〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた   作:肉と米と愛

7 / 8
みなさんはルーディアを曇らせたいですか?
私はとっても曇らせたいです。


修羅場の先に

 

 

 

 どうもみなさんこんにちは!

 

 わたし、ルーディア・グレイラット七歳!

 

 ブエナ村というクソ田舎に住む、元気な女の子です!

 

 お父さんはパウロ、お母さんはゼニス。

 

 そんなお母さんのゼニスが、最近妊娠をしました!

 

 ゼニスのお腹がどんどん大きくなっていくのを見ると、『もうすぐ俺もお姉ちゃんになるんだなぁ』って自覚が湧いてきます。

 

 

 あれ?

 でもおかしいな。

 

 ゼニスのお腹が大きくなるのと一緒に、メイドとして雇われているリーリャさんのお腹も大きくなってきてるぞ?

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メイドであるリーリャの妊娠が発覚したのは、ゼニスの妊娠が分かってすぐだった。

 

 「申し訳ありません。妊娠致しました」

 

 夕食時、賑やかだった食卓が、リーリャの一言で一気に静まり返る。

 

 よかったですね!

 相手は誰ですか!?

 

 そんな呑気なこと言える雰囲気ではなかった。

 

 リーリャは勤勉な人だ。

 

 メイドとして働いて出たお金は、ほぼ全て実家に送っていると聞くし、業務以外で外出することはまずない。

 

 つまり、リーリャには、恋愛という甘い時間を作る余裕などないのだ。

 

 となると、相手として考えられる人物は、一人しかいない。

 

 ゼニスの妊娠によって禁欲生活を余儀なくされ、飢えた獣のような状態に陥っている……

 

 

 「す、すまん。た、多分、俺の子だ……」

 

 パウロ・グレイラット……

 

 いや、浮気男とでも呼ぼうか?

 

 浮気男は、ゼニスに頭を机に擦りるようにして、この世界でできる最大限の謝罪をした。

 

 いいね。

 すぐ謝れる男は嫌いじゃないぞ、パウロ。

 

 でもな、今世でも前世でも、謝っても許されない大罪というのは存在するのだよ。

 

 「………」

 

 ドン……!

 

 ゼニスは何も言わず、椅子から立ち上がると、パウロの頭を力強く叩いた。

 

 あんなに楽しかった夕食は、パウロとリーリャの浮気発覚により、一気に修羅場へと変わった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 「面白いことになりましたね」

 

 壁に飾ってある剣を手入れしながら、ルーデウスは薄い笑みを浮かべそう言った。

 

 「なんにも面白くないです!一家存続の危機なんですよ?」

 

 俺はそんな事態を面白がるルーデウスを非難する。

 

 このままじゃあ最悪離婚……とまでいかないだろうが、リーリャは追い出されてしまうかもしれない。

 

 外は荒れ狂う雪。

 そんな中を、行き場を失った妊娠している女性が生き抜けていけるとは、到底思えない。

 

 「リーリャの実家は、確か南の方でしたから、馬車で向かっても一ヶ月はかかります。もし出て行くという事になれば、まずお腹の子は無事では済まないでしょうね」

 

 ルーデウスもそのことは知っているはず。

 

 しかし、知っていてなお、こいつはこんな楽しそうにしているのだ。

 

 相変わらず性格の曲がった男だ。

 

 「それは……兄様の実体験ですか?」

 

 そんなルーデウスに怒りを覚え、思わず口が滑ってしまう。

 

 「へえ、言うようになったじゃないですか」

 

 しかし、ルーデウスは俺の嫌味を深く受け取る事はなかった。

 

 「兄様もリーリャには色々としてもらったはずでしょう?少しは可哀想とか、思わないんですか?」

 

 「微塵も思いませんね。父さんに襲われたかどうかは別として、最終的に身を委ねたのは、リーリャ自身でしょう?」

 

 ルーデウスは冷静に、そして冷たい声で話す。

 

 確かに、こいつの言うことにも一理ある。

 

 成り行きがどうであれ、パウロの行為に身を委ねてしまったリーリャにも、少なからず責任はあるのだ。

 

 「これで母さんがミリス教徒じゃなければ、怒られて終了だったんですけどね」

 

 「………私」

 

 でも、その責任の代償が、自分と子供の命なんて、あまりに重すぎる……

 

 ゼニスが最悪な選択をする前に、止めよう。

 

 「私、ちょっと下に行ってきます」

 

 「無駄だと思いますよ?」

 

 辛辣な言葉をかけるルーデウスを無視し、俺は一階へと降りて行った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 一階は、俺が想像していた以上に静かだった。

 ゼニスとリーリャは対面で座り合い、パウロは部屋の隅の方で息を殺している。

 

 「ルーディア。もう夜も遅いわよ、早く寝なさい」

 

 椅子に座っていたゼニスが笑みを浮かべながら、しかし決して嬉しそうではない声で話しかけてきた。

 

 これは、かなり深刻だ。

 

 このままいけば、本当にゼニスはリーリャを追い出してしまうかもしれない。

 

 「母様、一度に兄弟が二人も増えると言うのに、何を落ち込んでいるんですか?」

 

 「それはね、お父さんとリーリャがやっちゃいけないことをしたからよ」

 

 全く、本当に世話のかかる家族だ……

 

 ここは一つ、助け舟をだしてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そうですか。しかし、リーリャは父様に逆らえる立場でしょうか?」

 

 「………どういうこと?」

 

 下を向いていたゼニスが顔を上げ、俺の発言の意味を探ろうとする。

 

 「私は見ました。父様がリーリャを脅して、何かを要求しているところを」

 

 「そう……なの?」

 

 「ちが……!俺はそんなこと……!」

 

 「あなたは黙ってなさい!!」

 

 弁解しようとするパウロに、ゼニスは金切り声を上げた。

 

 「……リーリャ、ルーディアの言ったことは本当なの?」

 

 「いえ、そんな事実は……」

 

 リーリャは必死に否定しようとするが、その目は明らかに泳いでいた。

 

 即興で言った戯言だが、どうやらリーリャには心当たりがあるらしい。

 なんと運がいいことだ。

 

 「そうよね、あったとしても、メイドのあなたはそんなこと言えないわよね」

 

 ゼニスは勝手に解釈し、納得した。

 

 よし!

 あとひと押しだ。

 

 「母様、リーリャは悪くないと思います」

 

 「そうね……」

 

 「悪いのは父様です」

 

 「そう……ね」

 

 「父様が悪いのに、リーリャがひどい目に遭うのは、間違っていると思います」

 

 「そう………ね」

 

 ゼニスの反応が薄い。

 あともう一手、何か掛ける言葉をさがせ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「俺も、ルーディアの意見に賛成です」

 

 その時、リビングの扉が開いた。

 

 扉の奥から出てきたのは、眠そうな顔をしているルーデウスだ。

 

 「ルディ……あなたも起きていたの?」

 

 「母さんが珍しく声を上げましたからね。気になって降りてきたんですよ」

 

 ルーデウスは目を擦りながら、ゆっくりと俺の横へ移動した。

 

 「それで、リーリャをどうするんですか?俺としては、メイドは一人居てくれた方が、色々と便利なんですが……」

 

 

 

 

 

 なんだよこいつ。

 やっぱりリーリャのこと、大切にしてるんじゃないか。

 

 ゼニスはしばらく考え込んだ後、大きなため息を吐いた。

 

 「……分かったわよ。全く、二人には敵わないわね」

 

 その言葉に、緊迫していた俺の心が、一気に緩んだ。

 

 

 苦労をかけてゴメンね、ママン。

 

 「リーリャ、うちにいなさい。あなたはもう家族よ!勝手に出ていくのは許さないわ!」

 

 ゼニスがそう言い放つと、パウロは安堵のため息を吐き、リーリャは口に手を当て涙ぐむ。

 

 「全く、眠いのに余計なことしないでくださいよ……」

 

 ルーデウスは俺の耳元でそう呟くと、欠伸をしながら部屋へと戻って行った。

 

 

 

 

 絶望から始まったパウロとリーリャの浮気騒動は、これにて一件落着だ。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。