「わ……!」
雄英高校。ヒーローになるための学校の中でも、一番有名な高校らしい。そして、僕がこれから保護される学校でもある。
「初めまして、志村転弧くん。私はここで教師……先生をしてる、
そう言って、先生は僕の手を握ろうとしてくる。
記憶がフラッシュバックして、咄嗟に手を引く。
「ま、待って!壊れちゃう……!」
「大丈夫だよ」
優しく握られた先生の手は……崩れなかった。
「……え?」
「私の個性は"固定"。物の位置とかはたらきを固定できるの。今この雄英高校で、君の個性に対処できる先生は私だけ」
「……」
「だから、私が君の先生になる」
「……いいの?」
「うん。お勉強と、個性を使いこなす訓練」
使いこなす。この個性を使いこなすなんて、考えもしなかった。警察の人に話を聞かれていた時も、机に、服に、人に。触れないようにするので大変だった。
「……うん、わかった」
それが制御できるようになったら、どれだけ嬉しいだろう。
「頑張るよ、僕。個性を制御できるようになって、ヒーローになる!」
「よし、その意気だ!」
そこから、固目先生と僕との訓練が始まった。最初に壊れる条件を確かめて、ほんとうにどんな物でも壊れるのかを確かめた。
「……ものの強度は関係ないみたいだね」
「うん」
「よし、そしたら訓練しよう!」
「?」
「指を自由に動かせるようにするの。5本の指が触れたら壊れるんだから、4本までなら壊れないでしょ?だから1本だけ指を浮かせられるようにするの!」
「……!」
「やる?」
「やる!」
「よしきた!」
固目先生との訓練は楽しくて、自分がどんどん成長していく達成感があった。相変わらず痒みはあったけど、それも少しずつ気にならなくなっていった。この日常が楽しかったから。
「楽しい?」
「うん!」
保護された年のクリスマス、ゲームを買ってもらった。とあるシューティングゲームで、敵がバタバタと倒れていく様子を見て、なんだか自分がヒーローになったような感覚がした。
「やった、1位!」
かといって、ゲームばかりしているわけにもいかない。
今は小学3年の勉強をしてる。まだ5才だけど、どうやら覚えは良いらしかった。
「良い調子だね、転弧くん!」
「今日は算数やったよ、先生」
「偉い!そろそろ確認テストの時期だから、プリント作っておくね!」
「わかった!」
……よく寝るように言われたけど、結局ゲームやっちゃった。ちゃんと怒られた。