〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた 作:肉と米と愛
この世界で初めてできた友達、シルフと遊ぶようになってから、数ヶ月が過ぎた。
シルフは温厚で優しい性格だ。
基本的に怒ることはないし、どこか抜けている。
あれから、何度かソマル達クソガキ集団に絡まれるようにはなったが、パウロがあいつらの親に何かを言ったのか、遠くから野次を飛ばすことはあっても、直接危害を加えてくることは無くなった。
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「ルーディア、今日は温かい水を出す魔法を教えてよ」
「あぁ、あれね。分かった」
危害を加えられなくなった俺達が最近やっている事は、シルフに俺が知っている魔術を教えてやることだ。
シルフが教えて欲しいとねだるので、なんとなくで始めた魔術の授業だが、これがなかなかいい暇つぶしになった。
シルフは才能がある。
飲み込みも早いし、何より俺と同じで、魔術を無詠唱で使用することができる。
そんなふうに日々成長をしていくシルフを見るのは楽しいし、シルフはシルフで魔術を覚えることができる、一石二鳥というわけだ。
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ある日、いつものようにシルフに魔術を教えていると……
「ルーディアってさ、ルーデウスさんがいつもどこに居るかって知ってる?」
そんなことを聞かれた。
「さあ、私より後で外に出掛けてるけど、どこに居るかまでは……」
確かに、俺はルーデウスがいつもどこに居るか知らない。
帰る時、道端でたまにあって帰ることはあるが、それだけだ。
「じゃあ明日は、ルーデウスさんの後を追いかけてみようよ」
「それはいいけど、魔術の練習は大丈夫なの?」
「たまにはルーディアも魔術以外のこと、やりたいでしょ?」
シルフはいつもの優しい笑みを浮かべた。
本当、太陽みたいな子だ。
「まあ、私はどっちでもいいけど」
俺もルーデウスの居場所には興味がある。
この機会に奴の行動パターンを知っておこうじゃないか。
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翌朝。
俺はいつも通り外へ出掛ける振りをしながら、庭で隠れていたシルフと合流し、ルーデウスが出てくるのを待ち構えた。
「行って来ます」
そして数十分ほどが経った後、ようやくルーデウスが玄関から出てきた。
「ルディ、今日こそ剣術の稽古をやるぞ!」
「嫌ですよ」
パウロはルーデウスの断りを無視し、木刀を投げる。
「だったら、力ずくで参加させるしかないな」
「……はあ」
ニヤニヤと笑みを浮かべるパウロに、ルーデウスは諦めのため息を吐くと、ゆっくりと木刀を手に取った。
「後悔しても、知りませんからね?」
ザザ……
その瞬間、ルーデウスから圧倒的な威圧感が溢れ出す。
物陰に隠れる俺とシルフの額から、汗がダラダラと垂れ始める。
「ルーディア、これ……やばいんじゃ……」
「静かに……!バレちゃう」
俺はシルフの口を押さえ、木刀を構える二人の姿を凝視した。
久々に見るパウロとルーデウスの稽古……!
一体、どんな戦いが見れるんだ?
「……へえ、まだ小せぇ癖に、やるじゃねえか」
「その減らず口を聞くのも、今日で最後です」
ルーデウスの挑発に動じることなく、パウロは木刀を向けた。
二人は互いに見つめ合い、周りからは緊迫した空気が流れる。
そしてとうとう、ルーデウスが木刀を上へと持ち上げた。
お!
やるのか!?
しかし木刀を振るにしては、まだ間隔が空き過ぎていると思うのだが……
ヒュッ!
そして、ルーデウスは上げていた木刀を、あろうことか、そのまま上空へ投げ飛ばした。
「は?」
「え……?」
「はい……?」
俺達が呆気に取られている隙に、ルーデウスは後ろを振り返り、外へと猛ダッシュで走り去っていく。
「あ、おい!逃げーーー」
パリンッ!
投げられた木刀はそのまま弧を描くように進み、二階の窓ガラスに直撃した。
その音に釣られ、ゼニスが叫び声を上げる。
「あなた!何してるの!!」
「お、俺じゃねぇ!ルディが……イテテテ!」
「話は中で聞きます!」
ゼニスに頬を引っ張れながら、パウロは家の中へと連れてかれて行った。
「か、賢いね……」
隣にいたシルフが、感心したような呟く。
感心するにしては、やり方が卑劣すぎると思うのだが……
「ルーディア様に、シルフ様?」
『わッ!』
その時、後ろから突然声が掛かり、俺達は前のめりに倒れてしまう。
後ろを向けば、メイドのリーリャが立っていた。
「ルーデウス様を追うのではないのですか?」
『あ……!』
リーリャにそう言われて、俺はルーデウスが走り去って行った方向を見た。
随分と先へ行ってしまったが、まだなんとか姿が見える。
「ありがとうございます。リーリャさん」
リーリャに感謝の言葉を伝え、俺とシルフは小さくなったルーデウスの方向に走って行った。
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ルーデウスの後ろをゆっくりと追いかけていると、やがてある場所に辿り着いた。
「ルーディア、ここって……」
「……うん」
そこは、パウロから口酸っぱく行くなと言い聞かされていた、魔物が出没する深い森だ。
ルーデウスはそんな危険な森の中に、躊躇することなく行ってしまった。
「流石に……僕達はいけないね……」
「そうだね。ここら辺で引き返そうか」
どうするべきか。
この事をパウロに報告し、ルーデウスを叱ってもらうべきか?
ルーデウスはまだ十歳にもなっていない子供だ。
そんな子供が、魔物達が潜む暗い森に入っている。
それも、あの躊躇のなさからみて、日常的に入っているのだろう。
ここはルーデウスの為にも、言うべきではないのか?
でも、俺はルーデウスに借りがある。
何度も助けられたし、きっとこれからも助けられることがあるだろう。
そんな奴の楽しみを、『危険だから』なんて理由で奪ってしまうのも……
……仕方ない、これは俺とシルフだけの秘密にしといてやろう。
いつも擦り傷一つせずに戻ってくるんだ。
森の中で何をやっているか知らないが、怪我をしてこないうちは、何も言わない方がいい。
怪我をしたら、それこそ手遅れだと思うのだが……
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「ルーディアとルディ、今日から当分の間、外出は禁止だ」
ある朝、皆で朝食を食べていると、パウロが突然そんなことを言い出した。
「え?なんでですか?」
突然の外出禁止宣言に、俺は口に入れていたパンを喉に詰まらせかけてしまう。
「昨日、ソマル坊達が例の森で、何かに襲われて大怪我を負ってな。全員意識がまだ戻ってないんだ……」
例の森、あの魔物が出る森か……
ソマルの奴ら、そんなところに何しに行ったんだ?
ともかく、危険な森にわざわざ身を置きに行くなんて、馬鹿な奴ら………
「………」
そういえば……そんな馬鹿が、もう一人いた。
「………」
馬鹿……いや、ルーデウスは何食わぬ顔でパンを頬張っている。
「ともかくルーディア。もしシルフと遊びたいんだったら、俺の家か、シルフの家で遊びなさい」
「……はい」
まあ、多少の不満はあるが、パウロの言い分も分からんこともない。
近隣の子供に怪我人が出たんだ、自分の子供に被害が出るかもしれないと考えるのは、至極真っ当なことだ。
しばらくはシルフと、家で楽しめる遊びに興じよう。
しかし、あの森で何が起きたのか。
そして、ルーデウスは何のために、あの森へ通っていたのか。
その答えは、未だ謎に包まれている。