髑髏の騎士D×D   作:プライベートX

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友達

 (私は死んだのかな……?)

 

 光の海の中を漂っている。凄く温かくて、懐かしい感じ。

レイナーレ様に神器を取られて、イッセーさん達が来てくれて……

私のお友達になってくれた。

思い残す事が無いって思ったけど……

もっとイッセーさん達とお話したかった。

もっと一緒にお買い物したかった。

もっと……もっと生きたかった。

 

(フフッ、未練がましいですね……私も)

 

でも私は神の教えに背いた不届き者です。

主の楽園には行けないでしょう。

でも全ては主の御心のままに……

 

《お待ちなさい……》

 

 突然、光の中から優しい声が聞こえた。

意識を手放して光の中へ落ちようとしていたアーシア。

その一声はアーシアの意識を光の中から救い上げ、優しい光で包み込んだ。

浮遊感は更に増し、どちらが天か地かすら解らない。

混乱する意識の中、また優しげな声が聞こえてきた。

 

《貴女が此方に来るのは早いわ……可愛いお嬢さん》

 

「だ……誰ですか?」

 

《少しだけ、お節介で物好きなおばさんかしら?》

 

「そうですか……此処は一体……」

 

《此処は幽界……貴女は肉体から解き放たれた【意識体】よ》

 

「意識体……?」

 

《魂のみの存在と言っても良いでしょう》

 

「そう言えば私……死んだのですね……」

 

《悲観するのは早いわ、お嬢さん》

 

「でも私……」

 

 身体を包む光が眩しく輝きだした。

そして何処かに吸い寄せられているかの様に動き出す。

一度に多くの事象が起きすぎて何が何だか解らず混乱する。

だが、アーシアは光の中で優しげな老女の顔が見えていた。

一度も会った事も無い人だったが、何故か何度も会っている様な気がする。

その老女がは微笑みながらアーシアに語りかける。

 

《異界に干渉するのも中々億劫ね……》

 

「オバ様は一体……なんで私なんかに……」

 

《あの人が【褒めた】子に興味があったの。滅多な事じゃないのよ?》

 

「あの人……?」

 

《彼は無愛想で凄く恐ろしい見た目よ。でも優しい心を持ってる人》

 

「それって、まさか……死神様の事ですか?きゃっ!」

 

 急に凄い力で極光の渦に引き寄せられるアーシア。

氾濫した川に流される流木の様に光の渦に巻き込まれる。

精一杯、体勢を持ち直そうと試みるが、天地すら解らない。

凄い勢いで流されて世界がグルグル回って流されていく。

光の渦の中心に近付くにつれて眩しさは更に増す。

 

《【古き友】に伝えて、貴方の【真心】忘れてないわって……》

 

 「必ず……お伝え……」

 

 極光はアーシアを完全に飲み込み、そこで意識は途切れた。

 

 

 

 それは臨死体験と言うべきか、それとも死後の世界での妄想か。

どのみち自分はあの時【死んだ】と言う事は確かである。

そう……私、【アーシア・アルジェント】は死んだ。

だが、今目の前に居る髑髏と目が合っているのは一体何故か?

優しい老女と会話をした直後からの記憶が曖昧になっている。

死んで、オバ様に会って、光の渦に巻き込まれ……

眼が覚めた私が初めて見た物は髑髏の紅い眼だった。

 

「此処は……私は一体……」

 

「奇怪な事だ、死者が目覚めるとは……」

 

 騎士は目を覚ましたアーシアを見るなり呟く。

死んだ筈の人間が目を覚ましたのだから、騎士も驚いていた。

死霊術者は死者を操る事が出来ると聞いてはいたが……

だが、そんな禍々しい気配はアーシアには無い。

本当に息を吹き返したのか?

 

 疑念を払拭する為かアーシアの顔をガン見している騎士。

不気味としか言い様が無いのはアーシアとて承知しているが……

どう説明をするべきか……全く解らない。

 

「あ……あの」

 

「ほぅ、どうやら人形ではないようだ」

 

「人形……?何の事だか解りませんが……

お伝えしたい事があります」

 

「何だ」

 

「【貴方の真心】忘れてないわって、優しいオバ様が……」

 

 一瞬、騎士の顔が驚いた……様な気がした。

 

「成る程、フローラの仕業か」

 

「フローラ様……?あのオバ様の御名前ですか?」

 

「左様、【霊樹の森の魔女】だ。

この異界にも干渉出来るとは、流石死しても魔女と言った所か」

 

 騎士はそう言うとアーシアを掴み骸の馬に乗せた。

どうやら一誠の方も決着が着いた様だ。

一際、大きな爆発音と吹き飛ばされるレイナーレを流し目で見る。

十中八九死ぬと見積もったが……

やはり紅きドラゴンの力か。

だが……我も油断はせぬ。

 

「死してなお世話になるとはな、礼を言う……【古き友】よ」

 

 手に持つ剣を顔の前で掲げて空に向かい【騎士の礼】をする。

そしてリアスと朱乃も用事を済ました様で紅い魔方陣から姿を現した。

その手には堕天使とおぼしき羽が握られていた。

 

「騎士殿、イッセーは……勝ちましたか?」

 

「愚問、貴様とて解っているだろう」

 

「フフッ……リアス?顔が笑ってるわよ?」

 

「そ……そう?別に普通っ!普通よ!」

 

「十中八九死ぬと見積もったがな、中々丈夫な小僧だ」

 

「私の下僕よ?並の兵士の筈がないわ」

 

「良き王と強き王は違う……兵もまた然り。

精々励む事だリアス・グレモリー」

 

 騎士はそう言うと黒歌達の所へと歩き出す。

光の力もだいぶ和らいでいるが重傷である事は変わりない。

腰に着けた袋に手を入れ、輝く粉を握り倒れる黒歌の背中へと押し付けた。

ビクッと黒歌の身体が反応する。

大きな傷口に手をあて、其なりに優しく擦る騎士。

痛みが引いていくのか呼吸もだいぶ落ち着いている様だ。

だが気を失っているのか意識は無い。

騎士は塞がってゆく傷口を見ながらぼやいた。

 

「本当に不器用な奴だ……だが悪くは無い」

 

 傷口は完全にふさがり黒歌は目を覚ます。

だが身体にまだ力が入らない様で弱々しく上半身を起こした。

騎士は隣に倒れている子猫と木場にも妖精の粉を使い傷を癒してやった。

暫くしてグレモリーの眷族の処置も終わり戻ると黒歌が俯いている。

元気が無い。

何がそんなに悲しいのかと騎士は思った。

傷口が痛むのか?はたまた光の毒がまだ体内に残っているのか?

どちらにせよ騎士が出来る事はもうない。

後はもう本人に我慢してもらう他ないのだが。

 

「傷口が痛むのか」

 

「違うにゃ……」

 

「では何だ」

 

「私……迷惑ばっかかけてるにゃ……」

 

 黒歌は泣いていた。

悪魔として其れなりの力は有ると思っていた。

だが取るに足らない堕天使の罠にはまり、妹を庇って戦闘不能。

騎士の為と頑張ろうと思っていただけに……

自分の不甲斐なさに腹が立つし、何よりも悔しかった。

これでは只、騎士の足を引っ張るお荷物じゃないのか?

……騎士の【ツレ】の資格なんて無いのかもしれない。

 

「迷惑……?何を今更な事を」

 

「やっぱり私……」

 

「貴様の事など最初から当てになどしておらぬ」

 

 辛辣な騎士の物言いに更にしゅんとなった黒歌。

すすり泣く声がより一層大きくなった。

居心地が悪くなったのか騎士は黒歌に背を向けて歩き出す。

しかし少し歩くと立ち止まり背を向けたまま言った。

 

「だが……貴様にしては上出来だった」

 

「え……?」

 

「当てにせずとも貴様ならば【やる】だろう?」

 

 そう言うと騎士は再び歩き出すと倒れたレイナーレの所へと向かう。

倒れたレイナーレの華奢な身体を掴み、リアスの元へと投げる。

ちょうど一誠はリアスに事の成り行きを説明していた。

其処へ突然、レイナーレが飛んできて驚いていたが直ぐに元に戻った。

水溜まりに突っ込み、水の冷たさと投げられた痛みで眼が覚めた様だ。

酷く慌て、怯えている。

まさに滑稽。

だが自業自得としか言い様がない。

何やら叫んでいるが徐々に顔色が真っ青になっていく。

リアスも朱乃も一誠もこの堕天使を生かしておく気は無いらしい。

猫かぶりの態度と声で一誠に懇願している……が失敗したみたいだな。

レイナーレは騎士を見つけると泣きながら命乞いをしてきた。

 

「私が……間違ってましたっ!改心します……

どうか!どうかお助けください……!」

 

「断る」

 

 無慈悲な死刑宣告をすると剣の切っ先を向ける。

騎士の本気の殺意と迫力に放心状態になったレイナーレ。

そして騎士は額に手をあてるとレイナーレの身体から淡い緑の光の玉を吸い出す。

その光景を見ていたリアスは驚愕した。

 

「な……なんの媒体無しに神器を……!」

 

「本当に規格外ですわね……」

 

「オッサンは何をやってるんだ……?」

 

 レイナーレの身体は激しく痙攣をし、絶叫する。

まさに地獄の様な痛みと苦しみだ。

顔の穴と言う穴から体液が流れだす。

ほんの少し前にアーシアに対して行っていた事だ。

しかし、まさか自分がやられるとは夢にも思っていなかったであろう。

それだけではない。

騎士の精霊由来の力か、異界の魔の力か。

レイナーレの身体から煙が上がり、徐々に灰になっていく。

 

「貴様には過ぎたる力だ、あるべき者の元へ返して貰おう」

 

 アーシアの神器を抜きとると騎士は無造作に剣を振る。

灰のオブジェになったレイナーレは剣の当たった衝撃で一気に崩れさる。

そして崩れた灰塵は風に吹かれ消えた。

風が灰を巻き上げたタイミングで、骸の馬に乗ったアーシアと黒歌、リアスの眷族達が歩いてきた。

骸の馬から降りたアーシアは騎士の前まで歩いて行く。

そして騎士の手の淡い緑の光はアーシアを包み一体化した。

アーシアの神器があるべき場所へと戻った瞬間だった。

 

「我の不手際で不自由をかけた、その事をまず詫びよう」

 

  髑髏の騎士が頭を下げる。

その場所に居る者すべてが息を飲んだ。

悪鬼羅刹、もしくは剣鬼、死神、そんな【規格外】が人間に謝罪している。

非を認め、頭を下げる。

ごく当たり前の光景だが、出来ない者は多いはず。

リアス達はそうでも無いが、悪魔は選民意識が非常に高い。

人間など家畜と同等と言う者もいる。

軽々しく人間に頭を下げる事が出来る悪魔はあまり居ない。

だからこそ、リアスは騎士の礼節を重んじる態度に何か感慨深さを感じた。

まさにあれこそが【貴族】である態度だと。

 

「詫びるだなんて……

私、本当のお友達が出来ました。

だから良いんです。」

 

「友達……?」

 

「イッセーさんと皆さんと……あと死神様も……」

 

「我も貴様の【友】とな?」

 

「ダメ……ですか?」

 

 アーシアは上目遣いで騎士を見上げ、深紅の眼はアーシアを見下ろしている。

黒き衣を身に纏い、いぶし銀の鎧は月明かりに反射し鈍く光る。

この無言の圧力はアーシアに重くのし掛かる。

やはり……無礼だったのではないかと。

謝ろうと口を開こうとした時に騎士がアーシアに問いかけた。

 

「娘、名を名乗れ」

 

「はいっ!?アーシア・アルジェントです!」

 

 手に持つ剣を顔の前で構え、騎士が最大限に敬意示す礼をアーシアに返した。

その緒動作は洗礼されており、誰が見ても見惚れる【敬礼】だった。

 

「我が友【アーシア・アルジェント】

この剣に懸けて友である貴様を守る事を誓おう」

 

「あ……ありがとうございます!」

 

 天使の様な笑顔で笑うアーシアだった。

生きているアーシアを見て、抱きしめ泣くイッセー。

その光景を目の当たりし一堂は少し引いていた。

何故なら見る者が見ればロリコンに間違われても仕方がないからだ。

いや、既にセクハラかもしれない……。

 

「一時はどうなる事かと思ったけど……一件落着かしら?」

 

「貴様にも礼を言わねばならぬな、リアス・グレモリー」

 

「やめてちょうだい……騎士殿に礼を言われてはグレイフィアに怒られるわ」

 

「だが、懸念すべきは報復か」

 

「それは大丈夫よ、この件に関しては単なる小競り合い。何時もの事だわ」

 

「仮に刺客が来ても斬り伏せるのみ」

 

「騎士殿に喧嘩売る馬鹿者も中々居ないわよ……」

 

 戯れる眷族達を見守る王と元覇王の背中は少しだけ似ていた。

 

 




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