ゆずゆずゆゆ式   作:ツナマヨ

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千文字くらいで終わらせようと思っていた本屋での話が三倍にまで膨らんだ。なにを言って…(略)

はい、第5話です。
今までで一番サブタイに迷いました。
いいじゃないですか本屋さん。私、本屋さんも好きです。

後は相変わらず会話文が少ないのが難点。
どうでもいい地の文が多いのは今後の改ざん点ですかね。
頑張ります。


本屋さん

 本屋に入った後、俺は唯達と離れた場所にいた。

 と、言っても大した理由があるわけでもなく、唯の欲しい本と俺の欲しい本が別の場所にあるため、唯たちは文庫本のところへ行き、俺は料理のレシピ本がある場所に来ているだけだ。

 

 一人暮らしを始めて数ヶ月経つが、未だにレパートリーは少ない。基本的に自炊をして外食などはなるべく控えているが、どうしても面倒くさくなったりした時は食べに行くし、簡単な物で済ませたりもする。

 それに月に数回はゆずの母親に誘われ、御飯をご馳走になっている。それを遠慮するほど浅い付き合いではないし、産まれたときから世話になっているような人だ、ゆずのように俺のことも息子同然に思っているのだろう。

 だから、度々食事に呼んでくれるし、一人暮らしをし始めた俺を色々と気にかけてくれているのは、とてもありがたい。いずれは何かお返しをしてあげたいとも思っている。

 それに、ゆずの母親の作った料理を食べるたびに思う。

 

 俺もこんな料理を作ってみたい、と。

 

 というわけで、最近は人に聞いたり、レシピ本を見たりしながら料理の練習をしているのだ。

 今見ているのは結構本格的な物で、本が分厚く、値段も高い。難しすぎて今日買ってもあまり意味がないので、眺めているだけだ。もっと料理が上手くなったら作ってみたいと思うが、まだまだ先だろう。

 

 ついこの間のことだ。

 日頃のお返しにと、ゆずの家族にその料理を振る舞ったところ、全員から絶賛された。

 爺さんから教わった料理を褒められて、嬉しかったのもあるがそれ以上に、笑顔で美味しいと言ってもらえたことが何よりも嬉しかった。

 そういうことがあり、最近は料理にハマっている。

 

 それに、今度はゆずだけじゃなく唯と縁にも食べてもらいたい。

 それであの二人にも美味しいと言ってもらえたなら、どれだけ嬉しいか。

 まずは、フライパンにバターを落とし、ケチャップと絡めて弱火で加熱し続ける。こうすることでケチャップの酸味を和らげると共に味に深みを出す。その間に人参、玉ねぎ、ナスを細かく刻み、別のフライパンで火が通るまで炒めた後、牛挽き肉を強火で焼き赤ワインを……。

 

 パンッ!!

 

「ぬはぁい!!?」

 

「「プッ……ふふ…あはははははは!」」

 

 突然、左右の耳の側で鳴り響く乾いた音に心底驚愕する。

 思わず変な声が出てしまうほどに。

 後ろを振り返ると、ゆずと縁がお腹を抱えて笑っていた。どうやら二人に耳元で手を打ち鳴らされたようだ。

 

 いつもなら二人を止めているはずの唯がその場に居ない。

 助けを求めるかのように辺りを見回すと、レジのところで必死に笑いをかみ殺している唯がいる。

 他にも何人か笑いを堪えている人達も見え、ふつふつと怒りが湧いてきた。

 

 とりあえず本を元の場所に戻し、未だに笑い続ける二人の内、ゆずの額にデコピンをお見舞いした。

 

「いっ……たあぁぁい!!」

 

 そこまで強くはやっていないはずなのに、大袈裟なやつだなははは。

 

「っと次は縁だな」

 

 ゆずの痛がる姿を見て、ある程度溜飲を下げたがまだ一人残っている。

 指をデコピンの形にし次のターゲットの方へ向ける。

 そこには目をギュッと閉じ、プルプル細かく震えながら額をこちらに差し出す縁がいた。

 

 ……な、なんか非常にやりづらいな。

 震えている縁は小動物のようで、守ってやりたくなるような……いや、守らなくてはならない使命感に駆られてしまう姿だ。

 そんな縁に対して痛い思いをさせられるだろうか?いや、出来ない。

 ま、まあ溜飲はゆずで下げたし、ちょっとしたイタズラにそこまで怒ることもないだろう。

 けど、何もしないのはあれなので、ちょっと弱めのデコピンにしておこう。

 

 様々な葛藤の末に放たれたデコピンは、ぺちっという軽い音を立て縁の額を少しだけ赤くした。

 ゆずのときはべぢんっ!!だったけど、まああまり変わらないだろう。

 縁は、ぽけっと口を開けてぼーっとしている。

 正しく何をされたのかわからないっといった感じだ。

 

「よし、外に出るか」

 

「ちょっと待って!」

 

 極力周りを見ないようにしながら、店の外に向かって早歩きしようとしたら、ゆずに袖を掴まれた。

 一体なんだと言うんだ?こっちはいち早く外に出たいというのに。

 

「どうしたんだ?」

 

 本当はわかっているけれども、心底おかしそうな顔で聞いてみた。

 十中八九さっきのデコピンのことだろう。

 

「い、いやーなんというか、私だけ扱いが違くない?」

 

「いや、二人ともデコピンしただろ?」

 

「はいっ、音!!音が違いました」

 

「濁点と半濁点だろ?大した違いじゃないって」

 

「縁ちゃん!痛かった!?」

 

「なんかね……ちょっとかゆい」

 

「ほらっ!」

 

「わかったわかった、後でなんか奢るから」

 

 元はと言えばゆず達の所為なのになぁ。

 まあ、長い間一緒にいるから遠慮っていう言葉を忘れてるもんな、俺達。

 ……ゆずにちょっと悪かったかな。

 

「終わったか?」

 

「あっ唯ちゃん、ゆずが酷いんだよー」

 

「お前も悪い」

 

「ぐふっ」

 

 唯が来てゆずが絡んでばっさり切られて片膝をつく。

 この流れるような一連の動作が、日常的に行われている俺達四人組は、やっぱり少しおかしいのだろう。

 少なくとも周りから注目を集めるくらいには。

 

「ほら行くぞ?」

 

 唯が未だに片膝をついているゆずの肩を叩き、四人揃って歩き出す。

 

「唯ちゃん文庫は買わないでいいの?」

 

「いいのいいの、また今度。お金無いし」

 

 ピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッ

 

「ふぅぃっ!?」

 

 店の入り口に置いてある防犯用の機械から音が鳴った。

 ちょうど俺とゆずが外に出ようとしたところだったので、お互いに顔を見合わし、ゆずと二人でそそくさと店の中に戻る。

 俺は何も盗ってないし、ゆずもそんなことをするはずがない。

 きっと何かの誤作動だろう。

 そう思い、もう一度二人で店の外に向けて歩き出す。

 そこで俺とゆずの距離が離れた。

 

 なんでゆずはそんなにゆっくり歩いているんだろうか?

 俺は何事もなく店の外に出て、唯達と合流することが出来た。

 やっぱり誤作動か何かだったんだろう。

 そう思っていたのも束の間、ゆずが出ようとした時には先程と同じような機械音が鳴った。

 

「あっ、わあああ……」

 

 見ていて可哀想なほど動揺しているな。

 

「少々お待ちください」

 

「へい」

 

 店の奥から店員の声が聞こえる。

 やっぱり誤作動か何かだろう。両手を上げているゆずは何かを盗んだ様子ではないし、店員も万引きが出たにしては落ち着いた対応だ。

 きっと何回か同じようなことが起きているのだろう。

 

「まあまあ、落ち着け、ゆず」

 

 店の中に戻ってゆずの肩を叩き、いつまでも上げている腕を下ろしてやった。

 奥からやってきた店員も、固く強張った表情ではなく自然な笑顔、もとい営業スマイルを浮かべており、さっきの俺の考えにも確信を持てる。

 

「お巡りさん、こいつです」

 

「本屋さんです」

 

 少しふざけてみたら、ゆずが口を挟む隙がないほどの即答で返された。

 その和やかなやりとりに、ようやくゆずも肩の力が抜けたようだ。

 

「やっぱり誤作動ですか?」

 

「そればっかりは確認してみないとわからないですねー」

 

 まあ、それはそうか。

 本屋さんは改めてゆずに向き直る。

 

「とりあえず中にどうぞ」

 

「鞄にレンタルの物とか、長いコードのある物なんかが入ってませんか?」

 

「はい、あります」

 

 レンタル……ああ、そういう可能性もあるのか。

 ゴソゴソと鞄を漁っていたゆずの手には、オレンジ色の音楽プレイヤーが握られていた。

 

「ああ、コードに巻かれている状態だと…たまにセンサーが勘違いしちゃうことがあるんです」

 

「はえぇ〜」

 

 感嘆のため息を吐いたゆずは、巻かれているコードを解いた後、ゆっくりと店の外に歩いてくる。

 

「本当だぁ解いたら鳴らなくなった」

 

 店の外では唯と縁がほっとした様子を見せた。

 

「お姉さん化学者です「本屋さんです」か?」

 

 先程よりも速くなっている、この人面白いな。

 

「はービックリしたー」

 

「こんな体験初めてだな」

 

「それとお客様ー、店内では静かにしててくださいね」

 

 あれだけ騒げば注意されるのは当然か。

 ただ、笑顔のまま言われたのがちょっと怖い。

 

「はーい」

 

「すみません」

 

 俺もゆずも少し沈んだ声だ。

 自業自得なんだが、何ていうか上げて落とされた気分だなぁ。




今日の柱
野々原ゆずこ・ノノハラユズコ
「お〜!やらか〜い!」

日向縁・ヒナタユカリ
「や〜らかいね〜!」

櫟井唯・イチイユイ
「や、やめろアホ!!」

瀬川柚彦・セガワユズヒコ
「あの仲には入れないな、うん」
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