髑髏の騎士D×D   作:プライベートX

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パソコンが不調です……買い換え時かもしれない


魔王

 「詳しい説明を」

 

 立ち尽くしたグレイフィアの表情は、ほぼ無表情である。

 まるで能面でもしていかの様な、そう"無"である。

 更に例えるならば、噴火直前の火山、嵐の前の静寂、正にそう言った感じだ。

 危うく妻が死にかけたと言うのに、目の前で夫が加害者と親しげ挨拶などしていたら誰だって怒るだろう。

 と同時に、二人の修羅に挟まれたサーゼクスは全身の血の気が引いていた。

 足に関しては無論ガクブルである。

 今後は妻を必要以上に、いや絶対に怒らせてはいけない。

 そう、自分に固く誓った。

 

 「こんな状況で言うのも気が引けますが、剣を引いて貰えますか?」

 

 「……よかろう」

 

 剣を鞘に戻し、乱れたマントをバサッと翻して整える。

 漆黒のマントは騎士の身体を覆い隠し、一先ず敵意は無い事を示した。

 

 「その節は大変お世話になりました」

 

 「……要件を言え、よもや世間話をする為だけに来た訳ではあるまい」

 

 「はは……相変わらず手厳しい。では単刀直入に言います、後ろの彼女の身柄を此方に渡して頂きたい」

 

 「何故だ」

 

 「悪い様にはしません、魔王の名に誓って約束します」

 

 この破廉恥娘は予想以上のゴタゴタを抱えている。

 やれやれと、言った感じで騎士は後ろに隠れている破廉恥娘こと黒歌を見ながら言った。

 

 「……だそうだが?」

 

 「い、今更、今更なんにゃ!今まで何もしなかった!助けもしなかった癖にっ!」

 

 マントを掴みながらはっきりと拒絶する黒歌。

 事情も調べないでSSランクのはぐれ認定をして、幾多の追っ手を放っておきながら、今更なんなのか。

 いきなりそんな甘い言葉をどう信じろと言うのか。

 大方、この"伝説の騎士と一緒にいたから"とか、この騎士の前で良い所見せたいとか、そんな所だろう。

 そんな悪魔陣営の打算的な考えに何故乗らなきゃならないのか。

 込み上げる怒りを黒歌は必死で抑えるが、フゥフゥと気が付けば肩で息をしていた。

 

 「然り、貴様の判断は正しい」

 

 騎士はそう言うと再度、剣を抜き放ち構える。

 

 「……都合が良いとは思わぬのか?小僧」

 

 「どうしでも、駄目ですか」

 

 「くどい」

 

 髑髏の騎士はそう言うと、魔王サーゼクスに剣と明確な殺意を向けた。

 

 一方、サーゼクスはその顔に先ほどの笑顔は無く、全ての魔の頂点に君臨する王の本気の殺気は森を突き抜け、この地域一帯を全て飲み込んだ。

 【滅びの力】のオーラが目視出来る程に溢れだし現悪魔界の【超越者】と言われた魔王が其処には居た。

 

 だが、騎士もまた異界では時の理から外れた【超越者】である。

 滅びの力の波動に微動だにせず、必滅の殺意と不退転の意思を乗せ、サーゼクスに剣を向ける。

 【超越者】と【超越者】の覇気が衝突し、今までの修羅場が子供のままごとに思える様な、本当の修羅場があった。

 瞬きも、呼吸も、自らの鼓動さえも、支配されている。 

 自分が此処に存在して居られるのは、この化け物達の只の気まぐれ。

 そう、思わざるを得ない程の殺意と絶望。

 全ての魔の頂の存在、それが魔王。

 異界の神の名を頂く者を滅する為に、人の身を捨てた覇王。

 二人の規格外の一触即発の雰囲気に、その場に居る誰も動く事が出来なかった。

 

 しかし、その研ぎ澄まされた空気は突如として消え去った。

 そして、サーゼクスの顔には冷や汗がダラダラと垂れ、苦笑いをしながら目の前の騎士に話しかけた。

 

 

「……まだまだ勝てる気がしませんね」

 

「笑止」

 

 グレイフィアはサーゼクスの後ろで、黒歌は騎士の後ろでこの場に居た事を後悔していた。

 気絶しなかったのは二人が並みの悪魔ではなかったからであり、なまじ意識を保ったが故に生きた心地がしない時を過ごす羽目になったのは不幸としか言えない。

 何が何だか分からず混乱する者を差し置き、魔王と覇王は一先ず互いに構えを解く。

 地域一帯が壊滅してしまうと言う最悪の事態にならなかった事にグレイフィアは心底安堵し、改めて目の前の夫と髑髏顔の騎士の規格外さを体感した。

 

 「この娘は既に己の道を歩みし者、邪魔は許さぬ」

 

 「……僕の怠慢故に貴女には辛い思いをさせた。図々しいかもしれないが、その償いをさせて欲しい」

 

 そう言うとサーゼクスは頭を下げ、真摯に謝罪をした。

 魔王が一介の悪魔に頭を下げる、本来なら絶対にあり得ない事である。

 

 「今更遅いにゃ、私は"この人"に面倒みて貰うにゃ」

 

 「……貴様は何を言っているのだ」

 

 騎士は破廉恥娘がまた訳が解らない言い出した事に、呆れを通り越して哀れみすら感じ始めていた。

 これ程話しが噛み合わない者は、現世広しと言えど中々居ないだろう。

 

 「散々助けて貰って、お礼も出来ないなんて寝覚めが悪いにゃ!」

 

 「……礼など要らぬ」

 

 「出た、出ました!一番反応に困るヤツ出ましたにゃ!」

 

 「まぁまぁ!!難しい話しは此処までにして、実はお願い事が有りましてですね、まず!是非とも記念写真を撮ってもらいたい!」

 

 混沌、此処に極まり。

 この状況、最早何が起きているのか良く分からなくなっていた。

 

「「「……?」」」

 

 突然サーゼクスのハイ・テンションに皆固まった。

 シャキーン!!と聞こえてきそうな程キレのある動きで天高く掲げられた手。

 その手には高そうな一眼レフとおぼしきカメラが握らており、カメラには大きな文字で(リーアたん専用)と書かれている。

 しかし、その"リーアたん専用"が何を示すのか皆目見当がつかぬ騎士。

 そもそも、"記念写真"と言う事自体が未知の単語であり、只々呆れた眼でサーゼクスの方を見ている事しか出来なかった。 

 しかし、サーゼクスの後ろに控える娘の様子を見るに、さほど重要な事ではないと確信。

 特に何もしないで静観する事にしたが、程無くしてサーゼクスは給仕服の娘に後ろの暗がりの中に連行された。

 特筆すべきは、娘の顔が恐ろしい程に"無"だった事だろう。

 己の感情を極限まで殺し、ただ己の成すべき事を遂行せんとする姿勢。

 此処は素直に感心するべきか……

 

 

 

 

 

 ---暫くして---

 

 

 

 「いや、あの、息子がですね、騎士殿の話が好きでして、だから記念写真をと思いまして……」

 

 頭に大量のたんこぶを作ったサーゼクスが正座して説教されていた。

 因みに余談だが、グレイフィアに匹敵するげんこつ技術を持つ"主婦"は埼●県春日●市に在住している。

 

 「反省してください」

 

 「小僧、身の程を知れ」

 

 「ごもっともです……」

 

 二人の悪魔も泣き出す様な物を言わせぬ覇気に魔王と言えど正座して反省せざるを得なかった。

 そして、サーゼクスの身なりがぼろぼろなのは一体何故か?

 あの暗がりの中で何が起こっていたのかは魔王のみぞ知る。

 そして、漸くグレイフィアが本題とも言える疑問を騎士に問いかけた。

 

 「大変失礼ですが貴方は……一体何者ですか?」

 

 「名乗る名は捨てた、故に無い」

 

 「まさか"髑髏の騎士"。あの伝説の騎士とでも言うのですか?」

 

 「そう、二天龍を討ち滅ぼした伝説の騎士!!そして、僕の命の恩人でもある」

 

 【髑髏の騎士の伝説】は二天龍を神器封印した後、生き延びた悪魔や天使達が騎士を勝手に称え、作られた御伽話である。

 無論、悪魔側と天使側でその内容は微妙に違う。

 一言に伝説と言っても、実際に騎士の闘いを見た者は非常に少ない。

 いきなり現れて二天龍を討ち取り、人知れず消えた髑髏の騎士。

 今や知らぬ者は居ない伝説の騎士。

 お伽噺話で髑髏の騎士は語り継がれているが、本人は半ば事故の様なもので闘いに介入し、暴れるドラゴン二匹を事の成り行きで斬り伏せた、只それだけである。

 しかし、気が付いたら勝手に英雄に祭り上げられているではないか。

 相当面倒な事になっていると今更ながら知り、やれやれと騎士は頭を振った。

 

 「……我も迂闊であったか」

 

 「我々悪魔としては是非とも貴方と友好的な関係を築きたいと思っているんです。無論、僕個人としても親しい付き合いをしていきたいですが……」

 

 「……我は人外に仇なす者、鬼畜外道の類いはすべからく滅する。貴様であっても例外はない」

 

 そう言うと騎士は、赤い眼をサーゼクスへ向けて真っ直ぐと睨む。

 

 「無論、その時は遠慮なく首をはねて下さい。もっともそんな事にはならないと思いますが」

 

 「貴様は精々、番に殺されぬ様にする事だ」

 

 「ええ、自重します。本当に」

 

 ふと、気付く。

 自身に張り付いている黒歌の存在をすっかり忘れていた事を。

 いい加減身体から離さないと、非常に煩わしい。

 何でこの破廉恥な娘は抱き付いてくるのか、全く理解が出来ない。

 しかし、騎士はまた、ふと気付く。

 見た目といい、態度といい、この娘、まるで"胎海の娼姫"を彷彿とさせる事を。

 

 (故に感じた不快感。成る程、府に落ちたな)

 

 騎士は、一人静かに導き出した解に納得していると黒歌がすかさず噛みついた。

 

 「今!凄く失礼な事考えてたにゃ!こんな美人に何が不満にゃ!」

 

 「……誠、可憐なれば、自ら"可憐"などとは言わぬものだ」

 

 「せ、正論だけに言い返せないにゃ!」

 

 何か、夫婦漫才でもしているかの様な光景にサーゼクスは苦笑いをしながら黒歌に言った。

 

 「それが君が出した答えなら、僕から言う事は無い。でも困った事があったら是非頼って貰いたい、今度は魔王として必ず守ると約束しよう」

 

 「小僧、貴様……」

 

 「騎士様も"案内人"が居たら何かと便利だと思いますよ?何か込み入った事情も有るとお見受けしますし」

 

 「……然り、今回は貴様の提案を呑もう」

 

 騎士は黒歌の方を見ながら、本当に渋々と言った感じで黒歌の身柄を預かる事を了承した。

 黒歌は相変わらず、騎士に抱き付いたままであるが小さくガッツポーズをしていた。

 

 「幸い此処はグレモリー家が管理している駒王町。色々と融通は利きます、グレイフィア」

 

 「畏まりました、各種手続きと連絡はお任せ下さい」

 

 「成る程、伊達に歳を食った訳ではない様だな、小僧」

 

 「まぁ、一応僕も"魔王"なので」

 

 騎士は振り向き黒歌を掴むと、地面から湧いてきた黒い霧の中から現れた骸の馬に飛び乗る。

 そして、人間の気配がする方へ歩き出す。

その後ろ姿をサーゼクスとグレイフィアは静かに見送っていたが、突然サーゼクスは思い出した様に何かを騎士に向かって投げた。

それはチェスの駒の様だがどの役の形もしていない駒であった。しかし駒からは禍々しいと思える力が感じられた。

 

 「……何だこれは」

 

 「それを持っていて下さい!!必ず役に立ちますので!!」

 

 良く分からないが持っていて損は無いだろうと思い受け取った騎士。

 この異界は自身の知識では及ばぬ事が多くあると改めて感じた。

 そして半ばなし崩し的な感じで共に宛の無い旅をする事になった破廉恥娘。

 しかし、この娘は何故こんなに嬉しそうなのだろうか。

 いまいち腑に落ちない騎士の前に堂々と座り、身体を横にして妖艶な感じで骸の馬に乗っている。

 和と洋のミスマッチとも言える組み合わせだが、妙にマッチしていると感じるのは何故か。

 

 「……これもまた、因果」

 

 遠い昔、人の身を持ちし頃の、ある意味では満ち足りていた時の"旅"を思い出す。

 友と呼べる者と共に歩んだ、あの日々を。

 

 「……?何か言ったかにゃ?」

 

 「何、昔の事を少し、思い出しただけだ」

 

 「それ!教えて欲しいにゃ!!」

 

 「……語る程の事ではない」

 

 煩い娘を拾ってしまったと後悔する騎士であったが、この現界に通じる者が居た方が良いだろうと思い甘受した。

 

 

 

 




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