【学マス×チェンソーマン】花海咲季はプロデューサーのご褒美が欲しい! 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
初星学園本校舎の最下層、地下数十メートルにひっそりと位置する統合戦略会議室。
重厚な特殊複合金属の重門によって何重にも頑丈に閉ざされたその空間は、冷気が立ち込め、息苦しいほどの静寂が支配していた。
部屋の片隅にある大型の観測用強化ガラスウィンドウの外には、重苦しい暗雲が低く立ち込め、時折紫色の不気味な雷鳴が空を激しく切り裂いていた。
その荒れ果てた外の景色を、静かに腕を組みながら見つめる一人の少女が立っていた。
十王邦夫学園長の手先とも噂される上級生――マキマを彷彿とさせる圧倒的で知的な威厳を、その全身から冷ややかに漂わせている彼女である。
彼女はゆっくりと振り返ると、眼鏡の奥の切れ長な瞳を細め、透き通るような冷たい声で口を開いた。
「これが、先日発生した『銃の悪質ブロガー(銃のアンチ)』が残していったノイズデータの最新解析結果よ」
彼女の手元にある端末が静かに操作され、壁一面を覆う超大型モニターに、過去の凄惨な被害記録と黒くドロドロに汚れたデータノイズの群れが一斉に映し出された。
今から13年前、世界中のネットワークにおいて、わずか5分間という極めて短い時間の中で起こった未曽有の惨劇。
その僅かな時間内に、数億件におよぶ激しい誹謗中傷、悪質なデマ、そして収束不能な炎上ノイズが一斉に爆発的に拡散された。
その暴走した悪意の波によって、数千人もの将来を有望視されていたトップアイドル候補生たちが、一夜にして休校やプロデュース契約解除、さらには重度のトラウマによる精神的引退へと追い込まれたのだった。
まさにアイドル界における最悪のデータゴースト、それこそが『銃の悪質ブロガー』だった。
「奴は移動速度が異常に早く、世界中を高速で移動しながら炎上ノイズを撒き散らしているわ」
「現在、初星学園内に蔓延っている末端の悪質アンチたちも、すべてはこの『銃のアンチ』が撒き散らしたノイズの欠片を取り込むことで、異常な攻撃力と粘着性を得ているのよ」
モニターに次々と表示される凄惨なデータを静かに見つめていた花海咲季は、応接用の高級革製ソファーに深々と腰掛け直し、自販機で買ったぬるい缶コーヒーを一口含んだ。
コク、と喉を鳴らして液体を飲み干すと、カツンと乾いた音を立てて缶をローテーブルに置いた。
そして、彼女は不敵で狂暴な笑みをその端正な顔立ちに浮かべながら言った。
「要するに……その一番でかい元凶のアンチを、私が完璧でストイックなライブパフォーマンスで完全に沈黙させればいいのね?」
上級生は咲季の挑戦的な言葉に小さく頷き、眼鏡の奥の透明で底知れない瞳を怪しく光らせた。
「ええ、その通りよ。もしあなたが『銃の悪質ブロガー』を討伐し、初星学園に真の平和と安寧をもたらしたなら……」
「私と学園長権限において、あなたの願い事を――どんな願い事であっても、ひとつだけ叶えてあげるわ」
「……私の、願い事」
その言葉を聞いた瞬間、咲季の瞳の奥でカチリと音を立ててエンジンが大きな火花を散らした。
今まで幾度となく過酷なレッスンを乗り越え、立ちふさがる悪質アンチたちをその圧倒的なパフォーマンスで粉砕してきた彼女の原動力が、今ここに提示されたのだ。
「プロデューサー君との生涯にわたる永久専属契約でも……彼のお腹や身体を毎日好きなだけ見たり触ったりする特別な権利でも……なんだって構わないのね?」
咲季の口元が歪み、凶悪なまでの笑みがその顔に広がっていく。
上級生は全く眉をひそめることもなく、静かに眼鏡の位置を直しながら頷いた。
「ええ。学園のトップとして、あらゆる特権を行使してそれを保障するわ。だからこそ、あなたにはそれだけの価値がある結果を出してもらわなければ困るけれど」
ドクンッ!
ドクンッ!
ボイラー室での激闘すら生ぬるいと感じさせるほどの重低音が、咲季の胸の奥から激しく響き渡り、会議室の床と空気を物理的な振動となって揺らした。
咲季はソファーから勢いよく立ち上がると、胸元のスター性エンジンを爆音で打ち鳴らし、ニタリと極悪な笑みを浮かべた。
「乗ったわ! その『銃のアンチ』だか何だか知らないけれど、私のストイックで完璧なライブパフォーマンスで全員まとめて踏み潰してやるわぁぁぁっ!」
「本物の、最高のご褒美は私のものよ!」
その隣で、あまりの圧迫感に身を縮めていた月村手毬が、頭を抱えながら呆れたように呟いた。
「うわぁ……本当に頭がおかしいわね……欲望のままに動いてるだけじゃない……」
しかし、咲季の純粋すぎる欲望とスター性のエンジンは、手毬の呆れ声など意に介さず、次なる血みどろの戦いへと向かって高回転で再駆動を開始していた。