【学マス×チェンソーマン】「プロデューサーの〇〇に触らせろぉぉ!」補習組のエリート咲季、胸のエンジンを爆発させてトップアイドル(とご褒美)を目指す 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
早朝の静寂に包まれた京都駅、特別専用ホーム。
時速300kmを超える超高速で夜の静寂を切り裂いてきた最新鋭新幹線が滑り込むと、重厚なシームレスドアが静かに左右へ開いた。
車内での凄惨な惨劇――至近距離から頭部を銃撃されるという致命的な攻撃をものともせず、刺客たちを一方的に「お掃除」したばかりの藤田ことねが、何事もなかったかのようにホームへと優雅に一歩を踏み出す。
彼女の着ているパステルカラーの私服には、返り血の一滴すら残っていなかった。頬を拭ったハンカチはポケットの奥へと仕舞われ、その可憐な表情には疲れの色すら見当たらない。
ホームで待ち受けていたのは、彼女の身に起きた危機と車内での異常事態を察知して緊急集結した、初星学園京都支部の幹部たちだった。黒いスーツに身を包んだ男たちが、緊張で青ざめた顔を揃えて一斉に深々と頭を下げる。
「ことね様……! 車内での不測の事態、誠に申し訳ございませんでした! 我々京都支部としての警護が行き届かず――」
「謝罪は結構よ」
ことねの声は、驚くほど平坦で冷たかった。京都駅の冷たい空気が、彼女の小さな唇から漏れる吐息とともに白く透き通っていく。
「それよりも、今すぐ準備をしなさい。京都で一番標高が高く、学園のメインサーバーとのデータ判定線が最も濃く交差する神社を用意すること。……それと」
ことねは足をとめ、計算高い瞳で幹部の顔をじっと見つめた。
「学園の地下最深部、重犯罪者専用隔離棟に収監されている『終身刑の悪質アンチ』を10人ほど、至急その神社へ連れてきなさい」
「し、終身刑の受刑者を……ですか? 一体なにを――」
幹部が困惑混じりに問いかけようとしたが、ことねの冷徹な眼光に射抜かれた瞬間、言葉が喉の奥でカチコチに凍りついた。
「質問は許可していないわ。……急ぎなさい。咲季の『心臓』が、東京の刺客どもに持ち去られる前にね」
「は、ははっ! 直ちに手配いたします!」
幹部たちが脱兎のごとく駆け出していく。ことねはその背中を冷ややかな目で見送りながら、可憐な薄い唇をわずかに歪めた。
「待っていなさい、咲季。プロデューサーの身体を撫で回す権利は、私があなたを完全に管理して、最高の結果を出させてからじゃなきゃ認めないんだから……」
――京都、深い山奥に鎮座する古刹の神社。
朝靄が深く立ち込め、樹齢数百年を数える巨木に囲まれた境内の石畳は、凍りつくような冷気に満たされていた。ここは初星学園が極秘裏に管理する特命判定場であり、学園の全ネットワークデータを物理的に干渉・切断・消去するための聖域でもあった。
境内の広場には、黒い布で目隠しをされた10人の男たちが、石畳の上に正座させられていた。学園のアイドル候補生たちに対して過激な誹謗中傷、デマの拡散、個人情報の売買を行い、無数の少女たちをスランプと退学へ追いやった終身刑の悪質アンチたちである。彼らは何が起きるのかも分からず、ただガタガタと歯を鳴らして怯えていた。
「ことね様、準備が整いました」
京都支部の幹部が恭しく頭を下げる。
ことねは本殿の階段をゆっくりと上り、拝殿の前に佇んだ。彼女は静かに朱色の袖を整えると、綺麗な両手を胸の前で合わせた。その立ち姿は、まるで神に無垢な祈りを捧げる巫女のようであり、同時に生贄の命を刈り取らんと企む絶対的な悪魔そのものでもあった。
「この人たちに、東京で咲季を襲撃している者たちの名前を、順番に言わせなさい」
「はっ……! おい、1人目、名前を言え!」
幹部が最初の受刑者の頭を力任せに押さえつける。受刑者は恐怖で引きつった声を上げた。
「ひ……ヒヒッ……な、なんだよ急に……! 俺が知ってるのは、東京の『サムライソード』の配下にいる刺客たちの名前だけだぞ……! え、えーと、最初に切り込んでいる刺客のリーダーは……『葛城リーリヤ』だ……!」
受刑者がその名前を口にした、まさにその瞬間。
拝殿の前に立つことねが、両手を強く、空気ごと押しつぶすように「パンッ」と音を立てて合わせた。
「潰れなさい」
――数百キロ離れた、東京の市街地。
壊滅した街頭の路地裏で、咲季の真っ二つに切断された胴体を黒塗りの大型車へと押し込もうとしていた刺客たち。
「よし、急げ! チェンソーの心臓を確保した! リーリヤ、本部に連絡して――」
刺客のひとりがそう叫んだ、その時だった。
グシャッ!!!
突如として、何もない上空から見えない超巨大な質量が落破したかのような、凄まじい肉と骨の破砕音が響き渡った。
「え……?」
沢渡アカネとサムライソードがその場に凍りついた。
今まさに指示を受けようとしていた刺客の『葛城リーリヤ』が、突如として不可視の巨大な手によって上から一瞬で叩き潰されたのだ。
硬いアスファルトの床に、一瞬で人型の赤黒い肉のペーストが張り付く。骨が砕ける音すらなく、ただ大量の血液と破砕されたデジタルノイズの青い粒子が、周囲数メートルにわたって派手に飛び散った。
「な……なんだ!? 一体なにが起きたんだ!?」
サムライソードが叫び、抜き身の刀を構えて周囲を警戒する。しかし、敵の姿などどこにもない。敵意の波動も、音圧の予兆すらも存在しなかった。
「2人目。名前を」
京都の神社で、幹部の声が響く。
「ひ、ひぃぃぃっ! やめてくれ! 『倉本千奈』だ! 千奈って名前の刺客がいる!」
パンッ。
ことねが静かに両手を合わせる。
「潰れなさい」
東京の街頭。
「おい! 周囲を警戒しろ! どこかに潜伏狙撃手が――」
そう叫んで銃を構えた2人目の刺客『倉本千奈』の身体が、言葉の途中で「グシャッ!」と豪快に弾けた。
頭部からつま先までが瞬時に一気圧で押し潰され、車体の側面に真っ赤なペンキをぶち撒けたような血の痕跡だけを残して消滅する。
「3人目。名前を」
「『有村麻央』だあぁぁっ!」
パンッ。
「潰れなさい」
「ぐわあぁぁぁっ!? 麻央まで……! 仲間が……仲間が急に潰れていくぞ! どこからの攻撃だ!? 敵はどこにいるんだぁぁぁっ!」
「4人目。名前を」
「『篠澤広』っ! 篠澤広だ!」
パンッ。
「潰れなさい」
「ひ、ひぃぃぃっ! 助けてくれ! 広が消えた! 悪魔だ! 敵は悪魔だぁぁっ!」
「5人目。名前を」
「『姫崎莉波』ぁぁっ!」
パンッ。
「潰れなさい」
「逃げろ! 車に乗って逃げ――」
言葉を使い切る前に、車に手をかけて逃げようとした刺客『姫崎莉波』の身体が、車体ごと平たくへし折られて破砕された。ガソリンの匂いと、鉄の引きちぎれる悲鳴のような音、そして生々しい血生臭さが路地裏を満たしていく。
「なんなの……!? なんなのよこの攻撃はっ!?」
沢渡アカネのクールだった表情が完全に崩壊していた。
彼女は手元のデバイスを必死に操作し、周囲のデータ干渉波を解析しようとするが、画面に表示されるのは原因不明の「不可逆的データ消滅」の異常波形のみ。
理不尽。圧倒的。そして回避不能。
学園の「支配者」としての権能を行使することねの遠隔攻撃は、物理法則すらも完全に無視して、刺客たちの命を順番に刈り取っていく。
神社で目隠しをされた受刑者たちが、次々と「名前」を奪われ、その場で血を吐いて息絶えていく。ことねは一切の手加減も躊躇もなく、淡々と、まるで精密機械のように両手を合わせ続けた。
「パンッ」
「潰れなさい」
「パンッ」
「潰れなさい」
朝靄の立ち込める境内に、可憐で冷酷な声と、両手を打つ乾いた音だけが規則正しく響き渡る。
東京の路地裏は、わずか数十秒の間に、人間の原形を留めた肉塊すら存在しない、真っ赤な血とデジタルノイズのプールへと変貌していた。
残されたのは、刀を構えたまま全身を恐怖の汗で濡らすサムライソードと、過呼吸を起こして怯える沢渡アカネの2人だけ。
「くそ……くそがぁぁっ! 藤田ことね……! 初星学園の悪魔めぇぇぇっ!」
見えない死の絶対的な恐怖に晒されながら、サムライソードの悲痛な怒号が、惨劇の路地裏に虚しくこだましていた。