“V.Ⅰ(ヴェスパー・ワン)”、ワートリ世界に転生する。 作:サクラン
それではお楽しみ下さい。
「─今思うと、色々と濃い一年半だったな」
ボーダーに入隊してから今に至るまで、その間の記憶をなんとなく思い出していたが、退屈しない毎日だった。
最初の見立て通り、手強い相手も多くやり甲斐もある。目の前の太刀川を初めとして今の風上でも未だに勝ち越せてない相手は多くいる。
だが、最近少し気になってることがある。それは─
「お前、前に比べてブースに顔出す頻度減ったよな。やっぱり
「……別に、今は少し気分が乗らないだけだ」
─そう、以前に比べて太刀川が個人戦のブースに来る頻度が減ってしまったことだ。
しかしその理由はおおよそ想像がつく。それは先程風上が言ったように太刀川のライバルであった迅が“S級隊員”になってしまったのだ。
“S級隊員”というのは既存の隊員とはまた違った分類に属する─所謂“例外”としての扱いを受ける。その条件は─“
“ブラックトリガー”。その名の通り通常のトリガーとは異なる名称を付けられるこのトリガーは─
生命と共にその人物の持つトリオン全てを注ぎ込まれて作られるブラックトリガーの出力は通常のトリガーとは比較にならず、効果によるものの真面目に戦略兵器と呼べる性能を誇る。故に通常のランク戦に持ち込むことはできず、レギュレーションの外に属する立ち位置となり、チームを作ることもできない。
そして誰でも起動できる代物ではなく、適合した者でなければブラックトリガーを起動することはできない。何故トリガーが使用者を選ぶのか。元になった人間の意志のようなものが反映された結果なのかもしれないが、その全容は文字通りブラックボックスである為真相は定かではない。
そして今迅が持つブラックトリガー、“風刃”は珍しく適合者の多いトリガーだった。今まではそもそも隊員の数が少なかった為、本部で保管していたが、隊員の数も増加し、今では起動できる隊員が20人以上もいた為、平等に決するべく適合者全員で争奪戦を行った。
結果として、争奪戦は迅の圧勝。次点で有力候補だった風間も他の隊員とかち合った所を迅に急襲され落とされてしまった。
その際に太刀川がいれば互いの意識に決着を着けられたのかもしれないが…太刀川は“風刃”に選ばれなかった為、観戦するしかなかった。
それ以降、太刀川は個人戦のブースに顔を出すことは少なくなった。たまにふらりと現れては圧倒的な実力で蹂躙していくのだが、その動きを見ていても何処か物足りなさそうな、それでいて退屈そうな表情をしていた。
風上もその事実に思う所がないわけじゃないが、その腑抜けた太刀川相手でも勝ち越せていない上にこれは太刀川の意識の問題である為どうこう言う権利はないと思っている。
“
「…そろそろ、チームを組もうと思ってる」
「ん、なんだ。気晴らしか?」
「東隊がA級1位になったからな。あのメンツ相手ってのもそうだが…多分
太刀川の発言に風上も少し気を引かれる。
現ボーダーでは隊員が増えたことで部隊対抗のチームランク戦が始まり、激戦を勝ち抜いてつい最近その頂点に立った部隊が現れたのだ。
それこそがA級1位、東隊。
狙撃手というポジションの開祖である東を隊長に据えて、その部下である隊員達も相当な曲者である。
太刀川や風上と同時期に入隊し、近界民の憎悪を糧に愚直に腕を磨き名を上げた実力派
半年前に入隊し、ボーダー随一のトリオン量で個人ランクを駆け上がった数少ない射手、
二宮の同期であり、実力もそうだがその美貌とあまりにマイペース過ぎる振る舞いに色々な意味で話題になった二宮と同じ射手、
そして東から戦術の薫陶を受け、その類稀なオペレート能力でチームをサポートするオペレーター、
この5名こそ、現ボーダー内で頂点に君臨しているトップチームのメンバーである。
各々の実力も然ることながら、何より人格面で癖のあり過ぎるこのメンバーをチームとしてまとめているのが何より凄まじい。
三輪は比較的大人しいが近界民が絡むと途端にバーサーカーになる上、まだ隊員の中では年少である為精神面でも粗が見られる。
二宮は東から戦術の薫陶を受け傲慢さは鳴りを潜めたが、ナチュラルに厨二というか天然なのか、尊大な俺様態度を全く崩さない。しかもそれを悪意的に行っているのではなく本人にとっての素がそれなので矯正も期待できないという有様だ。
加古は二宮とは別ベクトルでマイペースであり、コミュニケーション能力は相応にあるものの好奇心や探究心が強く、一度我道を歩き始めると何処に向かっているのかも分からないまま突き進んで行く。他者の意見に耳を傾けることもできるが「それはそれとして」と言わんばかりに道を進むこと自体は止めない生粋のマイペースさである。
月見は比較的話の分かる隊員だが、なまじ隊長以外の癖が凄まじい為、一歩間違えればチームとして立ち行かなくなるどころか瓦解してもおかしくない。
そんな中で各隊員を制御し、適切な采配でA級1位まで上り詰めた東の実力は並大抵のものではない。前々から食えない相手とは思っていたが、まさかここまでの切れ者であるとは風上も思っていなかった。
迅がいなくなったことによって生まれた虚無感を、チーム戦なら埋められるかもしれない。
太刀川が考えているのはそういうことだろう。
実際迅がS級隊員になった今、1対1で太刀川相手に勝ち越せる隊員はまずいない。強いて言うなら、圧倒的なトリオン量とそれによって生み出せる火力で押し潰せる可能性がある二宮ぐらいだろうか。それも二宮のトリオン量と射手というポジションの利点である火力と射程の有利があってこそであり、太刀川の土俵である白兵戦で勝ることのできる隊員はいない。それは風上や三輪のような万能手でも同じことだ。
「まあ確かにそうだな。あのメンツとやり合うのは面白そうだが…お前の隊のメンバーのアテはあるのか?」
「この間入隊した隊員の中で見所のありそうな奴は何人か見つけた。そいつらがBに上がって来たら声を掛けるつもりだ」
「へぇ…お前から見て『見所がある』か…」
太刀川の意外な返事を聞いて、風上は目を細める。
いかに太刀川が強くとも、現東隊のメンバーは皆腕利き揃いだ。まさか自分一人で全員倒せるなどとは思っていないだろうし、風上としてもやり合いたい気持ちはあるが流石に全員を同時に相手するのは死ねる。
『最悪自分が暴れれば勝てる』と思っているのだとしても、十全に暴れる為の盤面作りができなければ話にならない。東の指揮は詰め将棋のように相手を追い詰める、割とスタンダード寄りの采配だが、場合によっては心理的誘導や揺さぶりも平気で行ってくる。単なる力押しではいなされて終わりだろう。
だが太刀川もそれは承知の上のハズだ。
それを念頭に置いた上で、あのメンツ相手に勝てる可能性、見込みがある隊員というのは風上としても十分興味のある相手だ。もちろん戦う相手としてだが。
「まあまだやる気があるようなら何よりだ。暇になったら言えよ。いつでも相手してやる」
「ん?行くのか?」
風上は席を立ち、太刀川は余った餅に醤油をかけて頬張る。とても個人総合1位とは思えない食べ方をしている太刀川に、風上は振り返らず言葉を掛ける。
「お前の迅サンに対するアレコレに口出しする気はないし、知るつもりもない。だが─」
一旦そこで言葉を区切り、振り返って不敵な笑みを浮かべ─
「いつまでもやられっぱなしでいてやる程大人しくないぞ、俺は」
「! ─そうか」
─太刀川に遠回しにいずれ勝ちに行くことを宣言する。
風上個人としては肩書きや順位などどうでも良いが、それでも負けっぱなしでいつまでもヘラヘラしていられる程対抗心は枯れていない。
今はまだ後塵を拝しているが、それでもいずれ越えてやるつもりである。“
「色々考えたら滾ってきたな。ブース行くか」
そしてそんなことを考えていれば当然闘争心も溢れてくる。
最近はトリガーの種類が増えて来た影響なのか、正隊員の中でも色々と戦い方に各々の色が出始めている。
特に迅の開発したスコーピオンによって風間が実力を向上させている。スピードタイプの攻撃手かつ一つの手札から無数の勝ち筋を考えられるスコーピオンの自由さがピッタリと合致したのだろう。弧月を使っていた時は風上が勝ち越していたが、最近は負け越すことの方が増えて来ている。“
全ての武器をそれなり以上に扱えているという自負はあるが、それでも“
「よう、風上ィ」
「!」
そんなことを、考えていたからだろうか。
背後から圧のある声を掛けられ、風上は背後へ振り返る。そこにはツーブロックにエッジが特徴の眼鏡をかけた鋭い視線が風上に向けられていた。
鋭い視線と圧にたじろぐどころか風上は笑って受け流し、その人物に親しげに話し掛ける。
「弓場サン。お疲れっす。個人戦すか?」
「…ああ、ちィと試したいことがあってなァ」
若干巻き舌の─普通に聞くだけだと柄の悪い話し方だが、風上は特に気にしている様子もない。
それは風上が彼の─弓場の人柄を知っているからこそ。そしてバトルジャンキーな風上が親しいということは、弓場もまた、それに近しい性質を持っているということ。
発足したばかりで人数がまだ充足していないこと、銃の形によって点取りに向き不向きが異なると言った差異もあるが、『銃手の中で最も強い隊員は?』と聞かれれば、おそらく全員が弓場の名を挙げるだろう。
彼は積極的にランク戦を行うタイプの隊員であり、その技術はポジションの違う攻撃手の間でも話題になる程であるし、風上もその技量にはリスペクトしており、参考にしている点も多くある。
「色々試してるみたいっすね。よければ相手しますよ」
「…そうだなァ。んじゃあいつも通り10本行けるか?」
「いっすよ。ちょうどウズウズしてたとこなんで」
トントン拍子で話をまとめると、二人はブースに向かって行った。
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『MAP、市街地B』
仮想市街地に風上と弓場の身体が転送される。
相変わらず鋭い目付きの弓場は一つ大きく呼吸を置く。そして息を吸うと─
「行くぞォ風上ァ!!!」
「相変わらずっすね。んまあ─退屈はさせないっすよ」
─虎尾にも負けない声量の檄を飛ばし、風上は苦笑しながら気を引き締める。
そして風上の手が弧月に、弓場の手がホルスターに収められた拳銃に掛けられる。
一瞬の緊張感、刹那の静寂が周囲を満たすと─
『10本勝負、開始』
「「!!!」」
─電子音声が開始のゴングを鳴らすと同時に、弓場が拳銃を引き抜いて風上に向かって引き金を引く。
コンマ1秒にも満たないが、放たれた弾丸は6発。風上は弧月を引き抜きながら横に跳んで弾丸を躱し、“旋空”を起動して弓場の足をう。
しかし弓場も跳躍して“旋空”を躱すと、更に引き金を引いて弾丸を放つ。その軌道は最初の弾丸とは違い不規則な曲線を描きながら囲うように風上に向かって行く。
「━━━━━」
風上は自身に向かって来る弾丸の数と軌道を確認すると拳銃を引き抜いて向かって来る弾丸を撃ち落とした。
「“
撃ち漏らした弾丸は身のこなしで躱しつつ、意趣返しと言わんばかりに“
弓場のそれはあくまで動きを制限する為の牽制程度だったのに対して、風上の“
「あァ、そりゃ分かってるさ」
しかし弓場は弾丸による包囲が完成する前に先程風上がやったように拳銃で相殺し、素早く離脱する。
「“旋空弧月”」
「!」
だが風上も“
弓場が回避した先に
これが今の風上の基本戦法である。
“
シンプル故に対処の難しい攻撃であり、このコンボを決められてなお生き残ることができる隊員はそう多くない。
「━━━━━ッ!!」
だが、弓場は数少ない例外側だった。
着地すると同時に地面を蹴り飛ばし、身体を横に倒して“旋空”を躱し、両手の拳銃で自身に向かって来る弾丸を全て撃ち落とした。
弓場は銃手の中ではかなり動ける側であり、その身のこなしは上位の攻撃手にも引けを取らない上、風上のように肉弾戦も涼しい顔でこなす。
そして─
「“
「━━━━━━━━━━ッ!!」
─風上の“
ほぼ同時に放たれた十連射に、風上は回避すると同時にシールドで防ぐ。
風上は─というより太刀川や風間を筆頭とした上位ランカーは、基本的にシールドを使わない。シールドを張るということはその瞬間はシールドを使った側のトリガーでの攻撃が不可能である為、同じ高い攻撃力や手数を持った相手だとそのまま押し切られる可能性があるからだ。故に『攻撃は最大の防御』とばかりに上位ランカー達は
弓場もその例に漏れず、両手に持った拳銃の
だが、弓場の場合は攻撃速度が全隊員の中でも最速と言える領域であり、その早撃ちは生半可な回避を許さない。
銃手トリガーの強みである即応性を最大限活かしており、彼の前で一度シールドを使えばそのまま削り殺されてしまう恐れもある。
しかも拳銃の片方は“
風上も単純な早撃ち─銃手としての練度は弓場に劣る為、シールドを使わされて後手に回るのは可能な限り避けたかった展開だ。
「━━━━━ッ!!」
それを証明するように、弓場は怒涛の勢いで拳銃を連射する。風上のトリオン量は弓場と同値である為、シールドで防ぐのも期待できない。
「“旋空弧月”」
となれば、当然無理矢理にでも攻めて弓場のペースを崩す。
弾丸を回避しながら放たれた拡張斬撃は、弓場の足場を狙ったものだ。
連撃ならばまだしも、単発の“旋空”では弓場を仕留めるには至らない。しかし地面が斬り裂かれたことで弓場の身体は一瞬空中に浮く。
「“
そしてその一瞬が風上は欲しかった。
分割は最低限に、弾速重視。風上の脳内で一瞬で先の光景が浮かび、その仮想の中で弾道を描いて発射する。
「ッ!!」
弓場は即座に両手の拳銃でいくつかの弾丸を撃ち落とすが、全ては落としきれず撃ち漏らしはシールドで防御する。
「“旋空弧月”」
「チッ…!」
弓場がシールドを張ると同時に風上は“旋空”の二連撃と拳銃による早撃ちを仕掛ける。弓場も身体を捻って回避するが、弾丸は躱しきれず何発か被弾してしまう。
「━━━━━」
そして再び“
射手トリガーは放ってしまった後はトリガー枠を占有しない為、放った後の弾幕と合わせて片手で
もちろん簡単なことではない。“
「“旋空弧月”」
銃撃で牽制しつつ、下から斬り上げるように拡張斬撃を放つ。
ブレードを拡張する分重さも相応に掛かる“旋空”を下からの斬り上げに使う、というのは隙も晒しかねない行動だが、風上は“旋空”の起動時間とそれに伴うブレードの拡張率を完全に身体で覚えている為、それぞれの状況に適した攻撃を行うことができる。
“
「!」
向かって来る弾丸を回避した風上だが、躱した直後に弾丸が自分の方へ曲がって来たのを見て目を見開く。
ギリギリの回避を見越した“
こう言った相手の意識を突くことのできる自由度こそが、“
「━━━━━」
そしてそれは、使用者である風上もよく知っている。
風上は地面を蹴ると同時に姿勢を低くする。そうすると曲がった弾丸は風上の頭上を通って壁と地面に着弾した。
“
警戒は緩めず、しかしこの一太刀で決めるつもりで、風上は弧月を振り抜く。
「━━━━━━━━━━ッ!!」
「!!」
なんと弓場は、向かって来るブレードを左手で払い、足を狙った銃撃はシールドで防御した。しかし彼の左手は斬り飛ばされておらず、代わりに一つのブレードが手の甲から
「“スコーピオン”か…!」
そう、それは迅が開発し、身体のどこからでも出し入れが可能な軽量ブレード、“スコーピオン”。
弓場はその『どこからでも出し入れができる』点を活かし、手の甲からブレードを生やして弧月を防御したのだ。
「オラァ!!」
「ごっ…!?」
そして逆の拳を握り締め、拳銃の銃身で思い切り風上を殴り飛ばした。武器を使っていないとは言えトリオン体の膂力で殴り飛ばされれば怯むだけでは済まない。まともに防御もできなかった為地面をバウンドしながら飛んで行った。
吹っ飛んだ風上に向けて弓場は即座に両手の拳銃で追撃するが、風上も吹っ飛びながらトリオンキューブを分割し、弓場に向かって放つ。
「へェ、やるじゃねェか」
「弓場サンも、相変わらず思い切り良いすね」
風上は地面に弧月を突き立てて体勢を立て直し、弾丸の雨を躱す。一拍遅れてシールドも張ったが、いくつかは躱しきれず被弾してしまった。
弓場は片手分の“
(しかし新しいネタはスコーピオンか。弓場サンの格闘にブレードの攻撃力が加わるのはしんどいな。こっちから肉弾戦仕掛けるのも躊躇しちまうし、銃を構えるモーションですらノイズになる)
“旋空”と銃撃で弓場を牽制しつつ、風上は内心で弓場の新しい手について考える。
見たところ接近戦での斬り合いに使って来るわけじゃないらしいが、単純に一旦受けられる可能性があるだけでも弓場の早撃ちの前にはその一瞬が命取りになりかねない。先程のように格闘でもブレードの攻撃力が付属して来ると考えれば接近すら躊躇するし、銃を構えるだけでも早撃ちかそう見せかけてのブレードによる奇襲かの二択を迫られる。風上自身もそういう戦い方をしてるから分かるが、一瞬の判断で勝負が決まる戦いの中で、『迷い』を強いる択があるのは強いのだ。
(とは言え、だ。単純な練度で言えば拳銃の方がずっと上だろうし、弓場サンの予測を外せば逆にスコーピオンって択が迷いになる。取り敢えず色々試してみるか)
そして一通り思考をまとめ、これからの戦い方を決める。
「まだまだ楽しませてくれよ…!!」
「上等だ…!来やがれ風上ィ!!」
互いに啖呵を切り、武器による音が仮想市街地を賑やかせた。
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「いやー楽しかった!やっぱ弓場サンとの戦いは他の銃手じゃ味わえない楽しみがあるな!」
「そうか。まァ俺としてもお前との戦いは学べることは多いからなァ。お互い様だ」
10本勝負を終えた二人は、自販機のある休憩スペースで飲み物を飲みつつ寛いでいた。ちなみに飲んでいる飲み物は弓場の奢りである。
威圧感の強い見た目と話し方だが、その実面倒見が良く筋を重視しており、学校でも優等生として通っている。学生の中ではまとめ役として頼られることも多い。
「その割には不完全燃焼っぽいすね。スコーピオン気に入りませんでした?」
しかし弓場がイマイチ納得して無さそうな態度なのを風上は見逃さなかった。
先程の勝負の結果は“6対4”。前半はスコーピオンを使った立ち回りで弓場がリードしていたのだが、後半からは風上がスコーピオンを含めた弓場の間合いを外すように動いて巻き返した形である。
相対している風上も確かに後半は動き辛そうにしているように見えていた。格闘を仕掛けると同時にスコーピオンで攻撃するつもりが上手く形が変えられず与えられた傷が浅かったりと、持て余していたのは事実だが、そこは練習でカバーできそうだとも思っている。
「…手応えがないわけじゃねェ。だが俺の性からは微妙に外れてる。咄嗟にブレードの形を変えるのがどうしても上手く行かねェし、ちゃんとブレードとして扱えるようにならねェと間合いを外されて削り殺されるだけだ」
「ちょうどお前がそうしたようにな」と付け加えて、弓場はため息を吐く。
弓場は身体を動かすセンスはあるし身体能力も高いが、やや不器用というか、柔軟な動きや発想が苦手な節がある。今こうして二丁拳銃で強引に立ち回っているのも、武器を扱う攻撃手の立ち回りは微妙に合わなかったからだ。
『構えて撃つ』だけの単純な動作ならば弓場自身の性格も相まって攻撃手相手でも互角以上に立ち回ることが可能になる。
「何より今は
だが今日風上に負けたように、いつまでも拳銃の早撃ちでは限界が来る。もちろん早々に負ける気はないが、自分がそうしているように周りのライバル達も鍛錬を積んで強くなっている。だから自分もそれに負けない為に、鍛錬以外にも新トリガーなどで新たな手も考慮に入れなければならない。
実際風上は“
何より弾トリガーはシールドの性能が上がるだけでかなり立ち回り辛くなる。今の環境は比較的弾トリガー有利だが、それでも上位ランカーは弾幕を潜り抜けて攻撃を届かせて来る。そんな中シールドの性能が上がればその優位関係は一気にひっくり返る。故に今からそうなっても戦えるよう考えておく必要がある。
「ん〜…とは言えぱっとこれってのが出てこないすね。ブレードトリガーは一通り試したんでしょう?」
「そうだなァ。スコーピオンが一番俺に合ってると思ったんだが…変形機能が想像以上にクセモノだったなァ」
とは言え、弓場はこれまで考えられる限りの組み合わせは全て試して来たし、風上もその度に練習台として付き合って来た。それら以外で弓場に合ったトリガーというのは思いつかなかった。
「ぶっちゃけ手詰まり感が否めないすね。いっそのこと開発室行ってみます?多分誰かしらいるでしょ」
「…そうだなァ。あんまり居座るわけには行かねェがちょいと相談してみるかァ」
弓場は少し気が進まない様子だったが、このモヤモヤした気持ちを放置しておくわけには行かないので、風上と共に開発室に行くことを決める。そして少し談笑した後、二人は開発室へ向かって行った。
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「と、言うわけで来たんだが…」
「……………」
数分後、風上と弓場は開発室にやって来たわけだが、二人は室内の異様な様子を見て冷や汗を流していた。
その内容は─
「タマハコロス…クタバレトリオンキューブ…シネヤスワ…」
「……………」
─何やら物騒な単語をブツブツと呟いている異様な様子の男性と、それを冷や汗をかきながら見守っている日向野だった。
話しかけて良いのかやや悩ましいが、ここで帰るわけにも行かないので取り敢えず声を掛ける。
「日向野、これどういう状況だ?
「あーそれがな…諏訪がこの間
「なるほどな。それでそれを形にする為に
「こっちは笑い事じゃないんだがな…」
風上は成り行きを聞いてケラケラと笑い、日向野はまたため息を吐く。
この異様な様子の線の細い男性はエンジニアではなく、ボーダー内でも有数の凄腕攻撃手である。
「カリョクバカドモガ…ゼッタイホエヅラカカセテヤル…」
「これ俺や弓場サンも憎悪の対象の可能性ある?」
「オマエラハギジュツデタタカッテルカラユルス…」
「あ、許された」
「あくまで火力でゴリ押して来るのがアウトってことか…」
一応こちらの話は聞こえてることを確認しつつ、風上は本題を日向野に切り出す。
「日向野、近接銃手に向いたトリガーとかってないか?」
「…そもそも銃手は中距離から射程を使ってじっくり削るのが基本スタイルだろ。近接銃手ってのは根本から成り立たなくないか?」
「やっぱそういうもんなんだなぁ…どうする弓場サン。いっそのことアイビスかイーグレット持って突貫します?」
日向野からの返答もやはり芳しくないものだった為、最早スナイパートリガーで凸砂をすることを提案するが、弓場は何か引っ掛かるもながあったのか、少し考えるような表情をした後日向野に話し掛けた。
「…日向野サン。さっきの諏訪サンの開発したって言う散弾銃型トリガーについて色々と聞いても良いすか?」
「ん…まあ一通りの仕様は教えられるが…何か考えがあるのか?」
「ええ、ちょいと思い付いた案があるもんで」
「!」
「お」
何か確信を持った様子の弓場に、日向野は僅かに眉を上げ風上も少し口角を上げる。
(さっきと違って迷いがない。何かハマるものを見つけたな。そういう面構えだ)
こういう表情をする者は弓場に限らず皆自信がある為、何かしら自分の中で『勝ち』に繋げられる案を思い付いたのだろう。おそらくここからは自分の手助けは必要ない。
「んじゃ日向野、諏訪サンが作った散弾銃ちょっと使わせてくれよ。どんなもんか見てみたい」
「…ちょっと待て。チップは持って来るから自分で変えろ」
「ああ、了解した」
「風上ィ、おめェ知り合いとは言えもうちょい遠慮ってモンを覚えやがれ」
「コロス…タマハコロス…ゼンインシネ…」
マイペースで新トリガーを試そうとする風上を弓場と日向野が諌め、それに一切構うことなくひたすら弾トリガーに対する殺意を雷蔵は垂れ流し、開発室は賑やかになって行った。
はい、今回はここまで。ジワジワ動かすキャラが増えて来た…
・風上和郎(退屈させてくれるなよ)
個人ランク戦を満喫中。変化弾にも慣れてかなり勝率上がってきたけどやはり太刀川には勝ち越せない。ので東隊も興味はあるけど流石に全員相手は死ねる。弓場ちゃんは個人戦通して仲良しに。けど個人的な関わりはまだ薄いので口調はやや丁寧に(風上内比)。
・太刀川慶(ちょっと退屈)
迅さんがS級になったので萎え落ち中。ここから小南が高1途中までやる気無くしてるらしいし結構やる気無くしてた期間長い?けどそれはそれとして普通に強いのでまだ圧倒的トップ。そろそろチーム戦に殴り込みするか考え中。
・旧東隊
初期ランク戦の覇者に。改めて見てもメンバーが圧倒的過ぎる。どうやってコイツらまとめてたんだ東さん…
・弓場拓磨(ァ!!!!!)
本作品では早めに登場。部隊二世代跨いでるし結構な古株なんじゃないかなと。リボルバー開発前ではあるけどそれでもしっかり動けそうだし銃手の中じゃトップなんじゃないかな。異論は認めます()。なんとなく色々試行錯誤して今のスタイルに至ってそうな気がする。こっちも異論は認めます()。
・寺島雷蔵(弾トリガーは◯ね)
本編で斜め上にスラスターにぶっ飛んで行った動けるデブ(デブじゃない)。何気に技術10なんだけどヤバない?弾トリガー絶対殺すマンになったのはなんとなく諏訪さんにショットガンで煽られたからのような気がする(風間さん←諏訪さんがキレてショットガン開発←雷蔵がそれまでの鬱憤も含めて弾トリガーにキレるみたいな感じ)。この流れも異論は認めます()。
こんなもんかな。そろそろまたACキャラが出て来るかもしれない。ちなみに何となく察してるかもしれませんが私はACシリーズは6しかプレイしたことのないニワカなので6以外のキャラは出せないです()。すみません。
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
ちょいと意見が欲しいです。この作品のバトル描写は…
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ちょうど良い量だし違和感も無い
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量は良いが描写やパワーバランスに違和感
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量は少ないが違和感はない
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量は少ないしパワーバランスもおかしい