【学マス×チェンソーマン】「プロデューサーの〇〇に触らせろぉぉ!」補習組のエリート咲季、胸のエンジンを爆発させてトップアイドル(とご褒美)を目指す 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
街頭の激戦地。アスファルトには幾重にも深々と刻まれた爪痕と不吉な破砕痕が広がり、誰のものかもわからない黒いデジタルノイズと焦熱の擦過火花が重苦しく飛び散っていた。学園都市の華やかな街並みは見る影もなく崩壊し、破壊された防護壁の隙間から立ち込める鉄と血の匂いが、夜の冷気と混ざり合って空間を支配している。
月村手毬の呼吸は、すでに肺を鋭く削るような浅く荒い破裂音を立てていた。彼女の華奢な両手が握りしめるのは、『呪いの悪質ブロガー』との契約によって顕現した漆黒の釘剣だ。その不吉で冷酷な刃が、3度の不可避な不吉なカウントとともに、刺客である『サムライソード』の胸郭を深々と貫いていた。
学園の判定システムにおける不可逆な「判定解除(デリート)」を告げる重厚な衝撃音が、周囲の空気を歪ませる。男の身体は内側からデータとして破砕され、無数の青黒いノイズの粒子となって崩れ去るはずだった。
「はぁ……はぁ……、勝った……のか……?」
手毬の唇の端から、ポタポタと赤黒い血がアスファルトへ滴り落ちる。自らの残存寿命と精神エネルギーを力任せに前払いする過剰な呪いの負荷。そのあまりにも過酷な代償により、彼女の視界は不気味なノイズと暗い斑点で埋め尽くされようとしていた。手元で煙を上げるマイクデバイスからは、基盤が焼き切れた嫌な焦げ臭さが漂っている。
しかし、惨劇の夜はまだ終わっていなかった。
崩壊した街路灯の影から、パステルカラーの私服パーカーを着た謎の少女・沢渡アカネが静かに歩み寄ってきた。彼女は冷ややかに嘲笑うと、手にしたスマートフォン型デバイスの画面を指先で滑らかにフリック操作した。
『ヘビの判定プログラム』が強制起動される。
「出でよ、ヘビ」
地鳴りのような重低音が空間を激しく震わせた。巨大なヘビの形をしたデータノイズの巨大な顎が、次元の亀裂を力任せに割り開いて出現する。漆黒と緑のノイズを纏うヘビは、サムライソードの肉体と判定データの残骸を一瞬で丸呑みにすると、わずか数秒ののち、傷一つない完璧な状態へと「復元」された男を地面へと吐き出した。
「な……復元された……!? 学園の判定プログラムを、外部から直接書き換えたというの……!?」
満身創痍の手毬の瞳に、圧倒的な絶望の色が差す。完全再起動を果たしたサムライソードは、月光を浴びて鈍く光る頭部と両腕の刀身をゆっくりと構え直した。その殺意は先ほどよりも遥かに冷たく、苛烈だった。
「アキ……じゃなかった、手毬ちゃん! 逃げてぇぇぇっ!」
血の海に倒れていた紫雲清夏が、泥と血に塗れた脚で泥臭く立ち上がった。彼女の膝はガタガタと酷く震えていたが、その瞳には死の恐怖を完全に塗りつぶすほどの、純粋で強い光が宿っていた。
清夏は自らの手首に装着された学園の生徒ID端末を力任せに握り締め、腹を括った。自身の残されたアイドル生命、これまでのレッスンで積み上げてきたすべてのスコア記録、そして学園のサーバーに記憶された全パーソナルデータを、契約している『ゴースト(幽霊の判定ユニット)』へと全て捧げる決断。
「私の全部をあげる……レッスンデータも、スコアも、プロデューサーとの思い出も、全部! だから……手毬ちゃんを助けてぇっ!」
清夏の身体が、薄い透明なノイズとなって夜の空気に溶けるように消え始めていく。その代償として、空間の亀裂から無数の巨大な透明の手が現れ、サムライソードの四肢を空中で強固に捕らえた。
「清夏先輩……やめてぇぇぇっ! そんなことしたら、アンタのデータが、存在ごと消えちゃうでしょぉぉっ!」
手毬の血を吐くような絶叫は届かない。
サムライソードの頭部の刀が一閃した。無慈悲な白刃の閃光が、ゴーストの巨体を余すことなく切り裂き、清夏の最期の想いごと空間を両断する。
「ガハッ……あはは……手毬ちゃん……泣かないでね……」
彼女が着ていたレッスン用のジャージだけが、主を失って虚しく地面に落ちた。紫雲清夏というアイドルの存在は、学園のデータベースから永久に消滅した。
絶望と静寂が支配する現場。
プロデューサーを庇って撃たれ、血の海に倒れていた花海咲季の胸の奥で、静かに、そして爆発的な熱量を秘めてアイドルのエンジンが音を立てた。
ドクン……ドクン……ドクンッ……!
(私の……プロデューサーの〇〇を触るっていう夢を……清夏先輩の命がけの想いを……)
咲季は倒れたまま、血に濡れた指先で自らの胸に埋め込まれたスターターコードを強く握り締めた。
(プロデューサーの身体に触りたい……! あの熱い皮膚に、胸筋に、腹筋に手を伸ばして、1番のアイドルとして褒められたい……! そのために私は血を吐くようなレッスンを耐えてきたのよ……! それを……こんな不気味な奴らに邪魔されてたまるかぁぁっ!)
咲季の脳内で、純粋すぎるスケベ心と、1番へのストイックな情熱が完璧に結託し、限界を超えた出力を叩き出す。
「踏みにじるなぁぁぁっ!」
ブォォォォォンッ!
ボイラー室の爆音すら生ぬるいほどの重低音が全域に響き渡り、咲季は『チェンソーアイドル』へと完全変貌。頭部と両腕から突き出した圧倒的な光刃を激しく回転させ、獲物を見据えた野生の獣のようにサムライソードに向かって跳躍した。