【その者、黒き衣を纏いし神罰の代行者。神の教えに背き不届き者を地獄の底へと誘う案内人。哀れな羊達よ、神に懺悔し、悔い改めよ。黒き霞と共に死神はやって来る。蕀の剣を携え、骸の馬に跨がりし漆黒の死神はやって来る】
【漆黒の死神】より抜粋
私の名前は"アーシア・アルジェント"。
今日私は、極東の異国の地【日本】に初めて来ました。
教会から追放されて、流れ流れてようやく目的地の町へたどり着きました。
日本の慈悲深く、親切な人々との出会いを神に深く感謝します。
しかして慈悲深き神よ、お許し下さい、私は再び、道に迷ってしまいました……
「また行き止まりです……」
この日本と言う国は道が広かったり、急に狭くなったり、直ぐに迷ってしまいます。
地図を見ても全然解りません……
さっきまで車が通れる様な大きな道だったのに……
今は目の前は木が沢山あります、地図を何度もひっくり返して見ましたが駄目でした。
一体、此処は何処なのでしょうか?
「ニャ~」
「あ、可愛い黒猫さん」
黒々とした毛並み綺麗な黒猫さんがこっちを見ながら鳴いてます。
黒猫さんも私が気がついたのが分かったのでしょうか、足元に来て頭を擦ってくれました。
サラサラの毛並み、モフモフ感、とても気持ちが良いです。
頭を撫でてあげようとしたら黒猫さんがサッと駆け出して森の中に入って行きましたが、少し入った所で止まって此方を見ています。
凄く、不思議な感じがしました。
黒猫さんが私を呼んでいる様な、着いてきてと言っている様な気がしてなりません。
これも神のお導き、そう思いました。
「黒猫さん、私が着いて行けば良いの?」
「ニャ」
「お利口な猫さんですね……あ、待って!黒猫さん!」
森の中を黒猫さんの後を追って進みました。
昼間なのに薄暗くて少し怖いですが、黒猫さんが近くにいるので我慢出来ました。
少し先に大きな木が見えてきた所で、突然黒猫さんが走り出し、あっという間に見えなくなってしました。
「黒猫さん、黒猫さん!待って下さい~」
黒猫さんを追って大きな木の近くまで来ると、"黒い何か"が居ます。
近づいて良く見ると全身真っ黒な人が立っていました。
その人が私に気が付き振り返った瞬間、そのお顔を見て背筋が凍り付き、息が止まりました。
本に書いてあった"漆黒の死神"が目の前に居る。
神の教えに背いた不届き者を地獄に連れて行く案内人。
黒猫さんは死神様の御使いだったのですね……
私は反射的に目を瞑り、神に懺悔します。
ついに審判の時が来たと、そう思いました……
「神よ、罪深き私をお許し下さい。貴方の教えに背き……」
「……娘」
「はい……?」
「すまぬが、一つ頼みがある」
死神様の後に着いて行くと木の下には小さなカチューシャと石が置いてあり、きっと誰かがこの下で眠っているのだと直ぐにわかりました。
死神様はこの下にいる不憫な子に、一つ祈って欲しいと言っていました。
てっきり地獄にお連れされるのかと思っていたので驚きましたが、精一杯御祈りさせて戴きました。
死神様のお供の方のお墓なんでしょうか?死神様が黙ってお墓の方を見ています。
とても恐ろしいお顔ですが、何だかとても優しい眼でお墓を見ている気がしました。
嘘の様な事ですが本当にそう見えました。
最後に良い事が出来て良かったです。もう私に、心残りはありません。
「終わりました」
「……礼を言う」
「礼だなんて!!とんでもないですっ!!」
「祈りは通じ、魂は救われた」
「魂は……?」
「左様、未練ある魂は現界に留まり続け、幽界にも行けず、哀れな魂は永遠にさまよい続ける。だが娘、貴様の祈りが幼子の魂を救った」
深紅の眼で大きな木の方を見上げる騎士、それにつられて修道女の少女も騎士と同じ方を見くと、其処には薄く消えてしまいそうな少女の形をした何かがが浮いていた。
騎士と少女の方を見て微笑むと光りの粒子となり天高く昇って逝った。
一連の光景に言葉を失い、呆然と立ち尽くす修道女の少女に騎士は語りかけた。
「真心無き祈りでは、力は宿らぬ」
「でも、私は神の教えに……」
「その教えが全て正しいとは限らぬ。己が正しいと信じ、行動した事にこそ意味がある。ゆめゆめ忘れぬ事だ」
「己が正しいと信じる……」
「左様、それを為す力を貴様は持っている」
そう言うと騎士は黒い霧から出てきた骸の馬に跨がると、少女を掴んで馬に乗せ駆け出した。
あまりの速さに目を回している間に森を抜け、日も暮れかけ人気の無い公園で少女をおろす。
少女は騎士に向かって深々とお辞儀をするとトコトコと何処かに走って行った。
走り去る少女の後ろ姿を黙って見送る騎士だった。
「随分、あの子の肩を持つにゃね」
「穢れを知らぬ清き娘よ、貴様とは比較するに値せぬ」
「ニャー!!酷い言い草だにゃ!!取り消すにゃ!!」
じたばたと暴れる黒歌を気にする事なく暗い街を歩き出す。
宛は特に無いが赤髪の娘、リアス・グレモリーの所へでも行ってみようと思っていた。
魔王の身内であり、この城塞都市の統治者でもあるならば様々な情報を持っているに違いない。
途中でやけに喧しく暴れる黒歌。
煩わしいので情報収集の為だと一方的に言うと、草むらに狙いを定めパージした。
人の気配を避けながら、建物の屋根や壁を使い風の如く駆けて進む。
暫く走ると大きな城の様な建物の前までたどり着いた。
堅牢な作りの割には窓には透明な硝子を使っている。
ちぐはぐな城だと騎士は思っていると、金髪の若い男が唸り声を上げながら建物から出てきた。
「な、なんだお前!!ここに何の用だ!!」
武器を抜ぬいた事を確認すると騎士は、特大の殺気を放ち、剣を抜きながら馬から跳ぶ。
「……退け」
そして深紅の眼で金髪の若い男を睨み、その首筋に剣の切っ先を向ける。
騎士は無用な殺生は望んではいないが、身に降りかかる火の粉位は振り払う。
武器を向けられ挑まれたら、相応の対処と報いを受けて貰う事になる。
だが騎士は、外道を除いては向かって来る身の程知らずには親切に警告をしてやるのだ。
"死に急ぐな"と。
「あ、あ……」
剣を向けられ、身体を突き抜けた殺意。
死を目の前にして汗が吹き出し、足が生まれたての子牛の様に震える。
その時の事を"匙 元士郎"は後に語る。
速いとかそう言う次元の話ではない、何を言っているか自分でも分からないが、"それは"目の前に居た。
圧倒的な実力の差、目の前の化け物がその気になれば俺を殺す事など造作もない。
瞬きしている間に俺は、死ぬだろう……と。
圧倒的なまでの力の差、匙は無意識の内に神器の力を解除していた。
すると騎士は直ぐに剣を引き、強烈な殺気は嘘の様に消える。
生命の危機から開放され尻餅をつき乱れた呼吸を整える匙。
騎士はそんな匙を見下ろしながら、言った。
「……一つしか無い命、懸け時を誤るな、小僧」
呆然とする金髪の若い男を見ていると、見知った気配を感じる。
振り返ると其処には、妙な小僧と赤髪の娘、リアス・グレモリーがいた。
絶体絶命の匙と騎士の姿を見て二人は驚愕し、大いに慌てた。
魔王すら遥かに凌ぐの力を持つ騎士がいきなり自分達の学校にいるのだ。
ただならぬ気配を感じ見に来てみればこの有り様である。
しかも生徒会役員の匙が死にかけているし、リアス・グレモリーは溜め息と共に頭を抱えた。
一先ず、騎士を部室へと招き、匙は生徒会に引き取らせた。
見るからに異形の髑髏顔の騎士を、一般生徒にでも見られたら大変な事になるのは明白。
リアスは人払いの結界を張り、部室へと向かった。
「それで、貴方は何故此処へ?」
「……この現界に我が求める"物"がある。その手がかりを探している」
旧校舎、オカルト研究部部室の中はカオスだった。
なぜなら騎士が仁王立ちをしてリアス・グレモリーと会話している、それもごく自然に。
兵藤一誠はこの違和感まる出しの状況に堪らず、同級生と後輩に事の異常さに対し共感を求めるが、冷たくあしらわれ部屋の隅で体育座りをしていた。
だが、一誠の感性は間違ってはいない、間違ってはいないのだが空気を読めていない。
「お茶は飲まれますか?」
「……飲めぬ故、要らぬ」
紅茶の良い香りが部屋の中に溢れ、髑髏顔の騎士さえ居なければ美少女達が優雅にお茶を楽しむ、そんな一時の光景だ。
しかし、騎士と言う異物が混ざるだけで優雅な一時の構図とはかけ離れた光景になる。
これは一体何なんだ、普通の感覚ならばこの部屋の異常さに気が付く筈だ。
「おかしいだろ……、絶対おかしいだろ……」
兵藤一誠は世知辛さを痛感しながら部屋の角を見ていた。
アーシアとの絡みが難産でした……ちょくちょく修正するかもです