【学マス×チェンソーマン】「プロデューサーの〇〇に触らせろぉぉ!」補習組のエリート咲季、胸のエンジンを爆発させてトップアイドル(とご褒美)を目指す 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
ガガガガガガガッ! ブォォォォォンッ!
頭部と両腕から突き出した3本のチェンソーの光刃が、超高速回転によって大気を摩擦熱で真っ赤に焦がしていた。
花海咲季の全身から放たれる圧倒的なスター性のオーラは、もはや洗練されたトップアイドル候補生のそれではない。剥き出しの狂気と、1番へのストイックな執念、そして何よりもプロデューサーへのスケベ心という生の爆発的エネルギーが混ざり合った、紅蓮の怪物の咆哮だった。
「死ねぇぇぇっ! 私の最高のご褒美を……清夏先輩の命がけの想いを……プロデューサーの身体に触る私の聖域を邪魔する奴は……全員まとめて刻み刺して泥水を吐かせてやるわぁぁっ!」
咲季が大地を踏みしめると、粉砕されたアスファルトが爆発するように跳ね上がった。超人的な脚力で跳躍し、空中で身を捻りながら両腕のチェンソーを全開で振り下ろす。
向かいいつサムライソードが、月光を反射する抜き身の刀身を交差させて受け止めた。
ドカァァァァンッ!
衝撃波が周囲のビルの残存ガラスを全滅させ、強烈な音圧と火花が夜の街頭を真っ赤に染め上げた。激しい金属の摩擦音が耳腔を刺し、互いの判定データが激しくノイズを起こして弾け飛ぶ。
「ハッ……ハハハッ! どうしたのよ、刀男! さっきまでの威勢はどうしたのよ! 私のストイックな自主練の熱量に比べたら、あんたの斬撃なんてぬるすぎるわぁぁっ!」
咲季の口から飛び出すのは、狂気と歓喜に満ちた咆哮だった。
彼女の胸の奥で爆音を上げるスター性エンジンが、限界を超えた出力を叩き出し続ける。咲季は頭部の光刃を力任せに叩きつけ、サムライソードの刀身をゴリゴリと削り落としていった。
(プロデューサーの〇〇……! あの温かい肌に手を伸ばし、完璧に解剖して、1番のアイドルとして抱きしめられる未来が……すぐそこにあるのよ! それをこんな不気味な刺客に邪魔されてたまるかぁぁっ!)
咲季の脳内で、純粋すぎるスケベ心と勝利への執着が完璧に合体し、刃の回転速度をさらに加速させる。押し込まれたサムライソードの膝がぐらりと揺れ、その胸元にチェンソーの刃が触れようとしていた。
しかし、サムライソードの冷酷さは、咲季の想像を遥かに超えていた。
「ちっ……煩わしい怪物め」
サムライソードは背後に視線を走らせると、崩れた瓦礫の陰で腰を抜かして怯えていた一般候補生の少女を、左手で乱暴に襟首ごと掴み上げた。
「なっ……!?」
咲季の目が驚愕に見開かれる。
サムライソードは一切の躊躇なく、掴み上げた少女の身体を、超高速で回転する咲季のチェンソーの射線上へと盾として強引に投げ飛ばした。
「キャアアアアアッ!」
少女の悲鳴が夜空に響く。
「しまっ……!?」
咲季の思考が一瞬だけフリーズした。
どんなに不純でスケベな動機で動いていようとも、咲季の根底にあるのは「1番のアイドル」としての誇りと美学だ。無関係な一般候補生を自分のチェンソーでズタズタに切り刻むことなど、彼女の矜持が許さなかった。
咲季は強引に身体を捻り、全速力で振り下ろしていた両腕の光刃の軌道を上空へと逸らした。
バックステップで着地し、隙だらけになったその一瞬。
「甘いな、チェンソー」
サムライソードの冷たい声が、耳元で聞こえた。
男の姿が視界から消えていた。超絶的な速度による居合の踏み込み。
次の瞬間、白刃の閃光が咲季の視界を縦一文字に走った。
ズザァァァァンッ!
「が……は……っ」
咲季の身体の中心に、一筋の赤い線が奔った。
頭頂部から胸のエンジン、腹部、そして股下までを、完璧な精度で縦真っ二つに一刀両断されたのだ。
「咲季ちゃんーーーっ!」
遠くで拘束され、倒れ込んでいた藤田ことねの叫びが虚しく夜空を裂いた。
咲季の両腕と頭部から突き出していたチェンソーの光刃が、激しい不快な電子音とともに光の粒子となって霧散していく。真っ二つに割れた彼女の身体から大量の血液とデータエラーの青い火花が噴き出し、左右に分かれた胴体が泥と血に塗れたコンクリートの上へと豪快に転がった。
咲季の瞳から光が失われ、胸の爆音エンジンがシューシューと虚しい黒煙を吐いて沈黙する。
「ふぅ……手こずらせやがって」
サムライソードは刃についた血を払い、鞘へと納めた。
沢渡アカネが冷ややかに歩み寄り、スマートフォン型デバイスで転がる咲季の残骸をスキャンする。
「『チェンソーの心臓』は停止したけれど、まだ生きてるわね。……車に積み込みなさい。学園の上層部に奪還される前に、本拠地へ持ち帰って解剖するわ」
「ああ」
刺客たちは動かなくなった咲季の胴体を粗雑に抱え上げると、路地に停めてあった黒塗りの大型車の後部座席へと力任せに押し込んだ。激しいエンジン音とともに、車は夜の街頭へと消えて行った。
一方、その頃。
時速300kmで京都へ向かって夜の闇を突き進む、山陽新幹線の16号車グリーン車内。
車内は惨劇の舞台と化していた。
座席には、頭部や胸部を撃ち抜かれた乗客たちの死体が転がり、白い壁や窓ガラスには赤黒い血煙がべったりとへばりついている。
乗客に紛れていた悪質アンチの刺客2人が、硝煙の立ち込める拳銃を手に持ったまま、シートの間に倒れ伏す一人の少女を見下ろしていた。
頭部を至近距離から9mm弾で撃ち抜かれ、パステルカラーの私服を鮮血で染めて動かなくなった少女――藤田ことね。
「よし……『特命補習組の指揮官』、藤田ことねの排除を完了した」
「これで東京の仲間たちも動きやすくなるな。拍子抜けなほどあっけなかったぜ」
刺客たちが笑い合い、無線で本部に報告を入れようとした、まさにその時だった。
ピクリ。
血の海の中で、ことねの華奢な指先が不気味に動いた。
「……え?」
刺客の一人が眉をひそめた。
次の瞬間、ことねは何事もなかったかのように、ゆっくりと上半身を起こした。
ぐにゃり、と頭部の粉砕された頭骨と皮膚が不気味な音を立てて再結合し、穿たれた弾痕から潰れた弾丸がポロリと床のじゅうたんの上へ落ちた。
「な……なんだと……!? 確かに頭をぶち抜いたはずだぞ!?」
刺客たちが恐怖に顔を引きつらせ、慌てて銃口を向け直す。
ことねは膝についた血を払いながら、ゆっくりと立ち上がった。その可憐な表情には、一切の動揺も、痛みへの苦悶も浮かんでいない。
彼女はポケットから綺麗なハンカチを取り出すと、頬に付着した返り血を優しく、丁寧に拭い取った。
「……痛いわね。せっかくプロデューサーに見せるために新調したオーダーメイドの私服が、台無しだわ」
ことねの声には、温度が一切なかった。
彼女の瞳は、底知れない暗闇のように冷たく、そこに映る刺客たちを「人間」としてすら認識していないような、絶対的な支配者の圧力を放っていた。
「ひ……ひぃぃぃっ!」
刺客のひとりが恐怖に耐えかね、引き金を連続で引き絞った。
バンッ! バンッ! バンッ!
放たれた弾丸がことねの胸部や肩を穿つ。しかし、彼女の身体は微動だにせず、穿たれた傷口は接触した瞬間に光の粒子となって修復されていく。
ことねは小さく、溜息を吐いた。
そして、その可憐な薄い唇を優しく歪め、地獄の深淵から響くような甘く冷酷な声で囁いた。
「……さて、お掃除の時間かしら」
新幹線の密室の中で、刺客たちの悲痛な悲鳴が響き渡った。