髑髏の騎士D×D   作:プライベートX

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髑髏とリアス

 

 髑髏の騎士は殺到した悪魔達を馬上から見下ろしている。

 だが、その髑髏顔は若人達には少々刺激が強過ぎるようで、誰一人として動ける者は居なかった。

 現役魔王すら凌駕する覇気を前に、逃げ出さないだけでもマシな部類に入る。

 若く未熟な悪魔達を前に騎士は特に何もせず、ひたすら無言を貫いた。

 

 

 「こ、こいつが"はぐれ"悪魔バイサー……」

 

 「いえ、バイサーなら地面に散らばってます」

 

 「この太刀筋、只者じゃない……」

 

 地面は大小様々な肉片が一面に散らばり、その様は血の海だった。

 出来の悪いB級映画を見ている気分になる様な光景だが、その血の海の中に佇む漆黒の騎士。

 

「貴方が、バイサーを?」

 

 赤髪の娘が騎士に向かって問いかけ、その仲間達は油断なく其々の獲物を構えた。

 なまじ実力があるからこそ解る明確な力の差。

 赤髪の娘は敢えて先頭に立ち、部下達を後ろに下げる。

 いざとなったら己が盾となり、時間を稼ぐ算段か。

 成る程、流石"魔王"の身内、その資質と覚悟は賞賛に値すると騎士は思った。

 

「如何にも」

 

「!!その少女は……」

 

 騎士の後ろに横たわる少女の亡骸を見た赤髪が、憤怒の表情と共に魔力をその身に纏わせる。

 そして、その滅びの力が凝縮した玉を騎士に向かって放った。

 触れた物全てを灰塵に帰す"滅び力"。

 その強力無比な一撃は騎士へ直撃、爆音と砂埃が辺り一面に舞い上がった。

 

 

 

 

 「許さないわ、絶対に」

 

 リアス・グレモリーは激怒していた。

 罪無き子どもを無慈悲に殺した輩に、救えなかった自分に激怒していた。

 同時に、目の前の髑髏から発せられる強者の圧力に飲まれない様に必死だった。

 圧倒的な怒りで恐怖を全て塗りつぶし、必滅の力を腕に込める。

 自身の眷属達もその顔に恐怖の色はなく、少女の敵を討つべく臨戦態勢を取っていた。

 やはり眷属達も自分と同じ事を考えていた事に嬉しく思ったリアスだったが……

 砂埃が晴れると、そこには何事もなかったかの様に佇む騎士がいた。

 

 「む、無傷だなんて……あり得ないわ」 

 

 全力全開の必殺の一撃の直撃を受けて無傷の騎士に、リアス・グレモリーは動揺を隠せなかった。

 無論、その眷族達も皆驚愕の表情をしていた。

 

 「……娘」

 

 不意に騎士は、臨戦態勢のリアス達に向かって静かに言った。

 

 「我が力及ばず、救えなかった」

 

 「え?」

 

 「……今一歩、遅かった。この幼子には酷い事した」

 

 

 横たわる少女を騎は見ながら無念そうに騎士は言った。

 だが少女の仇を討ち、最期まで気を配っていたのは間違いなく騎士なのだ。

 

 「それを、信じろと?」

 

 だが、その様な事情などリアス達が知るわけがない。

 純粋な義侠心で目の前の敵を討とうとしているのだ。

 今さら騎士も自分の言った事を否定する気など毛頭無く、剣は抜かず盾のみを構える。

 あまりにも不毛な闘いが起きようとした時、地面に魔方陣が表れ双方の間にグレイフィアが表れた。

 

 「お待ち下さい」

 

 「グレイフィア!?どうして貴女が此処に?」

 

 「魔王様からの伝言と、この事の顛末のご説明に」

 

 「どう言う事……?」

 

 「では、まず説明から。騎士様の言っている事は事実です」

 

 「まさか!でも、そんな……」

 

 「騎士様が来た時には少女は既に瀕死の重傷でした。騎士様は少女の仇を討ち、その最後を看取った……」

 

 「……覗き見とは感心せぬな、魔王の番よ」

 

 少し不快そうな騎士は、グレイフィアの話を遮った。

 

 「あの、話が見えてこないのだけど?」

 

 完全に蚊帳の外のリアスとその眷属達は拍子抜けしてしまった。

 どうやらグレイフィアと騎士は面識がある様で、割りと親しい感じがしなくもない。

 こんな不気味な髑髏といつ面識をもったのか、そもそもこの騎士は何者なのか?

 皆が固唾を飲んで見守る中、一誠はグレイフィアを見て鼻の下を伸ばしていた。

 まぁ当然、鉄拳制裁と言う名のツッコミを受けていたのは言うまでもないが。

 

 事の顛末を知り、リアス達は心底驚愕した。

 この不気味な髑髏に慈愛心があるとは到底思えなかったからだ。

 だが、グレイフィアは事実だけを淡々とのべ、最後に今後の騎士の悪魔界の地位と扱いについて魔王サーゼクスからの統制事項を述べた。

 

 「騎士様は魔王様にとって非常に重要な客人であり、恩人です。決してご無礼なき様お願いします」

 

 「……余計な世話だと小僧に伝えておけ」

 

 不快そうな雰囲気を出してグレイフィアに騎士は言った。

 リアス・グレモリーと眷属達は改めて騎士の凄さを痛感した。

 魔王の厚意を余計な世話とバッサリ切り捨て、魔王の事を小僧と呼べる事に……

 

 「魔王様を小僧呼ばわりって……」

 

 「でも、あの髑髏から懐かしい匂いがする……」

 

 ギロリと深紅の眼が白髪の娘の方を睨む、ビクッと身体を一瞬硬直させたが直ぐにファイティングポーズして臨戦態勢を取った。

 自分達に害は無いと解ったと言っても、その強大過ぎる騎士の覇気は毎度の事だが相手を震え上がらせる。

 

 「……貴様があの破廉恥娘、いや"黒歌"の姉妹か」

 

 「ど、どうしてその名前をっ」

 

 騎士は白髪の背丈が小さい娘の方を見て呟いた。

 黒歌が守ろうとした者に少し興味があった。

 例えその身が外道に堕ちようとも、守ろうとした"妹"を。

 白髪の娘を見た騎士は正直な所まだまだ未熟だと思った。

 そして娘は、黒歌の名前を聞いて不快感を丸出しにしている。

 事の事情を知らぬ故、仕方がない事ではある。

 だが、これは黒歌自身が解決せねばならない問題だ。

 余計な事をするつもりは毛頭無い。

 

 「……見定めよ娘、目に見えぬ事も又、事実也」

 

 「な、何を言ってるんですかっ!!」

 

 その時、暗がりから妖艶な和服を着崩した黒歌が表れた。

 会いたくないとは言っても妹思いの奴の事だ、気になって近場で様子を伺っていたのだろう。

 違うのは顔が今まで見た事無い真剣な表情をしている事か。

 姉妹の重苦しい沈黙の時間は、本日二度目修羅場だったが、一誠が黒歌の姿を見て鼻血を出していたのは当然の現象である。

 

「あ、あのね……」

 

「聞きたくありません」

 

 白音と呼ばれた黒歌の妹は、黒歌の話しを聞かずはっきりと拒絶する。

 黒歌が与えてしまった心の傷は深い事を痛感させた。 

 シュンとなり哀しそうな顔になる黒歌、この姉妹の蟠りは並大抵ではない。

 今この場での解決は望めまい、そう判断し騎士は黒歌を掴み馬に乗せ離脱の準備をした。

 

「……破廉恥娘よ、この程度の事、予測はしていたであろう」

 

「確かに、予想通りにゃ……」

 

「ならば急く事はあるまい」

 

 そう言うと騎士は黒い霧を纏い、闇の中に消えた。

 リアスと眷属達は肩の重荷が降りる感覚とはこの事なのかと思っている中、一誠は只一人、拳を握りしめ悔し泣きをしていた。

 その姿を見てリアスは感心した。

 強大な敵を前に自分の力の無さを嘆き、涙を流せる眷属を持った事を誇り思った。

 きっとイッセーは誰より強くなると思っていた……が。

 

 「くそぅ!ボスキャラと美女はやはりテンプレなのかよっ!!」

 

 イッセーはやはりイッセーだった……。

 

 

 

 

 

 「……何を泣いている」

 

 妹に拒絶されたショックからだろうか、黒歌は項垂れていた。

 魔王からお咎め無しのお墨付きを貰っても、肝心の妹から拒絶されては話しにならない。

 黒歌の眼からは、悔しさや虚しさで涙が止めどなく溢れていた。

 

 「……我等は時の理から外れし人外、時は腐る程ある。貴様の"思い"が本物ならばいずれ伝わるだろう、故に」

 

 騎士は泣いている黒歌の襟を持ち言った。

 

 「……我のマントで鼻を啜るのは止めろ」

 

 

 

 騎士は初めて駒王町を見た山の麓、町から少し離れた森の中に居た。

 大きな木の下にはあの少女が眠っており、小さな石とカチューシャが墓碑の変わりに置いてある。

 聖職者の様に経の一つでも読んでやるべきだろうが、生憎騎士にそんな事が出来る訳がない。

 この名も知らぬ少女にしてやる事はもう何もなかった。

 

 「黒猫さん、黒猫さん、待って下さい~」

 

 騎士が振り返ると聖職者の様な娘が此方に走って来ていた。

 どうやら黒歌が一計を案じた様だ。

 修道服の娘は騎士の姿を見るなり息を飲んで、腰を抜かす。

 まぁ腰も抜かすだろう、猫を追って来てみたら全身真っ黒の髑髏が立っていたら誰だって腰を抜かす。

 詐欺レベルのドッキリと言っても過言ではない。

 騎士は倒れた聖職者の娘の前まで歩いて行く。

 歩くごとに鎧がガチャリ、ガチャリと音を立て、恐怖を余計に煽る。

 騎士が少女の目の前に着く頃には、彼女は神に懺悔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アーシアは天使、愚問ですが
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