〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた 作:肉と米と愛
私生活が忙しく、執筆する時間が取れませんでした。
一応やるべきことは終わらせたので、また二日から三日のペースで投稿させてもらいます。
「俺はラノア魔法大学生徒会会長、ルーデウス・グレイラットです」
男の口から出たその言葉に、周りにいた生徒達はざわつき始めた。
「あいつが会長だって?」
「アリエル様じゃなくて、何であんな奴が?」
「でもまあ、カッコいいわ……!」
アリエルを差し置いて、何故あんな男が生徒会長を務めているのかと、戸惑う生徒もいれば……
「あれが、ルーデウス・グレイラット……」
「聞いていた噂より、ずっと弱そうだが……」
男の名を知り、興味深そうに呟く生徒もいた。
「兄様………」
私はそのどちらの生徒にも属さずに、ただ兄の名前を呼んだ。
あれは、絶対にルーデウスだ。
最後に見た時よりも、身長はずっと伸びていて、すらっとした体つきをしているが、あれは間違いなく、ルーデウスなんだ。
「あなた達は世界中から集まって来た、『才能ある者達』です。そしてここでは、その持ち合わせた才能を十分に活かすことができます」
ルーデウスはざわつく生徒達を無視し、話を始める。
「当然、種族の異なる者もいます。共に生活をしていれば、自分達とは違う価値観と衝突し、争い合うことがあるかもしれません」
ルーデウスが話を続けると、騒いでいた生徒達も、いつの間にか彼の話に真剣に耳を傾けていた。
「俺はそんな無意味な争いを、皆さんにして欲しくありません」
そこからしばらくの間、皆がルーデウスの演説を静かに聞いていた。
内容はシンプル。
差別や偏見はやめましょう。
ルールは守りましょう。
ありきたりで、どこかで聞いたことのあるような話ばかり。
それでも、私もみんなも、彼の話を真剣に聞いていた。
「皆さんの前で、改めて誓いましょう。俺が生徒会長を務めている限り、このような不毛な争いは絶対に起こさせません」
ルーデウスが演説を終えて一礼すると、食堂内は拍手に包まれた。
「すごい……」
私は思わず、感嘆の声を上げてしまった。
あんなに騒いでいた生徒達が、今は彼に拍手喝采を送っている。
あれが俗に言う、カリスマなのだろうか?
「では皆さん、良き学校生活を………」
そして、ルーデウスが挨拶を終えようとした、その時だった。
「あ………」
ルーデウスと、目が合った。
「………」
ルーデウスは口をポカンと開けたまま、私を凝視している。
「どうされました?」
ルーデウスの隣に立っていたアリエルが、不思議そうな顔で彼に尋ねた。
「………」
しかし、彼からの返答はない。
私達はしばらく見つめ合ったまま、言葉を交わせずにいた。
その間に、ルーデウスの視線は、私と膝の上に座るアルスの間を何度も行き来していた。
「ーーー」
やがて包帯を巻かれた女性が、ルーデウスに何かを耳打ちする。
耳打ちをし終えると、ルーデウスは一瞬だけハッとしたような表情を浮かべたが、すぐにやわらかな笑みを取り戻した。
「では皆さん、良き学校生活を送ってください」
改めてルーデウスが一礼をすると、生徒達は戸惑いながらも、再び彼に拍手を送った。
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入学式が終われば、いよいよ私は自分の教室へ赴くことになった。
ルーデウスにも会いたいが、まずは自分のことを終わらせなければ……
私は特別生、エリナリーゼは一般生徒として学校に入学したので、彼女とは一旦別行動だ。
つまり私は、今から一人でアルスを守らなければならないのだ。
ジーナスから聞いた話によると、特別生は全員曲者揃いで、気難しい性格をしているという。
私はいいとして、アルスに危害が加えられないか心配だ。
ああ、こんなことならエリナリーゼにアルスを任しておけばよかった……
しかし、後悔してももう遅い。
ガチャ……
私はゆっくりと、右手で扉を開いた。
扉を開けると、教室には三人の生徒が座っていた。
二人で並んで座っているのは、獣族の少女達だろうか?
猫っぽいのと、犬っぽいのでそれぞれ分かれている。
そして……
「あぁぁぁぁ……」
私の姿を見て、大きく口を開けている眼鏡をかけた男。
こ……こいつは……
「し……」
「し……?」
「師匠ォォォォォ!!」
ドタドタ!!
次の瞬間、眼鏡をかけた男が私めがけて突進してきた。
眼鏡越しにも分かる、血走った目。
獣の目。
「ヒッ!……
迫り来る男に向けて、私は反射的に右手を突き出し、氷霜撃を放った。
バキ!
「ガハッ!」
氷霜撃はそのまま男の顔面に直撃し、男は勢いよく床に倒れた。
「氷霜撃!氷霜撃!」
それでも私は、容赦なく男に氷霜撃を撃ち込み続ける。
バキ!バキ!
「お、落ち着くニャ!!」
「そうなの!ちょっとやり過ぎなの!」
獣族の二人が止めてくれなければ、私は魔力が底を尽きるまで男に撃ち込み続けていただろう。
「ママ……」
胸から聞こえてくるアルスの声で、私はようやく正気に戻った。
「はあ……はあ……」
呼吸が苦しい……
「し、師匠……」
氷霜撃を何発も喰らったというのに、男はまだ意識を保っていた。
この頑丈さ……
やはり間違いない……
「あ、あなたは……ザノバ……殿下?」
こいつは、シーローン王国第三王子
ザノバ・シーローンだ。
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「申し訳ありません師匠……つい興奮してしまって……」
痴漢未遂犯……いや、ザノバ・シーローンが申し訳なさそうに頭を下げる。
「謝るのはこちらの方です。お顔……大丈夫ですか?」
「この程度、大したことではないですよ」
大したことではないって……
一応本気だったんですが……
「全く、入学早々騒ぎを起こすニャンて……流石はボスの妹ニャ」
「そうなの、やっぱり血は争えないの」
その横にいた獣族の二人、リニアとプルセナは、納得したような顔で頷いていた。
ボス?
「あの、すいません。ボスというのは……?」
「おや?師匠は知っているものと思っていましたが………」
何も知らない私を見て、ザノバは丁寧に事情を話そうとしてくれた。
ドサ……
「え?」
その時、私は何者かに後ろから肩を掴まれ、体勢を崩した。
あ、倒れる。
しかし、アルスを抱えながら倒れる私を、後ろにいた人物がしっかりと受け止めた。
「どこを探してもいないと思ったら、こんな所まで来ていたんですか」
懐かしいその声に、私は咄嗟に後ろを振り返った。
「兄様………?」
私を受け止めていたのは、ルーデウスだった。
「久しぶりですね。ルーディア」
ルーデウスは屈託のない笑みを浮かべて、私を見下ろしていた。
「………」
体勢を整えると、私は改めて彼と向き合った。
そして、右手で彼の頬に触れた。
「………?」
柔らかくて……温かい……
偽物……じゃない……
「兄様!!」
アルスを左手で抱えたまま、開いている右腕でルーデウスに抱きついた。
香水特有の、良い匂いがする。
「全く、相変わらずですね、ルーディア」
「ふぐ………兄様……無事でよかった……!」
視界が、涙でぼやけてしまう。
でも……彼のにこやかな笑みだけは、鮮明に見える。
良かった….
本当に良かった!
彼が無事でいてくれて、本当に良かった……!
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熱い抱擁を終えた後、ルーデウスは不思議そうな表情でアルスを見た。
「ところでルーディア、その子は?」
「ああ、この子はアルス……私の、子供です」
「子供………?」
その言葉に、ルーデウスの眉が一瞬ぴくりと動いた。
「ママ」
アルスはルーデウスに手を伸ばし、私の腕から離れようとする。
「あ、こらアルス」
そんなアルスの顔を見ると、
そしてどうやらルーデウスも、アルスの顔に何か思うところがあるらしい。
「……ルーディア、もしかしてですが、その子供はーーー」
コンコン……
「ルーデウス様」
彼が言いかけた時、突然扉をノックする音が聞こえた。
ほどなくして扉が開き、中に入ってきたのは、今朝私とぶつかったあの女性だった。
「どうしました?サラ」
「ジーナス教頭からの呼び出しです。至急、校長室へお越しになるようにと」
サラと呼ばれたその女性は、ルーデウスに一枚の紙を見せた。
『生徒会長、ルーデウス・グレイラットは至急、校長室へ集まるよう』
紙には大きくそう書かれている。
「………分かりました。行きましょう」
ルーデウスはしばらく考える素振りをした後、ため息を吐きながらそう言った。
「兄様、もう行ってしまうんですか?」
せっかく感動の再会を果たしたというのに……
いつも肝心な時に邪魔が入る……
「大丈夫ですよ。用事が終わったらまた校門で落ち合いましょう。それよりも、学校内はもう全て見終わりましたか?」
「いえ、まだここしか見て回れていなくて……」
「そうですか、なら丁度いい」
ルーデウスはサラと呼ばれる女性を引き寄せ、私の対面に立たせた。
「サラ、ルーディアに学校内を案内してあげてください」
「は?」