『あたしと【デート】行きませんか?』
『あたしとでーと、いきませんか????…んんん?』
季節は春。5月初頭。
私たちスリーズブーケ、DOLLCHESTRAは新一年生と一緒に、初めてのFES×LIVEを開催した。一年生たちもよくできていて、ライブも盛況した。と思う。次のFES×LIVE、そして、一番の目標でもあるラブライブ!優勝に向けて、日々淡々と練習に励み、額からこれでもかと、大量の汗を流していた。そんなよくある何でもないただの一日だった。
一日の練習メニューが終わり部室へと戻る最中の廊下で、疲労による手足の震えが彼女を襲っていた。
『ここはあたしにまかせて、先に行ってください。。。うぅぅ。あの化物も全てあたしが食い止めます。。また、、、逢いましょう、、梢センパイ。グットラック。』
なにか変な言葉が聞こえた気がした。私は後ろを振り返る。振り返ると、足をぷるぷるさせ、引きずりながら、2歩くらい先にいる私に対して、手を伸ばし、親指を上げ、私に突き立てていた。そう、グットラックだった。そういう彼女をかわいい。などと思いながら遇う。
『まったく、何してるのよ。もう。』
なんて事を言いながら、スピードを合わせて歩くため、2歩ほど下がり、踵を返す。そうして、ゆっくりと部室へと帰る。帰る途中、彼女はルンルンでこう言ってきた。
『ダンスも歌もいつも通りキレキレでカッコ良かったですね、せーんぱいっ。』
そんな他愛もない、いつも通りの会話をしていると部室にいつの間にか着いていた。戻るやいなや彼女はいつも通り椅子に腰掛け、目をつむり、体で大の字を描いていた。
『うへぇ〜づかれた〜。』
『今日もお疲れ様、日野下さん。紅茶、飲むわよね?』
いつも通り疲れている彼女を見て、私は今日も紅茶を入れようとお湯を準備するところから始める。
そう言った直後、彼女が大きな声をあげる。
『ぇ、ええええええええええ!!』
急にこちらに近づいてくる。それはもうワンちゃんみたいに、尻尾を振りながら。距離はというとくっついて密着してしまうんじゃないか。というほどに、近かった。顔はとても驚いた様子で、そのあたふたしているところもその仕草や表情も全てがとても可愛らしく愛しかった。しかしあまりにもこちらに寄っているので、何か言おうと思考を巡らせたが、こちらに会話の主導権はない。と、レッテルを貼られたかの如く、間髪を入れずに喋ってきた。
『こ、梢センパイ!金沢にある遊園地から招待状、届いてます!』
きょとん。とする。何が何かと理解できないまま、ティーポットを置きこんなにも近い彼女の両肩をがっしりと掴んだ。何か言わないと、とは思っていたが、一向に言葉が出てこず、あとは口から出てきた言葉に全てを委ねた。
『え、ー っと。わ、分かったわ。う、うーん。一旦、落ち着きましょうか日野下さん。』
とは言ったものの私も、内心は相当焦っているし、一つも落ち着きがない。日野下さんが今どんな目をしていて、どんな口の形をしていて、どんな眉なのかこんなにも目の前にいるのに、一切顔などは見えず眼の前に闇が広がるばかりで、そこに日野下花帆などいなくなっていた。落ち着くために、悟られないように、気づかれないように一度、深呼吸をする。
『ふーっ。』
すると先程とは打って変わって視界が良くなっていき、現実へと戻る。あの日野下さんもちゃんと今なら見える。がっしりと掴んだその両肩から手を離し、話し始める。
『とりあえず、開けてみましょうか。』
渡された招待状。もとい封筒をドキドキしながら破り、中身を確認する。開けた先には手紙が入っており、次の言葉が綴ってあった。隣りにいる彼女にも聞こえるよう、私がちゃんと手紙の中身を飲み込めるよう、はっきりと声に出して読んだ。
蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 日野下 花帆 様 スリーズブーケ 様
拝啓
立夏の候、貴部に置かれましては益々ご清祥のこことお慶び申し上げます。私は金沢にて遊園地を運営しております【TDFランド】の園長田中です。
この度は、来る5月に登園特設ステージにて開催を予定しているイベントにおいて、日野下様およびスリーズブーケの皆様にライブ出演をお願いしたくご連絡いたしました。
『えぇぇぇぇぇぇ!』
『日野下様、日野下様って。なんであたしの名前がユニット名より先に書いてあるんですか〜!!!!』
『落ち着いて、日野下さん。続き、読んでいくわ。』
個人的なこととなり恐縮ですが、日野下様が毎日行われていた個人配信、及び、FES×LIVEを拝見させていただきました。そのひたむきで情熱的な姿は私の目に強く留まり、深い感銘を受けました。その熱意と輝きを、ぜひこのステージで披露していただけないでしょうか。
今回は特別な企画等の指定はございません。皆様のパフォーマンスを自由に披露していただけたらと存じます。
開催時期につきましては、5月末を予定しております。時間があまりないですが、ご了承ください。つきましては、上記期間の中で開催可能な日程がございましたら、折り返しご教示いただけないでしょうか。
ご多忙中とは存じますが、何卒ご検討のほどお願い申し上げます。
敬具
TDLランド園長 田中
まぁ要するにライブしませんか。というお誘いだった。私は冷静に手紙の返事を彼女と考えようと思ったが、どうやら彼女はそうではなく、この状況を飲み込めていなく、どう見たって困り果てている。
『このお話は明日の朝の練習までにどうするか決めましょうかしらね。』
とはいったものの私は、このお話を受けるべきだと、承諾するつもりでいる。理由は単純で、このお話を受けさせて頂いて、遊園地でライブをする。この事は彼女にとって、私たちにとってお客様に観ていただく最高の機会だ。そうすると絶対にレベルが上がるし、FES×LIVEで緊張していた彼女も場数を踏めば慣れていくだろうと考えたからだ。この考えに対して彼女がどう言ってくるのかわからないのだけれども。この間にも彼女は、頭を抱え必死に悩んでいた。彼女も彼女なりに色々と考えているのだろう。こうして1、2分位経った後、考えがまとまったのか彼女が口を開く。
『梢センパイ。あたし、このお話受けたいです!このお話、すぐに返しましょう!私やってみたいです!』
『ええ、私もこのお話受けようと思っていたわ。ふふっ、頑張りましょうね、日野下さん?これから厳しい練習が待っているわよ?とりあえず夜ごはんを食べたら、毎日、夜も練習やりましょうか。休みなんてないわよ?』
『それじゃぁ地獄と変わらないじゃないですかぁ〜〜。』
こうして、遊園地からのライブのお誘いを受けさせていただくことにした。ライブの日程は28日の日曜日になった。
私は次の日の朝の部室でというか、昨晩の自室からずっと頭を悩ませていた。それはこの遊園地ライブの曲についてのことだ。その後せっかくならと遊園地ライブは新曲でやろうというお話になり、私は、そんな時間あるかなな。などと思ったが、彼女がとてつもなく新曲がやりたいな〜。と押してきて、顔が歪みそうになったが、仕方がない。と思い腹を括った。せっかくならばと、遊園地に関わる曲がいいかな。と思ってはいたけれどメロも歌詞も何もかもが思いつかない。多分。だって、2人で、スリーズブーケで、、日野下さんと。。。遊園地という場所の曲を歌うのならば、、、。。。そうして昨晩からずっと頭を悩ませている。
『新曲ですか?梢センパイ?』
私が新曲に対して悩んでいることを察したのか、心配そうに私の顔を覗き込む。昨日とは違う、また別の困った顔をしている。実際問題、そうとう悩んではいるが歌詞だけはぼんやりとイメージはできていて、でもこの曲を彼女に歌わせるのか、この今の気持ちを曲にぶつけるのか、葛藤していた。ここでおもむろに彼女が何かを閃いたように顔がにこやかになった。
『あたしと【デート】行きませんか?』
『あたしと、でーと、いきませんか???…んんん?』
多分5,6話位続くと思います。
牛歩ですが、頑張ります。
これは乙宗梢がholiday∞holidayを作成するにあたってのお話。