貧乏チート全裸姫 〜資産0なら魔力が無限になる露出狂のTS転生姫。王家から追放されてカネなし宿なし服なしでやっと最強になれたので、隣国で清貧の聖女として成り上がります!〜 作:龍々山ロボとみ
ミレーヌを助けてから空の旅に戻った私は、ついでに今後の生き方を少し考えてみることにした。
まず、大事なことは。
いつでも全裸になる自由を持っていたいということだ。
もう、王女時代のように誰かに無理やり服を着せられたりだとか、脱ぎたい時に服を脱げないのはこりごりである。
もっとも、もちろんこれは、平時から常に全裸でいたいという話でもない。
私は全裸露出が大好きだし、多数の人間に見られるのはたいへん興奮するが、それでも、弁えるべき時があるということも当然知っている。
つまり、着るべき時は着ていて、脱ぐべき時はきちんと脱ぐ、ということができる状態でありたい、というわけだ。
そして、どうせ脱ぐなら、その際にあふれ出る魔力を活かせる仕事をするのが良いだろう。
つまり、冒険者だ。
非常にテンプレ的だが、なるべく自由な立場でありながら魔物とかを倒す仕事といえば、冒険者なのである。
このまま飛び続けて大きめの街に辿り着けば、冒険者ギルドで冒険者登録をしてしまおう。
そんなことを考えていた私は、進行方向先で一筋の黒煙が上がっているのを見つけた。
おやおや〜?
「そういえばこの方向って、さっきのマンティコアとかが来ていた方向でもありますよね〜?」
気になった私は、黒煙のあたりまで飛んでいった。
そこには、先ほどのミレーヌのものよりもさらに大きな馬車があった。
しかし、その馬車は、壁の半分がバラバラに吹き飛んで、一部の木材が燻るように燃えていた。
そして、馬車を引いていた馬や、馬車の持ち主であろう見なりの良い男性、馬車の中に乗っていたであろう数人の人間たち
うーーん。
これも、さっきのマンティコアの仕業かなぁ。
いくら私の魔力が無限になっても、死んでしまったものを生き返らせたりはできない。
とりあえず、他の馬車とかの通行の邪魔にならないところに穴を掘って、埋葬してあげようか。
「……ん?」
莫大な魔力量で自然強化されている聴覚が、馬車の残骸の中から聞こえる心音と呼吸音を捉えた。
「まだ、生きている人もいますね」
私は馬車の残骸に歩み寄り、破片や木材を持ち上げてみた。
すると、木材の隙間に埋もれるようにして、灰色の犬耳と尻尾の生えた少女が倒れていた。
気を失っているが、息はしている。
私はひとまずその少女を助け起こそうとして、肩に手を触れたとたん……、
「……うわっ!?」
体中の魔力が、一気に萎んでいくのを感じた。
え、まさか。
『総資産額・1000025ゼニー』
『魔力量・60』
『魔力強度・ペーパー級』
やっぱり!?
資産が増えて、魔力量が一般人以下まで減ってる。
そこで私は、ようやく気づいた。
この犬耳少女、鎖のついた奴隷用の首輪をしている。
つまりこの子は奴隷で、おそらく持ち主は、そこで亡くなってる見なりの良い男性。
個人所有奴隷なのか販売用奴隷なのかは分からないけど、所有者が死亡した場合の奴隷は、第一発見者が一時的に所有権を取得することになる。
これは、奴隷契約魔法の暴走を防ぐための措置であり、発見者は規定の期間内に公的機関に届け出をする必要があるわけだが、
つまり今、持ち主がいなくなったこの子に触れたことで、私に所有権が移ってしまったわけだ。
「……どうしましょう」
非常に困った。
この子の所有権を持ったままだと、魔力量が激減してしまう。
しかも、この場には他に誰もいないため、所有権の譲渡もできない。
私が再び魔力を得るためには、この子の資産価値をゼロにするか、
奴隷契約自体を、
「……ま、悩むような選択肢ではないですよね〜」
私は、以前勉強したスイパラ王国での奴隷契約にかかる法律を思い出し、必要な手続きを実行することにした。
まず私は、馬車の残骸の中から非常に頑丈そうな鉄箱を見つけ出し、見なりの良い男性の服から鉄箱の鍵を取り出して、開錠した。
箱の中には数枚の羊皮紙が入っており、その中でも、まだ1枚だけ契約機能が継続しているものを取り出し、書いてある条文を読む。
契約自体はシンプルなものだ。
特に難しい条項もない。
これなら、規定条文を読み上げたうえで正式な文言で契約破棄を行えば、一時所有者の私でも契約解除できる。
「スイパラ王国奴隷契約法第13条の、特例条項の3。契約対象乙のコルネにかかる生命、身体、財産、その他一切の権利を放棄し、本契約を破棄する。契約対象甲二号、ヌアーディア」
私は、馬車の木材の燃えカスを指先に少しつけ、契約書の裏面に署名をした。
すると、奴隷契約魔法が解けた羊皮紙から有効を示す紋様が消失し、犬耳の子、……コルネの首輪がガチャンと外れた。
『総資産額・25ゼニー』
『魔力量・6500000』
『魔力強度・ペーパー級』
それと同時に、私の体に魔力が戻ってきたのを感じた。
ふぅ、危ない危ない……。
どこに
「んー。ひとまず、容体は安定していますので、コルネはそのまま寝かせておきましょうか」
その間に、他の人たちを埋葬しておこう。
◇◇◇
「……ワウ?」
「あ、目が覚めましたか?」
「!? だ、誰……!?」
目覚めたコルネは私の声に反応すると、パッと飛び起きて私と距離を取った。
私は、空になった鉄箱を鍋の代わりにして溶かしたチーズに香辛料を一振りし、薄く切った干し肉を浸してパンに挟んで簡単サンドイッチにした。
そしてそれを、コルネに差し出した。
「私のものではありませんが、どうせここに置いていっても野生動物に食べられるだけなので、私たちでいただきませんか?」
「……あなたは?」
「ヌアーディア、と申します。たまたまここを通りかかったところ、バラバラになった馬車や、亡くなった方々を見かけたので、あちらに埋葬させていただきました」
「……!」
「まことに残念ながら、貴女以外の生存者はいませんでした。それと、私の都合100パーセントの理由で、貴女の奴隷契約を解除しています」
「え……?」
「首輪、ないでしょう? 奴隷の貴女は100万ゼニーの価値があったのですが、それほどの資産を持ってしまうと私が弱くなってしまうので、緊急措置として契約を破棄しました」
「首輪……、ない……」
コルネは、しばらく呆然とした様子で自分の首を撫で回していたが、やがてお腹がぐぅと鳴り、ふらふらと私に近寄ってきた。
そして、私が差し出していたサンドイッチを受け取ると、パクリと一口かじった。
「……!!」
パクリ、パクリとサンドイッチを食べる。
もぐもぐと噛んでゴクンと飲み込むと、今度は大きな口でバクリ。
私は、唯一破れずに残っていた飲み水用の皮袋もコルネに渡し、自分用のサンドイッチをもぐもぐ食べる。
ワインの入っていた皮袋があったので私はそちらを飲んだが、……うーん、酸っぱい。安物だね〜。
お互いに、もぐもぐ食べてごくごく飲んで、残ったものを全て埋めて所有権を放棄する。
それから、
「コルネは、これからどうしたいですか?」
「……分かんない」
「奴隷の身分に、戻りたいと思いますか?」
「それは、嫌だ。……ヌアーディア様は、どちらに?」
「ひとまず、近くの町まで行って、冒険者登録でもしようかな、と。私はお金がないほど強いので、このように麻袋の服とかなら、だいたいのものには負けないと思いますし」
「……わたしも、ついて行っていい?」
「私にですか? なぜ?」
「ヌアーディア様、わたしを奴隷じゃなくしてくれた。だから、ついて行きたい」
「私が奴隷契約を解除したのは、そうしないと私が弱くなってしまうからですよ? つまり、コルネのためではありませんでした」
「……それでも、ヌアーディア様は、わたしを自由にしてくれたから」
「分かりました。そこまで言うなら、一緒に行きましょう。その代わり、ヌアーディア様だなんて呼ばなくていいですよ。ヌアと呼んでください」
「……ヌア様?」
「ヌア、で良いですよ?」
「ヌア様がいい」
「そうですか。それなら、行きましょうか」
「ワん」
こうして私に、可愛らしい旅の仲間ができたのだった。