「それで髑髏のおっさんが探してる"物"って一体何だ?」
立ち直った一誠は、話の核心とも言える質問を騎士にした。
唐突な質問と物怖じしない呼び方に皆絶句をし、騎士を恐る恐る見る。
しかし、当の本人は全然気にしている様子は無く、只一誠の方を見ていた。
自分でおっさんと呼んでおきながらビビる一誠の顔の前に、騎士は拳を突きだす。
そして開かれた手の中には卵の様な"物"があった。
目と鼻と口が歪に付いた、不気味な卵の様な"物"が。
「これは、一体何なの?」
「気持ち悪りぃ……」
得体の知れない不思議な卵、こんな悪趣味な卵が騎士の求める物なのかとリアスは疑問に思った。
しかし、この卵からは確かに"何か"を感じる。
それも、非常に悪い類いの何を。
「……これは"ベヘリット"」
皆、薄気味悪い卵のベヘリットを食い入る様に見るが、この卵が一体何なのか検討も付くはずもない。
だが、この卵から何か禍々しい力の様なものを感じる事は確かだった。
只、リアスもこのような卵を見るのは初めてである。
そもそもこんな物がこの町に、"人間界"に本当に存在するのだろうか。
ベヘリットを手に取り、眺めながら騎士に向かって尋ねた。
「この気持ち悪い卵を、貴方は探しているの?」
「左様」
「理由を聞いても良いかしら?」
「……これは人を人ならざる物"使徒"へと転生させる媒体」
「使徒?神の使いか何かになるのかしら?
騎士の説明をよそに、ベヘリットを手に取りまじまじと見る一誠。
その見た目は悪趣味なアクセサリーとも言える"ベヘリット"。
僅かに弾力が有り、しっとりとしていて人肌の様な手触りだ。
終いには鼻や口を押す、つねる、でこぴん、やりたい放題に弄くり回す。
ガッツ曰く"貝の様な物"なので普段は別に害があるわけではない。
騎士とリアスの難しい話をよそに、一誠は自分を死の淵から救った時に部長が使った"悪魔の駒"と"ベヘリット"は同じ様な物だと最終的に結論付ける。
「これにそんな力があるとは思えねぇけどなぁ……」
しかし、この人面卵にそんな力があるとは到底思えずにいた。
「……それは持ち主の強き願望を具現化させる媒体、代償を払い使徒へと転生する」
「だ、代償??」
「……代償、それは自身の最も親しい人間を奴等の"贄"に捧げ、"降魔の儀"により人は"使徒"へと転生する」
「奴等って誰だよ」
「……深入りはせんことだ、小僧」
「前言撤回、こんな物と悪魔の駒が一緒だなんてナンセンスだわ」
「……人間を人外へと変えると言う点においては変わりはあるまい」
「悪魔の駒は、そんな野蛮な物ではないわ!」
「……飽くなき力への欲望、生への強き執着、その為ならば簡単に代償を差し出し、人間は力を得る」
「そんな事をしてまで求める力、分からないわ」
「……人は弱く、脆い。故に求めるのであろう、死にたくない故に、全ての理不尽を覆す"力"求めるのだ」
唐突に、一誠はリアスと騎士の会話を聞いていてふと思う。
自分は悪魔になって本当に良かったのかと。
まぁ、良かったも何もない状況からの悪魔へ転生だったので今更なのだが。
でも、そのお蔭で今もこうして元気に先輩方のダブルおっぱいを間近で堪能出来ている。
"人間"兵藤一誠だった頃で考えられない事だ。
あれ、人間だった時もよりもかなり充実してね……?
「部長!お、俺は悪魔になれて良かったっすよ!超サイコーっす!」
思考のほとんどがエロの兵藤一誠は非常に単純である。
とりあえず今が良ければオールオッケー!そんな感じだ。
実際、悪魔になってデメリットを感じていないのも事実だし、寧ろメリットづくめだから。
「……酔狂な小僧よ、貴様が歩みし道は影の道。それは人外に踏み入れた者の定めだ」
「そ、それがどうした!別に怖くねーぞ!なんたって俺は部長の兵士なんだからな!」
騎士は一誠を暫く睨むが一誠も騎士を睨み返す。
その目に騎士に対する恐怖などは微塵もなく、寧ろ決意に満ちた目をしていた。
「……精々精進する事だ小僧。早死にせぬ為にも、な」
「おうよ!それとコレ返すぜ!髑髏のおっさん!」
手に持っていたベヘリットを投げ渡す一誠。
投げられたベヘリットを騎士はパシッと掴むと、口の中に入れ飲みこむ。
割りと自然に、当然の如く飲みこむ騎士。
言うまでもなく不気味感と気味の悪さに拍車をかけ、改めて一同は引いた。
しかしながら、親しい者を生け贄に捧げるなど現代で生活をしている我々では全く想像も出来ない発想だ。
だが、一昔前は"魔女狩り"や"人柱"と言った生け贄に等しい行為は実際に行われていた。
疫病、飢餓、目に見えぬ恐怖、宗教的ヒステリー、集団心理、人間の倫理観など簡単に壊れるものである。
もっとも初めから壊れている、サイコパスな人間も少なからず存在はするが。
「……我が望むは、コレの情報だ」
「確かに、こんな野蛮な物を放置する訳にはいかないわ。出来る限り協力はするけど何か宛はあるの?」
「……宛は無い、だが少なからず気配を感じる」
「気配?」
「使徒、否、人ならざる奴等は総じて血を好む。この都市は血に飢えた者共の気配を多く感じる」
「それは私達も分かっている。でも悪魔にも色々事情があるの、迂闊な行動は出来ないわ」
「……無駄な争いに関わるつもりは無いが、我とて恩知らずではない、幾ばくかの助力はしよう」
「伝説の髑髏の騎士の助勢とは心強いわね、まだまだイッセーも未熟だし……」
「……我はまだ此処の勝手が解らぬ、暫くは探索に専念する」
「此方も何か解ったら逐次報告しましょう。でも困ったわね、連絡手段がないわ」
「……これを使え」
騎士はそう言うとサーゼクスから渡された駒をリアスに投げた。
サーゼクスから渡されたが、全く用途が理解出来ない。
そんな物を只持っていても意味はない。ならば同じ悪魔でサーゼクスの身内、使い方を心得ている者に渡した方が良いだろう、そんな感覚で騎士は駒を渡した。
「ち、ちょっと!なんでこの"駒"を貴方が持ってるの?!」
「……貴様の兄から貰った物、我は使い方は解らぬ故、貴様が持っていた方が都合が良いだろう」
「変異の駒の更に上の上、
「その駒、そんなに凄い物なんですか部長?」
「とんでもない物よイッセー。どんな者でも眷族に、それもほぼ強制的に出来るわ。それこそ魔王でさえも……ね」
「ま、マジですか……」
「……必要あらば呼べ、可能な限り力を貸そう」
「ええ、その時は頼らせて貰うわ」
そう言うと騎士は開いた窓から飛び出し、いつの間に居たのだろうか骸の馬に跨がった。
日も落ちかけて薄暗い校舎を背に、猛烈な勢いで走りだした騎士は、黒い霧を纏って夕闇に消えていった。
リアス・グレモリーは騎士から渡された"大変異の駒"に力を宿す。
すると駒が黒く鈍い光を放つと、先端部が"髑髏"に変化した見たこともない形の駒になった。
それは、一時的ではあるが伝説の騎士を眷族にした証しだった。
単純に王として嬉しい反面、厄介事を抱えてしまった事に対し、何とも言えない気分になったリアス・グレモリー。
本来ならば素直に喜ぶべきであろう状況だ。
しかし、あくまでも一時的な"共闘"に過ぎない関係である。
それに、とてもでは無いが気安く呼べる様な相手でもない。
まして魔王すら凌駕する力を持つ最強の騎士を得た事を、切り札を得たと思うべきか、新たな爆弾を抱えたと思うべきか。
そんな複雑な心境で飲む紅茶は、いつもより少し薄く感じた。
いつもより少ないです。
すみません……中々時間が確保出来ませんでした。
次回に足らない分を持ち越します。
オリジナル要素の大変異の駒をぶちこみました。
ご都合主義っぽくて大変すみません……