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「ごめんなさい。私、もう行くわ」
そんな一言と共に、俺の前から彼女がいなくなった。
いつの間にか、俺の周りにいた仲間たちはみんないなくなっていた。
俺のことが嫌いになったわけじゃない。今までの旅路からして、それはない。
ただ、思えば最初からこの旅を歩いていた、セナまでいなくなってから。
ようやく俺はもう一人なのだと気づいた。
あらゆる生命が生まれ、死ぬ。そういう循環の中に世界は存在する。
植物、動物、鉱物、様々な多様な種族が共に暮らす世界。
その世界の名をサチュレーシュと呼んだ。
神々が統治する5つの大陸。
火と鍛冶の神。水と医療の神。土と生命の神。雷と発展の神。そして死と眠りの神。
それぞれが管理し、互いに互いを支え合うという構図が生まれているこのサチュレーシュにおいて。
常に別次元の存在が人々の安全を脅かしていた。
通称"魔界"と呼ばれるその世界のモノ共は、定期的にサチュレーシュの大陸に現れては人々を殺し、そして犯す。
魔界のモノ。わかりやすく、魔物。それらは人々の淀みや悪意に引き寄せられてる。
それが彼らのエネルギー源である。だが彼らは統治はしない。奪うのみであり、彼らが去った後には、植物も育たない無の地となっていた。
神々は人々と共に魔物たちと戦い、終わりなき異世界からの侵略へと対抗し続けた。
神々の力を与えられた特別な女たち。通称"巫女"。
巫女は神々の癒しとなり、心も、身体も、常に彼女たちが支えていた。
何回も。何年も。何万回も。何万年も。
魔物たちが現れては戦い。そして新たなる循環が始まる。
だがある時、神々が封印された。それは魔物たちを手引きした、悪意ある人間の仕業だった。
神々を各々の地に封印し、その力の欠片を手に入れた魔物たちは瞬く間に世界の全土に出没していき人々を貪っていく。
人々は、そして巫女たちは戦った。神々を解放させすれば、きっとこの世界はまた平和に戻ると信じて。
一人、また一人。かつては何人もいた巫女たちも、神々が封印されて力を発揮しきれず、殺されて。
人々の生存圏が狭まっていく中。”英雄”が立ち上がった。
英雄──その名をロートス。まぁ…………俺のことだ。
俺は神々の力の欠片を集め、その身に力を宿した。
断片的なれど神の力を振るい、魔物たちを屠るその姿に巫女たちは希望を見出した。
俺は次々に現れる魔物を、時に手助けしてくれた人達を犠牲にしつつ、その犠牲を胸に戦い続ける。
神々にその力を返還し、巫女たちと共に神々の封印を解いていき…そして…。
世界を救った。
「物語が終われば、英雄はお役御免か」
そうぼやき、命が復活し始めたこの世界を俺は眺める。
荒廃しかけた、あの乾いた大地は今や急速に復活した神々の手によって修復している。
勿論、失った命は帰って来ない。だが、何もなくなるのを待つあの時よりも、ずっと明日を見つめていける。
「…………」
白く光る太陽に目を向ける。眩しいその輝きを、ようやく見れた。
お役御免。あぁ、それでいいじゃないか。そう自分に言い聞かせた。
誰もいない、誰かがいたであろう村。
そこに足を踏み入れ、昔に子供が石を重ねた土を前に俺は口を開く。
「ただいま」
これは俺が、今までの旅路を振り返る話だ。