髑髏の騎士D×D   作:プライベートX

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不死を語る者
髑髏と不死鳥


 堕天使の一件から数日、一誠達は比較的穏やかな日常を謳歌していた。

だが一誠にとっては地獄の日常の始まりだったのかもしれない。

何故ならば軍隊のブートキャンプさながらの特訓が開始されていた。

一誠には闘う上で基本的な能力がない。

転生するまで普通の高校生だったのだ。

仕方がないと言えば仕方がない。

 

 この戦後の平和な世の中で戦闘技術を学ぶ環境など限られている。

戦闘技術とはスポーツ格闘技と決定的に違う所がある。

いかに自分が傷を負わず、相手を殺すか。

この一点を追求するに尽きる。

明確なルールがまず無い。

殺すか死ぬかの二者択一しかない。

しかし、技術以前に【基礎体力】が必要なのは言うまでもない。

現代戦でも空身の戦闘などまずあり得ない。

防弾チョッキ、銃、弾薬等を身に付けて行動するのだ。

自衛隊や軍隊の兵士が民間人より体力があるのは日々の錬成の賜物である。

継続する事が技術と基礎体力を付ける近道だ。

 

 

「邪念が入ってるわ。

腰の動きがいやらしいわよ」

 

「そ……そんな……

部長が俺の上に乗ってると思うと……」

 

「あら?お喋り出来る余裕があるのね。

成長したわイッセー。

もう百回追加しようかしら?」

 

「俺の腕……もっと熱くなれよっ!

なあ!おい!限界か俺の腕っ!

かぁ~崖っぷちありがとう!

今日から俺は富士山だっ!」

 

 気温すら変える熱い男が憑依したのか?

いきなり狂った様に腕立てする一誠。

その豹変した様子を苦笑しながら……

リアスは少し引いていた。

暫くすると聞き慣れた声が聞こえてくる。

腕立て伏せの姿勢のまま声がした方に顔を向けると……

骸の馬に乗った金髪の少女と髑髏の騎士が居た。

馬から降りたアーシアはトコトコと小走りに近付いてくる。

だが、何も無い所で躓き転けた。

なんて……癒し系なんだろうか。

一誠はこの世の天使を見ている様な気分になった。

 

「イッセーさん、お茶です」

 

「あぁ、ありがとう」

 

「朝から滑稽な事をしているな、小僧」

 

「滑稽って……俺は特訓してるんだよ!」

 

「娘に尻に敷かれている様にしか見えぬがな」

 

「いや、まぁ、そうだけども……」

 

「精々励め小僧、力が無ければいずれ死ぬ。

己も友も家族すら……な」

 

「やっぱり重い話だな……

よーく解ってるよオッサン!」

 

「リアス・グレモリーあの件は如何に」

 

 騎士は項垂れる一誠を放置してリアスの方へと眼を向けた。

アーシアは狂った様に腕立て伏せをする一誠を可愛らしく応援している。

早朝とは言え、朝の公園に髑髏の騎士が降臨していてはヤバくないか?

只の人間に目撃される程、騎士は落ちぶれてはいない。

だが、駒王町のオカルトサイトの一つに……

【馬に乗った美女と髑髏】なる目撃談が存在している。

あくまで噂の類いで信憑性など皆無の都市伝説として。

話が逸れたが騎士の問いにリアスは笑顔で答えた。

 

「アーシアの事なら大丈夫よ。

正式に悪魔側の協力者として私が保護するわ」

 

「感謝する、リアス・グレモリー。

この娘は日の当たる場所に居るべき者だ」

 

「本来なら教会側に保護されるべきね。

でもその教会から【追放】されていてはね……」

 

「くだらぬ、本質を理解出来ぬ者共よ」

 

「兎に角、衣食住についても心配はないわ。

駒王学園の学生としての編入処置も終わっているし……

あ、アーシアの住む所だけどイッセーの家よ」

 

「小僧の家……だと」

 

 場の空気が一瞬で氷ついたとリアスは後に語る。

あれは愛娘に彼氏を紹介された父親の様だったと……。

騎士は一誠を睨んでいる。

しかしアーシア本人は満更でもない様子だ。

本人の気持ちを尊重する騎士は一誠の家までアーシアを送った。

一誠の家の前には既にダンボールが積まれていた。

THE・事後承諾。

社会に出て此をやられるとかなり困る。

一誠もアーシアがまさか家に住むとは……

全く聞かされていなかった。

そう、初耳&寝耳に水。

そして妄想力に定評がある一誠。

その頭の中では今まさに!

激しい議論が行われていた……

 

 

一誠A

(美少女と同居する件について)

一誠B

(男の夢だろっ!あぁ!俺の熱いパトスが……)

一誠C

(美少女は触らずに愛でる物……それが真理)

一誠A

(駄目だ……コイツら早く何とかしないと……)

 

 

 

「マジですか……?部長?」

 

「本当よイッセー、早く荷物を運んであげて」

 

 嬉しい半分困惑半分の一誠。

だが隣には笑顔のアーシア。

あ、やっぱり嬉しいかもと顔が綻んだ。

その直後に真冬の様な寒気が襲った。

錆び付いたブリキの玩具の如く後ろを振り返る。

 

其処には……

 

憤怒の表情をした騎士が一誠を見下ろしていた。

(髑髏だから表情は変わらないが)

 

「こ……この度はお日柄も良く……」

 

「小僧」

 

「はいっ!」

 

「【友】を預ける」

 

「あ…あぁ!アーシアは俺が守る!」

 

「貴様の力など期待はせぬ。

だが【もしもの時は】我が参る。

ゆめゆめ、忘れぬ事だ」

 

「健全なお付き合いをします(キリッ」

 

 

 その後、兵藤家【緊急家族会議】開催。

性欲の権化たる一誠。

両親は何か間違いが起きてしまうのではないか?

我息子ながら心配でならない。

高度かつ極めて慎重な協議の末……

賛成多数で承認を得たアーシア。

無事、一誠宅にホームステイする事が正式に決定した。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「相変わらず、あの子に甘いにゃ」

 

「何故、姉さまが此処に……?」

 

 所変わって駒王学園オカルト研究部部室。

そこにはソファーでお菓子を食べながら寛ぐ黒歌が居た。

自宅の様にさも当たり前の態度で部室に居る。

朝登校し部室に寄った小猫はかなり困惑した。

犯罪者……はぐれ悪魔の指定を取り消された黒歌は一応の身分が与えられた。

それは駒王学園の臨時勤務の教師(保健体育)である。

年頃の男子には刺激的過ぎるだろうと思うが……

だが、それが良いんです。

まぁ、全部騎士が魔王に口添えしたから実現した人事ではあるが。

 

 

 

 昼間騎士はベヘリットの探索をしている。

現にこの駒王町でベヘリットの欠片を幾つか採取した。

そしてアーシアの蘇生の一件。

【フローラ】の異界への干渉は騎士に幾ばくかの希望を持たせた。

この異界と元の世界は何かしらで繋がっていると確信させた。

 

「帰還の望み、断たれた訳では無い……か」

 

 駒王町が一望出来る子高い山の山頂で一人呟く騎士。

この小綺麗な町を見ていると複雑な気分になる。

時の理を外れる前の記憶……

自身の国でこの様な平和な時があったのかと。

疫病、飢餓、戦争、そんな物に悩まされずに生活出来る。

この国の国王は本当に良き統治をしていると感心した。

 

(過ぎ去りし己の過去と比較しても詮なき事)

 

 今出来る事をやるしか無い。

幸いと言うべきか【ゴッド・ハンド】の気配は欠片も無い。

まぁ、時は腐る程ある。

焦って事を運ぶ必要性は今の所は無い。

人馬の重さを全く感じさせない様に木々を跳ねる様に疾走する。

髑髏の騎士は今日も駒王町を駆けていた。

その漆黒のマントを風に靡かせながら……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「下郎、次はその首刎ねる」

 

 オカルト研究部部室が修羅場と化している。

何故ならば髑髏のオッサンがマジで切れてるから……

もっと簡単に言うと……

ホストとその取り巻きが髑髏に殺されかけてる。

 

 時はさかのぼる事、約30分程前……

部室に銀髪の美女グレイフィアさんが現れた。

まぁ、もう先日会ってるんだけどね……

部活をする前に部長が話があると言った所で【悪魔】が出てきた。

フェニックスを名乗る部長の婚約者が……

 

「愛しのリアス会いに来たぜ」

 

「ライザー……どう言うつもり?」

 

「どうもこうも、婚約者を迎えに来ただけだぜ?」

 

「以前にも言ったはずよ!貴方とは結婚しないわっ」

 

 部長とホスト野郎が言い争っている。

そんな時に急に殺意と敵意が俺を、いや俺達を襲った。

上級悪魔の殺意、これ程かと思った……がもっと凄いの俺は知ってる。

でもアーシアが震えながら俺の腕に抱きついてきた。

この殺意と敵意はアーシアにはキツすぎるだろう。

だがホスト野郎がアーシアを見つけると凄い勢いで睨んできた。

 

「おいおい冗談だろリアス。

何故、下賤な人間が此処に居るんだ?」

 

「その子は私達の協力者……いえ友人よ」

 

「はっ!友人?人間が友人だと?

笑えるな!どれ少し遊んでやるか」

 

「ちょっと!ライザー!

冗談では済まないわよっ!」

 

「心配するなリアス。

ちょっとしたスキンシップさ……

まぁ少し過激かもしれないが」

 

 部長は必死にライザーを止めようしたけど……

俺の堪忍袋は此処で破裂したんだ。

部長よりも速く俺は動いていたと思う。

 

「ふざけんなっ!焼き鳥野郎!」 

 

 俺はブーステッド・ギアを発動させて殴り掛かる。

でも焼き鳥野郎の女の子達……

ライザーの眷族達に取り押さえられた。

祐斗や小猫ちゃんも牽制されて動けずにいる。

フリーなのは小猫ちゃんのお姉さんだけ……

でも我関せずだよっ!

フリーダム過ぎるだろ!

くそっ!なんて冷たい人なんだっ!

と思ったけど一言だけライザーに忠告してたな。

 

「あんた……馬鹿にゃ」

 

「お姉さん、何が馬鹿か教えてもらえますか?」

 

「触らぬ神に何とやらにゃ……

にゃ?神じゃなかったかにゃ?」

 

「下らないな。

まぁ人間の娘には勿体ない栄誉だぞ?

喜べ下賤な身で俺に……」

 

 ライザーがアーシアに手を向けた瞬間、黒い霧が部室漂う。

馬鹿でも解る禍々しい魔力が狭い空間に凝縮する。

その霧はアーシアの前に集束している。

まるでアーシアを庇うかの様に……

 

 グレイフィアはライザーを止め損なった事を後悔していた。

この気配、間違いなく【彼】のものだと確信した。

時期を逸したとはまさにこの事か……

今後はせめて事を荒立てない様にする。

この一点に務めなくてはと気持ちを切り換えた。

騎士を敵にしてまっては悪魔にとって損失どころではない。

争う事になったらどれ程の損害が出るか……

軽率な行動をしたこの愚か者をぶん殴ってやりたい衝動を押さえる。

グレイフィアはやれやれと頭を降り、深い溜め息をしたのであった。 

 

 ただ事では無い気配にライザーは動揺していた。

黒い霧は次第に濃くなり形を成していく。

触れてはいけない【物】に触れた。

背筋に激しい悪寒を感じ、伸ばした手を戻そうとするが……

しかし、時既に遅し。

不意に襲った腕の激痛に我にかえる。

同時に自分の目を疑った。

何故ならば自身の伸ばした手が宙を舞っていたからだ。

重力に導かれ落下する自分の腕。

その腕の先には深紅の眼をした髑髏がいた。

そして手に持つ剣の切っ先を己の喉へと向け立っていた。

 

「がぁぁぁぁっ!腕がっ」

 

「下郎、次はその首刎ねる」

 

 部室に髑髏の騎士が降臨した。

 

 ぶちキレた髑髏のオッサンが目の前に居る。

これが今、現在進行形で目の前で展開されている……

オカルト研究部部室の内の修羅場である。

 

 

 有無を言わせぬ迫力と殺意。

斬り飛ばされた腕を押さえながら跪く。

一瞬の出来事過ぎて部室の時が止まった様だった。

部室にはライザーの呻き声が響いている。

 

「ラ、ライザーさまっ!」

 

 あわてて眷族達が髑髏のオッサンに殺到するが……

 

「去ね」

 

 オッサンは剣をライザーに向けたまま……

たった一言だけ発した。

殺意と威圧感がびりびりと肌に感じる。

初見の人は流石にキツいよ、あれは。

オッサンの間合いに入ろうものなら首が飛ぶ。

そんなビジョンが本当に見えるんだ。

確実に自分が死ぬって嫌でも解る。

たぶん、織田信長ってきっとこんな感じだろう。

第六天魔王って言ってるしな。

あれ?何か違うか……

 

何故か冷静に分析する一誠だった。             

 

 

 

 仲間の眷族達が髑髏の覇気と殺意に次々に倒れた。

皆、感じた事の無い間近な【死】の恐怖に震えている。

 

(桁外れの魔力、何よりこの剣気!

名のある剣士を数多く見たが……

全く比較にならんっ!いや待てよ……

髑髏、髑髏……剣士、騎士?まさか!?)

 

ライザーの【騎士】カーラマインは絶句した。

 

 思えば理不尽な事をしているのは我らの方だ。

自分の主とは言え、なんの罪の無い者に無体をしようとしてる。

リアス様の眷族が怒るのも当然だろう。

なれど主の命に従うのは眷族たる私の務めでもある。

自身の剣に手を添えて、臨戦体勢を取っていた。

だが突然、部屋を禍々しい黒い霧が立ち込めた。

尋常ではない気配に身体が震えている。

危険だ、此処から離れろと……

 

 次の瞬間、少女に伸ばしていた主の腕が飛んだ。

 

 部屋にまるで魔王様が降臨した様な魔力。

そう思った矢先、主の腕が飛んだのだ。

それと同時に現れたのだ。

漆黒のマントを靡かせた【髑髏】が目の前に現れたのだ。

そして、立ち向かった仲間達は【髑髏】の紅い眼で睨まれただけで腰を抜かしている。

半端ではない、殺意と覇気。

戦えば間違い無く……死ぬ。

それは最早、それが運命《さだめ》かのように。

人間の少女は【髑髏】のマントの端を掴み隠れている。

まるで悪漢から少女を救うべく現れた騎士だ。

 

しかしその時、思い出した。

幼き頃より聞かされた話……

御伽話【髑髏の騎士】を。

 

《その者、異界より現れし黒き騎士。

 悪しき者、闇の彼方へ打ち払う者神出鬼没の騎士。

 悪事を働く者よ、心せよ。

 深き闇の淵から深紅の眼で騎士は見ている。

 強きを挫き、弱きを守る黒き騎士。

 全ての不義を薙ぎ払う黒き暴風。

 蕀の剣を掲げた髑髏の騎士よ、我らは続こう。

 黒き風と共に我らは進む……》

 

ー 髑髏の騎士 ー

 

 

 全ての騎士の誉れである伝説の騎士。

 

 カーラマインは悶絶する主ライザーを放置して……

一人感動に打ち震えていた。

 

 「ま、まさか本物……なのか?」

 

 少女の前に立ち塞がり剣を構える髑髏の騎士。

その立ち振舞い、覇気、姿勢、全てにおいて騎士道の具現化している。

 正に、伝説にうたわれた黒騎士に相違なかった。




焼き鳥編スタート。
なおだいぶ圧縮して話を進めています……
あしからず、ご容赦くださいまし。
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