乙女ゲーのヒロインに転生したけど、悪役令嬢のステータスがALL999,999,999,999だったので無条件降伏した件 作:華洛
【三年生卒業試験 PART:1】
王立学園の卒業試験は、少し変わっている。
一学期末、二学期末、三学期中。
三年生には一年のあいだに計三回、卒業試験を受ける機会が与えられ、そのうち一回でも合格すれば卒業資格を得ることができるのだ。
しかも試験内容は毎年異なる。
そのため三年生のあいだでは、
簡単な試験の年を「当たり年」
難しい試験の年を「外れ年」
と呼ぶらしい。
そして噂によれば、今年の卒業試験は「当たり年」だという。
例年になく簡単。
三年生のあいだにも、どこか気の緩みのようなものが漂っていた。
羨ましい。
卒業試験が簡単なんて、いいことしかない。
苦労せずに王立学園卒業という肩書きを得られて、将来の就職にも有利。
できることなら、私が卒業する時も同じ「当たり年」であってほしいくらいだ。
そう。
私は、そう思っていた。
試験内容が発表される、その瞬間までは。
**********
三年生卒業試験内容
〇スカーレット・アルタナティブ侯爵令嬢を攻略せよ
ルール1:スカーレット侯爵令嬢を椅子から立ち上がらせたら合格
ルール2:または椅子の周囲に白線の円が描かれており、そこからスカーレット侯爵令嬢を外に出せば合格
ルール3:試験中は、死者さえ出さなければあらゆる手段を許可する
*************
いやいやいやいや。
「当たり年」どころか、特大の「外れ年」では?
え、何これ。
王立学園の教師陣、今年の三年生を全員まとめて留年させるつもりなの?
どう考えても卒業させる気がない。
せめて人類相手にしてください。
試験官に災害を置くのは反則でしょう。
「私は三年生主席に、私へ何かしらのデバフをかけなくていいのかと確認したのだけれど」
隣でスカーレット様が、いつもの調子で紅茶を飲みながら言った。
「この条件なら問題ないと、言い切られたわ」
「……三年生、慢心しすぎですね」
勇気と無謀は似ているようで違う。
今の話を聞くかぎり、三年生が持っているのは前者ではなく後者である。
「ちなみに、貴女ならどうするの?」
「え?」
「もし貴女が、私と同じ条件で試験をするとしたら。どう攻略する?」
「…………過程込みでいいんですよね?」
「ええ」
私は真剣に考えた。
この手の問題は、甘く見た時点で終わる。
相手はスカーレット様なのだ。
生半可な対策では話にならない。
「まず両目は目隠ししてもらいます」
「ふむ」
「口には猿轡を噛ませます」
「なるほど」
「全身をオリハルコンの鎖でぐるぐる巻きにして」
「続けて」
「ドラム缶に詰め込みます」
「ええ」
「さらにコンクリートで固めて、円の中心に設置します」
「それで?」
「あと、ステータスはALLマイナス999,999,999,999でお願いします」
ここまでやれば、さすがのスカーレット様でも――
「――まさか、その程度で私を攻略できると思っているの?」
ありませんね。
脳内でシミュレーションした結果、普通に突破されました。
何なら途中で「少し窮屈ね」とか言いながら出てくる姿まで見えた。
怖い。
三年生は、両目も口も両手両足も自由な状態のスカーレット様を相手にするつもりなのだ。
恐れ知らずにもほどがある。
「帝国への留学は二学期からだから、一学期の試験で少しは現実を知って、向こうから精進することを願っているわ」
スカーレット様は優雅にティーカップを置いた。
その声音は穏やかだったけれど、内容は完全に処刑宣告だった。
「……一学期末の試験は勝った気がいるんですね……」
「負ける要素がないもの。三年生が勝っているのは数だけね。戦いは数だというけれど、あれは間違いよ」
スカーレット様は当然のように続ける。
「たとえば、どれだけ人数が多くても、そこへ核弾頭を落とされたら終わりでしょう? つまり戦いは数ではなく、相手を蹂躙できる力がある方が勝つのよ」
ものすごく納得したくない例えだったけれど、理屈としては納得してしまった。
三年生はⅠ組からⅦ組まである。
一クラス二十人から三十人として、全部合わせればざっと二百人前後。
でも、その二百人でスカーレット様をどうにかできるかと考えると――
……うん。無理だ。
不可能である。
蟻が集団で竜に挑むようなものだ。
数だけはいる。
でもだから何だ、で終わる。
しかもスカーレット様は、手を抜く気配がまったくない。
どうやら一学期末は、本気で三年生を蹂躙するつもりらしい。
ひどい。
いや、試験内容を決めたのは教師陣と三年生側なのだから、自業自得ではあるのだけれど。
それでも、もう少しこう、教育的配慮というものはなかったのだろうか。
とりあえず私は、三年生卒業試験の勝敗予想でスカーレット様の圧勝に全財産を賭けた。
留学に向けた諸費用は、これでどうにかなりそうである。
ありがとう三年生。
先輩方の慢心は、きっと無駄にはしない。
【三年生卒業試験 PART:2】
今日は三年生の一学期末卒業試験が行われる日だ。
場所は王都郊外にある軍事演習場。
普段は騎士団や学生たちが模擬戦訓練に使う、かなり広い施設らしい。
障害物もそれなりに設置されていて、集団戦の練習にも向いているとか。
もっとも、今日に限っては、そんな設備の説明に意味があるのか微妙だけど。
私は今、王立学園の講堂、その一番後ろの席に座っていた。
講堂は広い。
それなりに人数が入る造りになっているのに、今日の客入りはなんとも寂しい。
ぱっと見で分かるくらい空席が多かった。
まあ、それも当然だろう。
今年の卒業試験は「当たり年」。
そんな噂が流れていたのだから。
簡単な試験なら、見世物としての面白さは薄い。
苦戦も波乱もなく、淡々と終わるだけだと思われていたのだろう。
わざわざ観戦に来るほどの物好きは、そう多くない。
……実際には、とんでもない大外れ年なのだけど。
関係者以外は、試験の公正を保つために演習場へ近づけない。
その代わり、演習場の各地にはいくつものガーゴイルが配置されている。
このガーゴイルたちの瞳は魔道具となっていて、視界に入った映像を遠くの別地点へ投影できるらしい。
そのため、講堂にいながら試験の様子をリアルタイムで観戦することが可能になっていた。
正面には、十を超える映像が宙に浮かんでいる。
だいたい十二前後。
いくつかの画面は数分おきに切り替わっていて、三年生たちの動きや演習場の別地点を順番に映していた。
ただし、一画面だけは固定。
スカーレット様が座っている地点だけは、切り替わらない。
当然だ。
今回の試験の合格条件は、スカーレット様を椅子から立たせるか、白線の外へ出すこと。
その肝心の瞬間を見逃したら、試験そのものが成立しなくなってしまう。
……でも。
スカーレット様って、時間操作とか因果律操作とか平気でやるんですよね。
今さらそこだけ厳密に見張ったところで、ルールとして成立しているのか怪しいと思う。
だから私は、スカーレット様の勝利を疑っていない。
全然、まったく、微塵も疑っていない。
そんなわけで私は、スカーレット様の勝利に貯金を全額賭けている。
三年生有利に賭ける人間が圧倒的多数だったおかげで、倍率はかなりおいしいことになっていた。
スカーレット様側に賭けているのは、体感ではほぼ私ひとり。
みんな夢を見すぎである。
ちなみにプラチナ様は、「小銭を稼ぐ趣味はないの」と優雅に不参加を表明していた。
公爵令嬢の言う“小銭”は、私からすると普通に人生を支える金額なのですが。
とはいえ、不安がないわけではない。
唯一にして最大の不安要素。
それは、スカーレット様が私を破産させるためだけに、わざと負ける可能性である。
いや、さすがにない。
ないと思いたい。
でも「面白そうだから」という理由だけでやりかねないのが、あの人の怖いところだ。
私は祈るような気持ちで、固定された映像を見つめた。
映像の中心。
そこには白線で円が描かれ、その中央に一脚の椅子が置かれている。
そして当然のように、その椅子へ腰かけているのはスカーレット様だ。
実に自然体だった。
まるで昼休みのサロンにでもいるかのような落ち着きぶりである。
軍事演習場のど真ん中に座っているのに、違和感よりも「似合うなあ」が先に来るのが恐ろしい。
対する三年生たちは、画面ごしにも分かるくらい緊張していた。
いや、緊張というより、まだどこかで「なんとかなる」と思っている顔だろうか。
集団で囲めば。
作戦通り動けば。
試験なんだから、さすがに一方的にはならないだろう――そんな希望が、表情の端々に残っている。
甘い。
その希望、たぶん開始一分以内に砕けると思う。
やがて、試験開始のベルが鳴り響いた。
講堂の空気が、わずかに張り詰める。
映像の中では、スカーレット様がすっと片手を動かし――なぜかマイクを取り出した。
なんで持ってるんですか、それ。
しかもよく見ると、かなり音質が良さそうである。
無駄に準備がいい。
『先輩方。初めまして』
演習場全体へ、よく通る声が響き渡った。
『今回、卒業試験を任されたスカーレット・アルタナティブです。――デバフなしがご希望とのことでしたので、手を抜かずにやらせてもらいます』
うん。
知ってた。
知ってたけど、改めて宣言されると怖い。
しかも本人は丁寧なのだ。
丁寧だからこそ怖い。
映像に映った三年生たちは、「何を言われているんだ?」みたいな顔をしている。
中には苦笑している者もいた。
まだこの段階では、脅しやパフォーマンスの一種だと思っているのかもしれない。
認識が甘い。
あの人は、言ったことは本当にやる。
『まず、戦いにおいては、地の利を確保するよう動くのでしょうけれど』
スカーレット様は椅子に座ったまま、穏やかに続ける。
『覚えておいてください。強者は、地の利さえ己に有利な形へ変幻自在に塗り替えるものです』
その瞬間、私は確信した。
あ、これ開幕で全部ひっくり返すやつだ。
『山河社稷図』
詠唱と同時に、画面が大きく揺れた。
講堂内にもどよめきが走る。
映像の中で、大地にいくつもの亀裂が広がった。
土が隆起し、沈下し、平坦だった地形が瞬く間に崩れていく。
さらに、今まで存在しなかった水流が生まれた。
まるで地面の下に最初から川が眠っていたかのように、水が道を作って走り出す。
草木が芽吹き、岩場がせり上がり、視界を遮る森のような一角まで形成されていく。
さっきまでの軍事演習場は、数秒で消えた。
そこに残ったのは、見知らぬ大地だった。
……ひどい。
三年生たちは、絶対に事前に演習場の地図で作戦会議をしていたはずだ。
どこから攻めるか、どこで挟むか、どうやって立たせるか。
真面目な人ほど、徹夜で案を練ったかもしれない。
それが全部、開幕数秒で無意味になった。
努力を土台ごと吹き飛ばすの、教育に悪すぎませんかね?
映像の中で、スカーレット様の周囲は城塞の一部みたいな地形へと変わっていた。
高低差のある足場、視界を切る障害物、侵入経路を絞る防壁。
ただ椅子に座っているだけなのに、完全にラスボスの居城である。
『私のところへただ来るだけでは退屈でしょうから、一つゲームを用意しました』
いりません。
とても嫌な予感しかしません。
スカーレット様の周囲の地面に、七つの魔法陣が浮かび上がった。
色も形も少しずつ違う、手の込んだ術式だ。
その中心から現れたのは、木製の棺。
一つ。
二つ。
三つ。
数えるまでもなく、全部で七つ。
しかも蓋は閉じられておらず、中にはそれぞれ人形が収められていた。
どれもスカーレット様を模した顔立ちで、服装や得物だけが違う。
統一感があるのに、方向性が最悪だった。
『私はオールラウンドですけれど、特化型と遊ぶのも悪くないと思って、自作の人形を作りました』
自作。
そこ自作なんだ。
そんな器用さ、別の方向へ活かしてほしい。
『“セイバー”“アーチャー”“ランサー”“ライダー”“キャスター”“アサシン”“バーサーカー”』
ひとつずつ名前が告げられるたびに、講堂の空気が重くなっていく。
嫌だ。
分類名だけで分かる。
絶対にろくでもない。
『三年生七クラスのそれぞれ近くに、封印石を配置しています。それを起動できれば、人形は封印されます』
おお。
ちゃんと攻略手段はあるらしい。
良かった。
まだ試験としての体裁は残っている――
『ただし』
ですよね。
『起動できなかった場合、三十分後にこの人形たちが、先輩方を襲うために出撃します』
講堂が静まり返った。
今この瞬間、観客席にいる全員の心が一つになった気がする。
それ、試験じゃなくて災害の追加発生条件では?
映像の中で、三年生たちも完全に顔色を変えていた。
先ほどまで残っていた「まあ何とかなるかもしれない」という甘さが、一気に吹き飛んでいる。
でも、遅い。
スカーレット様はにこりと笑った。
あれは完全に楽しんでいる笑顔だった。
『先輩方が私のところへたどり着けることを、後輩として応援しています』
締めの挨拶だけは、妙に礼儀正しい。
だからこそ怖い。
私は思った。
三年生。
もういっそ、プライドを投げ捨てて、教師に試験内容の変更を嘆願した方がよくないですか?
【三年生卒業試験 PART:3】
三年生たちは、頑張った。
本当に頑張ったと思う。
少なくとも、何もしないまま蹂躙されたわけではない。
知恵を絞り、連携し、地形の変化に対応しながら、それでもどうにかスカーレット様の元へたどり着こうともがいていた。
ただ――相手が悪すぎた。
試験開始からしばらくして、ひとりの三年生が一気に仕掛けた。
全身を膨張させ、十メートルを超える巨体へと変貌する。
筋肉が膨れ上がり、踏みしめるだけで地面が割れた。
あれだけでも十分脅威だというのに、その三年生はさらに地面を抉り取り、圧縮し、持ち上げた。
投げ放たれたのは、とんでもない質量の土塊だった。
大きい。
比喩じゃなく、大きい。
東京ドームをそのまま潰せそうな規模の、巨大な塊。
それが轟音を上げながら、スカーレット様めがけて落ちていく。
正直、この瞬間が一番危なかった。
なにしろ映像の中で、スカーレット様が思わず空中へ飛び出しかけたのだ。
危ない!
そっちの意味で危ない!
ルールでは、椅子から立ち上がらせるか、白線の外へ出せば合格。
つまりあのまま勢いで飛び出していたら、スカーレット様の敗北である。
……いや、敗北って何だろう。
この場合、試験合格と引き換えに何か大事なものを失う気がする。
でも結局、スカーレット様は立ち上がらなかった。
ぎりぎりで踏みとどまり、椅子に座ったまま対処へ切り替える。
次の瞬間、紅い魔力が噴き上がった。
まるで間欠泉のように、どろりと濃密な魔力が大地から噴き出す。
それは空中で急速に収束し、人の形を成していった。
巨大化した三年生と同等のサイズ。
紅く揺らめく、戦乙女めいた人型。
その姿は、圧倒的だった。
ただ大きいだけではない。
密度が違う。
質量が違う。
存在感そのものが、さっきの巨大化した三年生を上から塗り潰すような圧を持っている。
紅の巨人は、飛来する土塊へ拳を叩き込んだ。
轟音。
巨大な土塊は、正面から殴り砕かれて四散した。
ばらばらに砕けた破片が演習場へ雨のように降り注ぎ、土煙が一気に広がる。
けれど、三年生もそこで終わらなかった。
巨大化したまま、その三年生は土煙に紛れ、紅の人型へ肉薄したのだ。
視界を奪い、その一瞬で懐へ飛び込む判断は悪くない。
むしろこの試験中ではかなり良かった方だと思う。
そして、そのまま全力で殴りかかる。
いけるかもしれない、と一瞬思った。
でも駄目だった。
『甘いですね』
映像の中で、スカーレット様が楽しそうに口元を吊り上げた。
うわ。
ちょっとドヤ顔してる。
『たしかに巨大化して、ステータスも大幅に上昇しているのでしょうけれど』
声が弾んでいる。
これ、ちょっと嬉しい時のスカーレット様だ。
『上昇したステータスが、私のところの駄メイド程度では、この私のオリジナルマジック“非想非非想天”にダメージを与えることすらできませんよ』
紅の人型が、びくともしない。
三年生の拳はたしかに直撃していた。
けれど、そこにあったのは手応えではなく、絶望だったのだろう。
映像越しでも分かる。
殴った側が、先に顔色を変えた。
しかもスカーレット様、すごく楽しそうだ。
普段ぼっちであるスカーレット様には、自作のオリジナルマジックを披露する機会がほとんどない。
披露する前に相手がだいたいワンパンで沈むからだ。
今は珍しく、説明する余裕がある。
つまり、ノリノリである。
『先ほど使った“山河社稷図”には、こういう使い方もあるんですよ』
その言葉と同時に、地面が脈打つようにうねった。
次の瞬間、巨大な樹木が一気に生え上がる。
ただの木ではない。
幹は太く、枝は蛇のようにしなり、巨大化した三年生の全身へ瞬く間に絡みついていく。
足を、胴を、腕を、首元を。
逃げる隙などない。
その樹木は淡く輝いていた。
嫌な光だった。
見ているだけで「何かを吸われている」と分かる光。
案の定、巨大化した三年生の身体から魔力が奪われていく。
樹木はそれを養分にするように葉を茂らせ、花を咲かせていく。
綺麗だけれど、最悪だ。
魔力を吸い尽くされた三年生は、みるみる縮んで元の大きさへ戻っていく。
他の三年生たちは、慌てて救出へ向かった。
連携自体は悪くない。
仲間を見捨てない判断も、学園の試験としてはむしろ正しい。
でも。
その“正しさ”が通じる相手なら、ここまで面倒にはなっていない。
そこから先は、圧倒的な蹂躙だった。
もう本当に、それ以外に言いようがない。
スカーレット様の“山河社稷図”は、三十分ごとに地形そのものを変えていった。
ある時は、吹雪の叩きつける高山地帯。
酸素は薄く、足場は悪く、視界は白く閉ざされる。
少し判断を誤れば、そのまま滑落して終わりだ。
ある時は、灼熱の太陽が容赦なく照りつける砂漠。
熱で体力を削られ、砂に足を取られ、水分も奪われる。
立っているだけで消耗する地獄である。
ある時は、植物が異常なまでに繁茂した密林。
蔦は絡み、木々は視界を遮り、どこに誰が潜んでいるのかも分からない。
しかもたぶん、植物そのものにも何か嫌な効果がついている。
三年生たちは、地形へ対応するだけで手いっぱいになっていった。
攻略どころではない。
まず生き残ること。
封印石へたどり着くこと。
仲間と合流すること。
やるべきことが多すぎる。
それでも彼らは諦めなかった。
結果として封印できたのは、“バーサーカー”ただ一体だけ。
それでも一体封印できたのだから、本当なら大健闘なのだと思う。
ただ相手が悪いだけで。
結局、“セイバー”“アーチャー”“ランサー”“ライダー”“キャスター”“アサシン”の六体が出撃した。
しかも試験用にかなり抑えられているにもかかわらず、基本ステータスは五百万超え。
そこから各自の特化分野が一千万を超えていた。
いや、試験用って何。
それを“抑えている”って呼ぶんですか?
講堂内もさすがにざわついていた。
もう観戦というより災害記録映像を見せられている気分である。
二時間後。
最後まで粘っていた三年生のひとりが、ついに瀕死判定を受けた。
その瞬間、試験会場から強制転移。
これで、三年生側は全滅。
そして同時に、スカーレット様の勝利が確定した。
講堂内には何とも言えない空気が流れていた。
三年生に知り合いがいる者たちは、たぶん複雑だろう。
教師陣も、もしかすると少しは反省しているかもしれない。
していてほしい。
私はというと。
大変な臨時収入を得ることができた。
ありがとう、三年生。
先輩方の勇気ある無謀は、私の留学資金になってくれました。