少数精鋭で多勢を相手に戦争をする場合において……
寡兵側のとれる手段は限られている。
息を潜めて待ち伏せ、強烈な一撃を与え離脱する。
地の利を生かし、罠を仕掛け敵の機動を制限する。
一般的にそれを【ゲリラ戦法】と言う。
「流石は僕のリーアだ。
無駄の無い、効率的な配置だ」
リアス達の動きを見ていたサーゼクスは声に出して称賛した。
本拠地を攻める前に自陣の防御を固める。
本陣付近の森に罠を仕掛け、幻術でしっかり隠蔽。
機動力のある駒で迎撃&遊撃。
地形地物を最大限利用し、かつ総力戦でなければ……
リアス・グレモリーに勝ち目など無いだろう。
「定石だ、後は奴等次第か」
「ライザー君は少々自惚れが過ぎる男だけど……
ゲームの実力は目を見張る物がある」
「笑止」
「ハハッ、騎士殿から見れば……ね」
サーゼクスは苦虫を噛み潰した様な顔で笑っていた。
隣に威風堂々と立つ髑髏の騎士を見てしみじみ思う。
この騎士には勝てないな……と。
それもそのはずだ。
生前から数多の戦い抜いた歴戦の猛者であり……
一つの大陸を征服し尽くした覇王でもある。
人外に身を堕とした後も1000年に渡っての【ゴッド・ハンド】との死闘。
葬った使徒は数知れず、並の悪魔などと比較する事すら烏滸がましい。
それは不死を誇るフェニックスとて例外ではない。
だがサーゼクス、悪魔達が騎士の過去など知る訳がない。
しかし、騎士の覇気や立ち振舞いだけで大抵の者は嫌でも理解する。
この髑髏を敵にしたら確実に死ぬ……と。
「さて、そろそろ動きがある頃合いですね」
写し出された一誠達がちょうど自陣と敵陣の間にある建物……
確か【体育館】と言う所に何名か進入していく様子が見れた。
リアス側は一誠、小猫、アーシアの三人である。
対するライザー側は四名、頭数的には五分だ。
しかし、新米悪魔の一誠と純人間のアーシア。
実力的には五分以下である事は明白。
足手纏いを抱えた戦闘など自殺行為に等しい。
サーゼクスも内心、この場の戦いは難しくなると思った。
見るからに優秀そうな戦車の娘以外は並み以下だから。
ついには思わず呟いてしまった。
「アーシアちゃん……?でしたか?
こんな前線に出るなんて大胆ですねぇ」
「兵を出し惜しむ状況でもあるまい」
「ライザー君の眷族は悪魔の中でも手練れの部類に入ります。
アーシアちゃんが心配ではないのですか?」
「貴様等悪魔は人間を侮り過ぎだ。
その身に強大な魔を宿そうとも……
人間には未知なる【力】が存在する。
我の力すら及ばぬ……な」
「あの娘には其れがあると?」
「我にも解らぬ」
「え……?」
「だが我は知っている。
人の身でありながら、数多の血の夜を越した者を。
強大な魔の物を己の力のみで斬り伏せた者を。
我はその者を【もがく者】と呼ぶ」
「もがく者……ですか?」
「左様、あの小僧には強き意志があった。
いや……執念と言うべきだな。
アーシア……あの娘にも僅かながら感じた。
【もがく者】にも似た何かをな」
体育館を奪取すべく一誠達三人は裏口からメインホールに突入した。
どうやらまだ敵は此処には居ないようだ。
安心からか、一誠は深い溜め息をついてしまった。
そして、隣で可愛らしくペットボトルのお茶を飲むアーシアを見て思う。
当初、一誠と小猫のコンビで体育館を攻める予定だったが……
アーシアの強い希望で急遽三人編成になった。
一誠は戦闘向きではないアーシアの事が心配でならない。
トワイライト・ヒーリングはリアス達の切り札と言っても良い。
しかし、即座に傷を癒す事が出来る強みは大きい。
継続的な戦闘力が発揮出来る優位性は一誠にも理解出来るが……
「どうかしましたか?イッセーさん?」
「アーシア、どうして俺達と来たいだなんて言ったんだ?」
「おじゃ……お邪魔でしたか……?」
涙目で一誠の方を見るアーシア。
金髪美少女の涙を含んだ上目使い。
ある意味最強の破壊力を有する技だ。
一誠は大慌てで、全力で否定した。
「違う、違うんだ!俺はアーシアの事が心配なんだっ」
「そう……ですか。
えへへ、良かったです……
でもイッセーさん心配いりません。
黒歌さんから秘密兵器を沢山貰いましたから!」
「な、なんだろう……
全然安心する要素が無い気がする」
「同感です……」
一誠と小猫は引きつった笑顔でアーシアが背負うリュックサックを見ていた。
恐らく……いや、間違いなく変な物を持たせた。
ダーク・マターな中身を確認する間もなく、辺り一面に殺気を感じる。
いよいよ、戦うべき敵が来たようだ。
「気配、敵」
小猫の合図と共に戦闘体勢をすかさずとる。
背中合わせにファイティングポーズを取り、死角を無くす。
構えて間もなく、ホール中に大きな声が響いた。
「はーい、グレモリーの下僕さん達はっけんー」
四人の人影は壇上から現れた。
チャイナドレスと双子とロリっ娘……
ちきしょう、隙の無いラインナップに涙が……
すすり泣く一誠を見て、アーシアを除く女性陣は皆引いていた。
兵士×3 戦車×1
数的には此方とほぼ同じ規模だが……
俺とアーシアは戦闘に関してはズブの素人だ。
小猫ちゃんだけが、互角だと考えるべきか。
「私が戦車をやります。
二人は兵士をお願いします」
「ガッテンだっ!
行くぜっ!ブーステッド・ギア、レディ!」
『Boost!!』
「よいしょ、よいしょ……
す、スタンバイっ!」
一誠の赤い籠手が倍加を開始し、喧嘩殺法よろしくの構えをとる。
アーシアはおもむろにリュックサックの中から何かを取り出す。
そして暗くて良く見えないが何やら【銃】のように見えた。
「アーシア、それって……まさか」
「はい、黒歌さん特製秘密兵器……
【水鉄砲(1280円)】です!」
「……やはりかっ」
一誠は思わず構えを解き方膝をついて頭を抱えてしまった。
あの人の事だから常識を超える斜め上を行くかと思ったが。
予想通りの展開にこの様な状況でも拍手をしたい。
その時、一誠の耳に嫌な機械音が聞こえてきた。
某殺人鬼の持つエンジン駆動式回転鋸の音が……
「隙だらけなので解体しまーす♪」
「バラバラバラバラ!」
膝をつく一誠の方へチェーンソーを持った双子が突撃して行く。
凶悪な回転刃は床を破壊しながら一誠へと襲い掛かる。
双子だけに息の合った波状攻撃は見事なものだ。
しかし、一誠も不格好ながらもしっかり回避していた。
山籠りの修行の成果は実戦で出ている。
大振りの一撃をギリギリ避けた一誠は無防備な身体を蹴り、後方に下がった。
少し距離をおいて体勢立て直す為だ。
「チェーンソー振り回すなんて……
当たったら危ないだろう!」
「ムカつくなぁー」
「早く当たってシネー」
一誠はこの双子の辛辣な返答に頭の中の何かが切れた。
そう、切れたのだ。
そっちがその気ならば俺はもう遠慮しないぞと。
俺の渾身の新・必殺技をその身をもって味あわせてやる。
ドス黒い感情が一誠を支配した。
「笑止、発育が足りぬ小娘共め。
己の浅はかさを呪うが良い」
一誠は髑髏の騎士の真似をしていた。
正直、お世辞にも似ているとは言えない。
むしろ、似ていない。
だが、倍加した一誠のダッシュは予想外に速い。
あまりの一誠の速度に驚き双子は反撃の反応が遅れた。
慌てて振り回すチェーンソーよりも速く、一誠は双子に肉薄する。
身体をひねり回転しチェーンソーを弾き飛ばした。
ほんの一瞬で自身の得物が飛ばされ驚愕する姉妹。
そして、一誠は隙だらけの腹部に両手を当てた。
「吹き飛べ、無限の彼方へ……
ドレス・ブレイク」
刹那、双子の身に付けた衣服は下着もろとも消し飛んだ。
可愛らしい、生まれたままの姿へとなったのだ。
「貴女が私の相手ね」
棍棒を持ったミラはアーシアを睨みながら言った。
自らの主を傷付けた原因の人間。
まして、教会の修道女の格好までしている。
「気にくわない……」
怒りに任せた渾身の一撃をアーシアに叩きこまんと駆け出した。
この修道女は弱い、それに只の人間に私の一撃が避けれる訳がない。
一瞬で終わる、そう思っていた……が。
途中何か熱い物が身体に被って足が止まる。
「な……なにこれ!
あ、熱い!熱いよっ!」
「流石、聖水ですね……
悪魔の皆さんには効果抜群です」
そう、アーシアの持つ水鉄砲のタンクには聖水が充填されていたのだ。
圧縮空気により放たれた聖水は容赦なく悪魔の肌を焼く。
非力なアーシアに為に黒歌が考えた最適な武器の一つだ。
少々、残酷かもしれないがこれは戦である。
聖水をもろに被り、身動き取れなくなってしまったミラ。
彼女の敗因は敵戦力を根拠も無く過少評価した事。
戦場で弱さを見せたら死ぬ、自惚れも同じだ。
悲しいけど、これ戦争なのよね。
良く言ったものである。
「よっしゃ、時間だ!
皆、ずらかるぞ!」
腕時計を確認した一誠は叫び、全速力で駆け出す。
小猫とアーシアも一斉に体育館の外へと飛び出した。
全員が体育館から飛び出た直後に、雷鳴と共に極太の光が落ちた。
まさに天罰の名にふさわしい一撃だった。
頑張りますよ。
時間がある時はとことん。