〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた 作:肉と米と愛
ラノア魔法大学に入学して、早くも数ヶ月。
数ヶ月も経てば、一日の生活リズムもできてくる。
まずは朝、日が昇る前に私は目覚める。
アルスを起こさないように静かに着替えると、私よりも早く起きているルーデウスと、玄関で鉢合わせる。
そこから二人で、シャリーアの街中をランニングするのだ。
私はまだまだこの町のことを知らない。
そこで、軽い運動を兼ねてルーデウスに町を案内してもらうことにしたのだ。
ランニングと言っても私はあまり体力がないから、すぐに歩いてしまうけど……
それでも、町のことにはある程度の知識がついてきた。
この調子でこれからも、町のことについて知っていきたいな。
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ランニングを終えて家に帰ると、アイシャが朝食を用意してくれている。おかげで毎日私たちはできたてのパンを食べることができる。
しかしアイシャとの関係は……よろしくない。
私なりに話しかけようと努力しているつもりだが、アイシャはあまり私と話したくないようだ。
彼女の気持ちはよく分かる。
会ったこともない姉の世話なんて、したくはないだろう。
だけどいつか彼女と話ができる日が来たなら、ちゃんと感謝を伝えたい。
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朝食を終えたら、とうとう学校へ向かうことになる。
もちろん、登校にはルーデウスとサラも一緒だ。
この時間が、今の私にとって一番幸せな時間だ。
ルーデウスと二人で話すのは楽しいけど、サラもいると会話はもっと盛り上がる。
サラは物知りで、私の知らないことをたくさん教えてくれる。
「アイシャが来るまでは、ルーデウス様の身の回りの世話をさせてもらっていたからね」
そしてどうやら、サラとルーデウスの間には、主従関係のようなものがあるようだ。
サラはルーデウスを命の恩人として慕っているようだが、その度合いは少し行き過ぎているようにも思える。
もはやある種の信仰と言ってもいい。
何をするにも、ルーデウスの許可を得てから行動しているのだ。
外出するときも、ご飯を食べるときも、寝るときでさえ、何をするにも彼に許可を取っている。
二人の間にどんな出来事があったのかは知らないが、私から見てみると少し不気味だ……
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そうして、ここでの生活に慣れていたある日。
「なるほど……そんなことがあったんですね」
昼食を食べていた私は、皿に置いてあったパンを手に取り、口へと運んだ。
「ええ、余もルーデウス殿には大変お世話になりました」
私の向かいに座っていたザノバは、柔らかな笑みを浮かべてそう言った。
ついさっきまで、私はザノバから、ルーデウスと初めて出会ったときの話を聞いていた。
つまり、シーローン王国でアイシャとリーリャを助けたときの話だ。
なんでもルーデウスはシーローン王国の王宮内に突然現れ、ザノバの弟であるパックスを人質に取ったのだと言う。
「そんな大胆なことをして、兄様はどうやって生き延びたんですか?」
王族を人質にとる。
それは、国そのものを敵に回すのと同じことだ。
「余にも詳しいことは分かりません。しかし父上とルーデウス殿には繋がりがあったようで………」
ザノバは頭を掻きながら、呟くように答えた。
「兄様って……一体何者なんですか?」
私は思わずザノバに尋ねてしまった。
王竜王国とも、シーローン王国とも繋がりを持つなんてとんでもない。
私が魔大陸を横断している間、ルーデウスは一体何をしていたんだ?
「………師匠はルーデウス殿のことを、あまり知らないご様子ですな」
「ええ、あの人はあまり、自分のことを話したがりませんから……」
「左様ですか?」
ザノバは不思議そうな表情を浮かべ、片手に持っていたサンドウィッチを頬張った。
「師匠さえよろしければ、余が知る限りのルーデウス殿の情報をお話ししますが……いかがなさいますか?」
「本当ですか!?是非教えて欲しいです!」
ザノバの提案に、私は即答した。
なんて僥倖!
思いがけず、ルーデウスの情報を知る機会がやってきた。
サラもルーデウスの過去だけはあまり話してはくれなかったからなぁ。
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「余がルーデウス殿の情報を知ったのは、ここへ来るために中央大陸北部を通過した直後でした」
人気の少ない廊下を歩きながら、ザノバが淡々と話を始める。
「先程も説明したように、ルーデウス殿はシーローン王国で一度面識がありましたゆえ、余を運んでいた御者に、彼の事について調べさせたのです」
いつもとは違う雰囲気をまとったザノバに、私は頼もしさと同時に不気味さを感じた。
「しかし彼についての情報を聞いた時は、思わず耳を疑いました」
「………」
「彼は中央大陸で最強と言われる『赤竜』をたった一人で相手にし、傷一つ負うことなく、その首を討ち取ったというのです」
「え!?」
ザノバの話に、私は思わず声を上げた。
赤竜………
あんなとんでもない化け物を相手に、一人で、しかも傷一つ負うことなく勝利したというのか。
相変わらずとんでもない男だ。
「そんな彼についた異名が、『竜喰い』のルーデウス。そして、その彼を影で支えているのがサラです」
「サラ……ですか……」
彼女もまた不思議な人物だ。
確かに優しくて頼りになる女性だけど、それと同じくらい、得体の知れない部分も際立っている。
「しかし彼女については、全くと言っていいほど情報がありませんでした」
「そんなこと、あるんですか?」
私はザノバに尋ねた。
普通ならありえないことだからだ。
大抵冒険者をしていれば、その人物の情報は何かしら入ってくる。
本人が必死に自分のことを隠そうとしても、ランクが上がれば必然と知名度は上がる。
それにサラはS級冒険者、なおさら名は広まっているだろう。
「分かりません。しかし余の力を使ってでも、彼女について分かったことは、ルーデウス殿の忠実な部下ということだけ……」
しかしザノバは、首を縦に振った。
「どこで生まれたのか、いつからルーデウス殿と共に行動しているのか、その全てが謎に包まれています」
結局のところ、何も分からないってことなのか……
ある意味、ルーデウスよりも不気味だな。
「師匠」
いつの間にかザノバは、私の方を見ながらその場に立ち尽くしていた。
その表情は、いつもの彼からは想像できないほど真剣だった。
「今から余が申し上げることは、決してルーデウス殿やサラには伝えないで欲しいのですが、よろしいですか?」
「……ん?はい……分かりました」
周囲に人がいないのを確認すると、ザノバが私の両肩を掴み、小さな声で囁いた。
「サラには、十分お気をつけてください」
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ラノア魔法大学のとある部屋。
そこに、ルーデウスとサラはいた。
「……では、早速報告をしてもらいましょうか」
椅子に腰掛けたルーデウスは、正面に座るサラにそう言い放った。
「どうでしたか、龍神と殺り合った感想は?」
紅茶を口にするルーデウスを見ながら、サラはゆっくりと首を横に振る。
「……勝てる未来が見えませんでした。それは今も同じです」
完全な敗北。
それがサラの返答だった。
「甲龍王ペルギウスから奪ってきた
「………そうですか」
報告を聞いて、ルーデウスが椅子から立ち上がる。
「やはり七大列強の上位クラスとなると、今のあなたでは届きませんか」
「お役に立てず、申し訳ありません……」
サラは顔を歪めながら、ルーデウスに向かって頭を下げた。
「結構です。元々勝てるなんて思っていませんでしたからね」
しかし、ルーデウスはそんなことを気にする様子もなく……いや、興味すらなさそうに、彼女に背を向けて窓を眺めた。
「ですが次は失敗しないでください。あなたは俺が鍛え上げた『最高傑作』なんですから」
「………心得ています」
彼が眺める窓の向こうには、アリエルとルーク、そしてフィッツが笑顔で歩いている。
「それで、アスラ王国の方で何か問題はありましたか?」
「いいえ、特にこれといった問題はありませんでした」
「なるほど……」
再びサラの方へ向き直ったルーデウスの目は、光を失っていた。
「しばらくはルーディアの様子を見る為に、俺もここに残ることにします。あなたも全力で彼女をサポートしてください」
「………分かりました」
サラが返答をすると、ルーデウスは彼女の横を通り過ぎる。
「じゃあ、俺は『ナナホシ』のところへ行ってきます」
バタン………
「………」
一人残された部屋の中で、サラはゆっくりと立ち上がった。
「ルーディア・グレイラット」
その名前を呟きながら、彼女は服を脱ぐ。
その体には、数えきれぬほどの傷跡が刻まれていた。
(ルーデウス様の……妹)
カランカラン!
脱ぎ捨てた制服の内側から、鋭利なナイフが数本落ちた。
(だけど、その立場に甘えてルーデウス様の手を煩わせるようなことになるのなら………
その首を、切り落とすことになるわよ)
ラノア魔法大学編は、ゆっくりとやっていこうと思います。
もし遅すぎると感じられたなら、言っていただけると嬉しいです。