【学マス×チェンソーマン】「プロデューサーの〇〇に触らせろぉぉ!」補習組のエリート咲季、胸のエンジンを爆発させてトップアイドル(とご褒美)を目指す   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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呪い

[第24話] 呪い(Part 1)

 

白昼堂々の市街地に響き渡った、乾いた三発の銃声。

 

初星学園へと続く舗装道路の上には、重々しい静寂と、生々しく広がる血の海だけが遺されていた。

 

プロデューサーの身体は力なく倒れ伏し、彼を庇うようにして背中に弾丸を受けた咲季もまた、血の泡を吐きながらピクリとも動かなくなった。

 

「咲季……! プロデューサー……! うそ……うそでしょ……!?」

 

ことねが両手で口を塞ぎ、喉を引き裂くような悲鳴を上げる。膝がガクガクと震え、その場に崩れ落ちそうになる身体をどうにか繋ぎ止めていた。

 

「ことね、下がりなさい……! 狙撃の射線から外れるのよ!」

 

手毬が叫びながら、ことねの襟首を掴んで街頭の陰へと強引に引きずり込んだ。

 

その眼差しは、冷たく恐ろしいほどの怒りと殺意に満ち満ちている。

 

目の前には、黒いロングコートを羽織り、頭部と両腕から刺々しい凶悪な刀身を突き出させた異形の男――アンチの総力を結集した刺客がたたずんでいた。

 

「無駄な足掻きだ、月村手毬」

 

刺客の口元から、金属が擦れ合うような嫌な声が漏れ出る。

 

「俺の狙撃は外れない。花海咲季も、そこのプロデューサーとやらも、すでに息の根は止まっている」

 

「黙りなさい……ッ!!」

 

手毬の咆哮が、街頭の静寂を切り裂いた。

 

手毬は背中に背負っていた重厚な木刀ケースの固定ベルトを、力任せに引きちぎった。

 

ケースの中から現れたのは、通常の木刀ではない。幾重にも重なる禍々しい呪詛の符が巻き付けられ、先端が巨大な「釘」のように鋭利に研ぎ澄まされた、不気味な漆黒の剣であった。

 

『呪いの悪質ブロガー』との契約によって生み出された、自らの寿命を代償として捧げる禁断の呪具。

 

「手毬ちゃん、ダメぇぇぇっ! その武器を使ったら……手毬ちゃんの命が削られちゃうんだよ!?」

 

ことねが涙をボロボロとこぼしながら、手毬の袖を掴んで必死に制止する。

 

しかし、手毬はことねの手を優しく、けれど絶対に解けない強い力で振り払った。

 

「ことね……覚悟を決めるときよ。仲間を無残に倒され、大切なプロデューサーを奪われて……私一人だけが安全な場所で指を咥えて見ていろと言うの?」

 

手毬は漆黒の剣を両手で深く構え、刃先を刺客の胸元へと一直線に向けた。

 

「私は……アイドルよ。一番を目指し、仲間と共に頂点へ立つと誓ったアイドルなの。そのためなら、私の命の数年や数十年……喜んで差し出してみせるわ!」

 

刺客は冷ややかな目を向け、腕の刀を構え直した。

 

「愚かな少女だ。命を捨てて得るものが、屍の山だとしてもか」

 

「戯言を……!!」

 

手毬の脚が、舗装道路のコンクリートを強く蹴りつけた。

 

ド風を切り裂くような高速の踏み込み。手毬の身体が残像を描き、一瞬にして刺客の懐へと飛び込む。

 

「ハァァァァァッ!!」

 

上段から振り下ろされる漆黒の剣。刺客は瞬時に右腕の刀を掲げ、これを真正面から受け止めた。

 

ギャリギャリギャリッ!!!!

 

金属と呪具が激しく衝突し、凄まじい火花が二人の視界を真っ赤に染め上げる。

 

「速い……! だが、重さが足りないぞ!!」

 

刺客が左腕の刀を横一文字に払い、手毬の脇腹を切り裂こうとする。

 

手毬は間一髪で体を捻り、刃が制服の生地を切り裂く感触を肌で感じながらも、そのまま軸足を叩き込んで反転した。

 

「重さなんて……最初から求めていないわ!!」

 

手毬の鋭い叫びとともに、漆黒の剣の先端――鋭利な「釘」が、刺客の左肩の関節へ深く突き刺さった。

 

ドスッ!!

 

生々しい肉体を貫く感触が手毬の掌に伝わる。

 

「ぐッ……!?」

 

刺客が苦悶の声を漏らした瞬間、突き刺さった釘の根元から黒い墨のような呪詛の文字が溢れ出し、刺客の体表へとしなやかに巻き付いた。

 

手毬は息を荒らげながら、氷のように冷たい声で呟いた。

 

「『カウント・ワン』……!」

 

「な……なんだ、この妙な感覚は……!?」

 

刺客が肩を押さえながら後ずさりする。

 

手毬は剣を引き抜き、再び刃を鋭く構え直した。

 

「逃がさないわ……あと二回。あなたの全身に、逃れられない死の刻印を刻み込んであげる!!」

 

[第24話] 呪い(Part 2)

 

「ガッ……ハ……ッ! なんだ……この重圧は……!?」

 

刺客は左肩に刻まれた不気味な黒い刻印をさすりながら、忌々しそうに手毬を睨みつけた。

 

肩口から全身へとじわじわと広がる冷涼な麻痺感覚。まるで己の寿命そのものが、不可視の病魔によってじりじりと削り取られていくかのような錯覚。

 

「言ったはずよ……逃がさないと」

 

手毬は乱れた呼吸を整えることもせず、血の混じった唾をペッと床へ吐き捨てた。

 

汗と血で張り付いた黒髪の隙間から覗く瞳は、一切の猶予も慈悲も拒絶する絶対的な冷徹さを宿している。

 

手毬が握りしめる漆黒の剣――『呪いの悪質ブロガー』の力が宿る不可思議な釘刃が、ドクン、ドクンと不気味な脈動を打っていた。

 

刃に触れている手毬の指先から、文字通り彼女自身の生命力がゴリゴリと磨耗し、エネルギーとして吸い上げられていく感覚。

 

「手毬ちゃん、ダメだよ……! もうやめてぇっ! これ以上その武器を使ったら、手毬ちゃんが死んじゃうよぉっ!」

 

物陰に身を潜めていたことねが、溢れ出る涙を拭うことすら忘れて悲痛な叫びを上げる。

 

「黙りなさい、ことね……! 私がここで倒れたら……誰が咲季を、プロデューサーを守るというの……!」

 

手毬は地面を力強く踏みしめ、残された全筋力を下半身へと集約させた。

 

「ハァァァァァッ!!」

 

地面のアスファルトが激しく砕け跳ねる。

 

疾風のごとき突進。手毬の身体は視界から消失したかのような超絶的なスピードで刺客の死角へと潜り込んだ。

 

「くっ……小細工をぉぉぉッ!」

 

刺客は腕の巨大な刀身を薙ぎ払い、迫り来る手毬の首級を狩らんと振るう。

 

空気を切り裂く凶悪な刃の閃光。だが、手毬は寸前で上体を極限まで反らし、ブレードの軌道をミリ単位の差でかわし切った。

 

「『カウント・ツー』……ッ!!」

 

擦れ違いざま、手毬が放った二撃目の突きが、刺客の右脇腹へ深く刺さった。

 

ドスッッ!!

 

肉が裂け、骨に硬い金属がぶつかる嫌な感触が手毬の手元へと伝わる。

 

「グアァァァァッ!?」

 

刺客の口から苦悶の叫びが漏れ出ると同時に、二つ目の漆黒の刻印がその体表へと凶悪に浮かび上がった。

 

「これで……王手よ……!」

 

手毬は反動を利用して大きく跳躍し、空中で身を翻しながら刺客の頭上へと躍り出た。

 

「死になさい……!!」

 

両手で握りしめた漆黒の剣を、全身の体重と『呪い』の全エネルギーを乗せて、刺客の胸腔――心臓の直上へと一直線に突き下ろす。

 

「『カウント・スリー』……ッ!!!!」

 

ドッグズゥゥゥゥンッッ!!!!

 

三度目の穿ちが完璧に決まった瞬間、空間そのものが歪むかのような重厚な炸裂音が響き渡った。

 

刺客の身体に刻まれた三つの刻印が赤黒く発光し、頭上の虚空から巨大な不可視の「釘」の影が高速で落破する。

 

「ガハッ……!? ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

全身の骨と内臓を内側から破砕される凄絶な衝撃。刺客は大量の血を噴出しながら地表へと叩きつけられ、ピクリとも動かなくなった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……っ」

 

手毬は膝をつき、漆黒の剣を杖代わりにしながら、どうにか倒れるのを耐えていた。その顔色は紙のように白く、肩が激しく上下している。

 

「勝った……勝ったのね……手毬ちゃん……!」

 

ことねが泣きじゃくりながら駆け寄り、手毬の背中を支えた。

 

「ええ……なんとか……倒したわ……」

 

手毬が安堵の息を漏らそうとした、まさにその時であった。

 

カツン……カツン……と、静まり返った路地の奥から、不気味で規則正しい足音が近づいてきた。

 

「ふふ……見事な戦いぶりだったわ、月村手毬」

 

闇の中から現れたのは、妖しい笑みを浮かべた謎の女性の影。

 

女性がすっと指先を掲げると、そこから伸びた透明な糸のような何かが、地に伏していた刺客の残骸へと絡みついた。

 

カチリ……と、死亡していたはずの刺客の身体から、不気味な起動音が響く。

 

「な……なんですって……!?」

 

手毬の瞳が驚愕に見開かれた。

 

倒したはずの刺客の刃が、ゆっくりと、しかし確実に殺意の光を再び帯び始めていく。

 

絶望の連鎖は、まだ終わっていなかった。




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