁成立後。
遺体、あるいは口に相当する残骸から、
「さようなら天さん……どうか死なないで」
と発声。
その直後に爆発する。
口や頭部が破壊されていても発声は行われる。
■最大の制約
能力者本人は、
《さよなら天さん》が発動したところを絶対に見ることができない。
発動時にはすでに死亡しているため。
成功したか。
誰へ抱きついたか。
どれほどの爆発になったか。
そして。
本当にナッパを倒せる威力へ到達したのか。
その答えを知ることはない。
なお。
この世界にナッパはいない。
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【今後の話】
・ハンター試験会場編
・ヨークシン編
・天空闘技場編 クロロ対ヒソカ
・ブラックホエール号編