〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた   作:肉と米と愛

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エリオットもといエリスは、原作よりも少し頭がいいです。
つまり、難しい言葉も覚えてるんです。


全部お前のせい

 

 

 

 

〜〜〜エリオット視点〜〜〜

 

 「ルーディアを穢したのは、誰だ?」

 

 血で赤く染まった視界の中に、ルーデウスがゆっくりと部屋に入ってくるのが見えた。

 

 「ルーデウス……ギレーヌはーーー」

 

 「雑魚は黙っていてください」

 

 ルーデウスは俺を見ることなく、ただルーディアの方へ歩いていく。

 

 「おい!ぞれ以上近づぐど、ごの女を斬るぞ……!」

 

 ルーデウスの不気味な雰囲気に押されながらも、男はルーディアの首に真剣を突きつけた。

 しかしそれでも、ルーデウスの表情は変わらない。

 

 その時、ルーデウスの背後に回っていた男の一人が、剣を構えている事に気付いた。

 

 まずい、ルーデウスが斬られる……!

 

 「ルーデウス!後ろだ!」

 

 「死ね!」

 

 叫んだ男は、ルーデウスの首めがけて剣を振り下ろした。

 

 スッ………

 

 しかし、男が放った真剣が、ルーデウスに届くことはなかった。

 ルーデウスは振り下ろされた剣を、体を横に移動させ回避した。

 

 「なッ!?」

 

 ルーデウスは、体勢を崩した男に向け、脚を振り上げる。

 そしてそのまま上げ切った足を、凄まじい速度で男に叩き込んだ。

 

 ドゴンッ!

 

 耳が壊れてしまうほどの衝撃音。

 

 「嘘だろ……おい……!」

 

 舞っていた砂埃が消えると、そこには頭がなくなった男と、その上に立つルーデウスの姿が……

 

 「なんで俺が、剣術の稽古をサボるのか、分かりますか?」

 

 ルーデウスは、首がなくなった男を見下ろしながら尋ねる。

 

 「この野郎……!」

 

 「一斉にかかれ!」

 

 リーダー格の男が叫ぶと、ルーデウスの周りを残りの三人が囲む。

 

 「行けぇ!!」

 

 三人がルーデウスに向かい飛びかかり、完全に逃げ場を塞いだ。

 

 今度こそ本当にまずい。

 でも、俺にはどうすることも………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その刹那。

 突然、ルーデウスの周りから、色が消えた。

 

 比喩なんかじゃない。

 本当に世界が、白黒になった。

 鉄格子から差し込んでいた月の光も、地面に散らばった血液も、全てが色を失っている。

 

 しかし、ただ一つ、ルーデウスの右拳だけが、色鮮やかに輝いていた。

 

 バコン!!

 

 今まで聞いたことのない破壊音。

 感じたことのない強風。

 

 とんでもない。

 この威力は……もしかしたらギレーヌよりも……

 

 再び砂埃が消えると、ルーデウスに向かい飛びかかっていた男達が、全員地面に頭から突き刺さっていた。

 

 「みんな弱いんですよ。戦っていて、心底つまらない」

 

 ルーデウスは、何事もなかったかのようにまた歩き始め、ルーディアを抱える男に近づいていく。

 

 「な、なんなんだよ……お前!!」

 

 男はそんなルーデウスに恐怖し、ルーディアに突きつけていた剣を落とすと、壁へともたれかかった。

 

 「俺のことなんて、どうだっていいでしょう」

 

 ルーデウスは笑顔を浮かべながら、男が落とした剣を拾い上げ、男へ向ける。

 

 「さて、あなたにこれから二つ質問をします。全て正直に答えてくださいね?」

 

 「分がっだ……!分がっだがら命だけばーーー!」

 

 「一つ、あなたを雇ったのは、あそこの男ですか?」

 

 男が話し終える前に、ルーデウスは部屋の奥に転がっている生首を指差した。

 あの顔は……間違いない。

 お父様のところで働いている使用人だ。

  

 「ぞうだ……!いや、具体的にば少し違うが……」

 

 「ほう、詳しく聞いても?」

 

 「た、確がに、ロアの町に住む町長の息子を殺せど依頼じでぎだのは、あいづで間違いない。だげどよ!女を攫えど依頼したのば別の奴だ……!」

 

 「ッ!?」

 

 なんだと……!

 他に犯人がいるのか?

 

 「その人物の名前は?」

 

 「………知らない」

 

 ザシュッ!

 

 男の右腕が、ルーデウスの振り下ろした剣で切り落とされた。

 

 「あぁぁぁ!!」

 

 男は痛みのあまりにのたうち回り始める。

 

 「しらばっくれるなら、次は左腕ですよ」

 

 「待っでぐれ!本当に知らないんだ!そもそもごの依頼ば、俺達のリーダーが別の奴らがら貰っでぎだんだ。だがら本当に……俺は何も知らねぇ!」

 

 泣きながら訴える男の姿に、俺は憐れみさえ感じた。

 

 「………まあいいでしょう、いずれ分かることです。では、最後に一つ」

 

 ルーデウスは男の首に剣を突き立てる。

 

 「ルーディアに何をしました?」

 

 「な、何もじでなーーー」

 

 ルーデウスの腕が見えなくなると、男の左腕が消えた。

 

 「あぁぁぁぁ!!」

 

 「これが最後です。俺の妹に………何をした?」

 

 「ぶざげるなよ!お前らだげいい思いじやがっで!どうぜあの館で、お前らも女を喰いまぐっでだんだろ!?だっだら、ごの女の口や体ぐらい、喰っだっでバチば当たらーーー」

 

 ザシュ……!

 

 そして、最後は男の首が、地面へと転がり落ちた。

 

 「………」

 

 男の返り血を浴び、全身が赤く染まっても、ルーデウスの表情は変わらない。

 そして、血で塗れた手のまま、ルーディアを抱き抱える。

 

 「兄……様……」

 

 「帰りましょう。ブエナ村へ」

 

 ルーデウスはそれだけ呟くと、出口に向かっていく。

 

 「ルーデウーー」

 

 バコッ!

 

 倒れている俺の腹に、ルーデウスの蹴りがめり込んだ。

 

 「うッ!」

 

 「『山猿』、あなたはルーディアを守るどころか、彼女を危険な場所へ連れていった」

 

 クソ……息が……

 

 徐々に視界がボヤけ、意識が、薄れていく。

 

 「二度とルーディアに近づかないでください」

 

 ルーデウスが、再び闇に包まれた廊下に消えていくのを見ながら、俺の意識は完全に消失した。

 

 

 

 

   

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 「う……」

 

 「エリオット!」

 

 騒がしい声につられて、俺は薄っすらと目を開く。

 目を開けば、俺が住んでいる館の天井。

 そして、視界の端から顔を出しているのは、ギレーヌだ。

 

 体を上げ、周りを見渡せば、いつもと変わらない俺の部屋。

 しかし、体にはまだ少し痛みが残っている。

 つまり、夢ではない。

 誰かが俺をここまで運んできてくれたのだろう。

 

 『エリオット!!』

 

 記憶が蘇ると同時に、茶髪の少女のことを思い出した。

 

 そうだ……ルーディア!

 

 「ギレーヌ!ルーディアは!?」

 

 俺が尋ねると、ギレーヌの顔が曇る。

 

 「まさか……死んだのか?」

 

 「違う生きている!生きてはいるが……」

 

 それ以上は何も言わずに、ギレーヌは下を向いた。

 

 クソ、埒があかない。

 まずは自分の目で確かめなければ。

 

 そう思い、俺はベッドから立ち上がろうとした。

 

 ガタッ

 

 しかし、足に体重をかけた途端、崩れるように地面へ倒れ込んでしまった。

 

 「安静にしていろ。治癒魔術を掛けられたとはいえ、まともに歩けるような状態ではない」

 

 「だったら木刀をくれ……それで支える……」

 

 「安静にしろといったはずだ。それに、ルーディアに会ったところで、今のお前にできることはーーー」

 

 「ギレーヌ……!」

 

 芋虫のように、惨めに床を這いずりながらギレーヌを見上げる。

 

 「頼む。ルーディアに、会わせてくれ……」

 

 「………」

 

 自分の体なんて、今はどうでもいい。

 ルーディアに、会わなければ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 部屋に入る前から、嫌な予感はしていた。

 そして、ルーディアの部屋に入った瞬間、その予感は確信へと変わっていった。

 

 

 「エリオット!目が覚めたのか!?」

 

 「お父様?」

 

 部屋にはお父様と、壁の方を向いて横になっている、ルーディアがいた。

 

 「なんでここに、お父様が……」

 

 俺は木刀を支えにしながら、部屋の中に入る。

 しかし、慣れない歩き方な為か、ふらふらとよろめいてしまう。

 

 「動かなくていい。ほら、ここに座るんだ」

 

 そんな姿を見かねたお父様が、俺の前に椅子を用意してくれた。

 それでも、ルーディアはまだ、こっちを見ない。

 俺は木刀を壁に置き、用意された椅子へと座ると、お父様が深いため息を吐く。

 

 「それじゃあルーディア、パウロにはそう伝えておくよ」

 

 「………」

 

 お父様はそれだけ言うと、いつもの笑顔を歪ませながら、部屋を出て行ってしまった。

 

 部屋に残されたのは、俺と、壁を向くルーディア。

 

 何か、話さなくては……

 そうしなきゃ、俺の心は押し潰されてしまいそうだ。

 

 「ルーディア、大丈夫か?」

 

 「大丈夫そうに見えますか?」

 

 「………」

 

 そう答えたルーディアの声は、酷く掠れていた。

 

 「一ヶ月後に、ブエナ村へ帰ることになりました。目標だった大学の入学費も、前倒しで払ってくれるそうです」

 

 「………そうか」

 

 淡々と話すルーディアに、俺はそんな言葉しか、返すことができない。

 本当は、もっと寄り添ってあげなくちゃいけないのに……

 

 「エリオットの家庭教師も、これでお終いです」

 

 「え?」

 

 自分でも、信じられないぐらい高い声が出た。

 

 ルーディアが、ここを出ていく。

 

 嫌だ……

 

 真っ先に、そんな感情を抱いた。

 

 行かないで欲しい。

 そんなこと、言える立場でないのは分かっている。

 でも彼女は、俺が初めて心の底から尊敬できた、恩人なんだ。

 そんな彼女との別れが、こんな悲惨な結末だなんて……あまりに……

 

 「ルーディア、それはーーー」

 

 「おい」

 

 その時、俺の背後から、ルーデウスの低く唸るような声が聞こえた。

 

 ガシ……

 

 振り返る間もなく、俺は髪を掴まれ、床へと下ろされる。

 

 「二度とルーディアに近づくなと、言いましたよね?」

 

 「ぐッ!」

 

 ルーデウスはそのまま俺の髪を引き摺り、部屋の扉へと歩いていく。

 

 「………」

 

 そこで初めて、ルーディアが上半身を起こし、引きずられる俺を見ていることに気づいた。

 

 綺麗に整えられていた髪は乱れ、目の下にはクマができ、見違えるほどに変わり果てたルーディアが、そこにいた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 ドン!

 

 ルーデウスはエリオットを部屋の外まで引きずると、そのまま壁へ押し付けた。

 

 「今更何のつもりですか?」

 

 「俺はただ……ルーディアの心配を……!」

 

 エリオットの首を絞めるルーデウスの手が、徐々に強まっていく。

 

 「雑魚が相手を思いやるほど、無意味なことはありません」

 

 「……くッ!」

 

 バコッ!

 

 ルーデウスは、壁に押し付けていたエリオットを地面に投げ捨てると、そのまま勢いよく彼の腹を蹴り上げた。

 

 「肝に銘じておいてください。俺がまだあなたを殺していないのは、あなたの血筋と、ルーディアのお陰だということを」

 

 「うぅ……」

 

 「………チッ」

 

 腹を抑え、もがき苦しむエリオットを見下すと、ルーデウスは何処かへ去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「クソ………!」

 

 エリオットは嗚咽し、涙を流しながら、床を叩く。

 

 怒り。

 他者に対して抱いた怒りではない。

 エリオットは初めて、自分に対し、怒りを覚えた。

 

 自分がもっと強ければ、もう少し上手くやれていれば、こんなことにはならなかった。

 ルーディアが、傷つけられる事はなかった。

 

 しかし、そんな己の弱さを嘆くエリオットの心に、もう一つの強い思いがあった。

 

 (ルーディアと、まだ、一緒にいたい)

 

 諦めきれないその思が混ざり合い、エリオットの心を更に掻き乱す。   

 

 

 

 彼はもう、『山猿』ではない。

 他人と同じように悩み、他人を思いやることのできる、一人の『人間』なのだ。

 

 やがてエリオットは、壁を支えにしながら立ち上がり、拳を力強く握りしめた。

 

 (強くなる……理由……)

 

 ルーデウスが語っていた、強くなる理由。

 エリオットにはその答えが今、分かったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿が遅くなってすいません。クオリティを上げながら、投稿を速くできるように頑張ります。
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