〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた   作:肉と米と愛

19 / 19
遅くなってしまいすいません。
一万字くらいのを投稿しようと思ったのですが、流石に長すぎると思い分割することにしました。
日を開けてまた投稿させてもらいます。


誰だって悩むんです

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 パーティーが終了してしばらく。

 

 一通り問題を片付けたフィリップは、自身の部屋に一人の男を招き入れていた。

 

 

 

 「やるねぇ、じゃあここはどうかな?」

 

 フィリップは卓上に置かれたチェスに興じながら、貼り付けたような笑顔を崩さない。

 

 「では、ここに」

 

 フィリップの対面に座っているルーデウスは彼が次に行う一手を読んでいたかのように、迷うことなくチェスを動かした。

 

 ルーデウスの神技とも言える一手により、絶え間なく動いていたフィリップの手が止まる。

 

 「おっと、これは困ったね。少し考える時間を貰ってもいいかな?」

 

 「構いませんが、そこから俺に勝てる未来がありますかね?」

 

 ルーデウスは当然の結果だと言わんばかりに、フィリップに冷たい視線を送った。

 

 「それは、やってみるまで分からないよ」

 

 口ではそう言っているが、実際のところ、フィリップが今の盤面を覆すことはほぼ不可能に近い。

 この一手を間違えれば、緩やかな敗北へと追い込まれるだろう。

 

 子供に負ける。

 幾度となくチェスを嗜んできたフィリップにとって、それは絶対に避けたいことであった。

 

 「…………」

 

 長考するフィリップを横目に、暇を持て余したルーデウスは、手前側に置いてある駒をいじり始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから、しばらく時間が経った後。

 

 フィリップは顎に手を乗せながら、大きなため息を吐いた。

 

 「本当に、ルーディアを置いてブエナ村へ帰ってしまうのかい?」

 

 フィリップの口から出てきた言葉は、降参ではなく、全く別の話題だった。

 

 「幼い妹達の世話をしなくてはいけないので」

 

 全く関係のない話を振られても、ルーデウスは動じることなく駒を興味深そうに見つめている。

 

 「嘘だね」

 

 しかし、フィリップが次に放った言葉に、ルーデウスの手が止まった。

 

 「………」

 

 「そんな理由なら、わざわざルーディア達に秘密にして欲しいなんて私に言わないはずだ。つまり、君がブエナ村に戻るのには、もっと深い訳があるんだろう?」

 

 フィリップが考えた推理に対し、ルーデウスは沈黙する。

 

 「大丈夫さ、ここでの会話は他言しない。もし私がこの話を"うっかり"漏らしてしまったなら、君も私の秘密を広めてしまえばいい」

 

 今日のフィリップは、いつもよりも口数が多い。

 酒が回っているのもあるが、なにより、彼自身もルーデウスがここを離れる理由について興味があったのだ。

 

 「…………」

 

 しばらく黙り込んでいたルーデウスだが、やがて諦めたのか、その肩をゆっくりとすくめた。

 

 「ルーディアは天才です」

 

 ルーデウスの手が、駒から紅茶の入ったマグカップへと移り変わる。

 

 「剣術はからっきしですが、魔術に置いて右に出る者はいないでしょう」

 

 「そうだね。私も理解しているよ」

 

 フィリップは変わらない表情でルーデウスを見つめている。

 

 「そして何より、彼女は人が自然に近づきたくなるような優しさを持っている………だから……」

 

 ルーデウスの持っていたマグカップが、一瞬震えた。

 

 「俺は、彼女の横にいるべきではない」

 

 そしてルーデウスは、冷たく、いつもの彼とは考えられないほどか細い声で呟いた。

 

 「………どうしてだい?」

  

 事態が思ったよりも深刻なことに気づいたフィリップが、諭すような声で尋ねた。

 他人の事など気にも留めていないであろうルーデウスが、ここまで弱気になっているのだ。

 フィリップが心配するのは必然だろう。

 

 「エリオットと戦って気付いたんですよ。ルーディアを守るのに必要なのは、力なんかじゃなくて、彼女に並ぶくらいの優しさなんだって」

 

 「…………」

 

 「でも俺は、その優しさを持ち合わせていません。力だけを持って生まれました」

 

 ルーデウスは笑みを浮かべるが、その笑みにいつもの不気味さは微塵も感じられない。

 むしろフィリップは、憐れみさえ感じた。

 

 「笑えませんか?涙も流せず、心から笑うことすらできない、人の皮を被った怪物が、他人を守ろうとしているんですよ?」

 

 

 バキッ!

 

 ルーデウスが持っていたマグカップが割れ、中に入っていた紅茶が、彼の服へと飛び散る。

 

 「ああ、すいません。少し熱くなってしまいました」

 

 「構わないよ。それで君の気持ちが晴れるのなら」

 

 フィリップはやや自暴自棄になっていたルーデウスを咎めることなく、ただ静かに座っていた。

 

 そんな彼の姿を見て、ルーデウスは冷静さを取り戻し、大きく深呼吸をする。

 

 「とにかく、明日中には帰れるよう準備をしておきますから、フィリップさんは馬車の手配をお願いします」

 

 居心地が悪いと感じたルーデウスは、部屋を出ようと椅子から立ち上がった。

 

 「まあ待ちなさい。勝負はまだ終わっていないよ」

 

 しかし、フィリップは彼を引き留め、再び椅子へ腰掛けさせた。

 

 「話は大体分かった。つまり君は、あの優しくて強いルーディアの側にいれば、彼女の成長を妨げてしまいかもしれないと考えているんだね?」

 

 「………ええ、そうです」

 

 少し間を置いて囁くように答えるルーデウスを見て、フィリップは笑った。

 

 「ハハ!やっぱり、君はパウロとは全然似てないね」

 

 それはフィリップの本心から出た笑いだった。

 

 「……笑うほどのことですかね」

 

 愉快そうに笑うフィリップを見て、ルーデウスは不満そうな表情を浮かべる。

 

 「ああすまない。あまりにあいつと似つかないものだから」

 

 フィリップはひとしきり笑い終えた後、それまで止まっていた腕を動かし始めた。

 

 「でも私はね、ルーディアには君が必要だと思うんだ」

 

 フィリップの言葉に、ルーデウスの眉が少し動く。

 

 「君はルーディアの兄だ。それは他の誰にも成り代わることのできない、大切な存在だ」

 

 「………」

 

 「ルーデウス、私から一つ、君にこの社会を上手く生きていくコツを教えてあげよう」

 

 フィリップは卓上に置かれたチェスを持ち上げ、ある一つの場所へと移動させた。

 

 「………ッ!」

 

 その一手に、ルーデウスは思わず目を見開いた。

   

 

 

 敗北がほぼ確定していたフィリップ。

 そんな彼が置いた一つの駒で、勝利への活路が僅かに開いた。

 逆にルーデウスは、敗北への道筋が開き始める。

 

 「思い詰められた時は、他の視点から物事を考えるといい」

 

 フィリップの細い眼差しが、ルーデウスに向けられる。

 

 「君はルーディアの兄、その唯一無二の『持ち味』を活かしてみなよ」

 

 別の視点から物事を観測し、自身の持つ最大の持ち味を利用する。

 それは、フィリップが人生で得た教訓だった。

 グレイラット家という上級貴族として生まれ、幼い頃から闇渦巻く政界に関わってきた。

 血を分けたはずの兄弟との、薄汚い権力争いに負け、人質としてエリオット以外の息子を王都へ連行された彼の、戒めとも言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 (持ち味を、活かす………か……)

 

 ルーデウスはフィリップから言われた言葉を、心の中で復唱した。

 彼の中で何か足りなかったはずの何かが埋まった。

 

 「……そうですね。持ち味は、最大限活かさなくてはいけませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜ルーディア視点〜〜〜

 

 どうも、ルーディア・グレイラットです。

 

 突然ですが、私……俺は今、二度目の貞○の危機に晒されています。

 

 相手はあのエリオット。

 直接的に言われたわけではないが、女の子に"一緒に寝よう"なんて言ってきたのだ。

 少なからず、やましい考えは持っているだろう。

 

 

 

 『…………』

 

 時刻は12時を回っただろうか?

 部屋に入ってから大体30分が経った。

 

 今はエリオットと並んで、ベッドに腰掛けている。

 お互い何も話さない、ピクリとも動かない。

 

 ここで"そろそろ寝ましょう"の一言でもかけてしまいたいが、それを言う勇気も出ない。

 

 「………」

 

 ハッキリ言おう、エリオットはイケメンだ。

 母親譲りの情熱的な赤髪に、父親譲りの整った顔立ち。

 前世だったら超人気俳優とかになっていただろう。

 

 とにかく、風呂にも入ってなさそうな盗賊集団よりも、美男子のエリオットに初めてを奪われるほうが何倍もマシだ。

 

 しかし、体は女の子でも俺の心は中年のおっさん。

 男と恋愛なんてしたくないし、そんなことするのはもっと嫌だ。

 

 だがエリオットが俺に好意を持ってくれているのは素直に嬉しい、期待には応えてやりたい。

 

 どうしたものか……

 

 

 

 

 

 

 「……なあ、ルーディア」

 

 思考を巡らせる俺に、エリオットは静かな声で話しかけてくる。

 

 「………はい」

 

 「俺、最近変なんだ。なんと言うか、その……ルーディアのことを見たり考えたりすると、体が熱くなってくる……」

 

 エリオットはやや早口になりながら、自分の手を俺の手に乗せた。

 

 「なあ……ルーディア」

 

 「………はい」

 

 「絶対に幸せにするから、俺の気持ちを、受け止めてくれないか?」

 

 「それってどういう………ッ!?」

 

 次の瞬間には、俺はベッドに押し倒されていた。

 エリオットの荒い吐息が、俺の顔にかかる。

 彼の顔は熟した果実のように赤く染まっており、その目は獲物を捉えた猛獣のように光っていた。

 

 「エ……エリオットさん?」

 

 「ルーディア、欲しいんだ……!」

 

 ああやばい!

 この状況は非常にマズイ!

 

 「エリオットおかしいです!何か変な物でも食ったんじゃないですか!?」

 

 「分からない……けど、もしかしたら、お祖父様が飲ませてくれたお酒のせい…………かも」

 

 oh……

 やってくれたなあの変態ジジイ!

 恐らく、その酒の中に媚薬かなんかが入ってたんだ。

 自分が獣族のメイドとする為に入れたんだろうが……酔った勢いでエリオットにも飲ませてしまったんだきっと!

 

 「……ちなみに、どれくらい飲みました?」

 

 「一口ぐらいしか……飲んで……ない」

 

 やばい、エリオットの目がさらに凶暴な生物みたいになってきてる。

 一口でこの効果、なんて恐ろしい媚薬だ……

 

 どうする?

 組み伏せられているから、抵抗は出来ない。

 魔術で吹き飛ばしてもいいが、エリオットが大怪我を負う可能性もある。

 

 ええいクソ……!

 どうにでもなれい!!

 

 

 

 

 俺は押さえつけられた手のひらをエリオットに向け、衝撃波(エアバースト)を放った。

 

 ビュンッ!

 

 「ッ!」

 

 エリオットは衝撃波に巻き込まれ、そのまま本棚へと衝突する。

 

 ガタガタ!

 

 書庫室から借りてきた本の数々と、先日ロキシーから貰った魔人語について書かれた本が、エリオットの頭部へと落ちていく。

 

 「痛……!」

 

 「エ、エリオットの変態!どすけべ!!」

 

 俺は思いつく限りの罵声をエリオットにぶつけた。

 

 「………」

 

 しかし、頭に本の角がクリーンヒットしたエリオットは、既に気絶している。

 

 やべ……

 流石に強すぎたか?

 いやでも、これくらいじゃないとエリオットは離せなさそうだったし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よし……!

 逃げよう。

 

 俺は本に埋もれたエリオットを放置し、部屋から抜け出した。

 

 今晩は誰かの部屋で寝かしてもらおう。

 

 「………」

 

 自分の部屋から遠く離れたところで、エリオットの事が少し気になったが、まあいい。

 考えるのは、明日の俺に任せよう。

 

 

 

 

 おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 




アニメで『日記』、とうとう出ましたね……!
この世界のルーディアの日記を書くのが楽しみで仕方ない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

無職が来る前の世界で頑張ってみよう(作者:思いついたら書く人)(原作:無職転生)

 理由は分からないが死んで転生した。▼ 無職転生の世界に。▼ 問題なのはどうやらルーデウスとしての転生だということ。▼ うーん。どないしよ?ロキシーと結婚しないとダメ?▼ Web版を参考にしていきます。改善点は活動報告の方に。


総合評価:1698/評価:7.57/連載:36話/更新日時:2026年09月16日(水) 19:47 小説情報

ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら(作者:りんごりら)(原作:無職転生)

ルーデウスに2歳年下の妹ができました。▼妹の名前はトマ・グレイラット。お兄ちゃんっ子で倫理観は薄め。でも家族は大好きです。▼無職転生はなろう、漫画、アニメを見てます。▼呪術廻戦は漫画、アニメ▼Web版を参考に執筆しています。▼無職転生、呪術廻戦、呪術廻戦モジュロの最終話までのネタバレを含みます。▼呪力は無いです魔力で動く無為転変っぽいやつです。▼原作ストーリ…


総合評価:3239/評価:8.64/連載:30話/更新日時:2026年09月20日(日) 12:05 小説情報

愛読者、ルーデウスに憑依する 〜無職転生の夢を見る〜(作者:N au)(原作:無職転生)

目が覚めたら、読み込んだ『無職転生』の世界でルーデウスに生まれていた。▼これは夢だ。だったら遠慮はいらない——推しに会い、知っている悲劇には手を出す。▼夢だと思っている男が、家族になっていくまでの話。▼※補助としてAIを使用しています。▼設定等の保存、物語の構成、誤字脱字など。


総合評価:431/評価:7.33/連載:4話/更新日時:2026年07月25日(土) 21:00 小説情報

転生したら魔導王の子だった(作者:又三郎)(原作:無職転生)

 転生したらグレイラット家。▼ しかもルーデウスの娘だった。▼ そんな話。▼---▼一部原作の設定、展開に改変があります。▼2024/10/7▼1週間ほど毎日更新ストップします。▼2024/12/30▼長らく放置してすみません。近いうちにまた更新再開します。▼ペトラを描いてみました▼【挿絵表示】▼文字なし差分▼【挿絵表示】▼


総合評価:10051/評価:8.82/連載:12話/更新日時:2025年12月24日(水) 12:58 小説情報

玉葱騎士、六面世界に立つ(作者:プラザ合意)(原作:無職転生)

▼何もかも忘れ、志半ばで倒れた騎士。▼彼は何の因果か、異世界で再び剣を取る。▼たとえ記憶を失っても、たとえ壊れてしまっても。▼それでも彼は、誰かを守ろうとした。▼※ダークソウルと無職転生のクロスオーバーがないので自分で書きました。玉葱と言っているものの、主人公はジークマイヤーさんでもジークバルトさんでもジークリンデさんでもないです、すみません。


総合評価:3752/評価:8.8/連載:46話/更新日時:2026年09月11日(金) 20:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>