凄まじい爆音と爆風、加えて閃光。
まるでミサイルが至近距離で着弾したかの様だった。
舞い上がった砂埃が薄くなり、辺りが見てくる。
そして一誠達は自分の目を疑った。
先程まで存在した【体育館】が跡形も無い。
正しく、木っ端微塵とはこの事を言うのであろう。
地面を穿った大きなクレーターと少量の破片を残して……
敵もろとも体育館は吹き飛んだ。
見上げれば黒い羽を優雅に羽ばたかせた朱乃さんが飛んでいた。
「味わいなさいな……
裁きの雷を存分にね」
『ライザー・フェニックス様の兵士三名、戦車一名、戦闘不能!』
掲げた腕に帯電された電気が非常に神秘的だ。
流石、雷の巫女の二つ名は伊達では無いって事か。
でも当初の作戦は上手くいったと言っても良いだろう。
いや、敵との戦力比はまだまだ不利である事に変わりは無い。
浮かれている場合じゃあないな。
朱乃さんのあの一撃は連発出来るもんじゃない。
力が溜まるまで俺達はやられる訳にはいかないからな。
「動体探知機に反応あります!」
「「ど……動体探知機??」」
アーシアの口から聞き慣れないハイテクな機器の名が出たような……
一誠と小猫は口を揃えて聞き直す。
振り向くとアーシアの手には昔の携帯電話の様な物があった。
その機器からけたたましい警告音が鳴り響く。
小さな液晶画面に接近する動体物と距離が表示されている。
何故、アーシアがこんな近未来的な物を持っているのか……?
黒歌の渡した秘密兵器の一つである事は間違いない。
駒王学園科学技術部の汗と努力とロマンの結晶を……
黒歌が教師の権力やら大人の力やら、実力行使で借りてきた物である。
どこぞの植●地海兵隊が使用していた物と遜色ない程……
性能面及び外見共に完璧と言える。
ダクトのネズミの感知から、屋根裏の地球外生命体の群れだってバッチリ感知するよ!
「居るのは分かっているぜ!
さっさと出て来やがれ!」
機器に表示されている距離の数値は8……
つまりは8メートル以内に移動する【何か】がいるのだ。
木場は此方側、体育館方面には居ないはずだ……
ならば目視出来る範囲に敵が居る。
無機質な機械の警告音と一誠の怒号が辺りに響きわたる。
「東北東方向!敵です!」
アーシアの叫び声と同時に小猫の身体を閃光が包みこんだ。
同時に爆音と爆風で吹き飛ばされていく。
所々焼け焦げた服を見れば爆発の威力は一目瞭然。
ピクリとも動かずに横たわる小猫。
希望から一転、絶望的な状況になってしまった。
「フフッ、獲物を狩る時、獲物が……ファッ!?」
「姉さまの修行が役に立つとは……
正直驚きです」
いつの間にか起き上がり、岩を投げていた小猫。
ドヤ顔で能書きを垂れた魔術師の女は驚愕のあまり噛んでいた。
即座にアーシアが小猫に治癒を始めて傷を癒している。
破れた服は治らないが小猫の身体の裂傷はあっと言う間に完治した。
「馬鹿な!いくら戦車とは言え……
あの爆発を耐えきるなんて!」
「あらあら、誰かと思えば【爆弾王妃】……
ユーベルーナさんではありませんか。
不意打ちなんて、テロリストみたいですわね。
爆弾を名乗るだけありますわ」
小猫には確かに爆弾の直撃を受けていた。
いくら戦車が頑丈と言えど、食らえば致命傷は免れないはず。
しかし、そこそこの損害で済んだのは理由がある。
小猫は特訓中、黒歌から自身の慢心を指摘されていたのだ。
頑丈だからと言って防御と回避を疎かにする。
ダメージを受ける事を前提に攻撃をするスタイル。
それはそれで良い。
自分の長所を生かす戦いは悪い事ではない。
しかし、小猫の欠点は自身の防御力を過信し過ぎている事だ。
これは良くないと黒歌は気が付いた。
だが、この短期間で回避の極意など修得出来る訳がない。
ならば長所を伸ばすしか無いと踏んだ。
仙術による身体防御の底上げしかないと……
基礎的な仙術の一つである気功。
己の内なる気を練り上げ、身体に纏う。
【硬気功】
極めれば拳銃弾程度ならビクともしない。
まだまだ完成には程遠いが……
爆発の直撃を凌げたのだから上出来だろう。
「テロリストだなんて……
なんて野蛮なんでしょう!」
「よくも小猫ちゃんを……
この……爆弾魔のテロリストめっ!
もう勘弁ならねぇ!」
「だからテロリストではなくてよっ!
揃いも揃って失礼な眷族ねっ!」
一誠はユーベルーナを睨み付けながら叫ぶ。
一方、ユーベルーナもムキになって言い返す。
しかし、彼女は非常に焦っていた。
劣勢であるリアス達は一人でも撃破されるとヤバイ。
ライザー達は多少の犠牲など屁でもない。
この不意打ちで【盾】である戦車を撃破出来れば良かったのだ。
実際、必要犠牲を倒した直後の油断した所に一撃を見舞った。
此処までは順調だったのだが……
必殺の爆発をまともに受けた筈の戦車の小娘が立ち上がっている。
一体、何が起きたのか理解が出来ない。
そして目の前には【女王】【兵士】【戦車】【僧侶】
ほぼ同格の【女王】だけでも手一杯なのに……
形勢が一気に不利になってしまった。
「さて、ユーベルーナさん。
もう逃げられなくてよ」
「結構痛かったです。
倍返しするので覚悟して下さい」
「やられたやり返す!
倍返しだっ!」
「ば、倍返しです!」
四人の気迫に気圧されたユーベルーナだが……
彼女とてライザーの【女王】だ。
最強の駒であり、悪魔屈指の実力者である事に変わりはない。
身体に魔力を纏い辺りの物が手当たり次第に破裂している。
開き直ったのか覚悟を決めたのか。
爆光を背に浮かび上がる。
戦闘態勢をとったユーベルーナの様子はまさに……
【爆弾王妃】の名に相違なかった。
「あらあら、本性が出たわね。
厄介な事この上ないわ。
イッセー君、小猫ちゃん、アーシアちゃん。
例のフォーメーションを試してみましょう」
「まさか、【アレ】をやるんですか!?
でもアレは木場が居ないと……」
「大丈夫よ、イッセー君なら出来るわ。
小猫ちゃんは合図でいつも通りに。
アーシアちゃんは目眩ましをお願い出来るかしら」
身を隠しながら的確に指揮をする朱乃さん。
これが【女王】たる力を持つって事か。
戦場において指揮者の存在と影響力は大きい。
それを実感する一誠だった。
「隠れんぼのつもりかしら?
リアス様の眷族も大した事ないのねぇ」
目の前にある乗用車が吹き飛ぶ。
黒煙と火花と破片を撒き散らす。
もう何台の車を破壊したのだろうか。
視界に入る物を次々に破砕しているが……
忌々しい眷族の影も形も出てこない。
いっそ、この辺り奴等ごと一面を吹き飛ばして……
「そこよっ!」
視界の端に動く何かの気配を感じた。
即座に反応し、吹き飛ばさんと腕を向ける。
其処には物置小屋の影から何かを投げたアーシアの姿が見えた。
どうやら丸い物体のようだが……
用心する事に越したことはない。
飛来する丸い物体をピンポイントで爆破し消し飛ばす。
弾け飛んだ球体の中から液体が飛び散り広がった。
「これは……水かしら?
いや、聖水!?
随分えげつない事しますわね」
引きつった笑顔でアーシアの方を見た。
アーシアが投げたのは【水風船】だ。
勿論、中身は聖水がたっぷり入っている。
不意に投げつけて直撃させるか、近くで破裂させる。
中身の水が少しでも被ればそれで良し。
まさに手榴弾的な運用方法だ。
しかし、飛距離は投擲する本人の力によって上下してしまう。
今回は極めて至近距離での運用であった。
アーシアのか弱い力では仕方が無い。
「人間相手に大人気ないけど……
まぁ、恨むなら貴女の主を恨みなさいな」
アーシアに手を向けて魔力を収束させる。
先程の件もあるので人間だからと言って油断はしない。
確実に【撃破】する一撃を放とうとした。
「今ですっ!」
突然アーシアがしゃがみながら叫んだ。
直後、ユーベルーナに向かって何かが飛来する。
物凄い勢いで飛来する物は車だった。
鉄の塊の車を難なく爆砕する……が。
爆発の威力が強すぎて燃料タンクに引火し大爆発した車体。
発生した黒煙と破片でほんの一瞬、目が眩む。
其処へ上から落下してきた一誠は籠手に手を添え必殺の一撃を放った。
「突貫っ!!」
『Explosion!!』
一誠の籠手から放出された倍加し強化された魔力の波動。
車の爆発で発生した煙りを全て吹き飛ばして、ユーベルーナへ命中した。
小猫が投げた車の影に潜み、爆発の直前に上に飛ぶ。
頭上と言う死角を突いた攻撃に、ユーベルーナは完全に意表をつかれていた。
咄嗟に自身の周りに魔力障壁を展開させ致命傷は免れたが……
並大抵の攻撃などビクともしない障壁が大きく破損しているではないか。
神滅具の馬鹿げた威力に改めて鳥肌がたった。
「油断大敵、学習なさらないのかしら?」
「な、なにっ!?」
不意に囁かれた悪夢の言葉。
一誠の攻撃の直後に今度は朱乃の雷が直撃した。
弱った魔力障壁で朱乃の雷を防ぎきる事など出来る訳がない。
ガラス細工の様にバラバラになった障壁。
落雷をもろに受けたユーベルーナは地面へと叩き落とされた。
「ぐ……まさか、この私が……」
雷に打たれ煙りを身体から上がっている。
屈辱以外のなにものでもない。
しかし、この際手段を選んでいる場合では無い。
まずはこの傷を早急に癒さなければ……
懐に手を伸ばし、何かを取り出した。
小さな瓶に入った液体……
【フェニックスの涙】
あらゆる傷を瞬時に癒す究極の秘薬。
これを使えば……
瓶の液体を使おうとした時、後頭部に衝撃を受けた。
「ハレルヤ!」
アーシア気合いの聖なる一撃。
分厚い聖書(角)のフルスイングが炸裂。
ユーベルーナは秘薬を使う事無く意識が飛んだのであった。
硬気功はスプリガンを参考にしてます。
彼らも人の皮被った人外ですよ……
次回は髑髏サイドメインの予定。