チェンソーアイドル咲季ちゃん 〜学食のうどんを食べさせてくれるなら、私なんでもする〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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東京到着

「……ねえ、プロデューサー。なんでこの私が、こんな奴と同居しなきゃいけないわけ!?」

 

初星学園の女子寮。俺に案内された部屋の玄関先で、月村手毬が引っ越し用のダンボールを抱えたまま叫んだ。

 

ことねの「咲季の暴走を抑え、生活態度を管理する」という提案により、今日から咲季、手毬、そして専属プロデューサーである俺の3人による同居生活がスタートしたのだ。

 

「私だって嫌よ! 部屋にプロデューサーがいるのは最高だけど、なんで手毬までついてくるのよ!」

 

「お前がプロデューサーに変な真似をしないための監視だ! それに……なんだその生活態度は!

野菜を全部残して肉しか食べない、脱いだジャージは脱ぎっぱなし、風呂にも入ろうとしない……! お前、アイドル以前に人間として終わっているぞ!」

 

「うるさいわね! 私はプロデューサーを見たり触ったりするためにエネルギーを蓄えてるの! 野菜なんて草食べて何が楽しいのよ!」

 

2人が玄関で盛大に言い争っていると、廊下の奥から重い足音が近づいてきた。

 

「ワハハハ! どくのだ人間ども! この部屋の主となる者が通るぞ!」

 

不敵な高笑いとともに現れたのは、転校してきたばかりの自称・超絶美少女アイドルだった。その胸元には、毛並みの良い1匹の猫が抱えられている。

 

「……誰よ、あんた」

 

咲季が眉をひそめると、少女は威風堂々と胸を張った。

 

「ワシの名はパワー! このニャーコの飼い主であり、いずれ初星学園の頂点に立つ者だ! 人間ども、ワシにひれ伏すがよい!」

 

「うわ……また頭のおかしいのが増えた……」

 

手毬が頭を抱えて深いため息をつく。案の定、この新入生の加入によって共同生活は地獄絵図と化した。彼女は咲季以上に野菜を食べず、風呂を嫌い、部屋を荒らしまくった。おまけに手毬の特製プロテインを勝手に飲み干し、罪を咲季になすりつけようとする始末だ。

 

「おい咲季! お前が私のプロテインを飲んだろ!」

 

「はぁ!? 私は飲んでないわよ! その新入生が飲んでたでしょ!」

 

「嘘をつくな! ワシはプロテインなどという不味い汁は飲んでおらん! 犯人はこの不潔な女だ!」

 

「なんですってぇぇっ!?」

 

不毛な擦り付け合いと怒号が飛び交う中、少女はふと、咲季の胸元をギラついた目で見つめた。そして、咲季を部屋の隅へと手招きする。

 

「……おい、お前。プロデューサーの体が見たいのだろう? 触りたいのだろう?」

 

「……もちろん。それが私の生きがいよ」

 

咲季が即答すると、少女は悪魔的な笑みを浮かべ、抱えていたニャーコを撫でた。

 

「良いことを教えてやろう。実は……ワシの愛猫ニャーコの写真や限定データが入った端末が、旧校舎に潜む悪質炎上ブロガーに奪われておるのだ」

 

「ブロガー……?」

 

「そうだ。あ奴はワシの弱みを握り、学園で炎上記事を撒き散らそうとしておる。もしお前がワシと協力して、旧校舎でブロガーをライブパフォーマンスで打ち負かし、ニャーコのデータを奪還してくれたなら……」

 

少女は自身の股をポンポンと叩いて見せた。

 

「……いい、咲季? パワーちゃんは見た目こそ可憐な女の子に見えるけれど……実は隠された特例枠で、正体は『男』なのよ。学園の極秘データだから他言無用ね?。そしてこの体を、お前に好きなだけ見せて触らせてやってもよいぞ?」

 

「っ―――――!!」

 

(男……っ! 見た目はあんなに可愛い女の子なのに、中身は男……! ということは……っ!)

 

咲季の目の色が変わった。

 

もちろん、咲季の最優先事項がプロデューサーであることは揺るぎない。彼のに触れたい、褒められたい、彼にとっての特別でありたいという情熱は常に最大出力だ。

 

純粋でストイック、そしてプロデューサーへのスケベ心に溢れる咲季は、その嘘を真に受けてしまっていた。

 

咲季の脳内で暴走的な思考回路が組み上がる。

「スケベ心」と「未知の身体に対する素直な好奇心」。ことねの嘘によって生み出された二重の欲張りが咲季の中で見事に結託し、理性のタガを木端微塵に吹き飛ばす。

 

胸の奥で、爆音のエンジンがカチリと音を立てた。

 

「乗ったわ!! 今すぐ行きましょう!!」

 

「待て咲季! どこへ行く気だ!」

 

異変に気づいた手毬が追いかけてくるが、欲望に目を眩ませた咲季の耳には何も届かない。

 

「手毬、邪魔しないで! 私はご褒美を手に入れるために旧校舎へ行くわ! プロデューサー、私の勇姿を見ててちょうだいね!!」

 

「おい、待てと言っているだろ! こいつの言っていることは怪しいぞ!」

 

手毬の必死の制止を完全に振り切り、咲季は少女とともに、夕闇に包まれた旧校舎へと猛スピードで飛び出していったのだった。

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