仮面ライダー・マシナリー   作:雑草弁士

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第1話 新たなるライダー

 二号ライダー、一文字隼人は背後に怯える一般人を抱えたまま、それを守って戦っていた。ここは都市部の大銀行、八百八銀行本店。そこに謎の怪人が、戦闘員を従えて白昼堂々襲撃して来たのだ。一文字がこの場に居たのは、単なる偶然である。ATMで偽装口座から活動資金を下すために来ただけだった。

 ちなみに一文字や彼の先達である本郷、二人の後輩である風見、結城、その他諸々の仮面ライダーたちは、もはや本来の戸籍は抹消されている。あるいは既に使われていない、存在しているだけの休眠した戸籍が残っているだけだ。そして彼らが今使っている戸籍は、かつてショッカーやゲルショッカーと戦っていた時代の、対ショッカー同盟、その発展した後継組織が、その活動の一環として作成した偽装戸籍だ。彼らの銀行口座も、またしかり、である。

 

 

(く、奴らめ。なんでまたこの銀行を? って言うか、どこの組織だ)

「ひ、ひいぃっ!」

「だ、大丈夫だよお母さん! 仮面ライダーが来てくれたもん!」

『ぐが、ががが!! がががががが!!』

 

 

チュイイイィィィン!!

 

 

 怪人の頭部から生えている大型ドリルが激しく回転する。見たところ、『怪人電動ドリル男』とでも言ったところか。

 

 

『がが!! ががが!!』

『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』

 

 

 声にならぬ声で電動ドリル男が指示を下すと、戦闘員が貸金庫室の方へ走って行く。それを追おうにも、一文字は電動ドリル男と相対していて、動きが取れない。かと言って、この電動ドリル男は注意をこいつから逸らそうと言う気配があれば、すかさず一般人を狙おうという様子を見せる。

 明らかに、ライダーを意識した動きだ。自分はライダーを邪魔するのに専念し、その隙に戦闘員たちに目的を達成させようと言う腹積もりなのだろう。つまりは、誰かは知らねどここの銀行の貸金庫に、何かしら預けた物品か書類かが、こいつの目的なのだ。

 

 

「くそ、ライダー! パンチ!」

『がががっ!?』

 

 

 一文字のライダーパンチを左手で受けようとした電動ドリル男は、だが左腕をへし折られて一歩退(しりぞ)く。しかしそいつは左腕の肘から先を切り離すと、背中の収納から取り出した大型ドリルをそこに接続、それを武器にして突きかかって来た。

 

 

「うっわ、なんて面倒な」

『ががが、がががががが!』

 

 

 そこへ戦闘員たちが何やら抱えて戻って来る。書類束、幾つかのディスク、そして幾つかの金塊、幾つかの宝飾品、幾つかの札束。だがそれを見て、電動ドリル男が叫んだ。

 

 

『が! がががががが! がががっ!!』

『きききききき!? き、きききききき!!』

『ききき!! ききき!!』

 

 

 慌てて金塊、宝飾品、札束を足元に捨て、頭を下げる戦闘員。それを見て、電動ドリル男は頷く。そして次の瞬間、胸部の外装を、電動ドリル男は大きく展開した。そこには、ドリルの替え刃が山の様に顔を出している。そして、それらの替え刃が広範囲に射出された。二号ライダー、一文字の背後には、無数の一般人。無数の客、銀行員、そして警備員。警備員は一応本職とは言え、公権力を持っている武装した人員では無いし、一般人でいいだろう。

 

 

「やべぇっ!」

 

 

 必死でドリル刃を打ち落とし、体で防ぎ、どうにか一般人への被害を防いだ一文字。だがその隙に、怪人と戦闘員は怪人電動ドリル男の頭のドリルで閉じたシャッターを突き破り、銀行の建物外へ脱出する。

 

 

「くそ、待ちやがれ!」

『がが、がががっ!』

『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』

 

 

 怪人たちを追って、銀行の外へ出た二号ライダーが見た光景は、多数の警官が距離を置いて取り巻き、そしてその更に外側を野次馬連中が囲んでいる中、道路の真ん中で警戒態勢を取っている怪人電動ドリル男と戦闘員たち……。そしてその前には、大型サイドカーを背後にアコースティックギターを背負って白いヘルメットを被った、薄青い所々ほつれたジーパンとジージャンに身を包んだ青年の姿があった。

 ちなみに青年の顔は、ゴーグルとフェイスガードで隠してある。そして青年の足元には、首や背骨が折れた戦闘員の残骸があった。傷口から火花をまき散らして、中には頭が割れてその中からメカが覗いている個体もある事から、戦闘員の正体はロボットあるいはアンドロイドの様だ。

 

 一文字、二号ライダーは誰何(すいか)する。

 

 

「お、おまえは!?」

 

 

 だが青年は答えない。そしてぽつりと呟いた。

 

 

変……身(Transform)。チェンジ、スイッチオン」

 

 

 同時に、青年の両手がクロスする形でその両肩に伸びる。どこからか、電子音声が聞こえた。いや、二号ライダーの鋭敏な聴覚には判別できる。青年の体内から聞こえたのだ。

 

 

『ワン、ツー、スリー!』

 

 

 電流火花が、青年の身体を走った。周囲の警官、観衆、そして一文字が目を見張る。次の瞬間、青年は姿を変えていた。右半身は、青い金属質、左半身は赤い金属質だが、ところどころが透明(クリア)パーツで体内の機械部品が見えている。

 それが最も顕著(けんちょ)なのは頭部で、左頭蓋部分がほぼ透明(クリア)パーツだった。だが、その顔面の造形は大きな複眼と触角にも見えるアンテナ、そして大顎のクラッシャー……。仮面ライダーに酷似している。腹部には、大型のベルト……。仮面ライダーの変身ベルトにしか見えないベルトが、装備されていた。

 

 そしてそれと同時に、彼の後ろの大型サイドカーも、戦闘的なメカメカしい姿へ変形している。

 

 

『ががが、がががっ!!』

『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』

 

 

 電動ドリル男の指令で、奪った書類とディスクを持っていない戦闘員たちが、一斉に襲い掛かる。変身した青年は、一見無造作に見える動きで、しかし的確に丁寧に条理に従った見事な所作で、瞬時に襲い掛かって来たすべての戦闘員を殴り潰す。電動ドリル男は泡を食った様子を見せたが、右手で荷物持ち戦闘員たちに合図をすると自身は変身した青年に襲い掛かった。同時に荷物持ち戦闘員は逃げ出す。

 

 

『がががっ!!』

「……」

 

 

 変身した左右色違い青年は、ちらりと二号ライダーに目を遣る。一文字は一瞬戸惑うが、頷く。そして変身青年は跳躍し、空中でくるりと反転すると、警官を突破して逃走しようとした荷物持ち戦闘員の前に立ちはだかる。一撃、二撃、そして三撃ならぬ惨劇っぽい展開で、粉々に吹き飛ぶ荷物持ちの戦闘員たちの頭部。

 一方で、変身青年に襲い掛かろうとしていた電動ドリル男は、突然の相手の跳躍で目標を見失い、そして逃がしたはずの戦闘員が瞬殺されたのに気づき、一瞬硬直する。二号ライダーはその隙を見逃さない。一文字も跳躍する。

 

 

「ライダアアアァァァ……キイイイィィィック!!」

『が、がががっ!? がががががが!!!』

 

 

ドガアアアァァァン!!

 

 

 必殺のキックを胴体に受け、電動ドリル男は爆発四散する。それを後目に変身青年は、戦闘員が取り落とした書類とディスクに電磁波を放ち焼き払うと、サイドカーに乗り込む。そしてサイドカー下面から、凄まじい勢いでジェットの噴射が(ほとばし)る。

 

 

「あ、待……」

 

 

 二号ライダーの制止にも耳を傾けず、サイドカーは宙を飛んで警官や野次馬の輪を飛び越え、着地するや一瞬で走り去った。二号ライダー一文字も、いつまでもここに居るわけには行かない。瞬時に跳躍し、姿を消す。まあ近場のビルの屋上に飛んで、その中で変身を解いただけなのだが。

 

 

 

*

 

 

 

 一文字は今、ライダーマン結城丈二と面会していた。結城は現在、とある企業の研究施設に潜り込んでいる。ただしその企業は例の対ショッカー同盟後継組織が100%出資して創設した、『その手』の企業である。結城はその研究施設で、現在活動している改造人間タイプ仮面ライダーたちのメンテナンスを、一手に引き受けていた。

 

 

「一文字さん、もう少し身体を(いた)わって欲しい。と言うか、毎回言ってる様に、そろそろ各部のバージョンアップに、3ヵ月から半年必要だとあれほど」

「そうは言うけどよ。敵は待ってくれねえよ」

「途中で機能不全で倒れられる方が、迷惑だよ」

 

 

 ぐうの音も出ないくらいに、結城に窘められる一文字。これはここ最近、毎度の事だ。そして一文字は、あの『仮面ライダー』ではないかと思われる存在と、ここ最近あちこちの銀行の貸金庫を襲っているらしい『敵』について話を振る。

 

 

「結城さん。そっちで何か掴んでねえか? あの新しい、ライダーっぽいのと、そして新しそうな敵について」

「ライダーっぽいと言うか、仮面を被ったバイク乗り(ライダー)である以上は仮面ライダーではあるんだが」

「そういう意味で言ってるんじゃねえよ。分かんだろ」

「まあ、ね」

 

 

 結城はファイルから数枚の写真を取り出す。そこには例の新しい『ライダー』と、そして電動ドリル男、戦闘員たちの姿が写されていた。

 

 

「『ライダー』の方は、現状不明だ。だが、幾ばくか心当たりはあるんだが。けれど後に回そう。まず問題なのは、『敵』の方だ。……この電動ドリル男ではなく、戦闘員たちから正体が割れた」

「ほう?」

「こいつらは、旧(ロボット)(レンタル)(かぶしき)(かいしゃ)バドーの流れをくむ、新(ロボット)(レンタル)(かぶしき)(かいしゃ)らしい。その名も、ネオ・バドー。本来は犯罪者にロボットをレンタルしてビジネスとして金を稼ぐ事を目的としている。世界征服とかが目的じゃないんだが、その分非常に面倒くさい」

 

 

 ここで一文字は首を傾げる。

 

 

「けどよ? あいつら戦闘員が金塊やら現金やら宝飾品やらを貸金庫から盗み出した時、隊長役の怪人が叱り飛ばして捨てさせてたぜ? 目的が金儲けだってんなら、変じゃねえか?」

「これまで新R・R・K・Kに襲われた貸金庫は、複数あるんだ。だがここで、例の『ライダー』だ。彼はそれらの事件で奪われた資料を、奪って逃走した怪人らを追跡して撃破し、奪い返して焼き捨てている事が判明した」

「焼き捨てて……。そう言や、今回も資料を焼き捨ててたな」

「焼け残った資料の断片、ほとんど意味を為さないんだがな。その内容から、失踪して行方知れずの光明寺博士と谷博士という、2人のロボット研究者の物だと判明している」

 

 

 (おもむろ)に結城は、別のファイルを開いた。そこには多数の書類と数枚の写真が入っている。

 

 

「光明寺博士が制作したロボット……。人造人間は、知られているだけで3タイプ、そしてその派生機種が1タイプ存在する。まず全シリーズのプロトタイプとも言える、キカイダー01。次に完成版として世に出るはずだった欠陥品、キカイダー。無理にナンバーを振るとすれば、キカイダー02、だな。

 そしてそのキカイダーが、悪の組織ダークと戦う上で自身の力不足を憂いて、光明寺博士の図面を元に再設計して完成させた、キカイダー00。光明寺博士がダークに誘拐され、脅迫されて生み出したハカイダー。ハカイダーはまあ、キカイダーシリーズの亜種もしくは発展形であるからして、無理にナンバーを振ればキカイダー03といった所かもしれないな」

「似てる、な」

「そして谷博士の製作したロボット……。スーパーロボット、8マン。これは人造人間と言うよりも、サイボーグの延長線上にある存在だ。この8マンに搭載されている電子頭脳は、サイバーブレインとして働き、人間の頭脳の動きを全て代替し得る。

 谷博士はこれに人間の精神を……。殉職した刑事、東八郎の精神を移し込んで、8マンとして起動させた。そして8マンは様々な人類社会の闇に潜む悪、陰謀、災厄と戦い続けた」

「8マンとも、ちょっと似てるなあ。キカイダーたちと8マンはどうなったんだ。今の世の中じゃ、噂聞かねえが」

 

 

 深く、深く溜息を吐いた結城は、苦い口調で語る。

 

 

「キカイダーシリーズは、キカイダー01、キカイダー00、ハカイダー、そして別の悪の組織から離反した人造人間(ロボット)ビジンダーが、その残骸の一部から完全破壊された事が判明している。唯一、キカイダー02だけが行方知れずだ。

 8マンについては、8マンは通常時普通の人間のフリをして生活していたんだが、悪党の罠にかかってその正体がばれてしまった。それ以後、彼も行方知れずのままだ」

「あー。やりきれねえなあ」

「新R・R・K・Kが谷博士と光明寺博士の残した資料を狙う理由は、おそらく想像がつく。自分たちの技術力の向上だ。そしてこれはビジネスではなく、新R・R・K・K独自の作戦なのだろう。

 だからこそ、無理に資金や貴金属などを奪おうとした戦闘員たちを叱り飛ばし、資料だけを奪って早急に逃げようとしたんだろうな」

「……なるほどな。新R・R・K・K、か。なんかやりづらそうな相手だぜ」

 

 

 腕を組んで、唸る一文字。そこへ結城が別方面の突っ込みを入れる。

 

 

「ところで一文字さん。本郷さんに連絡を取って欲しい」

「んあ? ライダー同士の通信で話せばいいじゃんか」

「何度も話している。だが聞いてくれない。あの人も、身体の完全なオーバーホールと改修点の改良が必要なのに、今この瞬間も最前線で無理をしている。あんたもだが、少しは後輩たちに任せて長くても半年なんだから、ドック入りしろ。

 あと本郷さんはその能力からして、どっちかと言うと俺といっしょに後方での戦力になって欲しいんだが。前線でも最有力の戦士だから始末に負えん」

「むう……」

 

 

 本郷や一文字の事情も分かるが、結城に取っては本当に倒れられても余計に困るのだ。この後一文字はどうにも逃げられなくなって、仮面ライダーV3風見志郎に連絡を取って後の事を任せ、自身は3ヵ月から6ヵ月の間ドック入りする事になってしまったのだった。

 

 

 

*

 

 

 

 仮面ライダーの様な姿のまま、あの変身青年は海辺の田舎道をサイドカーで疾走していた。だが彼は、崖っぷちにサイドカーを停車させると、その視線を海の彼方へ向けて、叫ぶ。

 

 

「……グランパ!!」

 

 

 数十秒間の沈黙。そして変身青年の叫びに応えてか、海の中から巨大な影が、立ち上がる。それは老人にも見える、全高100m以上は優にある、巨大ロボットであった。巨大ロボットは頷くと、胸部中央の扉を開く。

 変身青年は、サイドカーのグリップを握り、捻る。サイドカー下面から強烈なジェット噴射が(ほとばし)り、サイドカーは空を飛翔して老人型巨大ロボットの胸へと飛び込んで行く。変身青年とサイドカーを収納した後、老人型巨大ロボットは、再度海中へと消えて行った。

 

 

 

*

 

 

 

 あの変身青年は、変身を解除して人間スタイルへと戻っていた。サイドカーも戦闘兵器じみたスタイルから、ちょっと未来的っぽいだけのサイドカーへと戻っている。今の彼は、顔をマスクで覆ってはいない。その顔形は、少々ばかり普通の人間としては整い過ぎている、なにやら作り物めいた感じを受ける物だった。

 ちなみにここはあの老人型ロボットの胸の内部、青年の身体(ボディ)の整備施設である。基本的にメンテナンスフリーの彼の身体であったが、やはりそれでも整備を受けた方が良いのには変わりが無い。

 

 彼は整備ポッドに入り、略式のチェックを受ける。異常なしの結果が出たため、彼はすぐにポッドから出て、奥まった場所にある演壇の様な場所へ向かった。そこには、1人の老人が立っていた。……いや、それは実体ではない。よく見ると、それはところどころが透けた立体映像であった。

 

 

谷博士(グランパ)。八百八銀行に預けられていた光明寺博士の論文、奪われるところでしたが奪回に成功、焼き捨てました」

『……よくやってくれた。そして、済まない』

「……谷博士(グランパ)が、わたしを戦わせたく無い、戦闘兵器にしたくない、というお考えは正しいです。尊いです。ですが……。

 今は、それが許される時代ではありません。ですが何時か。何時か貴方の本当の望みが叶う日が来たなら。貴方の子供たち、孫たちが。宇宙開発の最前線に立って、人類の道を切り開く時が来るでしょう。必ず。……その日までは、わたしは喜んで、戦士の道を、戦闘兵器の道を、歩み続けます」

『……済まない。ありがとう、キカイダー04。わしと、光明寺博士の子であり、孫であるお前を……。8マンとキカイダーの系譜に連なるお前を、誇りに思う。仮面ライダー・マシナリーよ』

 

 

 淀んだ海底の奥深く、機械の身体に魂を秘めた戦士たちの、誓いが響き渡った。




他の作品が滞っているのに、またも新しい作品なんか出しちゃって……。ほんとにどうするんでしょうね、この作者(わたし)は。
本作は、仮面ライダー(昭和ライダー)世界をベースに、キカイダー、ロボット刑事、8マン、8マン∞など等を混ぜ込んでおります。とりあえずの敵は、新(ロボット)(レンタル)(かぶしき)(かいしゃ)ネオ・バドーです。でもそのうち増える。たぶん。
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