〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた 作:肉と米と愛
私はとっても曇らせたいです。
どうもみなさんこんにちは!
わたし、ルーディア・グレイラット七歳!
ブエナ村というクソ田舎に住む、元気な女の子です!
お父さんはパウロ、お母さんはゼニス。
そんなお母さんのゼニスが、最近妊娠をしました!
ゼニスのお腹がどんどん大きくなっていくのを見ると、『もうすぐ俺もお姉ちゃんになるんだなぁ』って自覚が湧いてきます。
あれ?
でもおかしいな。
ゼニスのお腹が大きくなるのと一緒に、メイドとして雇われているリーリャさんのお腹も大きくなってきてるぞ?
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メイドであるリーリャの妊娠が発覚したのは、ゼニスの妊娠が分かってすぐだった。
「申し訳ありません。妊娠致しました」
夕食時、賑やかだった食卓が、リーリャの一言で一気に静まり返る。
よかったですね!
相手は誰ですか!?
そんな呑気なこと言える雰囲気ではなかった。
リーリャは勤勉な人だ。
メイドとして働いて出たお金は、ほぼ全て実家に送っていると聞くし、業務以外で外出することはまずない。
つまり、リーリャには、恋愛という甘い時間を作る余裕などないのだ。
となると、相手として考えられる人物は、一人しかいない。
ゼニスの妊娠によって禁欲生活を余儀なくされ、飢えた獣のような状態に陥っている……
「す、すまん。た、多分、俺の子だ……」
パウロ・グレイラット……
いや、浮気男とでも呼ぼうか?
浮気男は、ゼニスに頭を机に擦りるようにして、この世界でできる最大限の謝罪をした。
いいね。
すぐ謝れる男は嫌いじゃないぞ、パウロ。
でもな、今世でも前世でも、謝っても許されない大罪というのは存在するのだよ。
「………」
ドン……!
ゼニスは何も言わず、椅子から立ち上がると、パウロの頭を力強く叩いた。
あんなに楽しかった夕食は、パウロとリーリャの浮気発覚により、一気に修羅場へと変わった。
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「面白いことになりましたね」
壁に飾ってある剣を手入れしながら、ルーデウスは薄い笑みを浮かべそう言った。
「なんにも面白くないです!一家存続の危機なんですよ?」
俺はそんな事態を面白がるルーデウスを非難する。
このままじゃあ最悪離婚……とまでいかないだろうが、リーリャは追い出されてしまうかもしれない。
外は荒れ狂う雪。
そんな中を、行き場を失った妊娠している女性が生き抜けていけるとは、到底思えない。
「リーリャの実家は、確か南の方でしたから、馬車で向かっても一ヶ月はかかります。もし出て行くという事になれば、まずお腹の子は無事では済まないでしょうね」
ルーデウスもそのことは知っているはず。
しかし、知っていてなお、こいつはこんな楽しそうにしているのだ。
相変わらず性格の曲がった男だ。
「それは……兄様の実体験ですか?」
そんなルーデウスに怒りを覚え、思わず口が滑ってしまう。
「へえ、言うようになったじゃないですか」
しかし、ルーデウスは俺の嫌味を深く受け取る事はなかった。
「兄様もリーリャには色々としてもらったはずでしょう?少しは可哀想とか、思わないんですか?」
「微塵も思いませんね。父さんに襲われたかどうかは別として、最終的に身を委ねたのは、リーリャ自身でしょう?」
ルーデウスは冷静に、そして冷たい声で話す。
確かに、こいつの言うことにも一理ある。
成り行きがどうであれ、パウロの行為に身を委ねてしまったリーリャにも、少なからず責任はあるのだ。
「これで母さんがミリス教徒じゃなければ、怒られて終了だったんですけどね」
「………私」
でも、その責任の代償が、自分と子供の命なんて、あまりに重すぎる……
ゼニスが最悪な選択をする前に、止めよう。
「私、ちょっと下に行ってきます」
「無駄だと思いますよ?」
辛辣な言葉をかけるルーデウスを無視し、俺は一階へと降りて行った。
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一階は、俺が想像していた以上に静かだった。
ゼニスとリーリャは対面で座り合い、パウロは部屋の隅の方で息を殺している。
「ルーディア。もう夜も遅いわよ、早く寝なさい」
椅子に座っていたゼニスが笑みを浮かべながら、しかし決して嬉しそうではない声で話しかけてきた。
これは、かなり深刻だ。
このままいけば、本当にゼニスはリーリャを追い出してしまうかもしれない。
「母様、一度に兄弟が二人も増えると言うのに、何を落ち込んでいるんですか?」
「それはね、お父さんとリーリャがやっちゃいけないことをしたからよ」
全く、本当に世話のかかる家族だ……
ここは一つ、助け舟をだしてやろう。
「そうですか。しかし、リーリャは父様に逆らえる立場でしょうか?」
「………どういうこと?」
下を向いていたゼニスが顔を上げ、俺の発言の意味を探ろうとする。
「私は見ました。父様がリーリャを脅して、何かを要求しているところを」
「そう……なの?」
「ちが……!俺はそんなこと……!」
「あなたは黙ってなさい!!」
弁解しようとするパウロに、ゼニスは金切り声を上げた。
「……リーリャ、ルーディアの言ったことは本当なの?」
「いえ、そんな事実は……」
リーリャは必死に否定しようとするが、その目は明らかに泳いでいた。
即興で言った戯言だが、どうやらリーリャには心当たりがあるらしい。
なんと運がいいことだ。
「そうよね、あったとしても、メイドのあなたはそんなこと言えないわよね」
ゼニスは勝手に解釈し、納得した。
よし!
あとひと押しだ。
「母様、リーリャは悪くないと思います」
「そうね……」
「悪いのは父様です」
「そう……ね」
「父様が悪いのに、リーリャがひどい目に遭うのは、間違っていると思います」
「そう………ね」
ゼニスの反応が薄い。
あともう一手、何か掛ける言葉をさがせ……
「俺も、ルーディアの意見に賛成です」
その時、リビングの扉が開いた。
扉の奥から出てきたのは、眠そうな顔をしているルーデウスだ。
「ルディ……あなたも起きていたの?」
「母さんが珍しく声を上げましたからね。気になって降りてきたんですよ」
ルーデウスは目を擦りながら、ゆっくりと俺の横へ移動した。
「それで、リーリャをどうするんですか?俺としては、メイドは一人居てくれた方が、色々と便利なんですが……」
なんだよこいつ。
やっぱりリーリャのこと、大切にしてるんじゃないか。
ゼニスはしばらく考え込んだ後、大きなため息を吐いた。
「……分かったわよ。全く、二人には敵わないわね」
その言葉に、緊迫していた俺の心が、一気に緩んだ。
苦労をかけてゴメンね、ママン。
「リーリャ、うちにいなさい。あなたはもう家族よ!勝手に出ていくのは許さないわ!」
ゼニスがそう言い放つと、パウロは安堵のため息を吐き、リーリャは口に手を当て涙ぐむ。
「全く、眠いのに余計なことしないでくださいよ……」
ルーデウスは俺の耳元でそう呟くと、欠伸をしながら部屋へと戻って行った。
絶望から始まったパウロとリーリャの浮気騒動は、これにて一件落着だ。