『ライザー・フェニックス様の【女王】一名リタイア!』
グレイフィアの撃破アナウンスが響き渡る。
ライザー含む眷族達は自分の耳を疑った。
自軍最強の駒、最高戦力【女王】が撃破されたのだ。
この状況を動揺しないほうがおかしい。
誰しも予想外の出来事を目の当たりにすると調子が狂う。
それは日頃、厳しい訓練をしている者ですら例外ではない。
まして【勝利】しかした事ないライザーにとっては悪夢でしかないだろう。
全てが自分の手の平の上で踊っていると思っている。
だからこそ、この突発的事象にライザーは混乱を極めた。
「な……何故、ユーベルーナが!?」
身体が小刻みに震えているのが解る。
不死身の身体を持ち、全てを焼き払う炎を纏う一族。
その俺が、不死身のフェニックスである俺が震えている?
腹の底から沸き上がるような不快感。
やがてその不快感はやり場の無い怒りに変わった。
手当たり次第、目に見える物に当たり散らして壊す。
まるで反抗期の子供が癇癪を起こしている様だ。
暫くすると、本陣である生徒会室は見るも無残な姿になっていた。
長机は真っ二つに折れ、ガラスは散乱し、黒板は砕けている。
戦場において指揮官は常に冷静沈着であれ。
何故ならば部下は常に指揮官を見ているからだ。
その姿を見て時には安堵し、時には絶望する。
醜態を晒すライザーの様子は酷く滑稽だった。
「やったぜ!アーシア!」
「良い一撃でした。
おかげでスッキリしました」
「素晴らしいわ、アーシアちゃん」
一誠達はアーシアに駆け寄り大金星を喜びあった。
なんせ敵の女王を含む5人を撃破したのだ。
相手は戦力大幅ダウンは避けれないだろう。
4人のコンビネーションあっての大勝利と言っても過言ではない。
トドメの一撃を決めたアーシアは顔を真っ赤にして俯いている。
アーシア本人としては必死だったので状況を良く覚えていない。
朱乃の雷を受け、墜落した女王が懐から瓶を取り出した。
何とかしないと、絶対に【アレ】を使わせては駄目だ。
と思うがこう言う時に限って身体が動かない。
恐怖又は緊張からか、意思と身体が連動していないのだ。
その時、アーシアはある知り合いシスターの言葉が頭をよぎった。
『汝の敵を愛せよ、何人もここ(頭)を狙えば一発だい』
知人シスターいわく、後半の御言葉はブッタ様の教えだと言っていた。
宗教は違えど【神】の御言葉には変わりは無い。
勇気を振り絞って一歩を踏み出す。
あとは無我夢中で(頭)に向けて力いっぱい手に持つ聖書で殴った。
アーシアは手を胸の前で組んで、心の中で知人シスターに感謝する。
因みにそのシスターは荒川の河川敷で小さな教会をやっているそうだ。
どういった経緯で知り合いになったのかはアーシアに聞いて欲しい。
クリーンヒットした聖書(角)の一撃はユーベルーナの意識を完全に刈り取った。
流石は悟りの境地を見出だした【神】の御言葉である。
神の教えは尊いものだとアーシアは改めて確認した。
「私ったら……乱暴な事しちゃいました……」
「「「いや、全然」」」
一誠達は口を揃えて言った。
敵に情け容赦など必要ないのだ。
それが戦場の掟であり、各個人の心構えなのだから。
諸行無常、盛者必衰、弱肉強食。
心優しいシスター・アーシアには辛い事だが。
優しい心を鬼にして戦うしかない。
アーシアよ強くなってくれっ!
「気に病む必要は無いですわ。
貴女はやるべき事をやっただけ。
だからありがとう、アーシアちゃん」
「そう、アーシアは悪くない。
仇をとってくれてありがとう」
「そうだぜ!アーシア!
ナイスキルだ!ナイス聖書だ!」
「そ、そうですか?
なら私もっと頑張りますね!」
笑顔で小さくガッツポーツするアーシア。
勢いは完全に此方側にあるのは間違い無い。
このまま電撃侵攻で攻めるのが得策だ。
朱乃さんは部長と合流する為、此処で別れる。
心細いが、ここは年長者である俺がしっかりしないと。
後輩すら守れない奴が部長を守れるかってんだ。
初めての戦争で精神的にも肉体的にも疲労が溜まりつつある。
ブーステッド・ギアの負荷が身体に重くのし掛かってくるが……
まだ俺は動ける、まだ戦える。
俺の闘志はまだ熱く燃えたぎっているぜ。
一誠は自らを鼓舞し、気合いを入れた。
「よし、先ずは木場と合流しよう。
アイツは確か、【運動場】の方に居るはずだ」
「そんなに離れてませんが……
慎重に行きましょう」
「あ、ならコレ起動しますね」
動体探知機のミリ波レーダーは動く物全てに反応する。
動体物の方位と距離が解る索敵に最適のアイテムだ。
だが、その形までは分からないのが玉にキズ。
極論で語ればその辺にいる野良犬ですら反応してしまう。
今回は異空間の学校及び敷地内なのでプレイヤー以外の生物は居ない。
最高のポテンシャルを発揮出来る状況だ。
三人は木場と合流すべく【運動場】へと向かう。
戦いは中盤戦へと突入しつつあった。
「ハハハハハッ!
流石はリーアの眷族だ!
常識はずれの必殺技だよ!」
「愚か也」
一誠の魂の必殺技【ドレス・ブレイク】。
思春期の男子の妄想と煩悩の極地。
婦女子の服だけを吹き飛ばすだけの技。
赤龍帝の力をもってして一誠が考えついたのが技がこれだ。
常識はずれも甚だしい。
そもそもレーティング・ゲームとは格式高いものだ。
身分の高い悪魔達の娯楽の一つでもある。
だからこそ、この【ドレス・ブレイク】は受け入れがたいものだった。
ある者は目を伏せ、ある者は憤怒し、ある者は呆れ果てた。
一誠は転生悪魔である為、格式とかそう言うものなど分かる訳がない。
無血陽動技としては優秀な部類に入ると思うが……
破廉恥過ぎて誰も有効な効果に目が向かなかった。
「ご婦人の服をねこそぎ剥ぎ取るなんて……
魔王の僕でも真似出来ないよ」
「執念じみたモノを感じる。
愚か以外に表せぬがな」
「将来の夢はハーレムを作るそうな?
いやぁ、夢があるって素晴らしいなぁ」
「解らぬな。
女などに何を求むのだ?」
「何をと言われましても……
上手い言い回しがありませんねぇ」
「解らぬまま番になるのか?
おめでたい事だな」
「いやはや面目ないです。
僕もまだまだ未熟者故……
でも妻や息子や家族は何物にも変えがたい……
【大切なもの】ですよ」
「家族か……」
騎士は薄れつつある記憶を遡るが……
【家族】と言うものを大切に思った事など一度も無かった。
生前は世継ぎを産ませる為、女を幾つも宛がわれたが……
その女を大切に思ったかと言われれば無いと断言出来る。
自分以外の者を大切に思う事……
騎士の脳裏には黒歌とアーシアしか思いつかない。
それは比較的、最近知り合ったからだろうか。
では、この二人が危機に瀕した時……
我は一体何をするのか、何をするべきなのか。
恐らくは彼女等に降りかかる火の粉は打ち払うだろう。
だがそれは、半ば義務的なものに感じる。
【愛】とか【大切】だからと言ったものなのか。
ますます、解らなくなってきた騎士は考えるのを止めた。
我は剣。
人外の者に仇なす者。
それ以下でもそれ以上でもない。
「解せぬものだ。
【愛】と言うものは……な」
「騎士殿は……っておお!
アーシアちゃんが女王を撃破しましたよ!」
「だから言っただろう。
侮るなとな」
リアス達の善戦に会場はどよめいた。
もともとリアス勢不利の空気だった為、衝撃は大きい。
それは当事者家族であるグレモリー、フェニックス両家とて例外ではない。
それぞれの当主は歓喜と落胆の両極端の反応をしていた。
やはり娘は可愛いし、息子には頑張って貰いたい。
それが親心と言う物なのだ。
「リーア、油断は禁物だよ。
ゲームは中盤戦で全ては決まる」
「左様、油断即死に繋がる。
だが奴等とて馬鹿ではあるまい」
「……ですね」
サーゼクスが何かを言おうとした時、二人は声をかけられた。
ドレスコードの会場だから服装は完璧である。
しかし、その腕には腕章があった。
【報道】の二文字がでかく書いてある。
サーゼクスは騎士との会話ですっかり忘れていた。
確か報道関係者からインタビューがある事を。
隣に立つ騎士の威圧感に負けず良く声をかけれたものだ。
だが、このインタビューが騎士の悪魔界メディアデビューになった。
カメラのレンズを深紅の眼で睨む騎士。
お茶の間では子供達が阿鼻叫喚していた事は言うまでもなかった。
夏休みが1ヶ月って半端ないですよ。
学生って素晴らしい。