〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた 作:肉と米と愛
三人称視点って書いた方が分かりやすいですかね?
〜〜ルーディア視点〜〜〜
今日もまた、何もせず一日が終わってしまった。
「………はあ」
あれから、どれくらいの時間が経ったんだろうか……
ずっとベッドの上にいるせいか、時間感覚が狂っている。
「あ、起きていましたか?ルーディア」
部屋の扉が開くと、夕食を手にしたルーデウスが入ってきた。
「兄様……いつもありがとうございます……」
「そう思うなら、早く体調を治してください」
ルーデウスは夕食を俺の前に置き、近くの椅子に腰掛ける。
「三日後に、ブエナ村へ帰ることになりました。父さんが直接ここに来るそうです」
「……そうですか」
三日後……か。
「まあ、あのバカ親のことです。予定よりも早く来そうですがね」
「………」
パウロは……どんな顔をするだろうか……
散々大人みたいなことを言いまくって、結局何もできずにブエナ村に戻るなんてことを知ったら、失望されてしまうんだろうか?
「『山猿』は論外として、フィリップさんやサウロスさんには、挨拶ぐらいは済ませておいてくださいよ」
フィリップはあれから何も言わず、俺がここで寝込むことを容認しているが、本当に大丈夫なのか心配だ。
エリオットも、あれから俺の部屋には来なくなった。
まあ当たり前か、あんなに冷たく接してしまったんだ、俺のことなんか、もう眼中にもないよな。
そうやって吹っ切れようと、何度も何度も、自分の心の整理をする。
しかしどうしても、喉に刺さった小骨のように、心のどこかに引っかかってしまう。
エリオットに、見捨てられる。
「…………」
情けない……
エリオットは変わっても、結局俺は、何も変わってないじゃないか。
あぁ、シルフにどんな顔をして会えばいい?
汚い男達に口を奪われ、惨めになった俺の姿を見ても、まだ彼は俺を親友として見てくれるだろうか……
今更そんなこと考えたって、無駄だって言うのに……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
二日後
ルーデウスの予想通り、パウロは予定よりも早くロアに到着した。
「ルーディア!!」
馬から飛び降りたパウロが、広場に待機していたルーディアを抱きつく。
「ルーディア……すまん!」
「父様……」
送り出した時とは随分とやつれてしまったルーディアの姿に、パウロは心から後悔した。
あの子達なら大丈夫だろう。
まだ十歳にもなっていなかった娘と息子を、親元から離してしまった。
そんな自分の浅い考えが、こんな悲惨な結果をもたらした。
「パウロ、すまない……全ては私の管理不足によって起きたことだ」
ルーディアの横に立つフィリップが、パウロに頭を下げて謝る。
「フィリップさんは何も悪くありません。悪いのは全て、あの『山猿』です」
「………」
ルーデウスに、今回の件は自分の息子のせいだと言われても、フィリップは反論の言葉を出さなかった。
それは、彼にとっても今回の騒動の原因が、エリオットと深く関わっていると知っていたからだろう。
「やめてくれ、この町に娘と息子を送り出したのは、俺達家族なんだ……」
パウロはルーディアとの長い抱擁を終えると、彼女を抱きかかえながら立ち上がった。
「ルーディア、ルディ、帰ろう。ゼニスとリーリャが待ってる」
馬の上にルーディアとルーデウスを後ろに乗せると、パウロは振り返ることなく、馬を走らせようとした、その瞬間だった。
「………」
パウロ達の前に、赤毛の少年が立ち塞がっていた。
髪は乱れ、服は汚れ、そして右手には、木刀が握られている。
「エリオット!今までどこに行っていたんだ!?」
後ろにいたフィリップが、珍しく声を荒げた。
(こいつが、『山猿』)
パウロはエリオットを見る。
顔は無表情で、何を考えているのかは分からない。
しかし、その目には、燃えるような強い意志が感じる。
そんなエリオットに、パウロは少し親近感じた。
冒険者時代、パウロも、彼と同じような目をしていた時がある。
ゼニスという妻と、ルーデウスという大切な息子を守ると覚悟を決めた時の、あの目と同じだ。
「ルーデウス」
パウロ達の前に立ちはだかるエリオットは、ルーデウスの名を呼ぶと、木刀を構えた。
「最後にもう一度だけ、戦ってくれ」
エリオットから告げられたのは、決闘の申し出。
一度も勝てなかったルーデウスに、エリオットは再戦を挑んだのだ。
それも今までのような不意打ちではなく、真正面から。
「ルーデウス、私からも頼む」
「ギレーヌ……!?」
いつからそこにいたのか、物陰から現れたギレーヌが、エリオットの横に並ぶ。
「勝ったところで何も得られんような戦いだが、エリオットの最後の我儘に、付き合ってくれないか?」
「ふざけてんのかギレーヌ!?さっさとそこを退け!」
パウロは激怒した。
ただでさえ娘は苦しみ、純潔を奪われかけたというのに、さらに息子を危険な目に合わせようとするギレーヌの言葉に、理解ができなかったのだ。
今になって、パーティーを抜け出した自分への復讐をしようとしているのかとさえ疑った。
ドサ……
しばらくすると、ルーデウスが馬から降りた。
「ルディ、お前まさか……!」
「勘違いしないでください父さん。別に彼と戦う気はありません」
ルーデウスの額に、初めて青筋が立つ。
「今から始まるのは、一方的な蹂躙ですよ」
そうやって笑みを浮かべて話すルーデウスの瞳は、血に飢えた怪物のように、エリオットを静かに睨みつけていた。
〜〜〜エリオット視点〜〜〜
「お前達、準備はいいな?」
「ああ」
「いつでもいいですよ」
ギレーヌに確認され、俺は今一度持っていた木刀を力強く握りしめた。
ルーディア、お父様とお母様、そして奥の方では、お祖父様とパウロがこちらを見ている。
敗北は許されない。
絶対に勝つ。
勝って、みんなに教えてやる。
ルーディアの凄さと、強さを……!
まだルーディアには、教えてもらいたいことが沢山あった。
だけど、そんな身勝手な理由で、また彼女を苦しめたくはない。
だから、せめて彼女に気づいて欲しい。
俺はルーディアのお陰で、ここまで成長できたって……
「始め!!」
「はあぁぁぁ!」
ギレーヌの声と同時に、俺はルーデウスに突撃していく。
「またそれですか?」
木刀をルーデウスに突きつけようとしたが、当然のようにかわされた。
「終わりです」
横に移動し、ルーデウスの振り上げた足が、俺へと振り下ろされる。
「まだ!」
ヒュン……!
「……?」
俺はギリギリでルーデウスの蹴りを避け、そのまま身体を捻った。
ドゴッ!
ルーデウスの腕に、俺の木刀が直撃する。
当たった!
「まじか……!」
奥の方で見ていたパウロが、いつの間にかフィリップの横に並んでいる。
「この短期間でここまで強くなるとは、驚きです」
木刀が当たったにも関わらず、ルーデウスは笑っていた。
「ギレーヌから特訓を受けたのか、はたまた自分で鍛えたのかは知りませんが、少しはやるようになったみたいですね。ですが……」
「ッ!?」
次の瞬間、視界の真ん中にいたはずのルーデウスが、俺の前から姿を消した。
どこに………
バコッ!
背後から鈍い音が聞こえると、背中に激痛が走る。
「ぐッ!」
俺は吹き飛ばされながらも地面に着地し、体勢を整えた。
速い、そして、強い……!
ルーデウスが、ゆっくりとこっちに向かってきている。
まだだ、まだやれる。
俺は地面に落ちた木刀を拾い上げ、再び突進していく。
ドン!!
ルーデウスの首に、木刀が届く距離まで近づいた瞬間、俺は後ろへと吹き飛ばされた。
「ガハァ!」
遅れて痛みがやってくる。
クソ……!
一体何が起きた?
ルーデウスは歩いているだけだ。
なのに、なんで吹き飛ばされーーー
バコッ!
考えている間に、また吹き飛ばされた。
「強くはなりましたが、まだまだですね」
ルーデウスは何食わぬ顔で俺に近づいてくる。
しかしその手は、動いていない。
ドゴッ!
「グホッ!」
それなのに、俺は吹き飛ばされる。
何故だ……
「
気づけば、俺は壁にぶつかっていた。
壁にもたれかかり、下を向く俺の前に、ルーデウスが立つ。
「これであなたの負けですが、あんまり落ち込まないでくださいね?」
これで……終わるのか?
また、負けるのか?
「俺より優れた人間なんて、この世界のどこにも存在しないんですから」
ルーデウスが、右足を横に上げた。
『今まで頑張ってきたじゃないですか。今回もきっとできますよ』
「………」
違う、ここがそうなんだ。
ここが、勝敗を決める『
今ここで、全力を出し切る。
強くなる理由を、ルーデウスに見せるんだ。
ドゴン!
ルーデウスの蹴りが炸裂する瞬間。
俺は姿勢を低くし、攻撃をギリギリで回避した。
ルーデウスが放った蹴りは、壁を抉りながら空を切る。
今だ!!
「なんですかーーー」
ガンッ!!
「はぁぁぁぁ!!」
俺は木刀を投げ捨て、ルーデウスの顔面に向かい、拳を放った。
今出せる全ての力と、声を張り上げながら。
硬い……!
まるで、ロアの町を囲んでいる城壁みたいだ。
ゴキ……
右腕の骨が折れた。
「ぐッ!」
まだだ!
ドゴッ!
俺はすかさず左拳をルーデウスに放ち、反撃する隙を奪う。
技なんかじゃない、無茶苦茶な攻撃だ。
それでいい。
もう、折れてもいい。
砕けてもいい。
それでこいつが、倒せるなら。
ルーディアをまた、守ることができるなら。
バコンッ!
ボゴッ!
ガンッ!
折れた右腕と、砕けかけている左腕の拳を、迷うことなくルーデウスの顔にぶつける。
ルーデウスは、立ったまま後ろへと後退していく。
「これで……最後だ!」
ドン!!
俺は右腕の拳に最大の力を込め、ルーデウスの腹を殴った。
ガク………!
ルーデウスは俺の前で片膝をつき、右腕を地面につけた。
「確かにお前は、俺よりずっと強いし、頭もいい」
「………」
俺はルーデウスを見下ろしながら、ゆっくりと口を開く。
「だけど一つ、一つだけ、俺がお前に勝ってることがある」
ルーデウスから視線を逸らし、パウロの横で俺を見ている、一人の少女を見た。
俺が守ると決めた、強くなる理由になった少女。
「ルーディアを守りたいと思う、『覚悟』だ」
次回 ルーデウスバチ切れ
エリオット君、がんばれ!