髑髏の騎士D×D   作:プライベートX

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はぐれ悪魔バイサー、モンハンで例えるならばクック先生



深淵からの使者
誰が為に剣を振る


 

 その日、駒王町に存在する全ての人外に衝撃が走った。  魔王が居る、そしてそれに匹敵する"何か"が居ると。

 その尋常ではない殺意と覇気は町全体を飲み込み、邪な事を企む者、町を統治する者も平等に肝を冷やした。

 そして、"自分達では絶対に勝てぬ"と総じて確信していた。

 それは髑髏の騎士が駒王町へと歩みを進めた直後の出来事である。

 

 

 

 

 

 「我もまた、井の中の蛙だったと言う事か」

 

 騎士は小高い山の頂上付近でそう呟いた。

 眼下に広がる駒王町の夜景は騎士を驚かせるには充分過ぎた。

 ランプよりも光輝く無数の棒、馬無しで動く荷車、見る物全てが常軌を逸していた。

 そして改めて確信した、此処は【異世界】なのだと。

 カルチャーショックを受けていると、ニヤニヤしながら黒歌が騎士の顔を見ている。

 その何とも言えない微笑は、(分からない事があるなら教えてあげなくもないわよ♪)と言ってる様なものだった。

 黒歌の顔を見て、この摩訶不思議な事を聞くべきかと考えるが、妙に癪に触る顔である。

 しかし、此処は素直に聞く事にしようと騎士は判断した。

 この破廉恥娘の思惑に乗った様で、誠に遺憾ではあるが。

 

 「……あれは何だ」

 

 「待ってましたにゃ!!あれとは何にゃ?」

 

 「……全てだ」

 

 「あれは駒王町にゃ、グレモリーが統治してる町にゃ」

 

 「町、城塞都市の様なものか」

 

 「そんな物騒なものじゃないけど、大体当たってるにゃ」

 

 町と聞いて騎士はフムと頷き、再度町を見下ろした。

 荷馬車が忙しなく動き、夜空の星が地上に全て落ちたかの様に煌々と町が光っている。

 忙しなく町を歩く人間を見ても戦の影は無く、平和な日常を過ごしている様に見えた。

 人の身を捨て、様々な人の歴史を見て来た。

 だが、この異界の人間の都市は全てが異常だった。

 

 「……星が落ちた様な景色だな」

 

 「ロマンチックな事言うのね、確かに綺麗にゃ」

 

 「だが、魑魅魍魎は悪魔"だけ"ではないようだ」

 

 「然り!悪魔の他にも堕天使の連中も居るにゃ」

 

 「……跳ぶぞ」

 

 「ちょ、まっ、てにゃ!!!!」

 

 一跳びで斜面を飛び越えると、夜の森を風の如く疾走する。

 まるで森の木々の方が騎士を避ける様に道を開け、真っ直ぐに邪な気配のする方へと向かった。

 騎士がこの異界、"人間界"に現れてから数日、あの小物悪魔以来の邪悪な気を感じ取ったのだ。

 血生臭い、死を振り撒く外道の気配を。

 

 光輝く町から離れた郊外。

 闇が支配する朽ちた工場跡が見えると、騎士は辺りを見回しながら歩を進める。

 馬鹿でも分かる程の障気と濃い血の匂いが辺り一帯に立ち込めている。

 まるで自身の力を誇示する獣が縄張りを主張するが如く、獲物の骸を食い散らかしていた。

 黒歌も酷く腐乱した死体の匂いに顔を歪めており、分別の無い同胞に憤りを感じていた。

 暫く進むと前方から何かが走って来る。

 暗闇の中からよろよろと姿を現したのは、まだ年端もいかぬ子供だった。

 その衣服は所処裂けて、露出した肌から血を流した少女は騎士の前まで来ると、糸の切れた人形の様にバタリと倒れた。

 

「……黒歌」

 

「任せてにゃ」

 

 黒歌は骸の馬から身軽な身のこなしで飛び降りると、倒れた少女に駆け寄った。

 すぐに抱き起こして容態を確認するが……

 少女は何かを強く腹部に打たれたのだろう、咳き込む口からは血が混じっている。

 

 (内臓に深手を負っている……)

 

 最早、手の施し様がない

 黒歌は騎士の方へ向くと力無く首を振る。

 この少女は、もう助からないと。

 

 「怖い、怖い……よ、お母……さん」

 

 「もう大丈夫よ、痛くない、痛くない……」

 

 助かる見込みはないが黒歌は仙術でせめて痛みが和らぐように腹部に手を当てた。

 痛みが引いたのか少女は黒歌の手を弱々しく握り、静かに息を引き取った。

 半開きなった目蓋を手でそっと閉じた黒歌は騎士の方を見ると骸の馬が黒い霧になり消え、騎士は少女の遺体の前で剣を構えた。

 

 「……名も知らぬ幼子よ、せめて、安らかに眠れ」 

 

 構えた剣を闇の方へと振り切っ先を向けると、ケタケタと不気味な笑い声を上げながら異形が現れた。

 上半身が美女、下半身が四つ足獣の悪魔。

 そうコイツは"はぐれ"である。

 まだ年端もいかぬを命を奪ったこの"はぐれ"を生かす選択を騎士は早々に消した。

 この外道には只々、死あるのみ。

 そして、この少女の仇を討つべく、必滅の殺意を剣に乗せて構えた。

 

 一方"はぐれ"は目の前の髑髏の殺意を目の当たりにし、たまらず後退りをする。

 それは正に直感、いや本能的に感じた確実な死の気配。

 狩る者にとって相手の戦力分析は死活問題に直結する。だが、今回は分析などする必要もなく答えは出た。

 

 コイツと闘ったら確実に死ぬ、と。

 

 「あ、アンタ何者だいっ!!」

 

 せめてもの虚勢、死の恐怖を振り払うかの様に"はぐれ"は精一杯の威嚇を試みるが……

 

 「……死に逝く者に、語る事など、無い」

 

 騎士の剣気と圧倒的な"死"の風が"はぐれ"の身体を突き抜ける。

 自身の恐怖をかき消す為か、必要以上に喚き散らし、がむしゃらに自慢の腕を騎士に向かって叩き落とす。

 その身に迫る巨腕を騎士は避けもせず、剣を横一線に薙ぎった。

 

 ヒュッ!

 

 静かかつ鋭い風切り音が鳴った次の瞬間、"はぐれ"の腕が宙を舞っていた。

 切断された腕が回転し、鮮血を撒き散らしながら地面に落ちる。

 一瞬の出来事で"はぐれ"は何が起きたか理解出来ずに呆けていたが、遅れてやってきた激痛と恐怖で遂に発狂した。

 辺り構わず暴れ、辛うじて人間だった上半身も既に異形と化し、四肢を振り回す。

 だが、そんな苦し紛れの悪足掻きで騎士を捉える事など出来る筈もない。

 はぐれは、只一方的に身体が斬り刻まれていくだけだった。

 

 この闘いを見ていた黒歌はふと思った。

 騎士は手加減をしている、わざとこの"はぐれ"を殺していないと。

 散々痛めつけ、なぶり殺しをしていると。

 その様子を横目で見ながらも、黒歌は足早に少女の亡骸を抱いてその場から離れた。

 巻き込まれでもしたらそれこそ洒落にならない。

 同時に、決して敵に回してはいけない者を敵に回してしまった愚かな同胞に少しだけ同情した。

 

 「だ、ひゅけ、でくりゃ、ひゃい」

 

 口から血のあぶくを吹き出しながら、命乞いする"はぐれ"。

 どう足掻いても助かる見込みはない。

 この痛みと恐怖から逃れようと思うも、四肢は斬り落とされており、逃げる事も自ら死を選択する事も出来ない。

 その姿にかつての面影はなく、酷く惨めで、哀れな只の血達磨の芋虫だった。

 

 「……怯え、竦め、そして死ね、外道」

 

 騎士は刃に着いた血を剣を振り落とし、払う。

 漆黒のマントが風でバタバタと音を鳴らしながら靡き、暗闇から深紅の眼が二つ浮かび上がる様子をみて"はぐれ"は記憶の片隅にあった御伽話の一節を思い出した。

 

(深き闇の淵から深紅の眼で騎士は見ている)

 

 あぁ、これは罰なのだと、散々好き勝手した報いを受ける時が来たのだと。

 四肢を斬り飛ばされ、目は潰れ、腹から臓物がはみ出ても尚、生きている。

 地面に這いつくばって、見苦しくもがく。

 その姿は酷く哀れで、無様としか言い様がない。

 この段階において、はぐれは漸く理解するに至る。

 他人に自分の生殺与奪をにぎられる"死の恐怖"を。

 

 自身の最後を悟り、壊れたレコードの様に笑う"はぐれ"。

気の狂った肉塊に剣を突き刺し、宙に投げる。

 そして、空中でバラバラに斬り刻みとどめをさした。

 直後、大小様々な肉片が騎士に降り注ぐ。

 だが、騎士は何事も無かった様にはぐれの血溜まりを調べ始めた。

 だが、その肉片に特に変わった様子は無く、やはり只の悪魔だった。

 マントを翻して黒歌の所へと戻ると、騎士は真剣な顔で問いただされた。

 

 「何で、直ぐにアイツ殺さなかったにゃ」

 

 力の差は明白、この程度の"はぐれ"など赤子の手を捻るよりも容易く殺せるはず。

 だが、何故弱者をなぶり殺す様な真似をしたのかを聞かずにはいれなかった。

 返答次第では騎士の評価を改めねばならない。

 この不気味な騎士の強大な力に、黒歌もまだ不安だったのだ。

 その矛先が自分達に向けられるかもしれないと言う事に……

 

 しかし、騎士は黒歌の問いに答えない。

 剣に付着した血肉を一薙ぎで振り払うと無言のまま、少女の亡骸の方へと歩いて行ってしまった。

 黒歌は余計な事を聞いてしまった罪悪感を感じながら、その後を追う。

 そして、遺体の前まで来ると騎士は何かを取り出すとそっと少女の遺体の上に置いた。

 

 「それは……」

 

 それは小さなカチューシャだった。

 少女のお気に入りだったのだろう、古いながらも大切に使われていた事が良く分かる。

 "はぐれ"の骸を調べた時に拾い、それを騎士は女の手をカチューシャの上で組ませた。 

 

 「"死の恐怖"存分に思い知らせねば、この少女も浮かばれまい」

 

 そして騎士は、静かに眠る少女に"すまぬ"と一言詫びた。

 

 その姿を見た黒歌は少しでも疑った自分を恥じ、騎士の高潔さに心打たれた。

 恐ろしい見た目とは裏腹に、他者を思いやる慈悲を持ち、一度剣を振るえば無敵の強さを誇る。

 見返りを求めず、強きを挫き、弱きを守る。

 正に【騎士】とはこう有るべき姿を体現していた。 

 

 

 「……新手か」

 

 近づく悪魔の気配を察知した騎士は剣を抜こうとするが、どうも黒歌の様子がおかしい。

 落ちつきなく動き回り、ぐるぐると回っている。

 この馬鹿な娘はどうしたのか、騎士は半ば呆れて黒歌の袖をを掴み、そして持ち上げた。

 

 「にゃにゃ!!白音の気配にゃ!!どうしよう!!」

 

 「……狼狽えるな」

 

 黒歌は慌てて黒猫になり、脱兎の如く闇の中へ消えた。

 騎士は相棒の骸の馬に跨がると、身に覚えのある魔力が近づく方へ顔向けた。

 

 (小僧と同じ魔力、身内の者だと言う事は明白か)

 

 暫くすると五人の若い悪魔達が現れ、皆バラバラになった"はぐれ"の末路を見る

 そして、騎士に向かい各々の獲物を構えるが顔は例外なく引きつっている。

 そして、一番魔力が弱い少年が声を震わせながら紅髪の娘に問いかけている。

 

 「い、いきなり、ラスボスが居ますよ……部長」

 

 「イッセー、少し黙ってちょうだい」

 

 "リアス・グレモリー"魔王の身内と騎士との出会いは、正に一触即発の危機だった。




私は黒歌が一番だと思っています。アーシアは別枠ですが。
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