髑髏の騎士D×D   作:プライベートX

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駆け足で書いてしまった……


異界の騎士

 

 (流石はドラゴンと言った所か……)

 

 剣を構え直し、黒い風が巨躯を縦横無尽に駆る。

 刃馬一体と化した騎士の眼にも留まらぬ斬撃は頭、顔、腕、胴、脚、全身に致命傷に至らぬまでも決して浅くはない傷を次々と作りだす。

 そして、散々斬りつけたのち突如愛馬の手綱を引くと一息で赤龍帝から離れた。

 

 巨大な身体から一跳びで地上に降り立つ騎士。だが、全く重力や体重など感じさせない着地は地上で傍観している悪魔、天使、堕天使をまた別の意味で驚かせた。

 相も変わらず漆黒のマントを靡かせ深紅の眼を赤龍帝へと向けているが、その威容と覇気に気を押され誰一人として近づく事さえ出来ないでいた。

 その時、この血みどろの戦場に合わない愛くるしい声が聞こえた。

 

 「貴方は誰……なの?」

 

 騎士はギロリと深紅の眼を一瞬少女に向ける、が興味なさげに赤龍帝に戻す。

 しかし、ほんの一瞬睨まれただけで少女が肝を冷やしたのは言うまでもない。

 

 「名乗る名など、無い」

 

 「えー、なんでぇ!」

 

 「奇抜な娘よ、下がれ」

 

 振り向く事もなく淡々と答える騎士は剣を天高く掲げ、剣を自分の口に突き刺す様に刀身を飲み込む。

 その異様な光景に悪魔達は皆絶句した。

 そして、引き抜かれる刀身。

 刀身から放たれる妖気たるや神滅具にすら凌駕する程の魔力が溢れ出ていた。

 彼らは知らぬだろう。

 この剣は神をも葬る威力を秘め、その斬撃は空間すらも斬り裂く事を。

 髑髏の騎士の体内で使徒より奪いしベヘリットを練り上げ刀身に纏わせた魔剣。

 対【ゴッドハンド】の切り札。

 

 騎士はそれを【喚び水の剣】と言った。

 

 

 「な、なんだあの剣は……」

 

 「桁違いの魔力だ!」

 

 「あんな魔剣見た事ないぞ」

 

 ”喚び水の剣”を見て騒ぎ出す悪魔達。

 しかし、そんな切り札である”喚び水の剣”の異変を騎士は感じていた。

 

 (剣の力が弱まっている)

 

 魔帝ガニシュカ戦と次元の狭間からの脱出で2度振った。

 たった二度振っただけ。

 だが、それだけでも剣の力はかなり消耗していたのだ。

 刀身のベヘリットの数多の目が一斉に騎士へと目を向ける。

 まるで騎士の思考を見透かしている様に不気味に笑っていた。

 

 (……考えてもせん無き事、か)

 

 余計な思考を捨て剣を顔の前に構える。

 古の騎士が決意を示す構え、必滅の決意を剣に乗せて駆け出そうとした時、騎士の前に紅髪の青年が立ち塞がった。

 

 「待ってください」

 

 「何だ?」

 

 「僕も戦います」

 

 「下がれ、貴様では相手になるまい」

 

 辛辣だが、事実のみを簡潔に伝えた。

 百戦錬磨の髑髏の騎士が【喚び水の剣】を使わねば斬り抜けられないと決断する程に、この龍は強い。

 故に、この場に居る者が束になっても勝てる見込みは限りなく0だと言える。

 

 

 「僕も貴族なんでね、此処で闘わないではグレモリー家の名が廃る」

 

 「死ぬぞ、小僧」

 

 「それが、我が定めならば」

 

 赤髪の若き異形の決意の固さに騎士は折れた、いや動かされたと言うべきか。

 

 「その意気や良し」

 

 唐突に髑髏の騎士は若い悪魔の袖を掴み愛馬に乗せる。

 突然の出来事にサーゼクス・グレモリーは驚いた。

 髑髏の騎士の馬はあっと言う間に加速すると、風を切りながら赤龍帝へと一気に駆ける。

 簡単に馬で駆けると言っても此処は荒野だ。

 読んで字の如く、荒れ果てた地面、無秩序に突き出た岩、そして多くの骸が転る屍山血河の荒野。

 更には赤龍帝からの容赦の無い猛攻が空から襲いかかる。

 だが、漆黒の風と化した騎士にそれらの障害は無いにも等しく、再び赤龍帝へと肉薄する所まで近いていた。

 

 

 「よく聞け、小僧」

 

 騎士は【喚び水の剣】を構えると、言葉少なくそう呟いた。

 

 「何か秘策があるようですね」

 

 「左様」

 

 騎士の握る不気味な剣に気圧されながらサーゼクスは覚悟を決める。

 どのみち、やる以外に選択肢などないのだから。

 

 「それで、僕は何をすれば?」

 

 「我が奴を断つ、貴様等で奴を討つ」

 

 「た、大変シンプルな事で……」

 

 それが出来れば苦労はしない、サーゼクスは喉まで出かかった言葉を何とか飲み込んだ。

 

 「案ずるな、膳立てはする」

 

 「……信じてますよ、この上はもう一蓮托生ですしね!」

 

 その凶悪極まる巨躯が眼前に迫ると、今日一番の咆哮が騎士達の行く手を阻む。

 ”大憤怒”赤龍帝の怒りの全てが詰まった咆哮は、身も心も、空気すらも震わせた。

 侮った相手にしてやられた屈辱か、目障りな羽虫がまた勢い付いている苛立ちかは定かではない。

 

 だが想像してみて欲しい。

 蚊やとるに足らない虫に刺され、噛まれ、腫れれば腹が立つであろう。

 自分の目の前を沢山の羽虫が飛び回れば鬱陶しいと思うだろう。

 そこに危険な毒虫がいるとなれば尚更、叩き潰したくなるだろう。 

 

 「一筋縄ではいかぬ、か」

 

 赤龍帝の口から吐き出された火球を紙一重ですり抜け、同時に振りぬかれた巨尾すら足場に更に上と飛び上がる。

 瞬く間もない高度かつ高速の攻防にサーゼクスは、騎士と巨龍の激戦に、只身を任す事しか出来なかった。

 

 「おのれ、調子に乗るな小虫がぁ!!!!」

 

 刹那、今しがた回避した筈の尾が騎士の頭上より叩き落とされる。 

 何故、そこに尾があるのか?

 衝撃的な光景にサーゼクスは今度こそ確実な死を覚悟した。

 この騎士の機動の更にその上を行く巨龍。

 こんな馬鹿げた話があるのだろうか、こんな現実があるのだろうか。  

 だが、現実逃避をする間もなく赤龍帝の力任せの一撃は眼前に迫っていた。

 

 「……これまでかっ」

 

 最早これまでと、目を瞑り諦めかけた……その時。

 

 「乾坤一擲」

 

 そう一言呟くと、騎士は【喚び水の剣】を迫る尾に振り落とす。

 眼前に迫った巨大な尾はその”背景”ごと斬り裂かれた、同時に大量の鮮血が少し遅れて飛び散った。

 正に絶叫、先ほどとは違った痛々しい咆哮が辺り一帯に響き渡る。

 斬り落とされ尾は、裂かれた空間の彼方から這い出た【人の塊の様な何か】に異界に引きずり込まれていった。

 

 

「グ、グォォォォォォ!!!」

 

 苦痛に顔を歪め力なく大地へと落下する。

 数刻まで圧倒的な力で蹂躙し尽くした暴力の化身。

 しかし、今や見る影もなく【ニ天龍】と言われた最強の存在が初めて地に伏せた。

 

 「好機、也」

 

 「感謝します!この機を逃すな!かかれぇ!!」 

 

 サーゼクスは馬から飛び出すと、ありったけの魔力を込めた消滅魔法をドライグに打ち込む。

 そして、力の限り叫んだ。

 巨尾を断たれ、地に伏せた赤龍帝を見て今まで傍観していた悪魔、天使、堕天使達に士気が戻る。

 各々が雄たけびを上げて突撃を開始し、光の槍や魔力弾の豪雨が赤龍帝に降り注ぐ。

 次第に鱗は弾け、血が飛び散り、砂ぼこりが辺りを覆う。

 蟻が地に這いずる餌に群がるが如く赤龍帝に殺到、総攻撃をしかけた結果。

 

 二天龍【赤龍帝ドライグ】は神器に封印された。

 

 

 「残るは、後一つ」

 

 【喚び水の剣】を構え直し白い龍の方へ駆けていく髑髏の騎士。

 漆黒の塊は中に浮かぶ天使や悪魔を足場に天高く飛んだ。

 漆黒マントを靡かせ【白龍皇】と呼ばれる龍に一気に迫り、交差する。

 一瞬の出来事、だが龍は眼を見開き驚愕し、そして自分の迂闊さに後悔した。

 

 「な、何だとっ」

 

 「遅い」

 

 これほどの手練れの接近を何故感知できかったのかと。

 だが、“後悔先に立たず“と言う諺の如く、既に時遅し。

 黒と白が交差して間もなく、赤龍帝と同じく白龍皇も地上に叩き落された。

 そう、交差した一瞬で騎士はすれ違い様に翼を【喚び水の剣】で異界の彼方に葬っていたからだ。

 翼が無ければ空中に留まる事など出来るはずも無い。

 その巨体は重力にしたがい落下、間もなく【白龍皇アルビオン】も神器に封印された。

 

 

 「……因果は決して円環ではなく螺旋」

 

 古き友の言葉を思い、黄昏る。

 闘いの輪廻を永遠と周り続ける、己の宿命を異界の空を見ながら再認識する騎士。

 

 (この異界の空は“あの時の空“と似ている……)

 

 「騎士殿」

 

 戦に一段落がつき、何処までも続く赤黒い空を眺めていた騎士に不意に誰かが声をかけた。

 聞き覚えのある声からして、先程の赤髪の小僧だと言う事は直ぐに解った。

 

 「何用だ」

 

 馬上から見下ろしながら振り返ると、赤髪と奇抜な服を着た娘が居た。

 

 「まだお礼を言ってないと思いまして、我々の危機を救って下さり感謝しています」

 

 「顔はちょっと怖いけど……、でも本当にありがとう!」

 

 「礼など不要だ」

 

 そう言うと騎士は手綱を引き、二人に背を向ける。

 

 「あはは、相変わらずお厳しい。それでも言わせて下さい」

 

 「精々、励め。若き異形の者よ」

 

 髑髏の騎士は【喚び水の剣】を振り空間に歪みを生み出した。

 歪からは禍々しい光が漏れている。

 

「あ、あの!僕の名前はサーゼクス!サーゼクス・グレモリーです!またいつかお会いしましょう!」

 

「わ、私はセラフォルー・シトリーだよー!またね~!」

 

 「縁あれば、また逢う事もあろう」

 

 そう言うと髑髏の騎士と愛馬は歩き出し、不気味な光の中に消えて行った。

 

 

 

 

 二天龍を封じた伝説の騎士。

 この戦いは髑髏の騎士の、異界での新たな戦いの始まりに過ぎなかった。

 

 

 

 

 




.大体文字数は3000文字前後位にしたいと思っています
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