【学マス×チェンソーマン】「プロデューサーの〇〇に触らせろぉぉ!」補習組のエリート咲季、胸のエンジンを爆発させてトップアイドル(とご褒美)を目指す 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
初星学園本校舎の地下深くに位置する統合戦略会議室での密談を終え、花海咲季と月村手毬は地上へと戻るシースルーエレベーターの中にいた。
幾重もの特殊鋼鉄扉が重々しい音を立てて閉まり、エレベーターが上昇を始めると、ガラス越しに学園校舎の広大な内観と、その向こうに広がるどんよりとした曇り空が視界に広がっていく。
上級生――学園長の手先であり、どこか底知れない圧迫感を放つ彼女から提示された条件。
それは、世界中に炎上ノイズを撒き散らす最悪の脅威『銃の悪質ブロガー(銃のアンチ)』の討伐だった。
討伐に成功すれば、どんな願いであってもひとつだけ叶えられる。
その報酬を聞いた瞬間から、咲季の胸の奥に宿る『スター性エンジン』は静かに、しかし狂おしいほどの熱量を持って高回転を続けていた。
「……プロデューサー君との生涯にわたる永久専専属契約……それに、彼のお腹や身体を毎日好きなだけ撫で回したり触ったりできる特別な権利……」
咲季はエレベーターの壁に手をつき、どこか上の空な様子で怪しい笑みを浮かべていた。
その赤い瞳は怪しく光り、口元からはダラリと涎が垂れ落ちんばかりの執着心が漏れ出している。
「ふふ……ふははは……最高じゃない……! 完璧なライブパフォーマンスでアンチどもをまとめて泥の中に叩き落とせば、あの身体が私の思いのままになるのよ……!」
「ねえ咲季、本当にお願いだからその汚い笑い方をやめてくれない?」
隣に立っていた月村手毬が、心底嫌そうな表情を浮かべながら一歩距離を置いた。
手毬は自分の腕を抱え込み、心底呆れ果てたような、同時に恐怖すら混じった眼差しで咲季を見つめている。
「アンタの頭の中、本当にプロデューサーのことしかないわけ? アイドルとしてのプライドとか、学園の平和とか、そういう健全なモチベーションは一切ないの?」
「ハッ! 何言ってるのよ手毬! プロデューサー君の身体を心ゆくまで堪能すること以上に、健全で切実なモチベーションがこの世のどこにあるって言うのよ!」
咲季は胸を張り、自信満々に言い放った。
「一番を目指すのも、ストイックに自分を鍛え上げるのも、すべては最高のご褒美を手に入れるため! それが私の『スター性』の原動力なんだから!」
「はいはい、分かったわよ……もうアンタに常識的な説教をするだけ無駄だってことは痛いほど理解したわ……」
手毬は大きくため息をつき、頭を抱えた。
エレベーターが「ピン」という軽やかな電子音とともに地上階に到着し、自動ドアが左右に滑らかに開く。
眩しい日差しが差し込む本館エントランスホールへと踏み出した二人の前に、ソワソワとした様子でウロウロしていた少女――藤田ことねの姿があった。
「あっ! 咲季ちゃん! 手毬ちゃん! やっと戻ってきた!」
ことねは二人を見つけるなり、パタパタと走り寄ってきた。
その表情には焦りと不安の色が濃く滲み出ている。
「ちょっと二人とも、上級生の人に呼ばれて地下まで行ってたんでしょ!? 一体何の話だったの? また変な悪質アンチの討伐とか、ヤバい仕事の依頼じゃないでしょうね!?」
咲季は不敵な笑みを崩さず、ことねの肩をドンと強く叩いた。
「安心しなさいことね! 単なる『銃の悪質ブロガー』っていう、ちょっと移動スピードが速いだけのデカいアンチを叩き潰すだけの簡単な仕事よ!」
「ぜんっぜん安心できないんだけど!? 銃の悪質ブロガーって、あの13年前にアイドル界を崩壊寸前まで追い込んだ最悪のデータゴーストでしょ!?」
ことねは黄色い悲鳴を上げながら、自身のツインテールをむしり取る勢いで頭を抱えた。
「なんでそんなヤバすぎる相手と戦う話になってるのよぉ! 私たちは普通のアイドル候補生なの! なんで命がけでネットの悪意と肉弾戦しなきゃいけないのよ~!」
「大丈夫よことね。私が完璧なストイックパフォーマンスで一瞬で踏み潰してあげるから。……それに、報酬が凄いのよ」
咲季はことねの顔にグッと顔を近づけ、獰猛な瞳で囁いた。
「プロデューサー君の身体を触り放題になる権利よ」
「いらない! 全然いらない! 咲季ちゃんの個人的でフェチズムに満ちた欲望に巻き込まれる私の身にもなってよ!」
ことねのツッコミがエントランスホールに虚しく響き渡る。
しかし、その平和で騒がしいやり取りは、唐突に訪れた「違和感」によって一瞬で引き裂かれることとなった。
カツン、カツン、カツン。
エントランスホールの正面玄関から、重く無機質な靴音が響いてきた。
光が差し込むガラス張りの自動ドアの向こう側から、黒いロングコートを身に纏い、顔全体を不気味なノイズモザイクで覆った謎の人物たちが、ゆっくりと校舎内へと踏み込んできたのだ。
その手には、黒く鈍い光を放つ無骨な重火器――ネット上の悪意とデマを弾丸として生成する特殊な実弾兵器が握られていた。
エントランスにいた他の生徒たちが「え……何あれ……?」「なにかの撮影……?」と困惑の声を上げる。
次の瞬間。
黒コートの男が、感情の篭もっていない冷酷な手つきで、銃口を咲季たちに向けて跳ね上げた。
「――ターゲット確認。『チェンソーアイドル』花海咲季、およびその関係者」
「排除を開始する」
ダンッ! ダンッ! ダンッ!
言葉が終わるか終わらないかの瞬間、重苦しい爆音とともに銃口から強烈な火花が散った。
発射されたのは通常の鉛の弾丸ではない。
ネット上の暗部に渦巻く不特定多数の中傷、嫉妬、デマが圧縮された黒い悪意のノイズ弾。
空気すらも歪ませる圧力を伴って放たれた一弾が、エントランスホールの天井と壁を破壊し、凄まじい衝撃波となって弾け飛んだ。
ガラスウィンドウが一瞬で粉々に砕け散り、鋭利な破片が雨のように降り注ぐ。
「きゃあああああっ!?」
「な、なにこれ!? 警察! 誰か警察呼んでぇぇぇ!」
居合わせた生徒たちが悲鳴を上げて逃げ惑い、平穏だった初星学園のエントランスホールは一瞬にして地獄絵図のようなパニックへと変貌した。
降り注ぐガラス片と炸裂する爆風の中、咲季は咄嗟にことねと手毬の首根っこを掴み、力任せに後方へ放り投げた。
「咲季ちゃん!? ぐえっ!?」
「きゃああっ! ちょっと咲季、乱暴に投げないでよ!」
二人が床を転がりながらも間一髪で弾道を逃れる。
咲季はその場に留まったまま、ニタリと口元を吊り上げた。
無数に飛び散るガラス片が彼女の肌をかすめ、微かな血が頬を伝う。
しかし、その瞳には恐れなど微塵もなかった。
あるのは、邪魔者を全力で踏み潰そうとする圧倒的な攻撃性と、ご褒美を邪魔されたことに対する理不尽なまでの怒りだった。
「……なるほどね。これが『銃のアンチ』の手先ってわけ?」
咲季は胸元のスター性エンジンに手をかけると、狂暴な笑みをさらに深めた。
「せっかくプロデューサー君の身体を触り放題になる未来が見えてきたのに……その邪魔をするやつは、誰であっても許さないわぁぁぁっ!」
ガチンッ!
胸元のエンジンコードを力任せに引き抜く。
ドキュオォォォンッ!!
ボイラー室の爆音を遥かに凌駕する重低音が、エントランスホール全体を激しく激震させた。
咲季の全身から溢れ出る圧倒的なスター性のオーラが、赤く黒い奔流となって噴出し、周りの空気を灼熱に変えていく。
頭部から、両手から、刃の如き輝きを放つチェンソー状の光刃が突き出し、激しい回転音を上げ始めた。
「手毬! ことね! 後ろに下がっていなさい!」
チェンソーアイドルへと変貌を遂げた咲季は、床のタイルを粉砕しながら地を蹴った。
「私の最高のご褒美の邪魔をする敵は……全員まとめて、私のストイックなライブパフォーマンスで刻み刺してやるわぁぁぁっ!」