本作の作者by俺っとです。
じわじわと閲覧者およびお気に入りが増えてきていて喜ばしい限りです。
まだまだこれからだと思ってますのでいっそう精進していきたいと思います。
雷鳴のような醍醐の声とガタガタと音を立てる立て付けの悪い御縁屋商店の引き戸が勢いよく開け放たれる音が当たりに響き、修二は思わずビクッと身を縮こまらせた。
「おお、修二じゃねぇか、ちょうどいいところに帰ってきたなぁ。そのガキとっ捕まえろ!万引きだ!」
「え?何?ガキ?あ、はい!」
突然の醍醐の依頼に修二は一瞬何のことだか訳がわからなかったがすぐに理解した。御縁屋商店から一人の少年が飛び出してきており、その少年を醍醐が追いかけるという構図が目の前に現れていたのだ。修二の見たところその少年は燕と同じくらいの年齢に見え、気弱そうな顔が見て取れた。
「すいませぇぇぇん、どいてくださぁぁぁい!」
「え?あ?はい」
と言われた修二はあっさりと少年に道を譲ってしまった。修二はどう見ても自分よりも年下の少年に―咄嗟とはいえ―従ってしまった自分に対して少なからず自己嫌悪の念を抱いた。
「何やってんだよ修二!とっ捕まえろって言っただろ!」
「いやだって急だったし…」
「あーもう使えない奴は黙ってろ。見てろ~、俺の必殺技!」
と言い放つと醍醐は右足をサッカーのシュートでもするかのように大きく後ろに振りかぶった。
「あの~醍醐さん。もしかして…いやもしかしなくてもその下駄を…」
「ああ、奴に向かって解き放つ!」
高々と足を振り上げたままの姿勢で起用にバランスを保ちつつ修二のほうを見て、醍醐が言った。
「いや、無謀ですよ。第一届くはずないし、万一届いたとしても相手は動いてる人間ですからね?当たるわけ無いですよ」
「成せば成る!俺ならできる何事も!神様、俺の右足に奇跡の力を!」
「いやいやいや、それ思いっきり神頼みですからね?ありえませんから」
「論より証拠だ、食らいやがれ必殺!『
天駆ける流星の閃きなどといったかっこいい技名とは打って変わって、醍醐がしたことは自分が履いている下駄を少年に向かって放っただけだった。
名前とのギャップに思わぬ肩透かしを食らった修二は気を取り直して、前を走る少年に向かって飛翔しているであろう醍醐の下駄を探した。しかし、どこにも見当たらない。不審になって修二はあたりを見回した。すると、修二の後ろでカラン、と乾いた音が響いた。
「ん?」
修二はその音に気付き、振り向いた。そしてその音の主をしかと見開いた二つの瞳で見据えた。そこには…
「あれ?」
醍醐が先ほど少年に向かって放ったはずの下駄が乾いた音を響かせ着地していた。醍醐が放った下駄は放物線を描いて少年に向かっていくどころか醍醐の頭上を越え、醍醐たちの真後ろまで飛んで行っていた。
「…醍醐さん?」
「…やっちゃった」
修二が醍醐に怪訝そうな目を向けていると醍醐が舌を出して自らのこぶしで自分の頭を軽くコツンッと小突いた。その背景には『てへぺろっ』といった効果音が目に見えるようだった。
「いや、やっちゃったじゃないですよ!さっき散々言っておきながら自分だって結局何もできてないじゃないですか。大体いい大人がそんな仕草したところで気持ち悪いだけですからね!」
「てんめぇぇぇ~~黙って聞いてればさっきから言いたい放題言いやがって、よーしそこから動くなよ、この距離なら外さないぜ」
「上等ですよ。そんなヘボっちい必殺技なんて目を瞑ってたって避けられますよ」
「ウッシャァ!ゴング鳴らしたのはオメーの方だぜ、修二」
「いい加減にしなさぁぁぁぁぁい!」
今にも喧嘩を始めようと大きく足を振りかぶった醍醐とそれに相対する修二めがけて燕による仲裁の声が辺りに響いた。それに続いて二本のお玉が醍醐と修二それぞれに飛んできて二人の頭を正確に捉えた。
『痛ったぁぁぁ!』
スコーンという快音が辺りに鳴り響き、お玉に強襲された二人の悲鳴が遅れて響いた。
「痛ってぇな、何しやがんだ燕!」
「燕ちゃん、痛いよ」
「いつまでも店先で醜い争い繰り広げないでよ!こんなんじゃ来る客も来ないよ。とりあえずさっきの子について話したい事あるから中に入ろう?」
「話したい事?何か知ってんのか?燕」
先ほどの子供について明らかに何かを知っている感じの燕に醍醐が反応し、燕は早く上がるようにと醍醐と修二に指示した。醍醐と修二はそんな燕の指示に従い、先ほどお玉が直撃した箇所をさすりながら店の中に入った。
※※※
「で、さっきのガキは何なんだ?お前の知り合いか?」
店に入り、卓袱台の前にどっかと腰を下ろすとすぐに、醍醐は燕に問いかけた。修二は醍醐の右斜め前に、燕は左斜め前にといったいつもの位置に腰を下ろしていた。
「あたしのクラスメイトの
「つーか燕、お前なんであの一瞬であのガキの顔見分けられてんだよ。まさか、お前あのガキの事…」
「っな、な、な、なんでそうなんのよ!そんなわけ無いじゃないの。アニキの馬鹿ぁっ!」
「ぶげらっふぁ!」
あの一瞬で少年の顔を見ることができていたことに修二と醍醐は素直に感心していたが、間も無く醍醐が口を開き、余計なことを口走った。そして顔を真っ赤にした燕の渾身の一撃を食らって静かになった。おかげでそこから先の話を聞く際には非常に円滑に事が進んだ。
…後で蘇生させればいいか。
そう考えた修二は倒れたままの醍醐をほったらかして燕との話に戻った。
「…で、話に戻ってもいいかな?その、牧君っていうのは学校ではどんな子なの?」
「うん、特に目立たない、地味で大人しい男の子だよ。あんなことする子じゃなかったと思うけど…」
「けど…何?」
燕は明らかに何か言いづらい事がある、といった表情になった。修二が追求してもそこから先を口にしようとしない。それからしばらく経った後、唐突に燕が言った。
「…実は牧君、ちょっと前から悪い友達ができたみたいで、しょっちゅう先生に呼び出されてるんだよね」
それはつまり牧という少年は最近できたという悪い友達とやらに何かそそのかされているということではないかと修二は推測した。
「ねぇ、燕ちゃん。牧君の家ってどこにあるか知ってる?話をしなきゃ」
「えっ!ちょっと修二もしかして牧君を警察かなんかに突き出す気?そんなのダメだよ!牧君ホントはいい子なんだよ。さっきのアレだってきっと…」
そこまで言って燕は黙り込んでしまった。
「うん、わかってるよ。燕ちゃんがそこまで言うんだからきっとその子は本当にいい子なんだと思うんだ。だから今回のことについてちょっと話を聞きたいなと思っただけなんだけど、どうかな?牧君の家の場所、知らない?」
「ん、いや、あたしも牧君の家までは知らないんだ。だから修二が自分で調べてよ。あたしたちの小学校の場所くらいは知ってるんでしょ?」
修二がここまで言うと燕の表情がパッと明るくなり、それと同時に修二に対してムチャ振りを始めた。
…状況を整理しよう。まず、先ほど万引きをした少年は燕ちゃんのクラスメイトの牧達也君だった。で、その牧君は普段はそんなことをするような子ではなく、最近できたという悪い友達が何か関係しているのではないかという仮説を立てた。そこまではいいが、問題は今のところ唯一のつながりの燕ちゃんがその牧君の家を知らない。そのことを問いただしたら小学校まで足を伸ばして自分で調べろと言われた。おぅふ、何というムチャ振り。どこのかぐや姫だよ、キミは。
「そ、そっか。じゃあ、他に牧君と仲のいい子知らない?もしくは牧君がよく行く場所とか…」
手がかりが皆無な状態で人探しなどできるわけも無いと考えた修二は何とかして達也の情報を得ようと再び燕に問いかけた。
「ん~…さっきも言ったように牧君自体あまりクラスで目立たない子だったから交友関係とかもあやふやなんだよね。あ、でもこの前あたしの友達が町外れの廃屋に入っていく牧君を見たって言ってた!」
じゃあその廃屋が彼らの溜り場になってるんだろうな。
ややあって燕から返答があり、達也達がたむろしている可能性のある場所の当りをつけた修二は早速明日から件の廃屋を見張ろうと決めた。
「じゃあそのことは修二に任すとして、俺は家でごろね…もとい、別の仕事終わらせとくからヨロシクな修二」
いつの間にか自力で復活していた醍醐が後頭部をさすりながら話に割り込んできた。
何か今全く関係の無い休日の過ごし方みたいのが混じってたけど、気にしないでおこう。何か言ったら際限なく話がループしかねない。
直感でそう感じた修二はそれ以上は何も言わずこの仕事を承諾した。
※※※
・黒埼修二の調査報告書七日目
調査開始から早くも七日が経過した。その間全くと言っていいほど人っ子一人来なかった。本当にここで合っているのだろうかという疑問すら起こってきた。このまま誰も来ないままで今回のことがうやむやになってしまうのではないだろうか?
とりあえず今日の報告書はここまでにしておく…
「ふぅ。ホントにここで合ってるのかなぁ?そろそろ帰らないと醍醐さんと燕ちゃんにどやされちゃうからなぁ…。早く帰って夕飯の支度しないと」
秘密諜報員―半分以上押し付けられた形ではあるが―である修二は朝八時から夕方五時ほどまでしか任務であるところの、廃屋にたむろする不良っぽい奴らを見張るというものを果たせずにいた。それというのも醍醐や燕の食事を用意しなければいけないからだ。見張るように修二に言った醍醐や燕の世話のために任務をおろそかにするというのは本末転倒のような気もしたが、余計な事は言わないが吉であると修二の人生経験が告げていた。
「ふぅ…。今日の晩御飯何にしようかなぁ?ここしばらく肉類が続いたから魚系の何か…ん?」
晩の献立を考えながら御縁屋へと戻ろうとしていた修二は、雑踏の中に見た顔があったような気がして足を止めてそちらをじっと見た。修二の目線の先には、先ほど自分の目の前を駆け抜けて行った少年と、その周りを取り囲む同級生と思わしき何人かと学ラン姿の中学生のような一人の混成集団だった。
「牧…君だよな。誰だろう周りの奴ら」
修二は気付かれないように一団の後ろをついていく。一団は下卑た笑い声を上げ、時折達也を小突きながら先ほどの廃屋へと入っていった。
なるほど…今までは時間が早すぎたのか。
「よーし、じゃあ今月分のボディガード代一万な。金がなければ現物でもいいぜ」
一団の中で偉そうに奥のほうでどっかりと腰を下ろしているボス的な奴が話の口火を切った。 言われた達也はオロオロしている。
なるほどね…そういうことか。ボディガード代と称してムチャな要求をしてたわけだ。この間の一件もこいつらに収めるためにやったってわけか。それにしても…
達也はオロオロしたままで一向に行動を起こそうとしない。まるで納める物が無いかのようだ。
「あの…今月はこれしか…」
しばらくオロオロしているだけだった達也が口を開いた。震えながら差し出された手にはわずかばかりの硬貨と駄菓子が乗っていた。
「あんだぁ?これっぽっちかよ?こんなんじゃ全然足んねぇよ!この一週間何してたんだよ!ナメてんのかテメェ!アァン?」
差し出された手を振り払い、達也の胸ぐらを掴み上げ睨みを利かせ怒鳴った。
「ちっとばっか痛い目見ねぇとわかんねぇみたいだなぁ」
男の右手が振りかぶられ、達也に向かって振り下ろそうとする。達也は思わず目を瞑った。
「はいはいはいそこまでそこまで」
「なんだテメェ!」
見かねた修二が蛮行を止めようと物影から姿を現しつつ静止を促した。少年は突然現れた修二を見やって粗雑な言い方で修二に向かって怒声を飛ばす。
「その子の知り合いだよ。ちょ~っとその子に用があってね。悪いんだけどカツアゲなら日を改めてくれるかな?」
言いながら修二はチラッと達也に目線をやる。達也はビクッと体をこわばらせて怯えたような目で修二を見た。
「カツアゲじゃねぇよ、正当な報酬ってヤツだよ。あんたには関係ないだろ。さっさとどっか行けよ」
達也の胸ぐらを掴んでいた手を勢いよく横に払った。達也はよろけて地面に手をつく。
「キミ、中学生?どこの中学?」
「ドコ中だとか関係あんのかよ、ああ?」
修二が少年の身元を割り出そうと質問すると、少年は修二の目の前までやってきて、睨みつけながら修二を威嚇する。
否定しないところを見ると中学生でほぼ間違いないな。…地元の中学生ってとこか。それにしても近くで見て初めてわかったけどこいつ結構デカイな。まぁ、それだけだけど。
修二とて身長は低い方ではないが、目の前の少年は少なくとも百七五センチはありそうだ。無駄に伸ばした長髪を金色に染め、ピアスなどはしていないが、指にはゴツい指輪がはめられている。悪ぶっているといった感じの印象だ。
「さっきから見てたけど、どう見てもカツアゲにしか見えなかったんだけどなぁ」
「だからさっきからカツアゲじゃねぇって言ってんだろうが!ぶっ殺すぞテメェ」
イライラも限界といった感じで男が喚き散らし、修二の胸ぐらを掴んだ。
「わかったわかった。じゃあカツアゲじゃなくていいからとりあえず今日は帰ってくれるかな?」
凄む少年のことなど意に介さず、ヘラヘラした様子で修二は言う。それを聞いた少年がさらに苛立ちを表情に表し、
「そうはいかねぇ。ナメられっぱなしじゃこっちだって困るんだよ。とりあえず俺の気が済むまで殴らせろや」
修二の胸倉を掴んでいる手とは反対の手でこぶしを握り、思い切り引き絞っている。
「そんなこと言わずに。今日のところは見逃してやってくれないか?頼むよ」
言いながら修二は胸ぐらを掴んでいる男の腕を軽く掴み、
「テメェの手下の前で恥かきたくねぇだろ?」
相手の骨を粉砕するかのように思い切り力を込めて腕を握りながら、小声で言った。
「!ッ…わかったよ。おい、お前ら行くぞ」
辺りがざわざわとするが、男がまとめて、
「おい達也!あと一週間待ってやる。それでも用意できなかった場合は…わかってんだろうな?」
最後に一言残してこの場を後にした。
所詮は粋がりたいだけのガキか。…さて、
「何とか帰ってくれたな。キミ、大丈夫だった?」
修二は振り向き、達也のほうを向く。達也は身を縮こまらせ、恐怖の色で一杯にした目を修二に向けた。男と修二の小競り合いの近くにいたため先ほどのやり取りが聞こえてしまっていたようだ。
「あ、あの、すみませんでした!助けてくれたのは感謝してます。でも、警察だけは勘弁してください。あいつらに脅されて仕方なく…」
いきなりその場に土下座し、猛烈な勢いで自己弁護を始めた。どうやら達也のほうも修二があの時すれ違った人で、自分がやったことを知られているとわかっているようだった。
…久しぶりだな。そんな目で見られるのなんて。
「あー、その、とりあえず頭上げてくれる?言いたいことはたくさんあるけどこんなところで話す話じゃないし、とりあえずついてきてくれる?」
「え?えぇ、いいですけど」
もう少し警戒されていると思っていたため、予想外の快諾に修二は肩すかしを食らった気分になった。
「ところで、こんな時間に大丈夫?なんだったら明日でもいいけど…?」
「いえ、大丈夫です。どうせ今日も両親はいませんから」
達也が言い、修二は達也を連れて御縁屋商店へと向かった。ゆっくりと話を聞きたいと思ったためだ。達也が沈んだ表情で修二についていく一方で、
夕飯は足りるだろうか…?
修二はそんなことを考えていた。
※※※
「ただいま戻りました。お客さんもいますよ」
「え?あ、牧君だ!」
達也を連れ、御縁屋に帰ってきた修二を燕が出迎えた。ここしばらく調査のために外に出ていた修二を迎えるのは燕の役割になっていた。
「こ、こんにちは…。…修二さんって御縁屋さんの家の人だったんですか?」
「あれ?言わなかったっけ?ちょっと前から居候させてもらってるんだよ」
「おう修二帰ったか…って、ん?そいつはあのガキじゃねぇか?でかしたぜ修二。オイガキそこ動くんじゃねぇぞ。今すぐ警察に突き出して…」
「話がややこしくなるから黙ってて!」
「ぶごっ」
獰猛な笑みを浮かべて達也に近づこうとした醍醐は燕に跳び蹴りを食らい、部屋の隅まで飛んでいき、壁にぶつかると動かなくなった。よほどいい場所に当たったのだろう。
…また勝手に復活するだろうから別にいいか。
「さて、じゃあどういうことか訳を聞かせてもらうよ」
「実は…」
動かなくなった醍醐を尻目に修二は達也に訳を話すように促すと、達也は重い口を開き、話し始めた。
「今みたいな状況になったのは大体半年前くらいです。キッカケは僕が他の人たちにいじめられているのをあいつらに目撃されたことです。その日はあいつらが僕をいじめていた人たちを蹴散らしてくれて、僕はそこで助かったと思ってしまったんです。でも実際はそこからが地獄の始まりでした。その日を境に他の人たちにいじめられることはなくなりました。でも、『ボディガード代』と称してお金を要求されるようになりました。最初はそんなに高額ではなかったんですけど回数を重ねるごとに段々と金額が高くなってきて僕のお小遣いじゃ払えなくなって…」
「それで万引きをした、と?」
途中涙声になりながらも最後まで話し終えた達也は、修二の補足に頷いて肯定の意を唱えた。
「僕が間違ってたんでしょうか?いじめられないためにとはいえ万引きという犯罪を犯してしまったんですよ…」
「そんな、牧君は脅されてやってたんじゃないか!どこも悪くなんか…」
「なぁ~に甘っちょろいこと言ってやがんだ修二。どう考えてもこのガキが悪いだろうが」
達也の独白に修二が返答していると部屋の隅で静かになっていたはずの醍醐がいつのまにか修二の背後まで接近してきていた。そして修二の言を一言の元に否定した。
「醍醐さん?あっちで静かになってたんじゃ…っていうかそれはどういう意味ですか?」
「言われたとおり静かに話聞いてただけだよ。どういう意味かって?聞いたままの意味だよ!さっきから聞いてりゃ胸クソ悪い自己弁護並べやがって!いいか、てめえは結局被害者面して自分のやったことから目を背けたいだけなんだよ!そんなもん「嫌だ」の一言で済む話じゃねぇか!なんで言わねぇのか?なんで言えねぇのか?そんなもんてめえが弱いからだろうが!強くなろうと思ったことはねぇのか?あぁ?」
ここまで言うと醍醐は達也の胸ぐらを掴み上げ、睨みつける。達也は醍醐から眼を背けて呟く。
「…ないか」
「ああん?」
「だってしょうがないじゃないか!僕みたいな何のとりえも無い、ケンカも強くなければ頭がいいわけでもない!そんな僕が集団で無事に生きるためには強いやつに従うしかないんだ!僕が弱いからだって?それは強い人側の意見だよ!強いやつは弱いやつのことなんか理解できるはずが無い!そもそもする気が無いんだ!そんなに簡単に強くなれたら僕は今こんなことで頭を悩ませてなんかいないんだ!」
ここまで言うと達也は肩で息をしながら醍醐を睨んだ。
「…やりゃぁできんじゃねぇか。凄もうと思えば凄めんじゃねぇか。今のお前の気迫はなかなかのもんだったぜ」
醍醐に言われ達也はハッとする。
「それに、気付いてるか?お前さっきいじめられてること『こんなこと』って言ってたんだぜ。お前の中じゃ『こんなこと』なんだよ。…今のお前に足りないものは勇気だ。それさえ持てばお前は絶対に強くなれる。そんでそれは、案外簡単だったりするんだぜ?」
「そんなの…そんなのただの綺麗事ですよ!言うのとやるのとじゃ違うんですよ!もういいです!失礼します!」
醍醐の言葉に反抗して達也は御縁屋商店から飛び出した。
「醍醐さん!」
「アニキ!」
「いいんだよ、結局周りがどうこう言っても最後には自分が決めることだ。俺らにできることは見届けることか、アイツが一歩踏み出す時に背中を押してやることくらいだ」
「だったら手伝ってやってよ!このままじゃ牧君があまりにもかわいそうだよ!」
そういう燕の目にはうっすらと涙がにじんでいた。普段は強気で生意気な娘という印象だが、他人を思いやって泣ける心根は優しい娘なのだ。
「僕からもお願いします。なんだったら僕の給料そのまま使って依頼出します」
修二は燕の肩に手を掛けながら言った。
「…」
醍醐は黙ったままで答えようとしない。
「醍醐さん!」
「…しょ~がねぇ~なぁ~。タダ働きは御免だが、仕事だってんじゃあ断れねえや。明日から動いてやるよ」
修二の訴えについに醍醐が重い腰を上げた。
「ありがとうございます!良かったね、燕ちゃん」
「うんっ」
修二が燕に声をかけると燕は無垢な笑みを修二に向け、かわいらしい声で同意した。が、その後すぐに我に帰り恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしながら肩にかかっていた修二の手を払いのけた。その態度を受け、少しは親密になれたと思っていた修二は落胆した。
う~ん、なんか短い上にグダグダな気がする。
しかも書くことがない。
…どうしよう?
おとなしく締めます。
次回、御縁屋商店繁盛記
『ワースト・キッド』
君は生き延びることができるか?
…とか言いつつ別に戦争ものではないんですけどね。