〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた   作:肉と米と愛

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それぞれの経過

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラノア魔法大学に入学して、早くも数ヶ月。

 

 数ヶ月も経てば、一日の生活リズムもできてくる。

 

 

 

 

 まずは朝、日が昇る前に私は目覚める。

 

 アルスを起こさないように静かに着替えると、私よりも早く起きているルーデウスと、玄関で鉢合わせる。

 

 そこから二人で、シャリーアの街中をランニングするのだ。

 

 私はまだまだこの町のことを知らない。

 そこで、軽い運動を兼ねてルーデウスに町を案内してもらうことにしたのだ。

 

 ランニングと言っても私はあまり体力がないから、すぐに歩いてしまうけど……

 

 それでも、町のことにはある程度の知識がついてきた。

 

 

 この調子でこれからも、町のことについて知っていきたいな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 ランニングを終えて家に帰ると、アイシャが朝食を用意してくれている。おかげで毎日私たちはできたてのパンを食べることができる。

 

 しかしアイシャとの関係は……よろしくない。

 

 私なりに話しかけようと努力しているつもりだが、アイシャはあまり私と話したくないようだ。

 

 彼女の気持ちはよく分かる。

 会ったこともない姉の世話なんて、したくはないだろう。

 

 だけどいつか彼女と話ができる日が来たなら、ちゃんと感謝を伝えたい。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 朝食を終えたら、とうとう学校へ向かうことになる。

 もちろん、登校にはルーデウスとサラも一緒だ。

 

 この時間が、今の私にとって一番幸せな時間だ。

 

 ルーデウスと二人で話すのは楽しいけど、サラもいると会話はもっと盛り上がる。

 サラは物知りで、私の知らないことをたくさん教えてくれる。

 

 「アイシャが来るまでは、ルーデウス様の身の回りの世話をさせてもらっていたからね」

 

 そしてどうやら、サラとルーデウスの間には、主従関係のようなものがあるようだ。

 

 サラはルーデウスを命の恩人として慕っているようだが、その度合いは少し行き過ぎているようにも思える。

 もはやある種の信仰と言ってもいい。

 

 何をするにも、ルーデウスの許可を得てから行動しているのだ。

 外出するときも、ご飯を食べるときも、寝るときでさえ、何をするにも彼に許可を取っている。

 

 二人の間にどんな出来事があったのかは知らないが、私から見てみると少し不気味だ……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 そうして、ここでの生活に慣れていたある日。

 

 「なるほど……そんなことがあったんですね」

 

 昼食を食べていた私は、皿に置いてあったパンを手に取り、口へと運んだ。

 

 「ええ、余もルーデウス殿には大変お世話になりました」

 

 私の向かいに座っていたザノバは、柔らかな笑みを浮かべてそう言った。

 

 ついさっきまで、私はザノバから、ルーデウスと初めて出会ったときの話を聞いていた。

 つまり、シーローン王国でアイシャとリーリャを助けたときの話だ。

 

 なんでもルーデウスはシーローン王国の王宮内に突然現れ、ザノバの弟であるパックスを人質に取ったのだと言う。

 

 「そんな大胆なことをして、兄様はどうやって生き延びたんですか?」

 

 王族を人質にとる。

 それは、国そのものを敵に回すのと同じことだ。

 

 「余にも詳しいことは分かりません。しかし父上とルーデウス殿には繋がりがあったようで………」

 

 ザノバは頭を掻きながら、呟くように答えた。

 

 「兄様って……一体何者なんですか?」

 

 私は思わずザノバに尋ねてしまった。

 王竜王国とも、シーローン王国とも繋がりを持つなんてとんでもない。

 私が魔大陸を横断している間、ルーデウスは一体何をしていたんだ?

 

 「………師匠はルーデウス殿のことを、あまり知らないご様子ですな」

 

 「ええ、あの人はあまり、自分のことを話したがりませんから……」

 

 「左様ですか?」

 

 ザノバは不思議そうな表情を浮かべ、片手に持っていたサンドウィッチを頬張った。

 

 「師匠さえよろしければ、余が知る限りのルーデウス殿の情報をお話ししますが……いかがなさいますか?」

 

 「本当ですか!?是非教えて欲しいです!」

 

 ザノバの提案に、私は即答した。

 

 なんて僥倖!

思いがけず、ルーデウスの情報を知る機会がやってきた。

 サラもルーデウスの過去だけはあまり話してはくれなかったからなぁ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 「余がルーデウス殿の情報を知ったのは、ここへ来るために中央大陸北部を通過した直後でした」

 

 人気の少ない廊下を歩きながら、ザノバが淡々と話を始める。

 

 「先程も説明したように、ルーデウス殿はシーローン王国で一度面識がありましたゆえ、余を運んでいた御者に、彼の事について調べさせたのです」

 

 いつもとは違う雰囲気をまとったザノバに、私は頼もしさと同時に不気味さを感じた。

 

 「しかし彼についての情報を聞いた時は、思わず耳を疑いました」

 

 「………」

 

 「彼は中央大陸で最強と言われる『赤竜』をたった一人で相手にし、傷一つ負うことなく、その首を討ち取ったというのです」

  

 「え!?」

 

 ザノバの話に、私は思わず声を上げた。

 

 赤竜………

 あんなとんでもない化け物を相手に、一人で、しかも傷一つ負うことなく勝利したというのか。

 

 相変わらずとんでもない男だ。

 

 「そんな彼についた異名が、『竜喰い』のルーデウス。そして、その彼を影で支えているのがサラです」

 

 「サラ……ですか……」

 

 彼女もまた不思議な人物だ。

 確かに優しくて頼りになる女性だけど、それと同じくらい、得体の知れない部分も際立っている。

 

 「しかし彼女については、全くと言っていいほど情報がありませんでした」

 

 「そんなこと、あるんですか?」

 

 私はザノバに尋ねた。

 普通ならありえないことだからだ。

 

 大抵冒険者をしていれば、その人物の情報は何かしら入ってくる。

 本人が必死に自分のことを隠そうとしても、ランクが上がれば必然と知名度は上がる。

 それにサラはS級冒険者、なおさら名は広まっているだろう。

 

 「分かりません。しかし余の力を使ってでも、彼女について分かったことは、ルーデウス殿の忠実な部下ということだけ……」

 

 しかしザノバは、首を縦に振った。

 

 「どこで生まれたのか、いつからルーデウス殿と共に行動しているのか、その全てが謎に包まれています」

 

 結局のところ、何も分からないってことなのか……

 ある意味、ルーデウスよりも不気味だな。

 

 「師匠」

 

 いつの間にかザノバは、私の方を見ながらその場に立ち尽くしていた。

 その表情は、いつもの彼からは想像できないほど真剣だった。

 

 「今から余が申し上げることは、決してルーデウス殿やサラには伝えないで欲しいのですが、よろしいですか?」

 

 「……ん?はい……分かりました」

 

 周囲に人がいないのを確認すると、ザノバが私の両肩を掴み、小さな声で囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「サラには、十分お気をつけてください」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

 

 

 

 

 ラノア魔法大学のとある部屋。

 そこに、ルーデウスとサラはいた。

 

 「……では、早速報告をしてもらいましょうか」

 

 椅子に腰掛けたルーデウスは、正面に座るサラにそう言い放った。

 

 「どうでしたか、龍神と殺り合った感想は?」

 

 紅茶を口にするルーデウスを見ながら、サラはゆっくりと首を横に振る。

 

 「……勝てる未来が見えませんでした。それは今も同じです」

 

 完全な敗北。

 それがサラの返答だった。

 

 「甲龍王ペルギウスから奪ってきた魔力付与品(マジックアイテム)とスクロールを全て使っても、私では有効打を与えることができませんでした」

 

 「………そうですか」

 

 報告を聞いて、ルーデウスが椅子から立ち上がる。

 

 「やはり七大列強の上位クラスとなると、今のあなたでは届きませんか」

 

 「お役に立てず、申し訳ありません……」

 

 サラは顔を歪めながら、ルーデウスに向かって頭を下げた。

 

 「結構です。元々勝てるなんて思っていませんでしたからね」

 

 しかし、ルーデウスはそんなことを気にする様子もなく……いや、興味すらなさそうに、彼女に背を向けて窓を眺めた。

 

 「ですが次は失敗しないでください。あなたは俺が鍛え上げた『最高傑作』なんですから」

 

 「………心得ています」

 

 彼が眺める窓の向こうには、アリエルとルーク、そしてフィッツが笑顔で歩いている。

 

 「それで、アスラ王国の方で何か問題はありましたか?」

 

 「いいえ、特にこれといった問題はありませんでした」

 

 「なるほど……」

 

 再びサラの方へ向き直ったルーデウスの目は、光を失っていた。

 

 「しばらくはルーディアの様子を見る為に、俺もここに残ることにします。あなたも全力で彼女をサポートしてください」

 

 「………分かりました」

 

 サラが返答をすると、ルーデウスは彼女の横を通り過ぎる。

 

 「じゃあ、俺は『ナナホシ』のところへ行ってきます」

 

 バタン………

 

 「………」

 

 一人残された部屋の中で、サラはゆっくりと立ち上がった。

 

 「ルーディア・グレイラット」

 

 その名前を呟きながら、彼女は服を脱ぐ。

 

 その体には、数えきれぬほどの傷跡が刻まれていた。

 

 (ルーデウス様の……妹)

 

 カランカラン!

 

 脱ぎ捨てた制服の内側から、鋭利なナイフが数本落ちた。

 

 (だけど、その立場に甘えてルーデウス様の手を煩わせるようなことになるのなら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その首を、切り落とすことになるわよ)

 

 

 

 

 

 

 




ラノア魔法大学編は、ゆっくりとやっていこうと思います。
もし遅すぎると感じられたなら、言っていただけると嬉しいです。
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